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 この判例集は,公刊物,雑誌,最高裁判所HP,兵庫県弁護士会消費者問題判例検索システム,消費者契約法に関心のある方々からの情報提供等により,消費者契約法に関連する判例を集め,一覧にしたものです。記載内容については正確を期しているつもりですが,これを保証するものではありません。詳しくは原典にあたるなどして確認をしてください。
 掲載内容について,誤り等を見つけられた場合には,当法律事務所までご一報いただければ幸いです。
 また,消費者契約法に関するこんな判例を見つけた,あるいはこんな判例を獲得した!という方は,是非情報を提供していただきたく,よろしくお願いいたします。

◆ H20.01.30京都地裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ワ)第1793号更新料返還等請求事件
最高裁HP,判例時報2015号94頁,判例タイムズ1279号66頁,金融商事判例1327号45頁,消費者法ニュース76号268頁
裁判官 池田光宏,井田宏,中嶋謙英

【事案の概要】
賃貸借契約における更新料を支払う旨の約定が,民法90 条及び消費者契約法10条により無効であるとはいえないと判断された事例

【判断の内容】
① 本件更新料は,主として賃料の補充(賃料の前払い)としての性質を有しており,併せて,その程度は希薄ではあるものの,更新拒絶権放棄の対価及び賃借権強化の対価としての性質を有している。
② (民法90条について)本件更新料が主として賃料の補充(賃料の前払い)としての性質を有しているところ,その金額は10万円であり,契約期間(1年間)や月払いの賃料の金額(4万5000円)に照らし,直ちに相当性を欠くとまでいうことはできない。
③ (10条について)任意規定による場合に比し消費者の義務を加重する条項にはあたるが,金額,期間に照らして過大ではなく,更新料約定の内容は明確で 説明を受けていることから不測の損害を与えるものでもなく,また,更新拒絶権放棄の対価及び賃借権強化の対価としての性質をも有していることからは,消費 者の利益を一方的に害するとはいえない。

◆ H20.01.25札幌高裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ネ)第192号損害賠償・立替金請求控訴事件
判例時報2017号85頁,金融商事判例1285号44頁,兵庫県弁護士会HP国セン報道発表資料(2008年10月16日公表)
裁判官 末永進,千葉和則,住友隆行
第一審 H19.05.22札幌地裁判決平成18年(ワ)第1096号、同第1396号
上告審 H22.03.30最高裁判決(2)

【事案の概要】
金の先物取引の勧誘を受けて契約し損害を被った者からの委託証拠金の返還請求と,業者からの差損金請求の反訴。断定的判断の提供,不利益事実の不告知による取消が争われた。

【判断の内容】
次の理由から,委託証拠金の返還請求を認め,業者からの差損金請求を棄却した。
① 外務員らは、金相場の値動きからみて今後さらに金の値が上がると予想される旨の自己の相場観を述べて取引を勧誘したことが認められるが、将来の変動が 不確実な事項である金の相場について、顧客が金の相場に関する判断をする上での情報提供の限度を超えて、相場が上昇することが確実であると決めつけるような断定的な表現を使って顧客に取引を勧誘したことを認めるに足りる証拠はないとして,断定的判断の提供は否定。
② 本件取引において,将来における金の価格の上下は取引の「目的となるものの質」(4条4項1号)であり,かつ顧客が契約を「締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの」(同項柱書)であるから,4条2項の重要事項というべきであり,外務員が顧客に対し金相場に関する自己判断を告げて買注文を勧めることは「重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨告げ」ることに該当する。その場合,将来の金相場の暴落の可能性を示す事実は,「当該消費者の不利益となる事実」に該当し,これに言及せず上記告知を行うことは,「当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきもの」に該当するとして,4条2項による取消を認めた。

◆ H20.01.17東京簡裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ハ)第5644号損害賠償請求事件
兵庫県弁護士会HP国セン報道発表資料(2008年10月16日公表)国セン暮らしの判例集HP2010年7月,ウエストロー・ジャパン
裁判官 長澤正人

【事案の概要】
自動車販売業者から中古車を110万円で購入した際,本件車両の走行距離計が改ざんないし交換されていたのに,故意に改ざんないし交換の事実を告げず走行 距離及び走行距離計につき説明を行わなかったとして4条1項1号(不実告知)に基づく取消,代金の返還請求が認められた事例

【判断の内容】
被告会社は,本件車両の実際の走行距離が約12万キロメートルであったにもかかわらず,HP上でも店舗内でも走行距離を8万キロメートルないし8万 1500キロメートルと表示し,本件売買契約の締結に際してもこれを明確に訂正したとは認められないから,本件売買契約の締結にあたり不実の告知があった というべきであり,4条1項1号による取消が可能であるとして,110万円の返還を認めた。

◆ H19.11.09奈良地裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(ワ)第824号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 坂倉充信

【事案の概要】
敷金40万円から控除された,敷引部分20万円と原状回復費用のうち19万8425円の返還を求めた(賃貸人からの反訴あり)。

【判断の内容】
一部認容。
① 賃借人は原則として故意・過失による建物の毀損や通常でない使用方法による劣化などについてのみ原状回復義務を負う。
② 敷引特約は,10条により無効として賃借人に責任ある修繕費用(13万7271円)のみ敷金からの控除を認めた。

◆ H19.09.13大阪高裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ツ)第42号保証金返還請求上告事件
未登載
裁判官 井垣敏生,森宏司,山本善彦
第1審 大阪簡裁平成18年(ハ)第70359号
控訴審 H19.04.20大阪地裁判決

【事案の概要】
敷金90万円のうち45万円を差し引くという平成9年締結の敷引特約付賃貸借契約が,自動更新条項により1年ごとに8回自動更新された後に賃貸借契約が終了し,敷引された45万円を10条により請求したが否定した事例

【判断の内容】
本件賃貸借契約は,双方異議がなければ自動的に更新されるという内容であり,更新に際しても賃貸借条件について協議がなされて合意が成立したり,新たに書 面が作成されたといった事情はないまま自動的に更新されてきたというのであるから,更新後の賃貸借契約は消費者契約法施行後に締結された契約と認めること はできない。

◆ H19.07.26東京簡裁判決

2010年6月8日 公開

平成17年(ハ)第21542号債務不存在確認等請求事件
最高裁HP国セン報道発表資料(2008年10月16日公表)
裁判官 持地明

【事案の概要】
訪問販売で,長時間家に居座り調湿剤マットを立替払契約を利用して売却した事案で,不退去を理由に立替払契約の取消が争われた。

【判断の内容】
以下の理由により,不退去を理由として立替払契約の取消を認めた。
①長時間にわたり購入を断り続けたことについて,退去の意思を黙示的に求めたと評価できるとして,不退去にあたる。
②5条1項にいう「媒介」とは,ある人と他の人との間に法律関係が成立するように,第三者が両者の間に立って尽力することと解
されるところ,本件立替払契約について,本件販売店は媒介をしたといえる。

◆ H19.07.13日向町簡裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ハ)第65号保証金返還請求事件
未登載
裁判官 喜久本朝正

【事案の概要】
建物賃貸借の保証金に関して,解約時に全額を控除して返還しないとする解約引き条項の効力が争われた事例

【判断の内容】
保証金は,本来全額を賃借人に返還すべきものであり,賃貸借契約から生じた賃借人の債務の不履行がある場合にその額を差し引くことができるに過ぎないもの であるところ,本件解約引き条項は,退去時に全額を返還しないとするものであるから,これが10条により無効であることは明らかとした。

◆ H19.06.19大阪高裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ツ)第20号敷金返還請求上告,同附帯上告事件
未登載
裁判官 井垣敏生,森宏司,山本善彦
控訴審 大阪地裁平成18年(レ)第176号,251号

【事案の概要】
転勤に伴って自宅を貸した賃貸人に対し賃借人が敷金返還請求をした事例。敷金90万円を預託する際の合意内容が敷引特約か否かが争われた。

【判断の内容】
本件敷金合意の内容は全額敷引を内容とするものとしたうえで,貸主は自宅を転勤にともなって賃貸したもので消費者契約法にいう「事業者」にはあたらないとして,消費者同士の契約であり,消費者契約法の適用はないとして,請求を棄却した原審判断を是認した。

◆ H19.06.15大阪簡裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ハ)第70073号賃貸借契約更新料請求事件
未登載
裁判官 山本晃與

【事案の概要】
賃貸人が,賃借人に対して過去の4回分の更新料を請求した事案

【判断の内容】
建物賃貸借契約が法定更新された場合に,更新料を定める約定は法定更新には適用されないとして,過去4年分の更新料の請求を棄却した。

◆ H19.06.01京都地裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(レ)第94号保証金返還請求控訴事件
未登載
裁判官 田中義則,阪口彰洋,溝口優

【事案の概要】
賃借人(被控訴人)が清掃代,原状回復費用,解約手数料(解約した場合家賃2ヶ月分の解約手数料を支払う約定がある)の控除により返還されなかった保証金20万円を請求し,賃貸人(控訴人)は過去の更新料を反訴請求した訴訟の控訴審判決。

【判断の内容】
控訴棄却。
① 原状回復特約のうち通常損耗分を賃借人に負担させる部分は10条で無効である。本件では通常損耗を超える汚損を生じさせたと認めるに足りる証拠はない。
② 解約手数料の定めは9条1号により無効。
③ 平成14年6月1日更新の際の更新料の請求については,更新料特約の締結が消費者契約法施行前であり,消費者契約法の適用がない。本件更新料の特約は 公序良俗には反しないが,すでに契約終了時にも請求していなかったこと等からは,現段階で請求するのは信義則に反し許されない。



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