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「不当勧誘」カテゴリー|消費者契約法判例集

◆ H25.09.18東京高裁判決

判決年月日: 2013年9月18日

平成25年(ネ)第3187号損害賠償請求控訴事件
判例秘書
裁判官 下田文男,橋本英史,脇由紀
第1審 H25.04.19東京地裁判決

【事案の概要】
 スイスの銀行に口座を有する日本人が銀行から勧誘を受けて株式を購入させられたことが適合性原則違反,説明義務違反に当たるとして不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を日本の裁判所に提起したところ,スイスの裁判所を専属管轄とする合意があるとして訴えを却下されたことに対する控訴審。この管轄の合意について消費者契約法10条が適用されるかについても争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から,被控訴人の消費者契約法10条が適用される余地はないとの主張を排斥し,10条該当性を判断した(なお,本件については無効とはならないとした)。
① 本件各申込書には,本件各口座開設契約の準拠法をスイス連邦法とする旨の条項があるが,国際的専属的裁判管轄合意の効力に関する準拠法は,法廷地法である我が国の国際民事訴訟法であると解される。被控訴人が主張するように法例7条を適用し,あるいは類推適用してスイス連邦法が準拠法となると解するのは相当でない。
② 国際的専属的裁判管轄合意の効力は,我が国の国際民事訴訟法の見地から,公序法違反の有無のほかに,契約(意思表示)の効力に関する我が国の民法その他の成文法の規定の趣旨(法意)を参酌して判断される場合がある。
③ 控訴人らは個人であって,事業として又は事業のために契約の当事者となったものではなく,一方,被控訴人は法人であるから,両者の間に成立した本件管轄合意の効力について,消費者契約法10条の規定の趣旨を参酌して判断する余地があるというべきであって(同法1条,2条1項ないし3項参照),同法10条の適用が問題となることはない旨の被控訴人の主張は,採用することができない。

◆ H25.08.26東京地裁判決

判決年月日: 2013年8月26日

平成23年(ワ)第4089号預託金返還等請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 亀村恵子、坂本雅史、吉田徹

【事案の概要】
 証券会社から仕組債を購入した顧客が,当該契約について瑕疵があると主張して預託金の返還や損害賠償を請求した事案。不実告知,不利益事実の不告知,断定的判断の提供の有無が争点の1つとなった。

【判断の内容】
 不実告知,不利益事実の不告知,断定的判断の提供について,以下の理由からこれを否定した。
① (仕組債の組成に要する費用や被告が仕組債を販売することによって得る利益が4条1項にいう「重要事項」に該当するか否かについて)
 本件各仕組債は,日経平均株価の変動に従って損益が確定する金融商品であり,適用利率決定の条件や早期償還の条件,満期償還金額の計算式等を理解すれば本件各仕組債のリスクとリターンの具体的な内容を知ることができ,投資の適否の判断に必要な情報は与えられているといえるのであって,本件各仕組債の組成に要した費用や被告がその販売により得る利益の額を知らなければ,本件各仕組債のリスクとリターンとが見合っているかを判断することができないとはいえない。本件各仕組債が生み出すキャッシュフローの具体的内容は,将来日経平均株価がどのように推移するかという点に左右されるのであって,これは個々の投資家が現在・将来の経済情勢に関する認識・見通し,各々の相場観に基づいて判断すべき事項であり,一般的な投資判断と異なるところはなく,殊更困難な予測・判断を要求されるものではない。
 確かに,抽象的には,本件各仕組債の組成に要する費用その他発行体及び販売者側に生じた費用が投資家に転嫁されることによって,投資家が得る利得がその分だけ減少しているものと考えられるが,そこで生じた費用の額を知ったからといって,本件各仕組債のリスクとリターンに関する投資判断に直ちに影響が及ぶことになるともいえない(換言すれば,その費用にかかわらず,将来の日経平均株価に関する見通しと本件各仕組債の発行条件とを照らし合わせることで,本件各仕組債が生み出すキャッシュフローの具体的な内容について認識・予測することができ,本件各仕組債のリスクとリターンに関する一応の投資判断は可能なものといえる。)。
 したがって,仕組債の組成に要する費用や金融商品取引業者が仕組債を販売することによって得る利益の存否やその多寡が,一般投資家が当該仕組債を購入するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきものということはできず,法4条にいう重要事項に当たるとはいえない。
② (不利益事実の不告知について)被告が本件各仕組債の販売により利益を得ている旨やその組成に費用を要したことを告知しなかったとしても,通常の投資家が,被告が本件各仕組債の販売によって利益を得ておらず,その組成に費用を要しなかったと考えるとはいえない。
③ (断定的判断の提供について)販売担当者の説明によって,原告が将来にわたり日経平均株価が60パーセントまで低下することは確実にないと誤信したものと認めることはできない。

◆ H25.04.19東京地裁判決

判決年月日: 2013年4月19日

平成23年(ワ)第38665号、平成24年(ワ)第5632号違約金請求事件(本訴)、(反訴)
ウエストロー・ジャパン、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 樋口真貴子

【事案の概要】
 本訴では、不動産業者である原告が、土地の買主である被告に対し、被告の売買代金未払いを理由に売買契約を解除した上、売買契約の違約金条項に基づき、売買代金の20%相当額から既に受領済の代金を控除した額及び遅延損害金の支払いを求めた。反訴では、被告が原告に対し、主意的には原告の建築条件(土地の売主が同土地上の建物の建築も請け負うという条件)を付さないという義務違反及び融資協力義務違反を理由に売買契約を解除した上、原状回復義務の履行として、支払済代金の返還及び売買契約の違約金条項に基づく違約金の支払い並びに遅延損害金の支払いを求めた。そして、予備的には第一に、原告が重要事項である建築条件について事実と異なることを告げて被告を誤認させたとして法4条1項1号または法4条2項による売買契約の取消し、または錯誤無効を主張して支払済代金及び遅延損害金の支払いを求め、第二に、被告は売買契約を手付解除したとして、原告に対し、支払済売買代金から手付金を控除した額及び遅延損害金の支払いを求めた。

【判断の内容】
 原告は、被告との間で、建築条件なし及び更地渡しをすることに合意して本件売買契約を締結したにもかかわらず、建物建築についても原告に請け負わせ、ひいては本件土地上の建物の解体費用を事実上被告に負担させる意図を隠して仮請負契約書を作成させ、原告と建築請負契約を締結させようと強引な営業活動を行ったことが認められるものの、原告と建築請負契約を締結しなければ本件土地を引き渡さない、現実に具体的な解体費用を被告に請求したなどの客観的事実はなく、債務不履行とまでは認められない。また、融資協力義務についても原告に債務不履行があるとは認められない。本件売買契約において、建築条件が付されていないことや更地渡しであることは法4条4項2号にいう重要事項に該当するが、重要事項についての不実告知、不利益事実の不告知は認められない。他方、被告が原告に対し行った解除の意思表示は手付解除として有効であると認められるから、原告は、被告に対し、既に受領済の売買代金から手付金を控除した額及び遅延損害金を支払う義務があるとした。

◆ H25.03.27東京地裁判決

判決年月日: 2013年3月27日

国セン発表情報(2013年11月21日公表)

【事案の概要】
 放送法の規定に基づき設置された法人である被控訴人と控訴人は放送受信契約を締結したが、その後、控訴人は受信料を支払わなくなった。このため、被控訴人は、控訴人に対し、本件契約に基づき未払い受信料及び約定遅延損害金の支払いを求めた。控訴人は、被控訴人の会計検査院法27条違反、放送法27条違反、放送法4条及び14条違反などを理由に、本件契約が民法90条に違反し無効であると主張した。また、本件契約は消費者契約であり、被控訴人が控訴人に重要事項である受信契約の内容を十分に説明していないなどとして法4条1項1号による本件契約の取消しを主張した。さらに、本件契約に基づく受信料債権は、民法173条による2年の短期消滅時効または民法169条の定期給付債権として5年の短期消滅時効により消滅するとして、消滅時効を援用する旨の意思表示をした。原審は、被控訴人の請求を全部認容した。

【判断の内容】
 本件受信契約が公序良俗に反するとはいえない。放送受信契約は、放送法64条2項によりその締結を義務付けられている上、同条3項において、同契約の条項につきあらかじめ総務大臣の認可を受けなければならないとされていることからすれば、当事者の自由意思により締結されるものとはいえないから、放送受信契約の締結について法4条1項が適用される余地はない。本件受信料債権については、民法173条に定める債権には該当しない。本件受信料債権は、本件受信契約という基本契約に基づいて発生し、受信規約により月額が定められ、2カ月毎に支払うことを内容とするものであるから、基本権たる定期金債権から派生する支分権として、民法169条に定める債権に該当する、として控訴を棄却した。

◆ H25.03.26東京地裁判決

判決年月日: 2013年3月26日

国セン発表情報(2013年11月21日公表)

【事案の概要】
 消費者である原告は、肩こりや頭痛などの症状についてインターネットで通院先を探し、被告らとの間でカイロプラクティックの施術契約を締結し、施術を受けた。原告は、被告らが、原告の猫背、頭痛、肩こりはカイロプラクティックによる施術によって治るとは限らないにもかかわらず、それを故意に告げず、かえって、原告らの症状が治ると将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供したため、原告は、本件各施術によって症状が治るのが確実であると誤認したと主張し、法4条2項により本件各施術契約を取消す旨の意思表示をし、不当利得の返還請求をした。

【判断の内容】
 カイロプラクティックの施術における「猫背、頭痛、肩こりの症状を改善させる効果の有無」については、消費者契約の目的となる役務についての「質」に該当すると認められる。被告らが、本件各施術によって猫背、頭痛、肩こりの症状が改善していく旨の説明をしたことは認められるが、施術によって症状が改善しないと認めることはできないから、被告らが本件各施術によって症状が改善しないにもかかわらず改善する場合があると告げたと認めることはできない。また、被告らが、原告に対し症状が軽減、消失しないことを告知しなかったことが法4条2項に反するとはいえない。そして、被告らが「猫背、頭痛、肩こりが治る」などという断定的明言をした事実を認めることはできず、原告において、猫背、頭痛、肩こりが確実に治ると誤信したと認めることは困難である。被告らが、症状が改善しない場合があることを故意に告げなかったとも認められない。以上により、原告の本件各施術契約の申込みの意思表示につき、法4条2項に基づいて取消すことはできないとして、原告の請求を棄却した。

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