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 この判例集は,公刊物,雑誌,最高裁判所HP,兵庫県弁護士会消費者問題判例検索システム,消費者契約法に関心のある方々からの情報提供等により,消費者契約法に関連する判例を集め,一覧にしたものです。記載内容については正確を期しているつもりですが,これを保証するものではありません。詳しくは原典にあたるなどして確認をしてください。
 掲載内容について,誤り等を見つけられた場合には,当法律事務所までご一報いただければ幸いです。
 また,消費者契約法に関するこんな判例を見つけた,あるいはこんな判例を獲得した!という方は,是非情報を提供していただきたく,よろしくお願いいたします。

◆ H18.11.09東京地裁判決

判決年月日: 2006年11月 9日
2010年7月7日 公開

平成18年(ワ)第3471号不当利得返還請求事件
LLI
裁判官 村田渉

【事案の概要】
有料老人ホームの入居申込金等の返還請求。東京都の指針に反していることを告げないことが不利益事実の不告知となるか,入居申込金の追加支払条項,不返還条項が10条違反となるかが争われた。

【判断の内容】
次の理由から請求を棄却した。
① 東京都の指針は重要事項には当たらない。
② 本件追加支払条項は10条違反ではない。
③ 本件不返還条項は,保証金の入居月数に応じた返還金の算定方式が明確にされており,かつ一時金のうち返還対象とならない部分の割合が不適切であると認めるに足りる証拠もない。
④ 本件入居申込金,施設協力費及び保証金がいずれも実質的に居住サービスの対価であると断定することはできず,また保証金の償却が解約による平均的損害額を超えるものであると認めるに足りる証拠もない。

◆ H18.11.08京都地裁判決

判決年月日: 2006年11月 8日
2010年5月30日 公開

平成18年(レ)第37号敷金返還請求控訴事件
最高裁HP
裁判官 田中義則,阪口彰洋,大橋弘治
第1審 H18.04.28木津簡裁判決

【事案の概要】
敷金返還請求。敷引特約(35万円から30万円を差し引く)の効力が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,敷引特約が10条違反により無効であるとして返還請求を認めた。
① 敷引特約は,敷引の目的,敷引金の性質,敷引率が合理的なものであり,かつ,賃借人がこれを十分に理解・認識した上で敷引特約に合意をした場合は,賃借人の利益を一方的に害するということはできない。
② しかし,賃貸人の主張(賃料の一部前払い,契約更新時の更新料免除の対価,賃貸借契約成立の謝礼)は,合理性がない。敷引率も高い(85.7%)。

◆ H18.09.08大阪高裁判決

判決年月日: 2006年9月 8日
2010年5月30日 公開

平成18年(ネ)第466号不当利得返還請求控訴事件
未登載
裁判官 渡邉安一,矢延正平,川口泰司
第1審 H18.01.30京都地裁判決

【事案の概要】
外国語会話教室において,レッスンを受講するためのレッスンポイントを事前に一括して購入することとされ,その料金は購入ポイント数が多くなればなるほど 単価が安くなる制度が採用されている一方,途中解約する場合には,当初の単価ではなく,消化済みのレッスンポイントと同程度のコースの契約時単価(購入時よりも割高となる)を単価として精算することとされている約款が,特定商取引法49条2項1号イに違反して無効であるとして,精算金を請求した。教室側は,約款の合理性を主張した。

【判断の内容】
原審と同じ。
以下の理由から,精算金の返還請求を認めた。
① 本件規定は特定商取引法49条2項,同法49条7項の規制を受ける。
② 合理的な理由なく契約締結時ないし前払金の受領時に適用された単価と異なる単価を用いることは,これにより,役務受領者に対し,契約締結時ないし前払 金の受領時に適用された単価を用いて精算を行う場合に比較して高額の金銭的負担を与える場合には,実質的に,役務提供事業者に特定商取引法49条2項1号が許容する金額以上の請求を認めるものであり,特定商取引法が許容しない違約金ないしこれに類する金員を請求するものであるとして,同約款規定は無効であ る。

◆ H18.08.30東京地裁判決

判決年月日: 2006年8月30日
2010年5月30日 公開

平成17年(ワ)第3018号売買代金返還請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 山崎勉
控訴審で3000万円の支払いをうけることで和解成立

【事案の概要】
不動産業者から眺望のよいマンションを購入したが,直後に隣接地にマンション建設予定があり眺望が悪くなることを知らされなかったとして,4条2項による取消を主張し,売買代金2870万円及び遅延損害金の返還を求めた。

【判断の内容】
以下の理由から,取消を認め代金返還請求を認めた。
① 勧誘するに際し眺望がよいことを告げたことは,重要事項について原告の利益となる旨を告げたというべき。
② 隣接地に前記眺望が悪くなるマンションの建設予定があることを知りながらこれを告げなかったことは,不利益事実を故意に告げなかったものというべき。
 重要事項説明書に周辺環境が将来変わる場合があると記載されていたとしても一般的説明にとどまり,当該不利益事実を告知したことにはならない。

◆ H18.07.26大阪高裁判決

判決年月日: 2006年7月26日
2010年5月30日 公開

平成18年(ツ)第28号敷金返還請求・原状回復費用反訴請求上告事件
未登載
裁判官 井垣敏生,森野俊彦,大島雅弘
第1審 H18.02.28大阪地裁判決

【事案の概要】
建物及び駐車場の賃貸借契約の借主が,保証金の返還を求めた。貸主は,建物について敷引特約,駐車場について償却特約の合理性を主張し,同特約が10条に違反するか否かが争われた。

【判断の内容】
原審と同じ。
以下の理由から,建物について借主の故意過失による損傷部分についての費用を差引いた残額の保証金,駐車場について償却特約に基づく残額の保証金の返還を認めた。
①敷引特約は,自然損耗料,空室損料等の趣旨を兼ね備えており,関西地方では長年の慣行となっており,一定の合理性があり,暴利行為と認められる場合を除き有効である。
②償却特約も,自然損耗料,空区画損料等の趣旨を兼ね備えており,暴利行為と認められる場合を除き有効である。
③本件敷引特約は,保証金 60万円に対して50万円(約83%),賃料の6ヶ月分以上であり,10条に違反し無効である。
④本件償却特約は,保証金3万3000円について年20%ずつ償却,賃料の約半月分にとどまり,チェーンゲートの保守管理に費用を要する等,暴利行為とまでは認めがたく,有効である。

◆ H18.06.28大津地裁判決

判決年月日: 2006年6月28日
2010年5月30日 公開

平成17年(ワ)第701号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 阿多麻子

【事案の概要】
建物賃貸借契約における敷金返還請求。敷引特約が10条に違反するか否かが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,敷引特約について10条に違反するとして,全額の返還請求を認めた。
① 1条の趣旨からは,10条は,民法の一般条項によっては無効とはならない条項でも,事業者と消費者との間の情報力・交渉力の格差によって消費者の利益が不当に侵害されているものと評価される場合にはこれを無効とするとして消費者の利益を擁護する趣旨。
② したがって,民商法の規定に比べて過大な負担を負わせる条項がある場合には,事業者の側において(1)消費者が法的に負担すべき義務の対価であるこ と,(2)契約締結時までにその旨の情報が提供され,格差が是正され,消費者が契約締結後になって初めて契約締結時に予定していたよりも不利益な状態に 陥ったとはいえないことを立証すれば,10条違反にはならない。
③ 賃料の一部前払い,更新料免除の対価,礼金という性質については,合理性がなく,説明もない。

◆ H18.06.27東京地裁判決

判決年月日: 2006年6月27日
2010年5月30日 公開

平成16年(ワ)第7327号不当利得返還請求事件
国セン報道発表資料HP2006年10月6日,判例時報1955号49頁,判例タイムズ1251号257頁
裁判官 永野厚郎,西村康一郎,佐野文規

【事案の概要】
学納金の不返還合意は民法651条2項但書の趣旨に反すること,9条1号の平均的損害を超えること,あるいは10条ないし民法90条に該当することから無効であるとして,不当利得に基づき学納金の返還を求めた。

【判断の内容】
入学金を納入することによって,大学との間の在外契約を締結し得る地位を得たものであり,既履行部分の対価たる入学金を保持することが不当利得となる余地はない。
授業料等については,不返還合意が9条1号に違反するとして返還を認めた。

◆ H18.06.27高知地裁判決

判決年月日: 2006年6月27日
2010年5月30日 公開

国セン報道発表資料HP2006年10月6日

【事案の概要】
学納金不返還特約は,9条1号,10条,民法90条に反し無効であるとして,学納金の返還を求めた。

【判断の内容】
社会人特別選抜入学試験を受験しながら年度末になって入学を辞退したからといって,学納金の返還を請求することが信義則に違反するとまではいえない。
入学金は,入学手続事務の諸経費に要する手数料的なものという性質を一部有しているほか,入試合格者ないし入学者が当該大学に入学し得る地位を取得するこ とについての対価(一種の権利金)の面を有するものである。原告は入学手続を完了しており,その後に原告が自己の都合で入学を辞退したとしても被告が入学 金を返還すべき義務は負わない。
本件不返還特約は9条1号に該当するとして,授業料等については返還を認めた。

◆ H18.06.12東京地裁判決

判決年月日: 2006年6月12日
2010年5月30日 公開

平成17年(ワ)第22799号契約金返還請求事件
未登載
裁判官 田中俊行

【事案の概要】
建物建築請負契約を建築開始前に解約し,支払済みの契約金300万円から10万円を差し引いた金額の返還請求をした。「請負代金総額の3分の1または請負人に生じた損害額のどちらか高い方を賠償する」との条項の効力が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,当該条項について9条1項に違反し,10万円を超える限度で無効とし,返還請求を認めた。
① 9条1号の「平均的な損害」とは,当該損害賠償額の予定条項において設定された解除の事由,時期等により同一の区分に分類される多数の同種契約事案の解除に伴い,当該事業者に生じる損害の額の平均値を意味する。
② 「平均的な損害」の立証責任は事業者側にある。
③ 本件条項は,解除の事由,時期を問わず一律に契約金の3分の1以上が平均的損害となるというものであるが,その合理性について立証はなく,本件解除の時期ではむしろ10万円を超えないことが明らか。
④ 民訴法248条による損害額の認定は,損害が生じたことが立証されたがその額を立証するのが困難な場合の規定であり,本件では損害の立証がそもそも10万円を超えない範囲でしかされていないので,適用の前提を欠く。

◆ H18.06.06大阪地裁判決

判決年月日: 2006年6月 6日
2010年5月30日 公開

平成18年(レ)第5号敷金返還請求控訴事件
未登載
裁判官 堀正博,武部知子,湯浅徳恵
原審 大阪簡裁平成17年(ハ)第70334号

【事案の概要】
建物賃貸借契約における保証金返還請求。保証金35万円の内25万円を控除するとの条項の効力が争われた。

【判断の内容】
敷引特約は特段の合理性,必要性がない限り10条違反により無効であり,本件でも合理性を認められないとした。
 なお,原審では保証金の3割相当額の敷引を有効としていたものを全部無効としたが,借主側の控訴・附帯控訴がなかったため,控訴棄却となっている。



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