「不当勧誘」カテゴリー|消費者契約法判例集
◆ H25.03.19東京地裁判決
【事案の概要】
放送法の規定に基づき設置された法人である被控訴人と控訴人は放送受信契約を締結したが、その後、控訴人は受信料を支払わなくなった。このため、被控訴人は、控訴人に対し、本件契約に基づき未払い受信料及び約定遅延損害金の支払いを求めた。控訴人は、被控訴人の会計検査院法27条違反、放送法27条違反、放送法4条及び14条違反などを理由に、本件契約が民法90条に違反し無効であると主張した。また、法4条1項1号による本件契約の取消しを主張した。さらに、本件契約に基づく受信料債権は、民法173条による2年の短期消滅時効または民法169条の定期給付債権として5年の短期消滅時効により消滅するとして、消滅時効を援用する旨の意思表示をした。原審は、被控訴人の請求を全部認容した。
【判断の内容】
控訴人が主張する事情はいずれも控訴人と被控訴人との間の本件契約の目的及び内容が公序良俗に反することを認めるに足りるものではなく、本件契約は民法90条に違反するとは認められない。本件契約は法人である被控訴人と個人である控訴人の間で締結された契約であるから消費者契約であり、法の適用を受ける。しかし、本件契約の締結時において、法4条1項1号の要件を充足する事実は認められない。本件受信料債権については、民法169条の適用があり、弁済期から5年間これを行使しないときは時効消滅する。しかし、本件受信料債権の消滅時効は、控訴人の配偶者による債務の承認により中断した。控訴人は、配偶者による債務の承認がなされた時点で、既に消滅時効が完成していた本件受信料債権について消滅時効を援用することができないとして控訴を棄却した。
◆ H25.02.27東京地裁判決
平成23年(ワ)第6307号求償金請求事件
ウエストロー・ジャパン、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 川﨑聡子
【事案の概要】
消費者である被告は、補助参加人から宝飾品の購入契約を締結し、その資金を訴外銀行から借り受けるにあたり、別業者と保証委託契約を締結した。その後別業者の権利義務を承継した原告が、保証委託契約に基づき求償権を取得したとして、被告に対し、求償金及び遅延損害金の支払いを求めた。被告は、本件契約は特定商取引法に定める訪問販売に該当し、申込みを撤回する旨の意思表示をしたと主張した。また、補助参加人は、本件商品の質及び価格に関する重要事項の不実告知(法4条1項1号)を行い、宝石は後まで残る財産であるとの断定的判断を提供し(法4条1項2号)、被告を退去困難に陥らせ(法4条3項)、これにより誤認または困惑を生じた結果本件契約の締結に至ったものであると主張した。また、商品の対価その他の取引条件について、不利益事実の不告知(法4条2項)を行ったと主張し本件契約を取消す旨の意思表示をした。そして、法5条及び4条の類推適用によって、本件保証委託契約自体も取消すと主張した。
【判断の内容】
被告は、補助参加人の店舗を頻繁に訪れ本件商品を自ら希望して本件販売契約に至ったものであり、訪問販売には該当しないから特定商取引法による申込みの撤回はできない。単に宝飾品の買取業者や鑑別業者が査定した価格と販売価格との間に差異があることをもって、売主が、商品の質及び価格に関する重要事項につき不実の告知をしたということはできない。本件契約において、補助参加人の従業員らが述べた内容はセールストークの域を出ず、補助参加人が被告に対し、将来における本件商品の価額その他変動が不確実な事項について断定的判断を提供したということはできない。また、補助参加人が、被告が店舗から退去すべき旨の意思表示をしたにもかかわらず被告を退去させなかったと認めることはできない。本件契約の締結につき、不利益事実の不告知があったともいえない。以上により、法4条に基づく取消しをすることはできない。そして、法4条の取消し事由に該当するような違法な勧誘が行われたとはいえないから、本件保証委託契約が法5条及び4条の類推適用により取消し得るということもできないとした。
◆ H25.02.19東京地裁判決
【事案の概要】
消費者である原告が、被告の発行する社債を購入した際、社債を購入する消費者にとって重要な事項である社債管理者の設置の有無について、被告がこれを設置していないという原告にとって不利益な事実をあえて告げておらず、原告はこのことを告知されていれば本件社債を購入することはなかったとして、法4条2項に基づき本件契約の申込みの意思表示を取消し、被告に対して不当利得返還請求をした。また、被告は、原告による法4条2項に基づく取消しの主張を争っているにもかかわらず原告に約束した本件の社債の利息を支払わないため、原告は契約を解除するとの意思表示をした。
【判断の内容】
被告が社債管理者を設置していないことを原告に告げなかったことと、原告の本件社債購入申込みの意思表示との間には因果関係が認められないから、法4条2項に基づく原告の主張には理由がない。被告は、原告が社債権者であることを認め、原告による法4条2項に基づく取消しの主張を争うにもかかわらず、約束した利息の支払をしないことは、被告の債務不履行と認められ、契約解除による損害賠償として原告に購入代金相当額を支払う義務があるとして、原告の請求を認容した。
◆ H25.01.15東京地裁判決
【事案の概要】
証券会社である被告から転換社債型新株予約権付社債を購入した原告が、社債の購入契約が錯誤または公序良俗違反により無効であると主張して不当利得の返還を請求し、また、被告の従業員に虚偽説明、断定的判断の提供または説明義務違反があったと主張して債務不履行または不法行為に基づく損害賠償を請求した。
【判断の内容】
錯誤無効、公序良俗違反、被告の従業員による虚偽説明、説明義務違反について否定した。また、社債の売却についてたずねた原告に対して断定的判断の提供を行ったとの主張についても否定し、原告の請求を棄却した。
◆ H24.08.08東京地裁判決
平成23年(ワ)第39994号求償金請求事件
ウエストロー・ジャパン、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 小川嘉基
【事案の概要】
被告Y3所有の自動車を被告Y1が運転中に赤信号に従わなかったことにより交通事故が発生し、訴外被害者らは、被告Y1に対して不法行為に基づき、被告Y3に対して自賠法3条に基づき、それぞれ損害賠償請求権を取得した。その賠償金を自動車保険契約に基づき被害者らに支払った保険会社である原告が、保険法25条1項により各損害賠償請求権を代位取得し、被告Y1に対し民法709条に基づき、被告Y3に対し自賠法3条に基づき、被告Y2に対し連帯保証契約に基づいて損害賠償等の請求をした。これに対し被告Y2が、本件連帯保証契約は合意しておらず、仮に合意しているとしても主債務者の責任の範囲につき不実の告知をしているため、本件契約を法4条1項1号により取消すとの主張をした。
【判断の内容】
被告Y2が主債務の範囲を誤認したことは認められないとして、取消しを認めなかった。