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 この判例集は,公刊物,雑誌,最高裁判所HP,兵庫県弁護士会消費者問題判例検索システム,消費者契約法に関心のある方々からの情報提供等により,消費者契約法に関連する判例を集め,一覧にしたものです。記載内容については正確を期しているつもりですが,これを保証するものではありません。詳しくは原典にあたるなどして確認をしてください。
 掲載内容について,誤り等を見つけられた場合には,当法律事務所までご一報いただければ幸いです。
 また,消費者契約法に関するこんな判例を見つけた,あるいはこんな判例を獲得した!という方は,是非情報を提供していただきたく,よろしくお願いいたします。

◆ H20.08.27京都簡裁判決

2010年6月11日 公開

平成19年(ハ)第10984号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 谷澤和明

【事案の概要】
分譲貸の建物賃貸借契約につき,敷引特約(50万円のうち40万円を敷引)は10条により無効であるなどとして敷金の返還を求めたのに対し,分譲貸の事業者(2条2項)該当性等が争点となった。

【判断の内容】
① 2条2項にいう「事業」とは「一定の目的をもってなされる同種の行為の反復継続的遂行」であり,個人がその所有不動産を継続して賃貸することは,不動産業者ではなく一つの部屋を貸す場合であっても「事業」にあたる。
② 敷引特約につき,信義則に反し消費者の権利を制限するものであり,解約引率8割が慣習であると認めるに足りる証拠もないから,10条により無効である。
③ 契約締結から5年後に敷引特約の無効を主張したとしても,信義則に違反するものではない。

◆ H20.07.24京都地裁判決

2010年6月11日 公開

平成19年(ワ)第3565号定額補修分担金返還請求事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 田中義則

【事案の概要】
建物賃貸借契約の定額補修分担金条項(月額賃料の3.25倍)について,10条で無効とし,返還請求を認めた事例

【判断の内容】
下記の理由から,定額補修分担金条項につき,10条により無効とした。
① 賃貸人は,損害賠償請求権の事前放棄ではあるが,全体としては定額補修分担金の額を採算が取れるように設定していると考えられる。
② 賃借人は定額補修分担金の額について賃貸人の定める額に従うほかなく,交渉による変更の余地が考えられない。また,賃借人にとって退去は1回限りのこ とであり,賃借人にとって利益となるか否かは退去時にならないとわからないことであるから,あらかじめ不利益の生じるリスクを他に転嫁したり分散すること はできない。
③ 分担金の額は,被告の賃貸業の経営上の観点から被告があらかじめ決定した者であるが,その具体的根拠は明らかでなく,賃借人にはこの金額の適否を判断することは不可能である上,交渉により金額の変更を求めることができたとも考えられない。

◆ H20.07.17亀岡簡裁判決

2010年6月8日 公開

平成20年(少コ)第3号保証金返還請求事件
未登載
裁判官 藤野美子

【事案の概要】
保証金35万円から30万円を差し引いて返還する旨の解約引特約が10条により無効とされた事例

【判断の内容】
契約成立の謝礼や新規賃借員募集の費用,空き室損料等は,賃借人が当然に支払わなければならない性質の金員ではないにもかかわらず,その趣旨を明示せずに 解約引という形で支払強要するのは不当であり,また,賃料先払であるとしても,解約引特約により賃料が低額に抑えられたと認めるに足りる証拠はなく,賃貸 借期間が判然としない契約時に固定金額を賃料先払として受領する合理性もなく,本件解約引特約は合理的な趣旨・目的に基づくものとは認められない。解約引 率も約85.7%と高く,本件解約引特約は10条により無効というべきである。

◆ H20.07.16東京地裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ワ)第22625号損害賠償請求事件
金融法務事情1871号51頁,消費者法ニュース78号203頁,国民生活センター消費者問題の判例集
裁判官 澤野芳夫,荻原弘子,長井清明

【事案の概要】
FX業者側のシステムの不具合により直ちに決済できなかったとしても一切賠償責任を負わないとの約款について,8条の趣旨からは,限定的に解釈すべきとした事例

【判断の内容】
① 原告のロスカット・ルールへの期待は合理的で法的保護に値し,被告は有効証拠金額が維持証拠金額を割り込んだ時にロスカット手続に着手する義務を負っていた。
② 被告は不十分なコンピューターシステムしか用意しておらず,そのシステムの不具合により,本件ロスカット時においてカバー取引の注文を出せなかったのであって(①の義務違反),これにより原告が受けた損害につき不法行為又は債務不履行の責任を負う。
③ コンピューターシステムの不具合によるカバー取引の遅延に関する被告の免責約款は,8条1項1号,同条項3号の趣旨に照らし,真に予測不可能な障害や 被告の影響力の及ぶ範囲の外で発生した損害といった被告に帰責性の認められない事態によって顧客に生じた損害について,被告が損害賠償の責任を負わない旨 を規定したものと解するほかなく,本件はこれに該当しない(被告は免責されない)。

◆ H20.06.10大阪地裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ワ)第5823号損害賠償請求事件
判例タイムズ1290号176頁
裁判官 西岡繁靖

【事案の概要】
自動車販売会社からインターネットオークションで中古車を購入した者が,メーターの巻き戻しによって実際の走行距離が表示の8倍以上であったとして瑕疵担保責任,不法行為責任を追及した事例。現状のまま引き渡し,保証なしとの約定の有効性が争われた。

【判断の内容】
販売業者が,本件契約が業者向け販売であるから,消費者契約でないと主張したのに対し,情報・交渉力の格差が事業に由来することから,消費者と事業者の概 念を区別して消費者契約の定義で用いているのであるから,本件契約が業者向けの価格,内容で締結されたことをもって,消費者契約であることを否定すること はできないとして,消費者契約法の適用を認め,8条1項5号により免責条項を無効として,瑕疵担保責任を認めた。

◆ H20.04.30京都地裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ワ)第2242号定額補償分担金・更新料返還請求事件
判例時報2052号86頁,判例タイムズ1281号316頁,金融商事判例1299号56頁,最高裁HP国セン報道発表資料(2008年10月16日公表)
裁判官 中村哲,和久田斉,波多野紀夫
控訴審 H20.11.28大阪高裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約の定額補修分担金条項について10条で無効とした事例

【判断の内容】
16万円の定額補修分担金条項につき,下記のとおり判示した。
建物賃貸借の場合はその使用に伴う物件の損耗は賃貸借契約の中で当然に予定されているから物件の通常損耗の回収は通常賃料の支払を受けることで行われる。 そうすると,原則として,賃借人に通常損耗についての回復義務を負わせることはできない。賃貸人は通常修繕費用にどの程度要するかの情報をもっているが賃 借人はこれらの情報をもっていないので,賃借人がこれらの点について賃貸人と交渉することは難しく定額補修分担金額は賃貸人が一方的に決定している。軽過 失損耗の回復費用が設定額より多額であったという特段の事情がない限り賃借人に有利とはいえない。分担金額は月額賃料の2.5倍程度で一般的な回復費用に 比べて高額である。これらの事情からは消費者の不利益を負わせるもので,10条により無効である。

◆ H20.04.25倉敷簡裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ハ)第828号既払金返還請求事件,平成20年(ハ)第226号立替金反訴請求事件 
兵庫県弁護士会HP国セン報道発表資料(2008年10月16日公表),消費者法ニュース76号213頁
裁判官 堀田隆

【事案の概要】
健康食品販売業者が,高齢で身体に障害のある者宅を訪問し勧誘する際に,健康上の悩みにつけこんで,「これを飲めば,病気も治って健康になれますよ」などと説明をし,また,支払が困難であるとして自宅からの退去を要求する態度を示したにもかかわらず,契約を締結させ,信販会社との間で割賦購入あっせん契約を締結したとして,クーリングオフ,4条1項1号(不実告知),同条3項1号(不退去)に基づき取消を主張し,支払金額の返還等を求めた事例

【判断の内容】
不実告知や不退去による困惑に基づく取消の主張については,具体的な証拠に基づく証明が不十分として否定された。
その一方で,公序良俗違反の契約であることを認定し既払金の返還を認めた。

◆ H20.04.25東京地裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ワ)第23907号不当利得返還等請求事件
未登載
裁判官 綿引穣

【事案の概要】
セクハラ発言を受け,プロダクションとの所属タレント契約を解除したタレントが,契約金(25万円)の返還を求めるなどしたのに対し,契約金は受領後如何なる場合であっても一切返還しない旨の条項の効力が争われた。

【判断の内容】
契約金は受領後如何なる場合であっても一切返還しない旨の条項につき,解除に伴い当該事業者に発生する平均的損害を超える部分は9条1号により無効と解す べきところ,事実関係に照らし,プロモートのために撮った写真代(1万2600円)のほかに合理的な出費の存在を認めることはできないとし,これを差し引 いた残金につき返還請求を認めた。

◆ H20.03.28福岡高裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ネ)第202号手付金返還,損害賠償請求控訴事件
判例時報2024号32頁
裁判官 丸山昌一,川野雅樹,金光健二

【事案の概要】
マンション売買契約締結後,買主が代金を支払わないために契約解除となったことから,宅建業者である売主が売買代金の2割とする違約金条項に基づき違約金を請求した事案。違約金条項が9条1号,10条に違反するか否かが問題となった。

【判断の内容】
次のように判断し,消費者契約法の適用がないとしつつ,信義則により違約金の額を制限した。
① 宅建業法38条により,違約金の額は代金の10分の2を超えてはならず,これに反する特約は無効としているから,本件違約金特約は宅建業法38条には違反しない。
② 宅建業法38条があるので,消費者契約法11条2項により,9条1号,10条は適用されない。

◆ H20.02.19福岡地裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ワ)第3937号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 伊藤聡

【事案の概要】
建物賃貸借契約で,敷金家賃3ヶ月分,敷引家賃3ヶ月分とした敷引特約を無効とし,敷金の返還請求を認めた事例

【判断の内容】
① 本件敷引特約は,任意規定に比して消費者の権利を制限しまたは消費者の義務を加重するものである。
② 本件敷引特約には,合理性が認められず,信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものである。



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