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 この判例集は,公刊物,雑誌,最高裁判所HP,兵庫県弁護士会消費者問題判例検索システム,消費者契約法に関心のある方々からの情報提供等により,消費者契約法に関連する判例を集め,一覧にしたものです。記載内容については正確を期しているつもりですが,これを保証するものではありません。詳しくは原典にあたるなどして確認をしてください。
 掲載内容について,誤り等を見つけられた場合には,当法律事務所までご一報いただければ幸いです。
 また,消費者契約法に関するこんな判例を見つけた,あるいはこんな判例を獲得した!という方は,是非情報を提供していただきたく,よろしくお願いいたします。

◆ H24.03.27東京地裁判決

判決年月日: 2012年3月27日
2013年6月19日 公開

平成22年(ワ)第38195号不当利得返還請求事件
ウエストロー・ジャパン、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 杉本宏之

【事案の概要】
 原告が被告から,不動産投資と勧められて2件の不動産を購入したが,その後,本件不動産の価格が下落していることが判明したこと,被告から重要事項について不実の事実を告げられ,かつ,断定的判断の提供をされたなどを主張し,4条1項2項等による本件不動産の売買契約の取消しを求めた事案。

【判断の内容】
 本件契約締結の際,重要事項である物件の客観的な市場価格を提示していないこと,家賃収入が30年以上に亘り一定であるなど非現実的なシュミレーションを提示し,原告に月々の返済が小遣い程度で賄えると誤信させたこと及びその他原告が物件についての不動産投資をするに当たっての不利益な事情を十分説明していなかったことを認定し、不利益事実の不告知により契約を締結したものとして、4条2項による取消を認めた。

◆ H24.03.16最高裁判決

判決年月日: 2012年3月16日
2012年3月16日 公開

平成22年(受)第332号 生命保険契約存在確認請求事件
最高裁HP、最高裁判所民事判例集第66巻5号2216頁、裁判所時報1552号153頁、判例タイムズ1370号115頁、金融・商事判例1395号14頁、金融・商事判例1389号14頁、判例時報2149号135頁、判例時報2169号153頁、金融法務事情1948号75頁、金融法務事情1943号76頁、国セン発表情報(2012年11月1日公表)国センHP(消費者問題の判例集)
裁判官 須藤正彦 古田佑紀 竹内行夫 千葉勝美
第1審 H20.12.04横浜地裁判決
控訴審 H21.09.30東京高裁判決
差戻審 H24.10.25東京高裁判決

【事案の概要】
保険料の払込みがされない場合に履行の催告なしに生命保険契約が失効する旨を定める約款の条項の,消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」該当性

【判断の内容】
生命保険契約に適用される約款中の保険料の払込みがされない場合に履行の催告なしに保険契約が失効する旨を定める条項は,(1)これが,保険料が払込期限内に払い込まれず,かつ,その後1か月の猶予期間の間にも保険料支払債務の不履行が解消されない場合に,初めて保険契約が失効する旨を明確に定めるものであり,(2)上記約款に,払い込むべき保険料等の額が解約返戻金の額を超えないときは,自動的に保険会社が保険契約者に保険料相当額を貸し付けて保険契約を有効に存続させる旨の条項が置かれており,(3)保険会社が,保険契約の締結当時,上記債務の不履行があった場合に契約失効前に保険契約者に対して保険料払込みの督促を行う実務上の運用を確実にしているときは,消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」に当たらない。
(反対意見がある。)

◆ H24.03.08東京地裁判決

判決年月日: 2012年3月 8日
2013年11月23日 公開

平成22年(ワ)第38882号投資金返還等請求事件
ウエストロー・ジャパン、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 三角比呂

【事案の概要】
 64歳の原告は、証券会社である被告の担当者からの勧誘を受けて、2つのユーロ建て債券を購入した。そのうちの1つについては償還期限が30年で5000万円というものであるが、被告の担当者は原告に対し償還は1年半後になされるなどの説明をし原告を誤信させ契約を申し込ませており、これは法4条1項に定める不実の告知または断定的判断の提供にあたる。また、もう1つの契約については、円高の状況を見極めるため少し待ってほしいと言ったところ、被告の従業員は当該商品は為替レートとは関係ないのですぐに購入するようにと勧めたため申し込んだのであり、こちらの勧誘も法4条1項に該当するとして、本件契約の取消し等を求めた。他に錯誤無効、適合性原則違反を主張した。

【判断の内容】
 本件契約に際し、原告と被告の担当者の間で、本件ユーロ債の内容、為替相場の見込み、早期償還条件等について意見交換がされたことはあっても、被告の担当者が一方的に不実の事実または断定的事実の告知をしたとまでは認めるに足りないとして原告の請求を棄却した。(他の主張も認めず)

◆ H24.03.05東京地裁判決

判決年月日: 2012年3月 5日
2012年3月5日 公開

平成22年(ワ)第47338号損害賠償請求事件
ウエストロー・ジャパン 判例秘書
裁判官 棈松晴子

【事案の概要】
 被告のマンション建築計画区内にある土地を賃借して,建物を所有し,きしめん屋を経営していた原告が,建物及び賃借権の売却合意をし,きしめん屋を廃業したが,その後,被告が売買契約の締結を拒否したため,廃業に伴う損害が生じたとして,契約締結上の過失を主張して,損害賠償を求めた事案。
 合意書の、マンション計画地の権利者との間の権利調整が不調に終わったときは,原告は損害賠償請求をしない旨の条項の効力が争いとなった。

【判断の内容】
 以下の理由から、損害賠償請求をしない旨の条項は無効であるとして、損害賠償請求を認めた。
① 原告が,消費者契約法2条1項にいう消費者に該当し,被告が,同条2項にいう事業者に該当すること,本件合意書の合意が,同条3項にいう消費者契約に該当することは明らか。
② 本件合意書の同条項は,事業者の債務不履行又は不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項であるから,消費者契約法8条1項3号に該当する条項に当たる。したがって,同条項の被告の責任の全部を免除する合意は無効であるから,被告が,同条項を理由に損害賠償義務を免れるということはできない。

◆ H24.02.29京都地裁判決

判決年月日: 2012年2月29日
2012年2月29日 公開

平成21年(ワ)第4696号更新料等返還請求事件
消費者法ニュース92号257頁、LLI/DB、国セン発表情報(2012年11月1日公表)
裁判官 松本清隆

【事案の概要】
貸室の賃貸借契約に際し締結した基本清掃料特約(退室時,賃借室の原状復帰における室内清掃料金2万6250円を支払うものとし,基本清掃料を敷金より差し引くものとする)及び更新料特約(期間終了2か月前までに原告被告協議の上更新しうるものとし,賃借人は,賃貸人に,次年度更新料15万円を支払うものとする)が消費者契約法10条により無効か否かが争われた事案。

【判断の内容】
 通常損耗に含まれる汚損の原状回復費用が賃料に含まれないものとして賃料の額が合意されているとみるべき基本清掃料特約は,信義則に反して賃借人の利益を一方的に害するとはいえず,また賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は,更新料の額が高額に過ぎるなど特段の事情がない限り,同法10条には該当しないが,本件賃貸借契約の更新料特約は,契約期間が1年であり,賃借人の負担などからすると,更新料の上限は年額賃料の2割が相当であり,これを超える部分の返還を求める限度で理由があるとした。

◆ H24.02.27大阪高裁決定

判決年月日: 2012年2月27日
2012年2月27日 公開

平成23年(ラ)第1257号間接強制決定に対する執行抗告事件
判例時報2153号38頁
裁判官 前坂光雄 白井俊美 前原栄智
京都消費者契約ネットワーク

【事案の概要】
不動産会社に対する定額補修分担金条項の使用差し止めを命ずる判決に基づき、適格消費者団体が、不作為債務の履行と違反行為1回に付50万円の支払を命じる間接強制命令の申立をし、これを認めた決定に対して、不動産会社が不作為義務に違反するおそれがあるとの認定は誤りであると争った。

【判断の内容】
① 不作為を目的とする債務の強制執行として間接強制を決定するには、債務者がその不作為義務に違反するおそれがあることを立証すれば足り、債務者が現にその不作為義務に違反していることを立証する必要はなく、かつ、この要件は、高度のがい然性や急迫性に裏付けられたものである必要はないと解するのが相当。
② 本件間接強制申立の時点で、不動産業者は、訴訟において消費者契約法に反しないと争って報道機関にも表明しており、判決確定後には見解表明をしていないこと、おそれがあるとした判決確定後、格別の状況の変化がない事からは、不作為債務に違反するおそれがあると認めるのが相当。
③ 抗告人が、すでに使用しておらず、今後使用することはないと表明したが、不作為債務の内容及び相手方(適格消費者団体)と抗告人(不動産会社)の関係からすれば、本件の不作為債務に違反し、又は違反している兆候があることを立証することは極めて困難であると考えられることを考慮すると、本件において、抗告人が不作為義務に違反するおそれがあることを否定するのは相当でない。

◆ H24.02.23東京地裁判決

判決年月日: 2012年2月23日
2012年12月1日 公開

国セン発表情報(2012年11月1日公表)

【事案の概要】
 原告が被告から提供を受けたパチンコ攻略法(本件契約)について、断定的判断を提供されたものであるから法4条1項2号に基づき契約を取消すとして、原告が被告に対し、支払った金銭を不当利得として返還すること等を請求した。

【判断の内容】
 パチンコに勝てるか否かは不確実な事項であること、被告は原告に対し、本件契約締結の勧誘の際、本件契約の目的となるパチンコ攻略方法の内容について、パチンコに勝てるようになる旨の断定的判断を提供したこと、これにより原告がパチンコに勝てるようになると誤信したことが認められる。このことから、本件契約は法4条1項2号に基づき取消されており、被告は原告から受領した金銭の返還義務を負うとした。

◆ H24.02.16東京地裁判決

判決年月日: 2012年2月16日
2013年11月23日 公開

国セン発表情報(2013年11月21日公表)

【事案の概要】
 原告が、被告との間で継続的に金銭の借入、弁済を行ったことにつき、その取引について利息制限法の引直計算を行った結果、最終取引日において過払金が生じているとして不当利得の返還を請求した。なお、原告と被告は、極度額借入契約に基づく債権債務がないことを相互に確認する旨の和解契約を締結したが、原告は本件和解契約について錯誤無効、法4条2項による取消しを主張した。

【判断の内容】
 本件和解契約に関し、錯誤無効は認められない。本件和解契約は被告から勧誘されて締結されたものではなく、契約締結の際、被告担当者としては本件取引について過払金を算定し、これを原告に告知すべき法律上の義務があるとはいえないから、結果的に多額の過払金が発生していたとしても、これを原告に告げなかったことが重要事項について原告の不利益となる事実を故意に告げなかった場合に該当するとはいえない。よって、本件和解契約の無効または取消しは認められないとした。原告の主張は、本件和解契約締結後に判明した、原告が被告に対して過払金返還請求権を有するという事実を前提とするものであるところ、その権利は、本件和解契約によって消滅したことになるとして、原告の請求を棄却した。

◆ H24.02.16東京高裁判決

判決年月日: 2012年2月16日
2013年6月19日 公開

平成23年(ネ)第5197号保険金請求控訴事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 園尾隆司 櫻井佐英 吉田尚弘

【事案の概要】
 被保険者が自殺したことによる保険金請求。無催告失効特約が10条違反かが争われた。

【判断の内容】
 本件無催告執行特約は、その要件として,保険料支払期限後1か月の猶予期間を設け,その間になお支払がない場合に失効するものとしていること,保険料の払込みがないまま猶予期間を経過しても,保険契約者からあらかじめ反対の申出がなく,かつ,猶予期間満了の日の解約返戻金が未払込みの保険料相当額を超えているときは,猶予期間満了の日に積立金から保険料が払い込まれたものとして取り扱うものとされている。また,保険契約が失効した日から3年以内であれば,保険契約者は,保険者の承諾を得て,失効期間に対応する保険料を払い込むことにより,保険契約を復活させることができる措置が用意されており,保険料の不払が生じたときは,その旨及び猶予期間内に保険料の支払がなければ一定の日に保険契約が失効する旨の葉書を保険契約者に送付することとされている。
 上記の無催告失効条項は,上記の関連条項全体の中で考察すると,保険契約に係る大量の事務を合理的に処理することを目的として,保険者と保険契約者の利害得失を考慮して定められたものであると認められ,これが消費者である保険契約者に一方的に不利益であるということはできないから,この条項について消費者契約法10条に規定する無効事由があるものということはできない。

◆ H24.02.15東京地裁判決

判決年月日: 2012年2月15日
2012年12月1日 公開

国セン発表情報(2012年11月1日公表)

【事案の概要】
 注文者である被告と請負人である原告との間で締結した、建物リフォーム工事の請負契約に基づき、完成建物を引渡した原告が、被告に対し、請負工事代金等の支払いを求めたところ、被告は、自身が要望していた耐震性等住居の安全に関する重要な事項が契約内容に入っていなかったことを、原告は被告に明示的に説明すべき義務があったのにこれをせず、被告の要望通りの工事がすべ
て見積書に記載されていると誤信させて契約をさせたものであるとして、法4条1項1号に基づく取消しを主張した。

【判断の内容】
 法4条1項1号は「重要事項について事実と異なることを告げる」ことが要件となるが、被告の主張は、耐震診断等に関し説明すべき重要事項を説明しなかったという趣旨にとどまるから、同条項に該当しない。なお、4条2項該当性を検討するも、被告の主張からは「重要事項(略)について当該消費者の利益となる旨」を告げたことを認めることはできないとした。

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