消費者契約法判例集〈判決日順〉〔10〕
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◆ H23.07.15最高裁判決
平成22年(オ)第863号、平成22年(受)第1066号更新料返還等請求本訴、更新料請求反訴、保証債務履行請求事件
最高裁HP、最高裁判所民事判例集65巻5号2269頁、裁判所時報1535号265頁、判例タイムズ1361号89頁、金融商事判例1384号35頁、金融商事判例1372号7頁、判例時報2135号38頁、判例時報2157号148頁、金融法務事情1948号83頁、ジュリスト1441号106頁、民商法雑誌146巻1号92頁、現代消費者法13号103頁、国センHP(消費者問題の判例集)
裁判官 古田佑紀、竹内行夫、須藤正彦、千葉勝美
第1審 H21.09.25京都地裁判決(1)
控訴審 H22.02.24大阪高裁判決
【事案の概要】
建物賃貸借契約について,更新料条項及び定額補修分担金条項はいずれも10条に反し無効であるとして,賃貸借契約中に3回にわたり支払った更新料合計22万8000円及び契約締結時に支払った定額補修分担金12万円の返還を求めた事案。
【判断の内容】
以下の理由から、原判決を破棄し、更新料の支払いを命じた。
① 消費者契約法10条は,憲法29条1項に違反しない。
② 更新料は、賃料と共に賃貸人の事業の収益の一部を構成するのが通常であり,その支払により賃借人は円満に物件の使用を継続することができることからすると,更新料は,一般に,賃料の補充ないし前払,賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するものと解するのが相当。
③ 10条の、民法等の法律の公の秩序に関しない規定、すなわち任意規定には、明文の規定のみならず,一般的な法理等
も含まれると解するのが相当。更新料条項は、任意規定の適用による場合に比し、消費差hである賃借人の義務を加重するものにあたる。
④ 問題となる条項が信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるか否かは,消費者契約法の趣旨,目的
(同法1条参照)に照らし,当該条項の性質,契約が成立するに至った経緯,消費者と事業者との間に存する情報の質及び量並びに交渉力の格差その他諸般の事情を総合考量して判断されるべき。
⑤ 更新料の前記性質からは、更新料の支払にはおよそ経済的合理性がないなどということはできないし、一定の地域において,期間満了の際,賃借人が賃貸人に対し更新料の支払をする例が少なからず存することは公知であることや,従前,裁判上の和解手続等においても,更新料条項は公序良俗に反するなどとして,これを当然に無効とする取扱いがされてこなかったことは裁判所に顕著であることからすると,更新料条項が賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載され,賃借人と賃貸人との間に更新料の支払に関する明確な合意が成立している場合に,賃借人と賃貸人との間に,更新料条項に関する情報の質及び量並びに交渉力について,看過し得ないほどの格差が存するとみることもできない。
⑥ 賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料の支払を約する条項は,更新料の額が賃料の額,賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り,消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらない。
⑦ 本件には特段の事情はない。
⑧ 定額補修分担金の返還に関する部分は上告理由書提出がないため却下された。
◆ H23.07.12大阪高裁判決
【事案の概要】
原告が被告Y1会社が経営するクリニックにおいて、被告Y2による脂肪吸引手術を受けたところ、両大腿部の内側に皮膚潰瘍の障害が残り、これは被告Y2に手技上の注意義務違反および説明義務違反があったことが原因であるとして、被告Y1に対し債務不履行、使用者責任に基づく損害賠償、法4条1項2号または2項に基づく取消しを、被告Y2に対し、不法行為に基づく損害賠償、法4条1項2号または2項に基づく取消し等を求めた。
原審では、Y2には手技上の注意義務違反があること、Y1の使用者責任を一部認めたが、消契法については、Y1が勧誘したものではなくXが脂肪吸引のために赴いていること、Y2らが断定的判断の提供をしたことを認めるに足る証拠はないとして取消しを認めなかった。Y2が控訴。
【判断の内容】
控訴人に手技上の過失があることは認めたが説明義務違反はないとし、控訴人の請求を一部認めた。なお、法4条1項2号または2項の判断については原審の判断を支持した。
◆ H23.07.12最高裁判決
平成22年(受)第676号保証金返還請求事件
最高裁HP、最高裁判所裁判集民事237号215頁、裁判所時報1535号257頁、判例タイムズ1356号81頁、金融商事判例1378号28頁、判例時報2128号33頁、判例時報2145号154頁、金融法務事情1948号90頁、現代消費者法13号110頁
裁判官 田原睦夫(補足意見)、那須弘平、岡部喜代子(反対意見)、大谷剛彦、寺田逸郎(補足意見)
第1審 H21.07.30京都地裁判決
控訴審 H21.12.15大阪高裁判決
【事案の概要】
マンション居室の敷金返還請求。敷引条項の有効性が争われた。
【判断の内容】
原判決を破棄し、本件敷引条項は10条違反にならないとした。
① 敷引特約について、賃貸人は,通常,賃料のほか種々の名目で授受される金員を含め,これらを総合的に考慮して契約条件を定め,また,賃借人も,賃料のほかに賃借人が支払うべき一時金の額や,その全部ないし一部が建物の明渡し後も返還されない旨の契約条件が契約書に明記されていれば,賃貸借契約の締結に当たって,当該契約によって自らが負うこととなる金銭的な負担を明確に認識した上,複数の賃貸物件の契約条件を比較検討して,自らにとってより有利な物件を選択することができる。賃貸人が契約条件の一つとしていわゆる敷引特約を定め,賃借人がこれを明確に認識した上で賃貸借契約の締結に至ったのであれば,それは賃貸人,賃借人双方の経済的合理性を有する行為と評価すべきものであるから,消費者契約である居住用建物の賃貸借契約に付された敷引特約は,敷引金の額が賃料の額等に照らし高額に過ぎるなどの事情があれば格別,そうでない限り,これが信義則に反して消費者である賃借人の利益を一方的に害するものということはできない(最高裁平成21年(受)第1679号同23年3月24日第一小法廷判決・民集65巻2号登載予定参照)。
② 本件では、敷引き条項について明確に読み取れる条項が置かれていたのであり、賃借人は本件契約によって自らが負うこととなる金銭的な負担を明確に認識した上で本件契約の締結に及んだものというべき。
③ 本件契約における賃料は,契約当初は月額17万5000円,更新後は17万円であって,本件敷引金の額はその3.5倍程度にとどまっており,高額に過ぎるとはいい難く,本件敷引金の額が,近傍同種の建物に係る賃貸借契約に付された敷引特約における敷引金の相場に比して,大幅に高額であることもうかがわれない。
(補足意見および反対意見がある)
【岡部喜代子反対意見】
① 敷引金は個々の契約ごとに様々な性質を有するものであるのに,消費者たる賃借人がその性質を認識することができないまま賃貸借契約を締結していることが問題なのであり,敷引金の総額を明確に認識していることで足りるものではない。
② 敷引金は,損耗の修繕費(通常損耗料ないし自然損耗料),空室損料,賃料の補充ないし前払,礼金等の性質を有するといわれており,その性質は個々の契約ごとに異なり得るものである。そうすると,賃借物件を賃借しようとする者は,当該敷引金がいかなる性質を有するものであるのかについて,その具体的内容が明示されてはじめて,その内容に応じた検討をする機会が与えられ,賃貸人と交渉することが可能となるというべきである。例えば,損耗の修繕費として敷引金が設定されているのであれば,かかる費用は本来賃料の中に含まれるべきものであるから(最高裁平成16年(受)第1573号同17年12月16日第二小法廷判決・裁判集民事218号1239頁参照),賃借人は,当該敷引金が上記の性質を有するものであることが明示されてはじめて,当該敷引金の額に対応して月々の賃料がその分相場より低額なものとなっているのか否か検討し交渉することが可能となる。また,敷引金が礼金ないし権利金の性質を有するというのであれば,その旨が明示されてはじめて,賃借人は,それが礼金ないし権利金として相当か否かを検討し交渉することができる。事業者たる賃貸人は,自ら敷引金の額を決定し,賃借人にこれを提示しているのであるから,その具体的内容を示すことは可能であり,容易でもある。それに対して消費者たる賃借人は,賃貸人から明示されない限りは,その具体的内容を知ることもできないのであるから,契約書に敷引金の総額が明記されていたとしても,消費者である賃借人に敷引特約に応じるか否かを決定するために十分な情報が与えられているとはいえない。
③ 消費者契約においては,消費者と事業者との間に情報の質及び量並びに交渉力の格差が存在することが前提となっており(消費者契約法1条参照),消費者契約関係にある,あるいは消費者契約関係に入ろうとする事業者が,消費者に対して金銭的負担を求めるときに,その対価ないし対応する利益の具体的内容を示すことは,消費者の契約締結の自由を実質的に保障するために不可欠である。敷引特約についても,敷引金の具体的内容を明示することは,契約締結の自由を実質的に保障するために,情報量等において優位に立つ事業者たる賃貸人の信義則上の義務であると考える(なお,消費者契約法3条1項は,契約条項を明確なものとする事業者の義務を努力義務にとどめているが,敷引特約のように,事業者が消費者に対し金銭的負担を求める場合に,かかる負担の対価等の具体的内容を明示する義務を事業者に負わせることは,同項に反するものではない。)。このように解することは,最高裁平成9年(オ)第1446号同10年9月3日第一小法廷判決・民集52巻6号1467頁が,災害により居住用の賃借家屋が滅失して賃貸借契約が終了した場合において,敷引特約を適用して敷引金の返還を不要とするには,礼金として合意された場合のように当事者間に明確な合意が存することを要求していること,前掲最高裁平成17年12月16日第二小法廷判決が,通常損耗についての原状回復義務を賃借人に負わせるには,その旨の特約が明確に合意されていることが必要であるとしていることから明らかなように,当審の判例の趣旨にも沿うものである。
④ 10条前段要件は満たす。
⑤ 後段該当性についてみると,原審認定によれば,本件敷引金の額は本件契約書に明示されていたものの,これがいかなる性質を有するものであるのかについて,その具体的内容は本件契約書に何ら明示されていないのであり,また,上告人と被上告人との間では,本件契約を締結するに当たって,本件建物の付加価値を取得する対価の趣旨で礼金を授受する旨の合意がなされたとも,改装費用の一部を被上告人に負担させる趣旨で本件敷引金の合意がなされたとも認められないというのであって,かかる認定は記録に徴して十分首肯できるところである。したがって,賃貸人たる上告人は,本件敷引金の性質についてその具体的内容を明示する信義則上の義務に反しているというべきである。加えて,本件敷引金の額は,月額賃料の約3.5倍に達するのであって,これを一時に支払う被上告人の負担は決して軽いものではないのであるから,本件特約は高額な本件敷引金の支払義務を被上告人に負わせるものであって,被上告人の利益を一方的に害するものである。
以上のとおりであるから,本件特約は消費者契約法10条により無効と解すべきである。
⑥ 上告人は,建物賃貸借関係の分野では自己責任の範囲が拡大されてきている,本件特約を無効とすることにより種々の弊害が生ずるなどと述べるが,賃借人に自己責任を求めるには,賃借人が十分な情報を与えられていることが前提となるのであって,私が以上述べたところは,賃借人の自己責任と矛盾するものではなく,かつ,敷引特約を一律に無効と解するものでもないから,上告人の上記非難は当たらない。
◆ H23.06.30東京地裁判決
平成22年(ワ)第14216号、第39951号不当利得返還等請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 堂薗幹一郎
【事案の概要】
パチンコ攻略情報等を購入する対価として、被告会社に金員を支払った原告が、被告会社の従業員から勧誘を受けた際に、不実の告知や断定的判断の提供があったと主張して、被告会社やその代表者、従業員らに対し、不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還を求めた事案。
【判断の内容】
不実告知、断定的判断の提供にあたる他、詐欺にもあたり、不法行為となるとして、損害賠償を命じた。
① 被告会社の行為(自社の来訪ブースにあるパチンコ機を利用し,担当者が指示する方法で原告にパチンコをさせ,意図的に大当たりを作出した)は,原告に対し,あたかも,同様の方法を用いればあらゆるパチンコ店で同様の状態を作出することができるかのように誤信させる目的でなされたもの。また、被告会社の担当者は,原告に対し,同社の攻略法を用いれば必ず利益が上がるかのような言辞を用い,執拗に勧誘を繰り返していた。
② また,前記認定事実によれば,被告会社は,原告から,被告会社の提供するパチンコ攻略法を用いてパチンコをしても利益が上がらない旨の苦情を受けると,担当者を次々と交代させて,これを交わし,新たな担当者に同様の勧誘をさせることによって,更なる利益を上げていたものと認められる。
③ そうすると,被告会社の担当者が行っていた前記一連の行為は,いずれも,消費者契約法4条1項1号及び2号所定の不実の告知及び断定的判断の提供に当たるだけでなく,民法96条1項所定の詐欺にも当たるものというべきであって,原告に対する不法行為を構成するものと認められる。
◆ H23.06.22さいたま地裁判決
平成22年(レ)第68号報酬金請求控訴事件
最高裁HP、ウエストロー・ジャパン
裁判官 原啓一郎、古河謙一、猪坂剛
【事案の概要】
信用情報収集調査等を業務とする業者が、調査委任契約の委任者である顧客に対し、顧客による解除の意思表示までに本件契約に基づいて調査を実施したとして、その報酬の支払を求めた事案。一審が請求を全部認容したことから、顧客が控訴し、退去妨害により契約を締結させられたと主張し、退去妨害(4条3項2号)による取消が争われた。
【判断の内容】
報酬が高額であることに驚き,「お金がないから帰る」と言って,恐くなって立ち上がったところ、「このままにしておくと,どこへ越してもつきまといますよ」「今まで説明させて帰る気か」などと言われ、忘れられないほど恐かったので,契約をせずには帰れないと思ったこと、夜9時30分ころまで2時間半ないし3時間拘束されたこと等から、退去妨害によって契約を締結したものと認め、取消を認め業者の請求を棄却した。
◆ H23.06.13横浜地裁横須賀支部判決
平成21年(ワ)第337号保険金請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 杉山正己、河本晶子、中村修輔
【事案の概要】
保険金請求事件。猶予期間中に保険料が払い込まれず、かつ、積立金からの保険料の払込みが行われないときは、保険契約は失効する旨の無催告失効特約があり、当該条項が10条により無効となるかが争われた。
【判断の内容】
以下のように判断し、無催告執行特約は10条により無効とはならないとした。
① 本件無催告失効特約は、10条前段要件を満たす。
② 後段要件について、1カ月の猶予期間が設けられていること、振替制度により失効回避の配慮がされていること、美入通知や振替通知を送付して通知することがなされていることから、後段要件は満たさない。
◆ H23.06.07大阪高裁判決
平成23年(ネ)第133号不当条項使用差止請求控訴事件
消費者庁HP(PDF)、判決写し(PDF、ひょうご消費者ネットHP)
裁判官 安原清蔵、坂倉充信、和田健
適格消費者団体 ひょうご消費者ネット
事業者 株式会社ジャルツアーズ(現商号株式会社ジャルパック)
第1審 H22.12.08神戸地裁判決
上告審 H24.10.23最高裁決定(上告不受理)
【事案の概要】
適格消費者団体が、旅行業を営む株式会社ジャルツアーズに対し、株式会社日本航空インターナショナル(JAL)の発行する企業ポイントにより旅行代金等が決済された後の契約の取消しないし変更があった場合に、同企業ポイントの返還をしない旨の条項が、被告と消費者との間で締結する企画旅行契約における契約条項となっており、消費者契約法第10条及び第9条第1号に違反して無効であるとして、本件条項を含む契約の締結の差止め等を求めた事案の控訴審。
【判断の内容】
① JALが発行する企業ポイントである「本件JMB特典2は、JALの利用実績等に応じてJALが発行するマイルを基礎とするものであり、その使用条件については、JMB会員である旅行者とJALとの間の契約関係によって定められているのであるから、本件条項がマイルや本件JMB特典の発行主体ではないジャルツアーズとの間の旅行契約の条項に含まれていると解することはできない」として否定した。
② 仮に、本件条項がジャルツアーズと旅行者との間の旅行契約の条項に含まれるとみることが可能であるとしても、本件JMB特典は、JALもしくはその提携企業を繰り返し利用する旅行者に特典を与えることによって顧客を誘引しようという目的のもとでJALが発行するものにすぎず、現金化が確実な自己宛小切手に類似する金銭債権と同様のものとみることができない以上、本件JMB特典を旅行契約の代金支払に利用した後に旅行契約が失効したとしても、旅行者と被控訴人又はJALとの間で不当利得関係が生じる余地はないとして否定した。
◆ H23.05.27札幌高裁判決
平成23年(ネ)第92号損害賠償請求控訴事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 小林正、片岡武、湯川克彦
【事案の概要】
業者の未公開株を購入させられた者が、業者及び代表取締役に対し不法行為に基づく損害賠償請求等をした事案。
【判断の内容】
以下のように判断し、断定的判断の提供にあたるのみならず不法行為となるとして、損害賠償請求を認めた。
① 顧客に対し,業務の一環として,一般公募価格は1株100円となっているが1株50円で株主のうちの希望者に割り当てる,申込み先着順に受付をするので18万株になったら締め切る,第三者割当で1株50円の優待は今回で終了するなどと言葉巧みに未公開株である同社の株式を購入するよう勧誘し,顧客はこの勧誘に応じて,本件購入1ないし4の4回にわたり,業者の株式合計20万株を1株当たり50円,代金合計1000万円で購入しているところ,代表取締役らはこれらの勧誘の際,業者が近々,遅くとも平成21年秋ころまでには株式を上場し,上場すれば株価は500円程度になる旨の説明をし,この説明を受けた顧客は,説明どおりに株式が上場され,利益を得られると考えて本件購入に至ったことが認められる。しかるに,本件購入当時,業者において株式の上場に向けて具体的に作業を進めていた様子は窺われず,現在でも株式上場の見通しは立たない状態である上,株式の価値としては50円もないのであるから、上記説明は断定的判断の提供に当たる。
② そして、このような勧誘は社会通念上許容しうる範疇を超えており、不法行為を構成する違法なものというべき。
◆ H23.05.19名古屋地裁判決
平成22年(フ)第3876号損害賠償請求事件
消費者法ニュース89号138頁、国セン発表情報(2012年11月1日公表)
裁判官 渡部美佳
【事案の概要】
原告は、被告との間で、パチンコ・パチスロの攻略情報の提供契約(本件契約)を締結し、約6年半の間に合計約550万円を支払った。契約締結の際、被告の従業員は、攻略情報に従えば必ず利益が上がるとして勧誘をした。その後、原告が、被告から提供された情報を元に遊技をしても利益が上がらないというと、被告の従業員は、より高額な契約を締結すれば確実に利益を得られる旨述べてその契約を勧め、その後も、利益が得られないと訴える原告に対し、従業員を交替させながら新たな契約の締結を言葉巧みに勧め、その代金を支払わせた(本件各契約)。原告は、被告の従業員らの勧誘行為は断定的判断の提供であるとして法4条1項2号により契約の取消および不当利得の返還等を請求した。
【判断の内容】
原告が被告から攻略法の情報提供を受けていたパチンコ・パチスロ機種の攻略法は存在しないこと、パチンコ・パチスロの業界団体で構成されているセキュリティー対策委員会、全日本遊技事業協同組合などからパチンコ・パチスロの攻略法があるとの詐欺的行為について警鐘を鳴らされていること、本件契約の利用規約においても確実性・正確性について保証しない旨の記載があることから、パチンコ・パチスロにおいて確実に利益を得られる攻略法は存在しないことは明らかであり、利益を得られるかどうかは、不確実な事項である。被告の従業員は、原告に対し確実に利益が得られるとの断定的判断を提供し、原告は、同断定的判断の内容が確実であると誤認して本件各契約を申し込んでいるとして、法4条1項2号に基づく本件各契約の取消を認めた。
◆ H23.04.27名古屋地裁判決
平成21年(ワ)第4345号、第6059号不当利得返還等請求本訴、立替金請求反訴事件
最高裁HP、消費者法ニュース88号208頁
裁判官 長谷川恭弘
【事案の概要】
借家人が家賃支払を遅滞した場合に,保証委託契約が一度自動的に解除された上で更新され,その際に解除更新料を支払うなどとされた借家人と保証会社との保証委託契約における特約が消費者契約法10条により無効とされるとともに,保証会社が根拠不明の金銭を含め借家人に過分な支払をさせる行為や退去勧告を組織的に行っていたことが,社会通念上許容される限度を超えたもので,不法行為に該当するとされた事例