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 この判例集は,公刊物,雑誌,最高裁判所HP,兵庫県弁護士会消費者問題判例検索システム,消費者契約法に関心のある方々からの情報提供等により,消費者契約法に関連する判例を集め,一覧にしたものです。記載内容については正確を期しているつもりですが,これを保証するものではありません。詳しくは原典にあたるなどして確認をしてください。
 掲載内容について,誤り等を見つけられた場合には,当法律事務所までご一報いただければ幸いです。
 また,消費者契約法に関するこんな判例を見つけた,あるいはこんな判例を獲得した!という方は,是非情報を提供していただきたく,よろしくお願いいたします。

◆ H21.10.29大阪高裁判決

判決年月日: 2009年10月29日
2010年6月25日 公開

平成21年(ネ)第1211号更新料返還等請求控訴事件
判例時報2064号65頁
裁判官 三浦潤,大西忠重,井上博喜
原審 H21.03.27大津地裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,更新料支払条項が10条違反であるとして,更新料の返還を求めた事例

【判断の内容】
以下の理由により,更新料の返還請求を棄却した。
① 本件更新料支払条項は10条前段を満たす。
② 礼金の趣旨は,賃貸借期間を2年とする賃借権の設定を受けた賃借人としての地位を取得する対価。
③ 更新料の支払により,期間の定めのある賃貸借契約として更新されることや,更新料を含めた負担額を事前に計算することが特段困難とはいえないこと,更新料が比較的低額であることなどから,10条後段を満たさない。

◆ H21.10.23大阪高裁判決

判決年月日: 2009年10月23日
2010年6月16日 公開

平成21年(ネ)第1437号契約条項使用差止等請求控訴事件
消費者庁HP(pdf)消費者支援機構関西HP
裁判官 永井ユタカ,上田日出子,谷口安史
適格消費者団体 消費者支援機構関西
事業者 ニューファイナンス株式会社
第1審 H21.04.23京都地裁判決

【事案の概要】
適格消費者団体が貸金業者に対し,10条違反である早期完済違約金条項(債務者自ら繰り上げ償還する場合をA,期限の利益喪失による繰り上げ償還の場合をB)の使用差止,及び差止に必要な措置を求めた事案。事前請求の有効性についても争われた。

【判断の内容】
以下のように判断し,条項Aについては差止,契約書の破棄を命じ,Bについては棄却した。
① 41条1項の「請求の要旨」とは,差止請求の相手方である事業者等に対し,訴えによって差止の対象となる行為がどのような行為かを示す程度の事項をいうところ,本件ではその記載がある。
② 事前請求書を受領拒否していたとしても,41条2項により到達したものとみなされる。
③ 被告が条項Bについて無効であることを認めていないとしても,被告が契約書式を改訂し,Bを現在使用していないこと,本件訴訟において今後使用の予定はないと述べていることからは,条項Bについて将来の使用の恐れがあるとは認められない。
④ 条項Aについては,貸付利率いかんによっては10条違反となる場合がある。 
⑤ 条項Aについて,他の条項によって当該契約条項が10条に該当し無効・有効の判断が分かれる場合であって,当該契約条項を使用した契約締結を差し止め るべき必要性が高い場合には,当該契約条項を使用した契約締結を差止の対象とすることも許容するのが12条の趣旨であるとして,差止を認めた。
⑥ 条項Aを含む借用証書の廃棄は契約の停止もしくは予防に必要な措置である。

◆ H21.10.21東京地裁判決

判決年月日: 2009年10月21日
2011年2月4日 公開

平成20年(ワ)第5792号土地建物所有権移転仮登記抹消登記等請求事件
LLI
裁判官 佐藤英彦

【事案の概要】
有料老人ホームの入居契約における入居一時金の返還請求を含む事例。償却条項(償却期間60ヶ月,非返還対象分30%,返還対象分70%)が9条1号,10条に違反するかが争われた。

【判断の内容】
次の理由から,9条1号,10条違反にはならないとして,返還請求を棄却した。
① 非返還対象分は,有料老人ホームの入居契約の性質上当然に必要とされるものであり,想定利用期間経過後も新たな賃料相当額を負担せずに施設(専用居室及び共用施設)を利用する権利の対価としての性質を有する。
② 施設開設に関わる費用は,施設を利用する入居者全員が負担するものであるところ,非返還対象分は,かかる施設開設に関わる費用の負担分の性質をも有し,合理性がある。
③ 入居契約締結に先立ち,施設のパンフレットを見せられており,これを見ながら契約内容(入居一時金及び償却に関する説明を含む。)の説明を受け,償却条項の内容を了知していた。

◆ H21.10.02大津地裁長浜支部判決

判決年月日: 2009年10月 2日
2010年6月16日 公開

平成19年(ワ)第127号,同20年(ワ)第16号既払金返還等請求事件
消費者法ニュース82号206頁
裁判官 別所卓郎

【事案の概要】
デート商法でコート等をクレジットにより購入させられたことについて,加盟店管理責任に基づく不法行為,不実告知による立替払契約の取消を理由に,信販会社に対し既払い金の返還を求めた事案

【判断の内容】
以下の理由により,立替払契約の不実告知による取消を認め既払い金の返還請求を認めた。
① 本件加盟店契約によれば,信販会社は加盟店に対し立替払契約締結について媒介をすることを委託しているというべきであり5条の適用がある。
② 加盟店が信販会社の承諾なく第三者に媒介業務を再委託している場合も,1条の趣旨からは5条の適用がある。
③ 「本件クレジット契約を締結すれば従前のクレジット契約を解約できる」という事項は「重要事項」(4条)にあたる。

◆ H21.09.30京都地裁判決

判決年月日: 2009年9月30日
2010年6月16日 公開

平成20年(ワ)第871号定額補修分担金条項使用差止請求事件
最高裁HP消費者庁HP(PDF)京都消費者契約ネットワークHP(PDF)判決写し(京都消費者契約ネットワークHP)、判例時報2068号134頁、判例タイムズ1319号262頁,消費者法ニュース84号237頁
裁判官 瀧華聡之,谷口園恵,碩水音
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 株式会社長栄
控訴審 H22.3.26大阪高裁判決
強制執行 H23.11.24京都地裁決定

【事案の概要】
適格消費者団体が,不動産賃貸業及び不動産管理業を目的とする事業者である被告に対し,定額補修分担金条項が10条に反して無効であるとして,定額補修分担金条項を含む意思表示をすることの差止め及び同条項を含む契約書用紙の破棄等を求めた事案。

【判断の内容】
① 定額補修分担金条項は10条に反して無効であるとした上で,同条項を含む意思表示をすることの差止めを認めた。
② 被告が,その従業員らに対し,被告が消費者との間で建物賃貸借契約を締結し,又は合意更新するに際し、定額補修分担金条項を含む契約の申込み又はその承諾の意思表示を行うための事務を行わないことを指示することを求める部分は、作為を求める給付の訴えであり、一義的に明らかでなく執行にも問題を生ずるとして、却下した。
③ 契約書雛形の廃棄、従業員への周知については、すでに廃棄済みで、周知がなされているとして、請求を棄却した。

◆ H21.09.30東京高裁判決

判決年月日: 2009年9月30日
2010年6月16日 公開

平成21年(ネ)第207号生命保険契約存在確認請求控訴事件
消費者法ニュース82号214頁
裁判官 大坪丘,宇田川基,尾島明
第1審 H20.12.04横浜地裁判決
上告審 H24.03.16最高裁判決
差戻審 H24.10.25東京高裁判決

【事案の概要】
医療保険契約の保険料滞納による無催告失効条項による失効が,当該条項が10条違反であり失効していないことの確認を求めた事例

【判断の内容】
以下の理由により,無催告失効条項が10条違反であるとして,契約の存在を確認した。
① 本件無催告失効条項は,民法540条1項及び541条の場合に比べて消費者である保険契約者の権利を制限しており,10条前段を満たす。
② 保険料の自動引き落とし特約があるが,ささいな不注意による振替不能の危険があり,これによって直ちに失効するとすることは契約者にとって酷。
③ 振替不能,再請求の通知を出していることは,本件保険約款自体の有効性を判断する際に考慮すべき事項ではない。

◆ H21.09.25京都地裁判決(3)

判決年月日: 2009年9月25日
2010年6月16日 公開

平成20年(ワ)第1286号更新料支払請求事件
最高裁HP
裁判官 佐野義孝
控訴審 H22.05.27大阪高裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,賃貸借契約の更新に際して更新料10万6000円の支払を求めたところ,更新料条項は10条に反して無効であると主張した事例

【判断の内容】
以下の理由により,更新料の請求を棄却した。
① 更新料を賃料の補充とみることは困難であって,更新拒絶権放棄の対価や賃借権強化の対価ということもできない。
② 更新料の額や原告と被告との間の情報量の格差等の事情を考慮して,更新料条項が10条に反して無効。

◆ H21.09.25京都地裁判決(2)

判決年月日: 2009年9月25日
2010年6月16日 公開

平成20年(ワ)第558号保証金・更新料返還等請求事件
最高裁HP
裁判官 瀧華聡之,谷口園恵,碩水音

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,更新料条項は10条に反し無効であるとして,賃貸借契約期間中に支払った更新料11万4000円の返還及び被告が原告のプライバシーを侵害したとして,不法行為に基づき10万円の損害賠償を求めた事例

【判断の内容】
以下の理由により,更新料の返還請求を認めた。
① 更新料を賃料の補充とみることや,賃借権強化の対価を有するとみることは困難であるし,更新拒絶権放棄の対価という性質も希薄であって,更新料は,更新の際,賃借人が賃貸人に支払う金銭という一種の贈与的な性格を有するもの。
② 原告と被告との間の情報量の格差等の事情も考慮して,10条に反して無効。

◆ H21.09.25京都地裁判決(1)

判決年月日: 2009年9月25日
2010年6月16日 公開

平成20年(ワ)第947号更新料返還等請求事件,同第1287号更新料反訴請求事件,同第1285号保証債務履行請求事件
最高裁HP,判例時報2066号95頁
裁判官 瀧華聡之,佐野義孝,梶山太郎
控訴審 H22.02.24大阪高裁判決
上告審 H23.07.15最高裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,更新料条項及び定額補修分担金条項はいずれも10条に反し無効であるとして,賃貸借契約中に3回にわたり支払った更新料合計22万8000円及び契約締結時に支払った定額補修分担金12万円の返還を求めた事案

【判断の内容】
以下の理由により,更新料,定額補修分担金の返還請求を認めた。
① 更新料について,賃料の補充とみることや,賃借権強化の対価の性質を有するとみることは困難であるし,更新拒絶権放棄の対価という性質も希薄であって,更新料は,更新の際,賃借人が賃貸人に支払う金銭という一種の贈与的な性格を有するもの。
② 更新料条項について,賃貸借契約締結の際の考慮要素になっており中心条項であり10条前段違反にならないという考えは,寄るべき法的基準がなく私的自 治にゆだねられている場合であって,更新料条項については民法601条の規定が存在し,全く私的自治にゆだねられているわけではない。
② 原告と被告との間の情報量の格差等の事情から,10条に反して無効。
③ 定額補修分担金についても,10条に反して無効。

◆ H21.08.27大阪高裁判決

判決年月日: 2009年8月27日
2010年6月16日 公開

平成20年(ネ)第474号更新料返還等請求控訴事件,平成20年(ネ)第1023号賃料請求反訴事件
判例時報2062号40頁
裁判官 成田喜達,亀田廣美,高瀬順久

【事案の概要】
居室の更新料返還請求。更新料条項の有効性が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,本件更新料条項は10条違反であるとして,更新料の返還請求を認めた。
① 更新拒絶権放棄の対価,賃借権強化の対価,賃料の補充という賃借人側の主張を詳細に検討していずれも否定し,特に性質も対価となるべきものも定められ ないままであって,法律的には容易に説明することが困難で,対価性の乏しい給付というほかないとし,10条前段に該当するとした。
② 10条後段該当性については,法1条にかんがみ,契約当事者の情報収集力等の格差の状況及び程度,消費者が趣旨を含めて契約条項を理解できるもので あったかどうか等の契約に至る経緯のほか,消費者が契約条件を検討する上で事業者と実質的に対等な機会を付与され自由にこれを検討していたかどうかなど諸 般の事情を総合的に検討し,あくまでも消費者契約法の見地から,信義則に反して消費者の利益が一方的に害されているかどうかを判断すべきである。
③ 本件更新料条項の10条後段該当性についても詳細に検討し,不合理性,不当な顧客誘因性,強行放棄の存在から目をそらせる役割を果たしているとして,該当するとした。
④ 主たる給付の対価に関する条項は,取引の本体部分となり,それは基本的に市場の取引により決定されるべきであるから10条の適用対象とならないのが原 則であるが,対価を理解すべき情報に不当な格差があり,又は理解に誤認がある場合には上記原則のように言うことができないことは自明であり,上記原則が適 用されるためには,その前提として,契約当事者双方が対価について実質的に対等にまた自由に理解しうる状況が保障されていることが要請されるとして,本件 ではこれを満たしていないとした。



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