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 この判例集は,公刊物,雑誌,最高裁判所HP,兵庫県弁護士会消費者問題判例検索システム,消費者契約法に関心のある方々からの情報提供等により,消費者契約法に関連する判例を集め,一覧にしたものです。記載内容については正確を期しているつもりですが,これを保証するものではありません。詳しくは原典にあたるなどして確認をしてください。
 掲載内容について,誤り等を見つけられた場合には,当法律事務所までご一報いただければ幸いです。
 また,消費者契約法に関するこんな判例を見つけた,あるいはこんな判例を獲得した!という方は,是非情報を提供していただきたく,よろしくお願いいたします。

◆ H20.10.17東京地裁判決

判決年月日: 2008年10月17日
2010年6月12日 公開

平成18年(ワ)第3751号卒業認定等請求事件
判例時報2028号50頁
裁判官 佐久間邦夫,石原直弥,中依子

【事案の概要】
私立高校の生徒が,退学処分の効力を争うとともに,予備的に納付済みの授業料等は理由のいかんを問わず返還しない旨の学則(学費不返還特約)の効力は9条1号等に反して無効であるとして,退学処分日以降の学費の返還を求めた。

【判断の内容】
年度途中の退学処分は高校にとって予測困難であったところ,一般に在学契約に基づく生徒に対する給付は4月1日から翌年3月31日までの1年を単位として 準備されており,新年度開始日(4月1日)には当年度における教育役務等の給付の準備がされていたことに鑑みれば,在籍予定期間の授業料等に相当する金員 は,平均的な損害額に該当するものというべきであり,不返還特約は平均的な損害額を超えるものではない,学費の返還請求を認めなかった。

◆ H20.09.30京都地裁判決

判決年月日: 2008年9月30日
2010年6月12日 公開

平成20年(レ)第4号礼金返還請求控訴事件
最高裁HP
吉川愼一,上田卓哉,森里紀之

【事案の概要】
控訴人は,被控訴人との間で締結した賃貸借契約に基づいて,被控訴人に礼金18万円を交付したが,同賃貸借契約には,賃貸借契約終了時に礼金を返還しない 旨の約定が付されており,被控訴人から礼金18万円が返還されなかったことから,この礼金を返還しない旨の約定が10条により全部無効であるとして,被控 訴人に対し,不当利得に基づき,礼金18万円及びこれに対する遅延損害金の支払いを求めた(1審では請求棄却)。これに対し,礼金約定が信義則に反して消 費者の利益を一方的に害するものであるような事情は認められないから,礼金約定が10条に反し無効であるということはできないとした事例

【判断の内容】
以下の理由から,10条後段の要件を欠くとして返還請求を認めなかった。
① 礼金は,賃貸人にとっては賃貸物件を使用収益させることによる対価として,賃借人にとっては賃貸物件を使用収益するに当たり必要となる経済的負担とし て,それぞれ把握されている金員であり,かかる当事者の意思を合理的に解釈すると,賃料の一部前払としての性質を有するというべきである。また,礼金が返 還されないことについては説明があったもので,何らの根拠もなく,何らの対価でもなく,賃借人が一方的に支払を強要されているとはいえない。
② 礼金は賃料の前払としての性質を有しており,これを契約時に徴求したとしても被控訴人が不当な利益を得ることにはならない。また,控訴人は自由な意思に基 づき礼金約定が付された賃貸物件を選択したというべきであり,控訴人に交渉の余地がなかったことは特段問題とするに足りない。
③ 「賃貸借住宅標準契約書」の体裁や政府委員の答弁,公営住宅法や旧国庫法などが礼金を禁止していること,本件礼金の額などから,礼金約定が非難に値するということはできない。

◆ H20.09.26高松地裁判決

判決年月日: 2008年9月26日
2010年6月11日 公開

平成19年(ワ)155号不当利得等返還請求事件
国セン報道発表資料(2011年11月11日公表)
裁判官 真鍋麻子

【事案の概要】
広告記載のような医学部合格実績がないのに,その旨記載した広告が交付され,その旨を誤信して医学部系進学塾の受講契約を締結した者からの,不実告知を理由とする取消が認められた事例

【判断の内容】
① 医学部合格実績は,医学部受験のための学習塾を標榜する被告の講義内容に関わるものであり,重要事項に関する内容である。
② ①に関する原告の誤認は,本件契約締結を決定づけた要因ではないものの,原告が本件契約締結交渉を始め,本件契約締結の際に考慮した要素の1つであるとして,4条1項1号による取消を認めた。

◆ H20.09.26京都地裁判決

判決年月日: 2008年9月26日
2010年6月11日 公開

平成20年(ワ)第1469号敷金返還等請求事件
未登載
裁判官 吉川愼一

【事案の概要】
定額補修分担金特約,日割計算に関する特約,早期退去特約が10条に違反しないとされた事例

【判断の内容】
①  定額補修分担金特約は,賃借人(消費者)にとってもメリットのある特約であって,「消費者の利益を一方的に害するもの」ではない。
② 賃料の計算方法,支払方法については,「民法,商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合」を明らかにする任意規定が存在せず,退去月において賃料の日割計算をしない特約も有効である。
③ 早期退去特約は「消費者の利益を一方的に害するもの」ではない。

◆ H20.08.27京都簡裁判決

判決年月日: 2008年8月27日
2010年6月11日 公開

平成19年(ハ)第10984号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 谷澤和明

【事案の概要】
分譲貸の建物賃貸借契約につき,敷引特約(50万円のうち40万円を敷引)は10条により無効であるなどとして敷金の返還を求めたのに対し,分譲貸の事業者(2条2項)該当性等が争点となった。

【判断の内容】
① 2条2項にいう「事業」とは「一定の目的をもってなされる同種の行為の反復継続的遂行」であり,個人がその所有不動産を継続して賃貸することは,不動産業者ではなく一つの部屋を貸す場合であっても「事業」にあたる。
② 敷引特約につき,信義則に反し消費者の権利を制限するものであり,解約引率8割が慣習であると認めるに足りる証拠もないから,10条により無効である。
③ 契約締結から5年後に敷引特約の無効を主張したとしても,信義則に違反するものではない。

◆ H20.07.24京都地裁判決

判決年月日: 2008年7月24日
2010年6月11日 公開

平成19年(ワ)第3565号定額補修分担金返還請求事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 田中義則

【事案の概要】
建物賃貸借契約の定額補修分担金条項(月額賃料の3.25倍)について,10条で無効とし,返還請求を認めた事例

【判断の内容】
下記の理由から,定額補修分担金条項につき,10条により無効とした。
① 賃貸人は,損害賠償請求権の事前放棄ではあるが,全体としては定額補修分担金の額を採算が取れるように設定していると考えられる。
② 賃借人は定額補修分担金の額について賃貸人の定める額に従うほかなく,交渉による変更の余地が考えられない。また,賃借人にとって退去は1回限りのこ とであり,賃借人にとって利益となるか否かは退去時にならないとわからないことであるから,あらかじめ不利益の生じるリスクを他に転嫁したり分散すること はできない。
③ 分担金の額は,被告の賃貸業の経営上の観点から被告があらかじめ決定した者であるが,その具体的根拠は明らかでなく,賃借人にはこの金額の適否を判断することは不可能である上,交渉により金額の変更を求めることができたとも考えられない。

◆ H20.07.17亀岡簡裁判決

判決年月日: 2008年7月17日
2010年6月8日 公開

平成20年(少コ)第3号保証金返還請求事件
未登載
裁判官 藤野美子

【事案の概要】
保証金35万円から30万円を差し引いて返還する旨の解約引特約が10条により無効とされた事例

【判断の内容】
契約成立の謝礼や新規賃借員募集の費用,空き室損料等は,賃借人が当然に支払わなければならない性質の金員ではないにもかかわらず,その趣旨を明示せずに 解約引という形で支払強要するのは不当であり,また,賃料先払であるとしても,解約引特約により賃料が低額に抑えられたと認めるに足りる証拠はなく,賃貸 借期間が判然としない契約時に固定金額を賃料先払として受領する合理性もなく,本件解約引特約は合理的な趣旨・目的に基づくものとは認められない。解約引 率も約85.7%と高く,本件解約引特約は10条により無効というべきである。

◆ H20.07.16東京地裁判決

判決年月日: 2008年7月16日
2010年6月8日 公開

平成19年(ワ)第22625号損害賠償請求事件
金融法務事情1871号51頁,消費者法ニュース78号203頁,国民生活センター消費者問題の判例集
裁判官 澤野芳夫,荻原弘子,長井清明

【事案の概要】
FX業者側のシステムの不具合により直ちに決済できなかったとしても一切賠償責任を負わないとの約款について,8条の趣旨からは,限定的に解釈すべきとした事例

【判断の内容】
① 原告のロスカット・ルールへの期待は合理的で法的保護に値し,被告は有効証拠金額が維持証拠金額を割り込んだ時にロスカット手続に着手する義務を負っていた。
② 被告は不十分なコンピューターシステムしか用意しておらず,そのシステムの不具合により,本件ロスカット時においてカバー取引の注文を出せなかったのであって(①の義務違反),これにより原告が受けた損害につき不法行為又は債務不履行の責任を負う。
③ コンピューターシステムの不具合によるカバー取引の遅延に関する被告の免責約款は,8条1項1号,同条項3号の趣旨に照らし,真に予測不可能な障害や 被告の影響力の及ぶ範囲の外で発生した損害といった被告に帰責性の認められない事態によって顧客に生じた損害について,被告が損害賠償の責任を負わない旨 を規定したものと解するほかなく,本件はこれに該当しない(被告は免責されない)。

◆ H20.06.10大阪地裁判決

判決年月日: 2008年6月10日
2010年6月8日 公開

平成19年(ワ)第5823号損害賠償請求事件
判例タイムズ1290号176頁
裁判官 西岡繁靖

【事案の概要】
自動車販売会社からインターネットオークションで中古車を購入した者が,メーターの巻き戻しによって実際の走行距離が表示の8倍以上であったとして瑕疵担保責任,不法行為責任を追及した事例。現状のまま引き渡し,保証なしとの約定の有効性が争われた。

【判断の内容】
販売業者が,本件契約が業者向け販売であるから,消費者契約でないと主張したのに対し,情報・交渉力の格差が事業に由来することから,消費者と事業者の概 念を区別して消費者契約の定義で用いているのであるから,本件契約が業者向けの価格,内容で締結されたことをもって,消費者契約であることを否定すること はできないとして,消費者契約法の適用を認め,8条1項5号により免責条項を無効として,瑕疵担保責任を認めた。

◆ H20.05.19大阪高裁判決

判決年月日: 2008年5月19日
2011年11月12日 公開

国セン報道発表資料(2011年11月11日公表)
第1審 H19.10.30大阪地裁判決

【事案の概要】
 本件団地の建替計画の共同事業予定者である不動産会社の被控訴人(原告)が、団地管理組合の一括建替え決議を踏まえて、建替え賛成者から区分所有権を取得した上で、区分所有者として任意に売り渡さないものに対して、区分所有法所定の売渡請求権を行使したとして、控訴人(被告)ら(居住者)に対して、同請求権行使によって売買契約が成立したと主張して、所有権に基づいて、所有権移転登記手続等を請求した。被告らは、手続違反等による一括建替え決議の無効、消費者契約法8条ないしは10条による無効等を主張したところ、原審は被控訴人の請求を全部認容したため、控訴人らが控訴した。

【判断の内容】
 (本件一括建替え決議の消費者契約法違反性について)控訴人らは、従前資産売買契約中の条項の消費者契約法違反をもって本件一括建替え決議の無効を主張するものであるが、従前資産売買契約は、本件一括建替え決議に基づく建替え計画実施の一部をなすものではあっても、本件一括建替え決議自体の内容をなすものではなく、現に控訴人らの主張によっても、従前資産売買契約者が締結されたのは平成17年10月だというのである。したがって、本件一括建替え決議において法定外決議事項として決議された「事業方式に関する事項」とは異なり、従前資産売買契約の法令違反が本件一括建替え決議の違反や無効を帰結する理由はないというべきである。控訴人らは、等価交換方式の場合には従前資産売買契約の内容が本件一括建替え決議の隠れた内容を構成するなどと主張するが、その時点で等価交換方式に基づく売買契約の内容を定めておくべき義務があるとは到底考えられず、控訴人らの主張は採用できない。
 更に消費者契約法に関する主張のうち同法8条1項1号については、不可分条項に基づく解除に基づく損害は事業者の債務不履行により生じた損害とはいえないから主張自体失当である。
 違約金等条項が消費者契約法10条の「消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」に該当するとの主張も、従前資産売買契約が団地の一括建替え決議の実行の一環として締結されており、一部の者の不履行を容認することが困難であることを考慮すれば、違約金等条項に定める内容が消費者契約法10条の定める民法1条2項の基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものとは認めがたい。
(なお、被控訴人の各請求を全部認容した原判決は相当であって、本件控訴はいずれも理由がないとして、控訴を棄却した)



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