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「不当勧誘」カテゴリー|消費者契約法判例集

◆ H19.01.29東京地裁判決

2014年3月29日 公開

平成18年(ワ)11115号不当利得返還請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 永野厚郎

【事案の概要】
 被告から未公開株式を購入した際に、被告従業員から株式が上場されることにより値上がりすることは間違いないとの断定的判断の提供を受けたとして、4条1項1号及び2号に基づく売買契約の取消しと代金の返還を求めた事案。

【判断の内容】
 被告による断定的判断の提供があったとして,4条1項2号により売買契約の取消を認め,代金の返還を命じた。

◆ H25.09.18東京高裁判決

2014年3月12日 公開

平成25年(ネ)第3187号損害賠償請求控訴事件
判例秘書
裁判官 下田文男,橋本英史,脇由紀
第1審 H25.04.19東京地裁判決

【事案の概要】
 スイスの銀行に口座を有する日本人が銀行から勧誘を受けて株式を購入させられたことが適合性原則違反,説明義務違反に当たるとして不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を日本の裁判所に提起したところ,スイスの裁判所を専属管轄とする合意があるとして訴えを却下されたことに対する控訴審。この管轄の合意について消費者契約法10条が適用されるかについても争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から,被控訴人の消費者契約法10条が適用される余地はないとの主張を排斥し,10条該当性を判断した(なお,本件については無効とはならないとした)。
① 本件各申込書には,本件各口座開設契約の準拠法をスイス連邦法とする旨の条項があるが,国際的専属的裁判管轄合意の効力に関する準拠法は,法廷地法である我が国の国際民事訴訟法であると解される。被控訴人が主張するように法例7条を適用し,あるいは類推適用してスイス連邦法が準拠法となると解するのは相当でない。
② 国際的専属的裁判管轄合意の効力は,我が国の国際民事訴訟法の見地から,公序法違反の有無のほかに,契約(意思表示)の効力に関する我が国の民法その他の成文法の規定の趣旨(法意)を参酌して判断される場合がある。
③ 控訴人らは個人であって,事業として又は事業のために契約の当事者となったものではなく,一方,被控訴人は法人であるから,両者の間に成立した本件管轄合意の効力について,消費者契約法10条の規定の趣旨を参酌して判断する余地があるというべきであって(同法1条,2条1項ないし3項参照),同法10条の適用が問題となることはない旨の被控訴人の主張は,採用することができない。

◆ H25.08.26東京地裁判決

2014年3月12日 公開

平成23年(ワ)第4089号預託金返還等請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 亀村恵子、坂本雅史、吉田徹

【事案の概要】
 証券会社から仕組債を購入した顧客が,当該契約について瑕疵があると主張して預託金の返還や損害賠償を請求した事案。不実告知,不利益事実の不告知,断定的判断の提供の有無が争点の1つとなった。

【判断の内容】
 不実告知,不利益事実の不告知,断定的判断の提供について,以下の理由からこれを否定した。
① (仕組債の組成に要する費用や被告が仕組債を販売することによって得る利益が4条1項にいう「重要事項」に該当するか否かについて)
 本件各仕組債は,日経平均株価の変動に従って損益が確定する金融商品であり,適用利率決定の条件や早期償還の条件,満期償還金額の計算式等を理解すれば本件各仕組債のリスクとリターンの具体的な内容を知ることができ,投資の適否の判断に必要な情報は与えられているといえるのであって,本件各仕組債の組成に要した費用や被告がその販売により得る利益の額を知らなければ,本件各仕組債のリスクとリターンとが見合っているかを判断することができないとはいえない。本件各仕組債が生み出すキャッシュフローの具体的内容は,将来日経平均株価がどのように推移するかという点に左右されるのであって,これは個々の投資家が現在・将来の経済情勢に関する認識・見通し,各々の相場観に基づいて判断すべき事項であり,一般的な投資判断と異なるところはなく,殊更困難な予測・判断を要求されるものではない。
 確かに,抽象的には,本件各仕組債の組成に要する費用その他発行体及び販売者側に生じた費用が投資家に転嫁されることによって,投資家が得る利得がその分だけ減少しているものと考えられるが,そこで生じた費用の額を知ったからといって,本件各仕組債のリスクとリターンに関する投資判断に直ちに影響が及ぶことになるともいえない(換言すれば,その費用にかかわらず,将来の日経平均株価に関する見通しと本件各仕組債の発行条件とを照らし合わせることで,本件各仕組債が生み出すキャッシュフローの具体的な内容について認識・予測することができ,本件各仕組債のリスクとリターンに関する一応の投資判断は可能なものといえる。)。
 したがって,仕組債の組成に要する費用や金融商品取引業者が仕組債を販売することによって得る利益の存否やその多寡が,一般投資家が当該仕組債を購入するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきものということはできず,法4条にいう重要事項に当たるとはいえない。
② (不利益事実の不告知について)被告が本件各仕組債の販売により利益を得ている旨やその組成に費用を要したことを告知しなかったとしても,通常の投資家が,被告が本件各仕組債の販売によって利益を得ておらず,その組成に費用を要しなかったと考えるとはいえない。
③ (断定的判断の提供について)販売担当者の説明によって,原告が将来にわたり日経平均株価が60パーセントまで低下することは確実にないと誤信したものと認めることはできない。

◆ H25.03.27東京地裁判決

2013年11月26日 公開

国セン発表情報(2013年11月21日公表)

【事案の概要】
 放送法の規定に基づき設置された法人である被控訴人と控訴人は放送受信契約を締結したが、その後、控訴人は受信料を支払わなくなった。このため、被控訴人は、控訴人に対し、本件契約に基づき未払い受信料及び約定遅延損害金の支払いを求めた。控訴人は、被控訴人の会計検査院法27条違反、放送法27条違反、放送法4条及び14条違反などを理由に、本件契約が民法90条に違反し無効であると主張した。また、本件契約は消費者契約であり、被控訴人が控訴人に重要事項である受信契約の内容を十分に説明していないなどとして法4条1項1号による本件契約の取消しを主張した。さらに、本件契約に基づく受信料債権は、民法173条による2年の短期消滅時効または民法169条の定期給付債権として5年の短期消滅時効により消滅するとして、消滅時効を援用する旨の意思表示をした。原審は、被控訴人の請求を全部認容した。

【判断の内容】
 本件受信契約が公序良俗に反するとはいえない。放送受信契約は、放送法64条2項によりその締結を義務付けられている上、同条3項において、同契約の条項につきあらかじめ総務大臣の認可を受けなければならないとされていることからすれば、当事者の自由意思により締結されるものとはいえないから、放送受信契約の締結について法4条1項が適用される余地はない。本件受信料債権については、民法173条に定める債権には該当しない。本件受信料債権は、本件受信契約という基本契約に基づいて発生し、受信規約により月額が定められ、2カ月毎に支払うことを内容とするものであるから、基本権たる定期金債権から派生する支分権として、民法169条に定める債権に該当する、として控訴を棄却した。

◆ H25.04.19東京地裁判決

2013年11月26日 公開

平成23年(ワ)第38665号、平成24年(ワ)第5632号違約金請求事件(本訴)、(反訴)
ウエストロー・ジャパン、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 樋口真貴子

【事案の概要】
 本訴では、不動産業者である原告が、土地の買主である被告に対し、被告の売買代金未払いを理由に売買契約を解除した上、売買契約の違約金条項に基づき、売買代金の20%相当額から既に受領済の代金を控除した額及び遅延損害金の支払いを求めた。反訴では、被告が原告に対し、主意的には原告の建築条件(土地の売主が同土地上の建物の建築も請け負うという条件)を付さないという義務違反及び融資協力義務違反を理由に売買契約を解除した上、原状回復義務の履行として、支払済代金の返還及び売買契約の違約金条項に基づく違約金の支払い並びに遅延損害金の支払いを求めた。そして、予備的には第一に、原告が重要事項である建築条件について事実と異なることを告げて被告を誤認させたとして法4条1項1号または法4条2項による売買契約の取消し、または錯誤無効を主張して支払済代金及び遅延損害金の支払いを求め、第二に、被告は売買契約を手付解除したとして、原告に対し、支払済売買代金から手付金を控除した額及び遅延損害金の支払いを求めた。

【判断の内容】
 原告は、被告との間で、建築条件なし及び更地渡しをすることに合意して本件売買契約を締結したにもかかわらず、建物建築についても原告に請け負わせ、ひいては本件土地上の建物の解体費用を事実上被告に負担させる意図を隠して仮請負契約書を作成させ、原告と建築請負契約を締結させようと強引な営業活動を行ったことが認められるものの、原告と建築請負契約を締結しなければ本件土地を引き渡さない、現実に具体的な解体費用を被告に請求したなどの客観的事実はなく、債務不履行とまでは認められない。また、融資協力義務についても原告に債務不履行があるとは認められない。本件売買契約において、建築条件が付されていないことや更地渡しであることは法4条4項2号にいう重要事項に該当するが、重要事項についての不実告知、不利益事実の不告知は認められない。他方、被告が原告に対し行った解除の意思表示は手付解除として有効であると認められるから、原告は、被告に対し、既に受領済の売買代金から手付金を控除した額及び遅延損害金を支払う義務があるとした。

◆ H25.02.19東京地裁判決

2013年11月24日 公開

国セン発表情報(2013年11月21日公表)

【事案の概要】
 消費者である原告が、被告の発行する社債を購入した際、社債を購入する消費者にとって重要な事項である社債管理者の設置の有無について、被告がこれを設置していないという原告にとって不利益な事実をあえて告げておらず、原告はこのことを告知されていれば本件社債を購入することはなかったとして、法4条2項に基づき本件契約の申込みの意思表示を取消し、被告に対して不当利得返還請求をした。また、被告は、原告による法4条2項に基づく取消しの主張を争っているにもかかわらず原告に約束した本件の社債の利息を支払わないため、原告は契約を解除するとの意思表示をした。

【判断の内容】
 被告が社債管理者を設置していないことを原告に告げなかったことと、原告の本件社債購入申込みの意思表示との間には因果関係が認められないから、法4条2項に基づく原告の主張には理由がない。被告は、原告が社債権者であることを認め、原告による法4条2項に基づく取消しの主張を争うにもかかわらず、約束した利息の支払をしないことは、被告の債務不履行と認められ、契約解除による損害賠償として原告に購入代金相当額を支払う義務があるとして、原告の請求を認容した。

◆ H25.02.27東京地裁判決

2013年11月24日 公開

平成23年(ワ)第6307号求償金請求事件
ウエストロー・ジャパン、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 川﨑聡子

【事案の概要】
 消費者である被告は、補助参加人から宝飾品の購入契約を締結し、その資金を訴外銀行から借り受けるにあたり、別業者と保証委託契約を締結した。その後別業者の権利義務を承継した原告が、保証委託契約に基づき求償権を取得したとして、被告に対し、求償金及び遅延損害金の支払いを求めた。被告は、本件契約は特定商取引法に定める訪問販売に該当し、申込みを撤回する旨の意思表示をしたと主張した。また、補助参加人は、本件商品の質及び価格に関する重要事項の不実告知(法4条1項1号)を行い、宝石は後まで残る財産であるとの断定的判断を提供し(法4条1項2号)、被告を退去困難に陥らせ(法4条3項)、これにより誤認または困惑を生じた結果本件契約の締結に至ったものであると主張した。また、商品の対価その他の取引条件について、不利益事実の不告知(法4条2項)を行ったと主張し本件契約を取消す旨の意思表示をした。そして、法5条及び4条の類推適用によって、本件保証委託契約自体も取消すと主張した。

【判断の内容】
 被告は、補助参加人の店舗を頻繁に訪れ本件商品を自ら希望して本件販売契約に至ったものであり、訪問販売には該当しないから特定商取引法による申込みの撤回はできない。単に宝飾品の買取業者や鑑別業者が査定した価格と販売価格との間に差異があることをもって、売主が、商品の質及び価格に関する重要事項につき不実の告知をしたということはできない。本件契約において、補助参加人の従業員らが述べた内容はセールストークの域を出ず、補助参加人が被告に対し、将来における本件商品の価額その他変動が不確実な事項について断定的判断を提供したということはできない。また、補助参加人が、被告が店舗から退去すべき旨の意思表示をしたにもかかわらず被告を退去させなかったと認めることはできない。本件契約の締結につき、不利益事実の不告知があったともいえない。以上により、法4条に基づく取消しをすることはできない。そして、法4条の取消し事由に該当するような違法な勧誘が行われたとはいえないから、本件保証委託契約が法5条及び4条の類推適用により取消し得るということもできないとした。

◆ H25.03.19東京地裁判決

2013年11月24日 公開

国セン発表情報(2013年11月21日公表)

【事案の概要】
 放送法の規定に基づき設置された法人である被控訴人と控訴人は放送受信契約を締結したが、その後、控訴人は受信料を支払わなくなった。このため、被控訴人は、控訴人に対し、本件契約に基づき未払い受信料及び約定遅延損害金の支払いを求めた。控訴人は、被控訴人の会計検査院法27条違反、放送法27条違反、放送法4条及び14条違反などを理由に、本件契約が民法90条に違反し無効であると主張した。また、法4条1項1号による本件契約の取消しを主張した。さらに、本件契約に基づく受信料債権は、民法173条による2年の短期消滅時効または民法169条の定期給付債権として5年の短期消滅時効により消滅するとして、消滅時効を援用する旨の意思表示をした。原審は、被控訴人の請求を全部認容した。

【判断の内容】
 控訴人が主張する事情はいずれも控訴人と被控訴人との間の本件契約の目的及び内容が公序良俗に反することを認めるに足りるものではなく、本件契約は民法90条に違反するとは認められない。本件契約は法人である被控訴人と個人である控訴人の間で締結された契約であるから消費者契約であり、法の適用を受ける。しかし、本件契約の締結時において、法4条1項1号の要件を充足する事実は認められない。本件受信料債権については、民法169条の適用があり、弁済期から5年間これを行使しないときは時効消滅する。しかし、本件受信料債権の消滅時効は、控訴人の配偶者による債務の承認により中断した。控訴人は、配偶者による債務の承認がなされた時点で、既に消滅時効が完成していた本件受信料債権について消滅時効を援用することができないとして控訴を棄却した。

◆ H25.03.26東京地裁判決

2013年11月24日 公開

国セン発表情報(2013年11月21日公表)

【事案の概要】
 消費者である原告は、肩こりや頭痛などの症状についてインターネットで通院先を探し、被告らとの間でカイロプラクティックの施術契約を締結し、施術を受けた。原告は、被告らが、原告の猫背、頭痛、肩こりはカイロプラクティックによる施術によって治るとは限らないにもかかわらず、それを故意に告げず、かえって、原告らの症状が治ると将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供したため、原告は、本件各施術によって症状が治るのが確実であると誤認したと主張し、法4条2項により本件各施術契約を取消す旨の意思表示をし、不当利得の返還請求をした。

【判断の内容】
 カイロプラクティックの施術における「猫背、頭痛、肩こりの症状を改善させる効果の有無」については、消費者契約の目的となる役務についての「質」に該当すると認められる。被告らが、本件各施術によって猫背、頭痛、肩こりの症状が改善していく旨の説明をしたことは認められるが、施術によって症状が改善しないと認めることはできないから、被告らが本件各施術によって症状が改善しないにもかかわらず改善する場合があると告げたと認めることはできない。また、被告らが、原告に対し症状が軽減、消失しないことを告知しなかったことが法4条2項に反するとはいえない。そして、被告らが「猫背、頭痛、肩こりが治る」などという断定的明言をした事実を認めることはできず、原告において、猫背、頭痛、肩こりが確実に治ると誤信したと認めることは困難である。被告らが、症状が改善しない場合があることを故意に告げなかったとも認められない。以上により、原告の本件各施術契約の申込みの意思表示につき、法4条2項に基づいて取消すことはできないとして、原告の請求を棄却した。

◆ H23.11.25広島高裁判決

2013年11月23日 公開

平成23年(ネ)第348号損害賠償請求控訴事件
金融法務事情1966号115頁、金融商事判例1399号32頁、銀行法務21 752号51頁、銀行法務21 756号80頁、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 小林正明、古賀輝郎、野上あや
第1審 H23.04.26広島地裁判決

【事案の概要】
 被控訴人からユーロ円建て債券を購入して損失を被った控訴人が、当該債権を購入する際、被控訴人の勧誘行為に適合性原則違反、説明義務違反、断定的判断の提供があったとして、被控訴人に対し使用者責任による損害賠償を求めるとともに、本件売買契約は公序良俗違反、錯誤、詐欺、法4条違反に該当し、無効または取消し原因があると主張した。

【判断の内容】
 原審を支持して、法4条の断定的判断の提供には当たらないとした。

◆ H23.12.01東京地裁判決

2013年11月23日 公開

平成23年(レ)第1117号損害賠償請求控訴事件
LLI/DB、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 本多知成、秋元健一、鈴木美智子

【事案の概要】
 原告は、自己が経営するホームセンターで商品を購入した顧客に対し、商品の運搬のための自動車を1時間無償で貸与するサービスを行っていた。原告のホームセンターで商品を購入した未成年の被告は、自宅に商品を運搬するため、原告の軽トラックを借りて運転していたところ、ガードレールに接触させる事故を起こし、車両を損傷させた。そこで原告は、被告に対し、本件車両のリース解約料相当額の損害賠償を請求した。被告は、未成年者取消および本件車両の使用貸借契約の締結に当たっては、原告は被告に対し事故による損傷の場合、保険を適用せずに借用者に負担を求めることがあるなど顧客にとって重大かつ不利益な事実を告知しなかったことから消費者契約法4条2項による取消しを主張した。原審は、被告の未
成年者取消を認めたため、原告が控訴。

【判断の内容】
 本件契約締結の際、原告が被告に対し提示した「レンタル車使用についてのお願い」には、過失による破損、故障の修理費は顧客の負担となる旨記載されているのであって、車両保険を適用しないことを前提としている。したがって、重要事項について消費者の不利益となる事実を故意に告げなかったものと認めることはできないとして、法4条2項による取消しを認めなかった。未成年者取消についても、法定代理人の包括的な同意があったものとして取消しは認められないとして、原判決を取消し、原告の請求を認容した。

◆ H24.02.03東京地裁判決

2013年11月23日 公開

国セン発表情報(2013年11月21日公表)

【事案の概要】
 建物の賃貸人である原告が、賃借人である被告Y1及び連帯保証人である被告Y2に対し、未払賃料等の支払いを求めた。被告らは、本件建物の他の居室について賃料の値下げがあったにもかかわらず、これを隠して被告Y1との間で本件賃貸借契約を締結しており、これは法4条2項に違反する行為であると主張した。

【判断の内容】
 原告が、被告Y1に対し、本件建物の居室の賃料が一律であると説明するなどして、被告Y1に利益となる旨を告げたことは認められないから、法4条2項の不利益事実の不告知による取消しは認められない。また、原告が、被告Y1に対し、他の居室の賃料額を説明しなかったからといって、それが被告Y1に対する不法行為であるとはいえない。本件賃貸借契約が無効あるいは取消し得るものとはいえない以上、被告Y1に他の居室の賃料額との差額分の不当利得返還請求権が生ずるともいえないとして、原告の請求を認容した。

◆ H24.02.16東京地裁判決

2013年11月23日 公開

国セン発表情報(2013年11月21日公表)

【事案の概要】
 原告が、被告との間で継続的に金銭の借入、弁済を行ったことにつき、その取引について利息制限法の引直計算を行った結果、最終取引日において過払金が生じているとして不当利得の返還を請求した。なお、原告と被告は、極度額借入契約に基づく債権債務がないことを相互に確認する旨の和解契約を締結したが、原告は本件和解契約について錯誤無効、法4条2項による取消しを主張した。

【判断の内容】
 本件和解契約に関し、錯誤無効は認められない。本件和解契約は被告から勧誘されて締結されたものではなく、契約締結の際、被告担当者としては本件取引について過払金を算定し、これを原告に告知すべき法律上の義務があるとはいえないから、結果的に多額の過払金が発生していたとしても、これを原告に告げなかったことが重要事項について原告の不利益となる事実を故意に告げなかった場合に該当するとはいえない。よって、本件和解契約の無効または取消しは認められないとした。原告の主張は、本件和解契約締結後に判明した、原告が被告に対して過払金返還請求権を有するという事実を前提とするものであるところ、その権利は、本件和解契約によって消滅したことになるとして、原告の請求を棄却した。

◆ H24.03.08東京地裁判決

2013年11月23日 公開

平成22年(ワ)第38882号投資金返還等請求事件
ウエストロー・ジャパン、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 三角比呂

【事案の概要】
 64歳の原告は、証券会社である被告の担当者からの勧誘を受けて、2つのユーロ建て債券を購入した。そのうちの1つについては償還期限が30年で5000万円というものであるが、被告の担当者は原告に対し償還は1年半後になされるなどの説明をし原告を誤信させ契約を申し込ませており、これは法4条1項に定める不実の告知または断定的判断の提供にあたる。また、もう1つの契約については、円高の状況を見極めるため少し待ってほしいと言ったところ、被告の従業員は当該商品は為替レートとは関係ないのですぐに購入するようにと勧めたため申し込んだのであり、こちらの勧誘も法4条1項に該当するとして、本件契約の取消し等を求めた。他に錯誤無効、適合性原則違反を主張した。

【判断の内容】
 本件契約に際し、原告と被告の担当者の間で、本件ユーロ債の内容、為替相場の見込み、早期償還条件等について意見交換がされたことはあっても、被告の担当者が一方的に不実の事実または断定的事実の告知をしたとまでは認めるに足りないとして原告の請求を棄却した。(他の主張も認めず)

◆ H24.03.29東京地裁判決

2013年11月23日 公開

平成22年(ワ)第34621号 、平成23年(ワ)第32376号預入金返還等請求事件(本訴)、損害賠償反訴請求事件(反訴)
ウエストロー・ジャパン、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 遠藤東路

【事案の概要】
 原告X1及びX2は、建設業者である被告との間で、自宅を新築する旨の請負契約を締結したが、上棟まで工事が進んだところで請負契約を合意解除したとして、原告らが被告に対し原状回復等を求めたのに対し、被告が解除は原告の自己都合であるとして、出来高の残代金等を反訴にて請求した。原告は、被告は本件契約書約款33条1項に定める請負工事を解除した際の未完成部分の所有権が原告に存するという重要事項に関する不利益な事実を告知していないため、法4条2項により当該特約を取消すと主張した。

【判断の内容】
 本件では、何の事実をもって消費者である原告の利益となる事実を告げたことになるのか不明であるうえ、原告の不利益となる事実が仮に約款33条1項に当たるとしても、被告がこれを故意に告げなかった事実は認められないとして、法4条2項による取消しを認めなかった。

◆ H24.08.08東京地裁判決

2013年11月23日 公開

平成23年(ワ)第39994号求償金請求事件
ウエストロー・ジャパン、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 小川嘉基

【事案の概要】
 被告Y3所有の自動車を被告Y1が運転中に赤信号に従わなかったことにより交通事故が発生し、訴外被害者らは、被告Y1に対して不法行為に基づき、被告Y3に対して自賠法3条に基づき、それぞれ損害賠償請求権を取得した。その賠償金を自動車保険契約に基づき被害者らに支払った保険会社である原告が、保険法25条1項により各損害賠償請求権を代位取得し、被告Y1に対し民法709条に基づき、被告Y3に対し自賠法3条に基づき、被告Y2に対し連帯保証契約に基づいて損害賠償等の請求をした。これに対し被告Y2が、本件連帯保証契約は合意しておらず、仮に合意しているとしても主債務者の責任の範囲につき不実の告知をしているため、本件契約を法4条1項1号により取消すとの主張をした。

【判断の内容】
 被告Y2が主債務の範囲を誤認したことは認められないとして、取消しを認めなかった。

◆ H25.01.15大阪地裁判決

2013年11月23日 公開

平成22年(ワ)第16686号不当利得返還等請求事件
証券取引被害判例セレクト44巻197頁、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 髙浪晶子

【事案の概要】
 会社代表者である原告が、被告証券会社からEB債を購入したことにつき、被告に対して、選択的に、債券の購入契約は錯誤無効であるとして不当利得返還請求及び不法行為に基づく損害賠償を請求し、また、被告担当者の勧誘が消費者契約法4条1項1号、2号及び4条2項に該当するとして、不当利得返還請求及び不法行為に基づく損害賠償を請求し、さらに、被告担当者の勧誘が適合性原則違反及び説明義務違反に該当するとして、不法行為に基づく損害賠償を請求した。

【判断の内容】
 原告が会社の代表取締役であり、会社において社債発行の経験があったこと、株式の現物取引等の経験があること、金融資産を有していることなどを理由に適合性原則違反については否定し、錯誤無効、消費者契約法の断定的判断の提供、不実告知、不利益事実の不告知についても否定した。説明義務違反につき、被告担当者の勧誘を全体としてみれば、本件債券の実際のリスクに比してリスクが小さいかのような印象を与えるものであり、流動性リスクと相まった信用リスクの存在についての注意喚起としては不十分であったとして、これを認めた。(過失相殺8割)

◆ H25.01.15東京地裁判決

2013年11月23日 公開

国セン発表情報(2013年11月21日公表)

【事案の概要】
 証券会社である被告から転換社債型新株予約権付社債を購入した原告が、社債の購入契約が錯誤または公序良俗違反により無効であると主張して不当利得の返還を請求し、また、被告の従業員に虚偽説明、断定的判断の提供または説明義務違反があったと主張して債務不履行または不法行為に基づく損害賠償を請求した。

【判断の内容】
 錯誤無効、公序良俗違反、被告の従業員による虚偽説明、説明義務違反について否定した。また、社債の売却についてたずねた原告に対して断定的判断の提供を行ったとの主張についても否定し、原告の請求を棄却した。

◆ H23.04.26広島地裁判決

2013年11月22日 公開

平成20年(ワ)第2320号損害賠償請求事件
金融商事判例1399号41頁、金融法務事情1966号124頁、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 金村敏彦、岩井一真、増子由一
控訴審 H23.11.25広島高裁判決

【事案の概要】
 被告からユーロ円建て債券を購入して損失を被った原告が,被告に対し,①同債券購入時に被告従業員の勧誘行為には,適合性違反・説明義務違反・断定的判断の提供など違法事由があったとして,使用者責任に基く損害賠償等を求め,②前記債券は欠陥商品であり,そのリスクの理解不足に乗じて行われた売買で,同売買契約は公序良俗違反・錯誤・詐欺・消費者契約法4条違反(不実告知、断定的判断の提供、不利益事実の不告知)による無効・取消原因があるとして,不当利得返還請求権に基き,①と同額の支払を求めた事案。

【判断の内容】
 被告の従業員は本件債券につき元本が保証されないことを説明していること等から虚偽の説明があったとは認められない。また、重要事項の不告知があったともいえない。また、被告の従業員は原告に対し元本毀損の可能性があることも説明していることから、不利益事実の不告知があったということもできないとして、法4条による取消しはできないとした。

◆ H23.07.12大阪高裁判決

2013年11月22日 公開

国セン発表情報(2013年11月21日公表)

【事案の概要】
 原告が被告Y1会社が経営するクリニックにおいて、被告Y2による脂肪吸引手術を受けたところ、両大腿部の内側に皮膚潰瘍の障害が残り、これは被告Y2に手技上の注意義務違反および説明義務違反があったことが原因であるとして、被告Y1に対し債務不履行、使用者責任に基づく損害賠償、法4条1項2号または2項に基づく取消しを、被告Y2に対し、不法行為に基づく損害賠償、法4条1項2号または2項に基づく取消し等を求めた。
 原審では、Y2には手技上の注意義務違反があること、Y1の使用者責任を一部認めたが、消契法については、Y1が勧誘したものではなくXが脂肪吸引のために赴いていること、Y2らが断定的判断の提供をしたことを認めるに足る証拠はないとして取消しを認めなかった。Y2が控訴。

【判断の内容】
 控訴人に手技上の過失があることは認めたが説明義務違反はないとし、控訴人の請求を一部認めた。なお、法4条1項2号または2項の判断については原審の判断を支持した。

◆ H23.11.09東京地裁判決

2013年11月22日 公開

平成22年(ワ)第17681号売買代金返還等請求事件
金融法務事情1961号117頁、ウエストロー・ジャパン、銀行法務21 754号60頁、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官  松並重雄、進藤光慶、國原徳太郎

【事案の概要】
 原告は、被告の従業員らの勧誘を受けて、投資信託受益権を購入する契約を締結し、被告に代金等5億1575万円を支払ったところ、原告が被告の従業員の勧誘は適合性に反するとして債務不履行、不法行為に基づく損害賠償請求のほか、本件投資信託には10年間の解約・換金ができないという制限があるにもかかわらずその旨を説明しなかったことは、法4条2項の不利益事実の不告知に当たるとして契約の取消し等を求めた。

【判断の内容】
 本件投資信託には、受益者が信託期間である10年間中途解約を請求することができないという解約制限が付されているものと認められ、これは法4条4項の重要事項に当たると認められる。しかし、被告の従業員は原告に対しこの事実を説明したと認められるため、消費者の不利益になる事実を故意に告げなかったものとは認められないとして、法4条2項による取消しを認めなかった。

◆ H22.05.28東京地裁判決

2013年9月11日 公開

平成21年(レ)第324号損害賠償請求控訴事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 佐久間邦夫、石原直弥、牛尾可南

【事案の概要】
 被控訴人が控訴人との間でパチンコの攻略情報の売買契約を締結したが、同契約は、断定的判断の提供によるものであり、この攻略情報を用いれば確実に利益を得ることができると誤認して締結したものであり、消費者契約法4条1項2号に基づいて取り消した、錯誤による無効である、上記のような勧誘行為は詐欺行為であるから取り消したなどと主張して不当利得の返還を請求したところ、原審が請求を認容したことから、控訴人が控訴した事案。契約日から半年以上経過した後に取消の意思表示をしていたことから、消滅時効の点も争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から、業者の控訴を棄却した。
① 本件契約は,控訴人が被控訴人に対し,パチンコの打ち方の手順等の情報を提供するものであり,これによって,被控訴人にパチンコで経済的利益を得させることを目的とした契約であると認められる。
② 一般的に,パチンコは,各台の釘の配置や角度,遊技者の玉の打ち方や遊技時間,台に組み込まれて電磁的に管理されている回転式の絵柄の組み合わせなどの複合的な要因により,出玉の数が様々に変動する遊技機であり,遊技者がどのくらいの出玉を獲得するかは,前記のような複合的な要因に左右され,偶然性が高いから、控訴人が本件契約において提供すると約した情報は,将来における変動が不確実な事項に関するものにあたる。
③ 控訴人は,自社のホームページにおいて、控訴人の提供する情報を使えば,利益を上げることができ,かつ,その情報自体が信用性の高いものである旨表示していた。
 また,攻略法を利用した場合に得られる利益について、クレジットカードの一括払いを利用しても決済日までにはその額に相当する利益を上げることが可能である旨述べるなど、控訴人が提供する攻略情報の手順に従った打ち方をすれば,短期間で,かつ,別の機種の攻略情報も購入可能な程度の利益を得ることができるという趣旨の発言をしていること、効果が上がらない場合には,現地調査に赴き,控訴人の従業員が確認作業を行うという記載のある保証規約書を交付するなどしていることからは、控訴人は,控訴人が提供する攻略情報を使えば,将来の出玉によって利益を得ることが確実であるとの言動を示したものということができ,控訴人による勧誘は,被控訴人に対して断定的判断を提供したものといえる。
④ 被控訴人は,(契約日から約1年後の)平成20年7月9日に司法書士との会話の中でパチンコの攻略情報が存在しないことを知ったのであり,それ以前の段階で,被控訴人が,消費者契約法上の取消事由が存することを認識していたと認めるに足りる的確な証拠はなく,控訴人の主張は採用できない。

◆ H22.08.30東京地裁判決

2013年9月8日 公開

平成21年(ワ)第40358号損害賠償請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 湯川克彦

【事案の概要】
 被告会社からパチンコの攻略情報を購入した原告が、被告会社が一連の勧誘行為において、断定的判断を提供し、虚偽の情報を提示したなどと主張して、被告会社らに対して、不法行為又は不当利得に基づき、損害の賠償又は不当利得の返還として、原告の被った財産的損害、精神的損害及び弁護士費用の支払を求めた事案。

【判断の内容】
 被告会社は実効性の認められないシステムに基づく本件攻略情報を購入するよう勧誘し、本件攻略情報が有効である旨原告を誤信させて原告から金員の交付を受けたもので、本件契約について消費者契約法上の取消事由となるだけでなく詐欺行為として不法行為に該当するとした。

◆ H22.10.12さいたま地裁判決

2013年7月29日 公開

平成21年(ワ)第3720号損害賠償等請求事件
証券取引被害判例セレクト39巻238頁、ウエストロー・ジャパン
裁判官 八木貴美子

【事案の概要】
 実際の通貨価値を説明せず将来値上がりする旨告げてイラクディナールの購入を勧誘され金員を支払ったものによる、不法行為に基づく損害賠償請求、及び断定的判断の提供、不利益事実の不告知による取消に基づく不当利得返還請求の事案。

【判断の内容】
 近いうちに10倍以上値上がりすると説明して勧誘したことについて断定的判断の提供を認め、また、値下がりする可能性があることや実際の通貨価値が著しく低いことを故意に告げなかったことについて不利益事実の不告知を認め、契約の取消を認め不当利得返還請求を認めた(弁護士費用も民法704条後段の損害に当たるとした)。

◆ H22.11.09東京地裁判決

2013年7月28日 公開

平成21年(ワ)第4449号損害賠償等請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 小林昭彦、篠田賢治、北村久美

【事案の概要】
 マンションの管理組合である原告が、管理組合発足前に共用部分につき締結された電気受給契約が過大であったとして、マンション販売会社や従前の管理会社らに適正な契約電力等の説明義務違反や契約上の地位譲渡に関する契約義務違反を理由とする損害賠償請求をするとともに、電力会社に契約の取消し等による電気料金の不当利得返還を求めた事案。
 管理組合がマンションの区分所有者である各組合員個人の利益を守るために存在する団体であり,原告の理事は区分所有者個人の中から選任されているから,消費者契約法上の消費者に当たる等として、消費者契約法の適用又は類推適用ができるか、不利益事実の不告知による取消、不当条項による無効等が争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から本件マンション管理組合が「消費者」に当たらないとして、消費者契約法の適用を否定した。
① 消費者契約法は,「消費者契約」とは,「消費者」と「事業者」との間で締結される契約をいうと定義し(同法2条3項),その「消費者」とは,個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいうと定義している(同条1項)から,法人その他の団体は,小規模なものであっても,消費者契約法における「消費者」には当たらないことは明らか。
② マンションの区分所有者である各組合員個人の利益を守るために存在する団体であり,原告の理事は区分所有者個人の中から選任されているから,消費者契約法の適用又は類推適用が認められるべきであると主張するが,消費者契約法の明確な定義に反する独自の見解をいうものであり,到底採用することはできない。

◆ H22.10.28東京地裁判決

2013年7月28日 公開

平成21年(ワ)第32488号貸金請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 本間健裕

【事案の概要】
 貸金業者がある企業への貸付金につき連帯保証したその企業の代表取締役個人に対し保証債務の履行を求めるとともに質権の存在確認を求めた事案。不実告知・不利益事実の不告知による取消の前提として代表者個人が消費者に当たるかが争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から、本件代表者は「消費者」に当たらないとした。
① 消費者契約法は,事業者と消費者間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み消費者の利益の擁護を図ることが目的であり,事業者と消費者の区別は,取引における情報,交渉力の格差の観点から判断されるもの。
② 被告は,複数の企業の経営者であるから,企業経営のノウハウは当然に有していると推認され,資金調達のために最低限必要な法律的常識,商慣習等については,これを有しているものと認めるのが相当。
③ 金主が直接の融資先(貸主)に対する貸付けについて,融資先(貸主)から最終的に融資を受ける借主に対し,連帯保証人となることや担保権の設定を求めることは,一般にしばしば行われることであるから,企業の経営者であれば,連帯保証人となることないし担保権の設定について,その意味や当該契約から生ずる不利益を理解することは容易。
④ 本件保証契約は,理解しやすい契約の類型であり,被告と原告との間に,取引における情報,交渉力の格差において,消費者契約法が予定しているような差異があるとは認められず,被告が本件保証契約等において,消費者契約法の消費者と認めることはできない。

◆ H22.12.15東京地裁判決

2013年7月6日 公開

平成20年(ワ)第37803号損害賠償請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 前田志織

【事案の概要】
 被告の未公開株式の購入の勧誘を受けて280万円を送金した原告が、上場し確実に値上がりがすると説明されたことが断定的判断の提供にあたるとして契約の取消による代金の返還請求をした事案。

【判断の内容】
 上場すること及び上場時期を明言し断定的判断を提供して本件未公開株式の取得を決意させたものと認められるとして、4条1項2号により契約の取消を認め、返還請求を認めた。

◆ H23.04.20東京地裁判決

2013年6月25日 公開

平成22年(レ)第2000号不当利得返還請求控訴事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 松並重雄、伊丹恭、國原徳太郎

【事案の概要】
 馬券自動購入資産運用ソフトウェアの購入契約の取消に基づく不当利得等返還請求。不利益事実の不告知が争われた。

【判断の内容】
 以下のとおり不利益事実の不告知(消費者契約法4条2項、特商法9条の3第1項2号)による取消を認め、不当利得返還請求を認めた。
① 「プランを設定すれば,本件商品が自動的に馬券を購入し,1か月で3,4割の利益が上がる。」「ワイドは,選択した2頭の馬が順不同で3着以内に入ると当たりとなる馬券であり,当たる確率が高く,ローリスク・ローリターンなので,資本金が少ない人が利用するのに向いている。」「(本件商品を用いた資産運用による)利益を保証する。」旨を述べたことは、「重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ」たものと認められる。
② 本件商品は,被控訴人が,運用金額である「資本金」を設定し,これをパソコンが馬券に自動的に投資した結果,「投資回収額」を獲得するものであると認められ,この事実に照らせば,本件商品を用いた資産運用において「投資回収額」が「資本金」を下回ることにより,被控訴人に損失が生ずる恐れがあるものと認められるから,「投資回収額」が「資本金」を下回る恐れがあることは,被控訴人の「不利益となる事実」に当たる。
③ 本件告知は,消費者をして,本件商品が馬券の購入を機械的にナビゲートするものではなく,過去のデータを分析した上で,損失を回避して利益が出るようにナビゲートするものである旨を認識させるものと認められるから,本件不利益事実は,本件告知により「不利益となる事実が存在しないと消費者が通常考えるべきもの」に当たるものと認めるのが相当。


◆ H23.03.23東京地裁判決

2013年6月25日 公開

平成21年(ワ)第17341号不当利得返還請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 端二三彦

【事案の概要】
 沈没船引き上げに関する事業を行うと称して匿名組合契約の勧誘を受け100万円を出資した者による、不実告知による取消等に基づく不当利得返還請求。

【判断の内容】
 パンフレットの記載や勧誘行為から、業者に不実告知があったとして、4条1項1号による取消を認め全額の返還請求を認めた。

◆ H23.03.17東京地裁判決

2013年6月25日 公開

平成21年(ワ)第28066号債務不存在確認等請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 矢作泰幸

【事案の概要】
 貸金業者から1400万円を借りた者が、期限の利益を喪失したとして一括払い請求を受けたことから、契約書の約定返済方法とは異なる返済(30年分割)の説明を受けていたとして、不実告知(4条1項1号)による取消を理由として、債務不存在確認、根抵当権抹消請求をした事案。

【判断の内容】
 継続的金銭消費貸借媒介契約書の記載や返済状況等から、不実告知があったものと認定し、金銭消費貸借契約の取消を認め、債務不存在確認、根抵当権抹消請求を認めた。

◆ H23.06.30東京地裁判決

2013年6月24日 公開

平成22年(ワ)第14216号、第39951号不当利得返還等請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 堂薗幹一郎

【事案の概要】
 パチンコ攻略情報等を購入する対価として、被告会社に金員を支払った原告が、被告会社の従業員から勧誘を受けた際に、不実の告知や断定的判断の提供があったと主張して、被告会社やその代表者、従業員らに対し、不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還を求めた事案。

【判断の内容】
 不実告知、断定的判断の提供にあたる他、詐欺にもあたり、不法行為となるとして、損害賠償を命じた。
① 被告会社の行為(自社の来訪ブースにあるパチンコ機を利用し,担当者が指示する方法で原告にパチンコをさせ,意図的に大当たりを作出した)は,原告に対し,あたかも,同様の方法を用いればあらゆるパチンコ店で同様の状態を作出することができるかのように誤信させる目的でなされたもの。また、被告会社の担当者は,原告に対し,同社の攻略法を用いれば必ず利益が上がるかのような言辞を用い,執拗に勧誘を繰り返していた。
② また,前記認定事実によれば,被告会社は,原告から,被告会社の提供するパチンコ攻略法を用いてパチンコをしても利益が上がらない旨の苦情を受けると,担当者を次々と交代させて,これを交わし,新たな担当者に同様の勧誘をさせることによって,更なる利益を上げていたものと認められる。
③ そうすると,被告会社の担当者が行っていた前記一連の行為は,いずれも,消費者契約法4条1項1号及び2号所定の不実の告知及び断定的判断の提供に当たるだけでなく,民法96条1項所定の詐欺にも当たるものというべきであって,原告に対する不法行為を構成するものと認められる。

◆ H23.06.22さいたま地裁判決

2013年6月24日 公開

平成22年(レ)第68号報酬金請求控訴事件
最高裁HP、ウエストロー・ジャパン
裁判官 原啓一郎、古河謙一、猪坂剛

【事案の概要】
 信用情報収集調査等を業務とする業者が、調査委任契約の委任者である顧客に対し、顧客による解除の意思表示までに本件契約に基づいて調査を実施したとして、その報酬の支払を求めた事案。一審が請求を全部認容したことから、顧客が控訴し、退去妨害により契約を締結させられたと主張し、退去妨害(4条3項2号)による取消が争われた。

【判断の内容】
 報酬が高額であることに驚き,「お金がないから帰る」と言って,恐くなって立ち上がったところ、「このままにしておくと,どこへ越してもつきまといますよ」「今まで説明させて帰る気か」などと言われ、忘れられないほど恐かったので,契約をせずには帰れないと思ったこと、夜9時30分ころまで2時間半ないし3時間拘束されたこと等から、退去妨害によって契約を締結したものと認め、取消を認め業者の請求を棄却した。

◆ H23.05.27札幌高裁判決

2013年6月24日 公開

平成23年(ネ)第92号損害賠償請求控訴事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 小林正、片岡武、湯川克彦

【事案の概要】
 業者の未公開株を購入させられた者が、業者及び代表取締役に対し不法行為に基づく損害賠償請求等をした事案。

【判断の内容】
 以下のように判断し、断定的判断の提供にあたるのみならず不法行為となるとして、損害賠償請求を認めた。
① 顧客に対し,業務の一環として,一般公募価格は1株100円となっているが1株50円で株主のうちの希望者に割り当てる,申込み先着順に受付をするので18万株になったら締め切る,第三者割当で1株50円の優待は今回で終了するなどと言葉巧みに未公開株である同社の株式を購入するよう勧誘し,顧客はこの勧誘に応じて,本件購入1ないし4の4回にわたり,業者の株式合計20万株を1株当たり50円,代金合計1000万円で購入しているところ,代表取締役らはこれらの勧誘の際,業者が近々,遅くとも平成21年秋ころまでには株式を上場し,上場すれば株価は500円程度になる旨の説明をし,この説明を受けた顧客は,説明どおりに株式が上場され,利益を得られると考えて本件購入に至ったことが認められる。しかるに,本件購入当時,業者において株式の上場に向けて具体的に作業を進めていた様子は窺われず,現在でも株式上場の見通しは立たない状態である上,株式の価値としては50円もないのであるから、上記説明は断定的判断の提供に当たる。
② そして、このような勧誘は社会通念上許容しうる範疇を超えており、不法行為を構成する違法なものというべき。

◆ H24.01.31東京地裁判決

2013年6月21日 公開

平成22年(ワ)第34752号慰謝料等請求事件
ウエストロー・ジャパン、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 上田哲

【事案の概要】
 旅行業者である被告との間で旅行契約を締結して被告主催のツアーに参加した原告らが、クルーズ船において割り当てられた客室が身体障害者仕様の海の見えない客室であったことが被告の債務不履行又は消費者契約法4条4項1号所定の「重要事項」に係る説明義務違反の不法行為を構成すると主張して、被告に対し、損害賠償を求めた事案。

【判断の内容】
 以下のように判断し、請求を棄却した。
① 「重要事項」(4条4項1号)とは,当該消費者契約の目的となるものの質,用途その他の内容等であって消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきものをいうところ,この「消費者の・・・判断に通常影響を及ぼすべきもの」とは,契約締結の時点の社会通念に照らし,当該消費者契約を締結しようとする一般平均的な消費者が当該消費者契約を締結するか否かについて,その判断を左右すると客観的に考えられるような,当該消費者契約についての基本的事項,換言すれば,通常予見される契約の目的に照らし,一般平均的な消費者が当該消費者契約の締結について合理的な意思形成を行う上で通常認識することが必要とされる重要なものをいうと解される。
② 本件の事情からは、「バルコニー付スタンダード」中に本件船室が含まれていることが,一般平均的な消費者が旅行契約の締結について合理的な意思形成を行う上で通常認識することが必要とされる重要なものであるとはいえないから,「重要事項」に当たるとはいえないし,その他,信義則等の一般原則に照らしても,本件契約の締結に際し,被告が原告ら主張のような説明義務を負っていたとは認められない。

◆ H24.03.27東京地裁判決

2013年6月19日 公開

平成22年(ワ)第38195号不当利得返還請求事件
ウエストロー・ジャパン、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 杉本宏之

【事案の概要】
 原告が被告から,不動産投資と勧められて2件の不動産を購入したが,その後,本件不動産の価格が下落していることが判明したこと,被告から重要事項について不実の事実を告げられ,かつ,断定的判断の提供をされたなどを主張し,4条1項2項等による本件不動産の売買契約の取消しを求めた事案。

【判断の内容】
 本件契約締結の際,重要事項である物件の客観的な市場価格を提示していないこと,家賃収入が30年以上に亘り一定であるなど非現実的なシュミレーションを提示し,原告に月々の返済が小遣い程度で賄えると誤信させたこと及びその他原告が物件についての不動産投資をするに当たっての不利益な事情を十分説明していなかったことを認定し、不利益事実の不告知により契約を締結したものとして、4条2項による取消を認めた。

◆ H24.05.15東京地裁判決

2013年6月18日 公開

平成23年(ワ)第616号損害賠償請求事件
ウエストロー・ジャパン、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 始関正光

【事案の概要】
 土地売買契約の解除にともなう違約金請求。契約の締結に際し原告に不実告知があったとして、売買契約の取消が争われた。

【判断の内容】
 見積書に記載された試算は、本来の意味における評価額の算定をしたものではなく、原告の見積額として提案する額が被告にとって本件各土地を保有し続けて地代を収受するよりもはるかに有利であると見せかけるために記載されたものと認定し、本件各土地の対価という重要事項について事実と異なることを告げ、被告をして、本件各土地を原告に1450万円で売却する方が、これらを保有し続けて地代を収受するよりも有利であると誤信させたものであるとして、4条1項1号による取消を認め、違約金請求を棄却した。

◆ H24.10.16東京地裁判決

2013年6月5日 公開

平成23年(ワ)第15640号売掛金請求事件
ウェストロー・ジャパン
裁判官 杉山順一

【事案の概要】
 ホストクラブ経営者から顧客への飲食代金請求。原告が飲食等の提供にあたり独身である旨の虚偽の事実を告知し被告との間で性的関係を持ち、これにより被告が来店し顧客となることが原告との交際に有意義であることを誤信させたことが不実告知にあたるとして契約を取り消すなどと争われた。

【判断の内容】
 ホストクラブは女性の遊戯場的な飲食店であり,その営業内容からして,ホストと客が真剣に交際することや結婚するに至ることが予定されているものでないことは明らかであるから,本件飲食等提供契約において,ホストである被告が独身か否かはそもそも重要事項に当たると認めることはできないとして、不実告知による取消を否定した。

◆ H24.11.27高松高裁判決

2013年5月9日 公開

平成24年(ネ)第339号解約金返還請求控訴事件
判例時報2176号33頁
裁判官 小野洋一、池町知佐子、大嶺崇
第1審 H24.5.30高松地裁判決

【事案の概要】
 携帯電話会社(エヌ・ティ・ティ・ドコモ)との携帯電話利用契約締結について、割引サービスにおける解約金の説明が不利益事実の不告知にあたるとして契約の取消、解約金の返還請求をした事案。請求を棄却した第1審に対する控訴審。

【判断の内容】
4条2項による取消を否定し、控訴棄却。
① 契約の際に交付されたガイドブックの記載内容や記載状況から、契約の際の説明はこれら文書に記載されたところに従って行われたとの推認が可能。
② これら記載からは、解約金の内容を理解しうるものであり、その記載が、本件契約における解約金が自動更新後には生じないなどと故意に誤認させ、故意に不利益事実を告知しないものであるとまでいうことはできない。

◆ H22.10.07三島簡裁判決

2012年12月1日 公開

消費者法ニュース88号225頁、国セン発表情報(2012年11月1日公表)

【事案の概要】
 被告Y1は、連鎖販売取引において波動エネルギーを記憶させた水(本件商品)を販売していたところ、本件商品が近眼、花粉症、アトピー等に効果があるとの説明を受けた原告は、本件商品を割安に購入する目的で連鎖販売取引の仕組みに参加し本件商品を購入した(本件売買契約)。しかし、本件商品に当該効能はなかったとして、原告が被告Y1に対し、被告Y1の勧誘行為は不実の告知に該当するとして、法4条1項1号他による本件売買契約の取消および不当利得の返還を請求した。また、原告は被告Y2と本件商品購入につきクレジット契約を締結したところ、被告Y2は法5条の「事業者」に該当するとして、クレジット契約についても同法5条・4条1項1号による取消を請求した。

【判断の内容】
 連鎖販売取引における売買契約の一方当事者が法2条1項の「消費者」に該当するかにつき、連鎖販売取引であっても自らの消費のためだけに商品の購入契約を締結する場合は同条項の「消費者」に該当するとして、原告の「消費者」該当性を認めた。その上で、被告Y1に対する請求については、本件売買契約の勧誘に当たり、被告Y1が本件商品を飲むことで病気が治る等の説明をしたことは法4条1項1号の不実の告知に該当するとして、同条項による取消を認めた。なお、被告Y2に対する請求については、被告Y1が同法5条にいう「媒介の委託を受けた第三者」には当たらないとして、クレジット契約の取消を認めなかった。

◆ H23.05.19名古屋地裁判決

2012年12月1日 公開

平成22年(フ)第3876号損害賠償請求事件
消費者法ニュース89号138頁、国セン発表情報(2012年11月1日公表)
裁判官 渡部美佳

【事案の概要】
 原告は、被告との間で、パチンコ・パチスロの攻略情報の提供契約(本件契約)を締結し、約6年半の間に合計約550万円を支払った。契約締結の際、被告の従業員は、攻略情報に従えば必ず利益が上がるとして勧誘をした。その後、原告が、被告から提供された情報を元に遊技をしても利益が上がらないというと、被告の従業員は、より高額な契約を締結すれば確実に利益を得られる旨述べてその契約を勧め、その後も、利益が得られないと訴える原告に対し、従業員を交替させながら新たな契約の締結を言葉巧みに勧め、その代金を支払わせた(本件各契約)。原告は、被告の従業員らの勧誘行為は断定的判断の提供であるとして法4条1項2号により契約の取消および不当利得の返還等を請求した。

【判断の内容】
 原告が被告から攻略法の情報提供を受けていたパチンコ・パチスロ機種の攻略法は存在しないこと、パチンコ・パチスロの業界団体で構成されているセキュリティー対策委員会、全日本遊技事業協同組合などからパチンコ・パチスロの攻略法があるとの詐欺的行為について警鐘を鳴らされていること、本件契約の利用規約においても確実性・正確性について保証しない旨の記載があることから、パチンコ・パチスロにおいて確実に利益を得られる攻略法は存在しないことは明らかであり、利益を得られるかどうかは、不確実な事項である。被告の従業員は、原告に対し確実に利益が得られるとの断定的判断を提供し、原告は、同断定的判断の内容が確実であると誤認して本件各契約を申し込んでいるとして、法4条1項2号に基づく本件各契約の取消を認めた。

◆ H23.08.10東京地裁判決

2012年12月1日 公開

金融法務事情1950号115頁、国セン発表情報(2012年11月1日公表)

【事案の概要】
 生命保険会社Y1との間で保険(本件保険契約)を契約した原告は、媒介代理店Y2の従業員が、本件保険契約の勧誘の際、解約時の返戻金につき不実の説明を行い、また、解約による返戻金額が運用実績により振込保険料を下回ることになるリスクがあるという重要事項を告げず、さらに本件保険契約には契約初期費用はかからないなどと説明したことから、原告がその旨誤信し本件保険契
約を締結するに至ったとして、被告Y1に対し錯誤無効、法4条1項および2項に基づく保険契約の取消しによる不当利得返還請求をし、また、適合性原則違反、説明義務違反があったとして、被告Y1および被告Y2に対し、不法行為あるいは債務不履行に基づく損害賠償を請求した。

【判断の内容】
 本件保険契約締結時の被告Y2の説明については、解約時の返戻金の額に関する不実の説明がなされたこと、解約返戻金額が一時払い保険料を下回るリスクがあるという不利益事実の不告知があったことのいずれも認められないとして、原告の法4条1項1号または2号による取消しの主張を退けた。
 また、被告Y2の従業員は、本件保険契約につきパンフレットを読み上げて原告に説明しており、中途解約が最も大きいリスクであるという本件保険契約の特長に関し特に重点的に説明をしたと認められることから説明義務違反はないとし、適合性原則違反についても、本件保険契約の特徴、原告の経歴等を鑑みれば、被告Y2が本件保険契約を原告に紹介したことが不適当な勧誘であるとまでは認めることはできないとした。

◆ H23.10.25最高裁判決

2012年12月1日 公開

平成21年(受)第1096号債務不存在確認等請求及び当事者参加事件
最高裁HP、金融商事判例1378号12頁、裁判所時報1542号1頁、判例タイムズ1360号88頁、判例時報2133号9頁、金融商事判例1384号29頁、金融法務事情1945号90頁、消費者法ニュース91号138頁、国セン発表情報(2012年11月1日公表)
第2審 H21.02.19名古屋高裁判決

【事案の概要】
 宝飾品の販売業者との間で売買契約(本件売買契約)を締結し、あっせん業者との間で購入代金にかかる立替払契約(本件立替払契約)を締結した被上告人は、本件あっせん業者から事業の譲渡を受けた上告人に対し、本件売買契約は公序良俗に反し無効であるから本件立替払契約も無効であること、または法5条1項が準用する同法4条1項1号もしくは同条3項2号により本件立替払契約の申込みの意思表示を取消したことを主張して、不当利得の返還等を請求をした。原審は、売買契約が無効になれば立替払契約は目的を失って失効するとして被上告人の請求を認めたため、上告人がこれを不服として上告した。

【判断の内容】
 個品割賦購入あっせんにおいて、購入者と販売業者の売買契約が無効となった場合でも、購入者とあっせん業者との立替払契約については、販売業者とあっせん業者との関係、販売業者の立替払契約締結手続きへの関与の内容および程度、販売業者の公序良俗に反する行為についてのあっせん業者の認識の有無および程度に照らし、売買契約と一体的に立替払契約についても効力を否定することを信義則上相当とする特段の事情がない限り、立替払契約が無効となる余地はないとし、本件ではそのような特段の事情はないとして、原審の被告敗訴部分を破棄した。法による取消権については、7条1項により時効消滅しているとした。

◆ H23.11.08福岡地裁判決

2012年12月1日 公開

金融法務事情1951号137頁、国セン発表情報(2012年11月1日公表)

【事案の概要】
 被告銀行との間で、変額個人年金、仕組債、投資信託、外貨預金に関する契約(本件契約)を締結した原告は、被告銀行の行員が原告の理解できない金融商品への投資を勧誘したことにより被害を被ったとして、本件契約の錯誤無効を主張し、また、本件仕組債の勧誘に関しては重要事項についての不利益事実の不告知および不実告知があったとして法4条に基づき契約を取消したと主張して不当利得の返還等を請求した。

【判断の内容】
 錯誤無効の主張については、被告銀行の行員が原告に渡した書類等において、満期や早期償還の可能性があることが記載されていることから、原告が錯誤に陥っているとはいえないとした。法4条に基づく取消しについては、本件各仕組債に関する満期、利率、元本割れの可能性等、リスクに関する具体的な説明が原告に対してなされていること、また、販売資料および目論見書に満期が明確に記されており原告が満期を誤認することはないと考えられ、行員の説明が虚偽であったことを直ちに認めることはできないと判断し、本件仕組債について原告に対する不利益事実の不告知(法4条2項)、不実告知(同条1項1号)に該当する事実はないとして、法4条に基づく取消しを認めなかった。

◆ H23.12.12東京地裁判決

2012年12月1日 公開

国セン発表情報(2012年11月1日公表)

【事案の概要】
 脱退被告と金銭消費貸借契約(本件契約)を締結した原告が、本件契約にかかる事務手数料条項が法10条により無効であること、本件契約締結時に事務手数料条項についてほとんど説明を行わなかったことは契約の重要事項について消費者の不利益となる事実の不告知に当たるため法4条2項により取消権を有すること、契約時、脱退被告の担当者6名から契約締結を迫られ、一時退出して再検討する機会を与えられないまま締結に至ったものであるため法4条3項2号により取消権を有すること等を主張して、貸付金の債権譲渡を受けた引受参加人に対し債務不存在の確認を求めた。

【判断の内容】
 事務手数料については、民法その他法律の任意規定の適用による場合に比べて消費者の義務を加重するというに足りる事実の主張はないとして、10条の該当性を否定した。また、契約締結時の事務手数料に関する説明については、契約証書にも明記され原告がこれを融資実行より前に受領していること、融資実行時に原告が事務手数料控除について疑問を持った形跡がないこと等を認定し、本件契約締結時に不利益事実の不告知があったとは認められないとして、法4条2項の該当性を否定した。さらに、契約締結時、原告が退去の意思を示したにもかかわらず、脱退被告担当者が退去させなかった事実は認められないとして、法4条3項2号の該当性も否定し、原告の請求を棄却した。

◆ H23.12.19大阪地裁判決

2012年12月1日 公開

判例時報2147号73頁、金融商事判例1385号26頁、証券取引被害判例セレクト41巻80頁、国セン発表情報(2012年11月1日公表)

【事案の概要】
 原告は、被告の担当者から仕組債購入に関する勧誘を受け、これを購入した。その後、仕組債の発行体が米国法に基づく会社社更正手続適用を申請した。原告は、被告に対し、本件仕組債の購入契約は錯誤無効である旨、また、被告の担当者の勧誘が法第4条1項2号、同条2項に該当する旨、さらに、被告の担当者の勧誘が適合性原則違反、説明義務違反、断定的判断の提供に該当し、違法性を有し不法行為を構成する旨を主張して、民法715条ないし金融商品販売法5条に基づく損害賠償請求及び不当利得返還請求等をした。

【判断の内容】
 被告の担当者が断定的判断を提供したとまで評価することはできないし、勧誘の時点において不実告知があったと認めるには足りない。また、仕組債の発行体の信用不安が高まっていることや、仕組債の発行体の信用性が失われた場合には償還されないことがあることを告げていなかったことは事実であるが、担当者がそれらの事実を故意に告げなかったとは認められないことから、法4条1項2号および同条2項には該当しない。さらに、錯誤無効は認めなかったが、不法行為については説明義務違反があったとし、原告の請求を一部認容した(過失相殺3割)。

◆ H23.12.21東京地裁判決

2012年12月1日 公開

国セン発表情報(2012年11月1日公表)

【事案の概要】
 原告が、被告の従業員の勧誘に応じて仕組債および投資信託(本件商品)を購入したところ、勧誘の際、被告従業員による断定的判断の提供および重要な不利益事実の不告知があり、また、適合性原則および説明義務違反があったとして、法4条1項2号および法4条2項による取消しを主張し、不当利得返還等と不法行為による損害賠償等を選択的に請求した。

【判断の内容】
 原告が本件商品を購入する際、被告が、確実に利益が得られる旨の断定的判断を提供したとは認められない。また、被告は原告に対し、本件商品の内容及びリスクについて説明を行っており、不利益事実の不告知の事実も認められないとして、取消し事由はないと判断した。不法行為についても認められないとし、原告の請求を棄却した。

◆ H24.02.07東京地裁判決

2012年12月1日 公開

国セン発表情報(2012年11月1日公表)

【事案の概要】
 被告が業務執行組合員として財産を管理運用し配分するというファンドへの投資(本件投資)を行った原告が、本件投資勧誘の際に被告が必ず儲かるとの断定的判断を提供してその旨誤信させ契約させたものであるから、民法96条1項ないし法4条に基づいて契約を取消し、被告会社に支払った金銭の返還等を請求した。

【判断の内容】
 本件投資は、被告が確実に多大な利益が得られる旨の断定的判断を提供し、あるいは確実に多大な利益が得られる投資商品であるかのごとく装って、原告に対し執拗な勧誘を繰り返し、誤信させた原告に被告との間で契約を締結させたと認められることから、法4条に基づく取消しの意思表示は有効であり、被告は原告から受領した金銭の返還義務を負うとした。

◆ H24.02.15東京地裁判決

2012年12月1日 公開

国セン発表情報(2012年11月1日公表)

【事案の概要】
 注文者である被告と請負人である原告との間で締結した、建物リフォーム工事の請負契約に基づき、完成建物を引渡した原告が、被告に対し、請負工事代金等の支払いを求めたところ、被告は、自身が要望していた耐震性等住居の安全に関する重要な事項が契約内容に入っていなかったことを、原告は被告に明示的に説明すべき義務があったのにこれをせず、被告の要望通りの工事がすべ
て見積書に記載されていると誤信させて契約をさせたものであるとして、法4条1項1号に基づく取消しを主張した。

【判断の内容】
 法4条1項1号は「重要事項について事実と異なることを告げる」ことが要件となるが、被告の主張は、耐震診断等に関し説明すべき重要事項を説明しなかったという趣旨にとどまるから、同条項に該当しない。なお、4条2項該当性を検討するも、被告の主張からは「重要事項(略)について当該消費者の利益となる旨」を告げたことを認めることはできないとした。

◆ H24.02.23東京地裁判決

2012年12月1日 公開

国セン発表情報(2012年11月1日公表)

【事案の概要】
 原告が被告から提供を受けたパチンコ攻略法(本件契約)について、断定的判断を提供されたものであるから法4条1項2号に基づき契約を取消すとして、原告が被告に対し、支払った金銭を不当利得として返還すること等を請求した。

【判断の内容】
 パチンコに勝てるか否かは不確実な事項であること、被告は原告に対し、本件契約締結の勧誘の際、本件契約の目的となるパチンコ攻略方法の内容について、パチンコに勝てるようになる旨の断定的判断を提供したこと、これにより原告がパチンコに勝てるようになると誤信したことが認められる。このことから、本件契約は法4条1項2号に基づき取消されており、被告は原告から受領した金銭の返還義務を負うとした。

◆ H24.05.10東京地裁判決

2012年12月1日 公開

国セン発表情報(2012年11月1日公表)

【事案の概要】
 原告は、通信機器の開発製造等を行っているという被告の従業員から、被告の株式を購入すれば被告が上場後に倍額で買い取り可能であるなどと執拗な勧誘を受けて株式を購入し、その後、被告の株式を高値で買い取るという業者からの勧誘を受けて、さらに購入を続けた(本件売買契約)。しかし、被告には事業の実態が存在しないにもかかわらず、被告が勧誘時に不実の告知をしたことにより、被告がその事業所において通信機器の開発製造等の事業を行っていると誤信したとして、本件売買契約を法4条1項1号により取り消し、不当利得として既に支払った売買代金の返還を請求した。

【判断の内容】
 被告は、原告を知らないし、被告が原告に対して被告の株式を売却したこともなく金員も受領していないなどと主張した。しかし、原告が被告の株式の売買代金を振り込んだ被告名義の預金口座は、被告の預金口座であると被告も認めており、売買代金の一部の送金先が被告の預金口座であったこと等からすれば、被告が会社として本件売買契約に関与したことは明らかである。被告に事業の実態がほとんどなく、その株式に実質的な価値がなかったことも明らかであり、原告が、被告従業員を名乗る者から被告の事業の実態等について不実の告知を受けてこれを誤信し、本件売買契約を締結したと認められる。よって、被告は、原告が支払った売買代金を不当利得として原告に返還する義務を負うとした。

◆ H24.05.30高松地裁判決

2012年12月1日 公開

平成23年(ワ)第465号解約金返還請求事件
国セン発表情報(2012年11月1日公表)
控訴審 H24.11.27高松高裁判決

【事案の概要】
 原告が、電気通信事業等を営む被告に対し、被告の提供する携帯電話の割引サービス(本件契約)につき、販売時における表示がわかりにくく、4条2項、9条、10条および民法90条に違反しており無効であるとして解約金の返還を請求した。

【判断の内容】
 被告の販売時における表示等によれば、消費者は本件契約が2年間ごとの契約であって契約期間中に解約した場合には契約満了月の翌月を除いて解約金が発生すると理解することが十分可能であり、直ちに消費者を誤信させるものではない。また、解約金の規定についても、パンフレットに明記されていること、不利益となる事実を故意に告げなかったとは認められないこと、原告が通常の料金プランの場合と比較して既に解約金を超える利益を得ていること等の事情からすると、本件契約の規定は消費者の利益を一方的に害するものとはいえず、消費者契約法各条項その他の法律に違反するとは認められないとした。

◆ H24.06.26横浜地裁判決

2012年12月1日 公開

平成24年(レ)第126号不当利得返還請求控訴事件
消費者法ニュース93号75頁、NBL988号1頁、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 森義之、竹内浩史、橋本政和
第1審 横須賀簡裁平成23年(ハ)第650号

【事案の概要】
 過払い金返還請求。借主本人と貸金業者間で、真実は過払い状態なのにその事実を業者が告知せず、残債務があることを前提とする和解契約を締結していたため、和解契約が不実告知にあたるかどうかが問題となった。

【判断の内容】
 以下の理由から、和解契約の取消を認め、不当利得返還請求を認めた。
① 貸金業者従業員が「今後の利息をなしにして支払う方法があります」「毎月最低いくらならはらえますか」「毎月最低1万円お願いします」などと貸金債務の存在を前提とする発言をしたこと、和解契約締結時は平成18年最高裁判決が言い渡されてから3年以上が経過しており、貸金契約に期限の利益喪失条項が存在していることからは、貸金業法43条の適用が認められないことが明らかであること等から、和解契約は貸金業者従業員の詐欺によって締結されたものというべき。
② 上記従業員の発言は、重要事項について不実告知をしたものであり、和解契約は4条1項1号により取り消すことができる。

◆ H22.10.08大阪高裁判決

2012年7月7日 公開

国センHP(消費者問題の判例集)
第1審 H22.03.26奈良地裁判決

【事案の概要】
インターネットで株取引を行い損失が生じていた主婦が,ネット上で見つけた投資相談電話に電話したところ,投資顧問契約を締結し会費200万円を支払わされたことについて,断定的判断の提供による取消等を主張し返還を求めた事案。1審が断定的判断の提供による投資顧問契約の取消を認め,不当利得返還請求を認めたが、その控訴審。

【判断の内容】
 原審と同様、断定的判断の提供による投資顧問契約の取消を認め、不当利得返還請求を認めた。

◆ H23.12.20京都地裁判決

2012年2月4日 公開

平成23年(ワ)第1875号未公開株勧誘行為等差止請求事件
消費者庁HP(PDF)判決写し(PDF、京都消費者契約ネットワークHP)国セン発表情報(2012年11月1日公表)
裁判官 瀧華聡之、奥野寿則、堀田喜公衣
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 J・C・I投資事業有限責任組合

【事案の概要】
適格消費者団体が、投資事業として消費者と契約を行うJ・C・I 投資事業有限責任組合に対し、不当勧誘の差し止めを求めた事案。

【判断の内容】
特段の主張のない答弁書を提出しただけで欠席したため、請求原因事実に争いがないものとした上で、差止ができる範囲について以下のとおり判断した。
① 「未公開株式の購入を勧誘してはならない」との請求については、4条1項1号の不実告知をする場合に限り、当該未公開株式の客観的な価値と比較して、著しく異なる価額を告げて勧誘する行為の差止の限度で認めた。
② 「未公開株式の購入を勧誘するに際し、被告が内閣総理大臣の登録(金融商品取引法第29条)を受けておらず、金融商品取引業を行うことが法律上禁止されている者であることを告げずに勧誘をしてはならない」との請求については、不利益事実の不告知(4条2項)にあたるとして認めた。
③ 「第三者をして、消費者に対して、株式を購入できる者が限定されている旨を告げさせてはならない。被告は、第三者をして、消費者に対して、株式を買い取る旨を告げさせてはならない。」との請求については、あらかじめ購入できる者が限定されていないのに告げること、株式を買い取る具体的予定がないのに買い取る旨を告げる行為の差止の限度で認めた。

◆ H24.01.19東京地裁判決

2012年1月19日 公開

平成20年(ワ)第10000号、平成20年(ワ)第24477号害賠償請求事件(本訴事件)、損害賠償反訴請求事件(反訴事件)
LLI/DB 判例秘書登載、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 西村修

【事案の概要】
原告が,被告会社従業員の被告Y1から勧誘され,被告会社との間で委託契約を締結して商品先物取引を行ったが,適合性違反・説明義務違反があったとして,被告らに対し,預託証拠金等の損害賠償等(主的請求)を求め,上記先物取引の取消し(消費者契約法4条2項)による不当利得返還請求等(予備的請求)を求めたところ,被告会社が原告に対し,上記先物取引から生じた差損金等の支払を求め(反訴)た事案。

【判断の内容】
(金の先物取引委託契約において)将来における金の価格は,同項本文にいう「重要事項」に当たらないと解される(最高裁判所平成22年3月30日判決判タ1321号88頁参照)として、取消を認めなかった。

◆ H20.12.24東京高裁判決

2011年11月11日 公開

国セン報道発表資料(2011年11月11日公表)
原審 H20.07.29東京地裁判決

【事案の概要】
 オペラを鑑賞した控訴人が、上演において、実際にオーケストラの指揮を執ったのがパンフレット等で宣伝されていた指揮者ではなく、格下の指揮者に変更されたことにつき、公演主催者及び公演協賛者らの被控訴人に対して、鑑賞契約上の債務不履行、指揮者という重要事項に関し事実と異なる告知がされたとして、消費者契約法4条1項の取消事由があり、更に不法行為にも当たるとして、損害賠償請求又は不当利得返還請求を求めた。

【判断の内容】
 チラシやパンフレットにやむを得ない事情により指揮者の交代があり得る旨も併せて表示されていたのであるから、本件契約の締 結にあたり、本件公演の主催者たる被控訴人らが重要事項について事実と異なることを告げたとはいえないことは明らかである。したがって、消費者契約法4条1項により取り消すことはできないし、 被控訴人らに不当利得及び不法行為が成立する余地はないというべきであるとして、控訴人の請求を失当とする原判決は相当である として、控訴を棄却した。

◆ H23.03.04大阪地裁判決

2011年5月26日 公開

平成20年(ワ)第15684号不当利得金返還請求事件
判例時報2114号87頁
裁判官 小林康彦

【事案の概要】
 認知症が進行していた92歳の独り暮らしの女性が、梵鐘の製作等を業とする業者との間で50トンの大梵鐘を製作する請負契約を締結し、代金3億円のうち2億円を支払ったが、当該契約が不実告知、不利益事実の不告知によって締結された等と主張して、返還請求をした事案。契約書作成前に支払われた2億円が、契約書において契約解除の場合には違約金として没収されるとなっていた条項の効力が争われた。

【判断の内容】
 次の理由から、不利益事実の不告知による取消を認め、2億円の返還請求を認めた。
①4条2項の趣旨は、消費者が事業者の不適切な勧誘行為に影響されて自らの欲求の実現に適合しない契約を締結した場合には、民法上の詐欺が成立しないときであっても、消費者が当該契約に拘束されることは衡平を欠くことから、消費者に当該契約の効力を否定する手段を与えたもの。
②梵鐘の設置場所が未確定なまま巨大な梵鐘を、寺院でない一個人が注文するという極めて異例な契約内容であることから、契約書作成時点において契約が締結されたものというべき。
③前払い金2億円について、中途解約の場合違約金となることが契約書においてはじめて記載されており、趣旨が変わっているにもかかわらずそのことを告げた事実は認められない。このことは、重要事項にかかる不利益事実の不告知があるものとして、取消事由となるというべき。

◆ H22.03.26奈良地裁判決

2010年9月28日 公開

平成20年(ワ)第1084号不当利得返還等請求事件
ウエストロー・ジャパン、消費者法ニュース84号293頁、証券取引被害判例セレクト37巻175頁
裁判官 宮本初美
控訴審 H22.10.08大阪高裁判決

【事案の概要】
インターネットで株取引を行い損失が生じていた主婦が,ネット上で見つけた投資相談電話に電話したところ,投資顧問契約を締結し会費200万円を支払わされたことについて,断定的判断の提供による取消等を主張し返還を求めた事案。

【判断の内容】
過去に受けた損失500万円及び会費200万円も含め700万円を取り戻すことができるとして勧誘を受けたものと認定し,断定的判断の提供による投資顧問契約の取消を認め,不当利得返還請求を認めた。

◆ H21.12.10仙台高裁判決

2010年9月28日 公開

平成21年(ネ)第第330号損害賠償請求控訴事件
消費者法ニュース84号389頁
裁判官 小磯武男,山口均,岡田伸太

【事案の概要】
商品先物取引業者に対する損害賠償請求。主位的に不法行為による損害賠償請求,予備的に断定的判断の提供による取消による不当利得返還請求を求めた事例

【判断の内容】
主位的請求について,断定的判断の提供による不法行為を認め過失相殺6割として賠償請求を認めつつ,予備的請求の断定的判断の提供による取消を認め,実損から主位的請求で認められた部分を除いた残額の返還請求を認めた。

◆ H20.11.27東京高裁判決

2010年9月28日 公開

平成20年(ネ)第884号損害賠償請求控訴事件
LLI,国民生活センターHP消費者問題の判例集
裁判官 渡邉等,高世三郎,山口信恭

【事案の概要】
キャッチセールスによって展示会場に誘導され,高額な絵画を購入させられたことにつき,販売会社らに損害賠償を求めた事案。不法行為の理由として,特商法違反,消費者契約法違反(退去妨害)が争われた。

【判断の内容】
次の理由から,売買代金から絵画の実質的価値を差し引いた差額,弁護士費用について損害賠償請求を認めた。
① 1条,4条3項2号の趣旨から,消費者は,事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し,当該事業者が同法4条3項2号所定の行為をしたことに より困惑し,それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をすることがないように保護されているのであって,消費者のこのような立場は法律 上保護に値する法的利益というべきである。
② 特商法3条もしくは6条1項違反行為,又は消費者契約法4条3項2号に該当する行為をした場合において,①これらの違反行為等がたまたま当該勧誘にお いて行われたものか,あるいは当該事業者において繰り返し違反行為等が行われているか,②違反行為等が単一であるか,あるいは複数の違反行為等が組み合わ されて勧誘が行われているか,③違反行為等の違反の程度が軽微であるか,あるいは重大であるか,④勧誘を受けた消費者が販売される商品を購入するか否かを 決めるために必要な知識をあらかじめ有していたか,否か,⑤勧誘を受けた消費者が販売される商品を購入する意思をあらかじめ有していたか,否か,⑥違反行 為等により勧誘の相手方の置かれた状況(違反行為等によって生じた認識や心身の状況を含む。),⑦販売された商品の価値(市場価値等の客観的価値や主観的 価値)と販売価格との合致の有無,あるいは乖離の程度,⑧特定商取引に関する法律9条1項所定の申込みの撤回等(いわゆるクーリングオフ)が行われ,又は 消費者契約法4条3項所定の意思表示の取消しが行われた場合の事業者の対応等を総合考慮し,違反行為等を要素とする一連の販売行為を全体としてみて特定商 取引に関する法律及び消費者契約法が実現し保護しようとする法秩序に実質的に反するものと評価すべきときは,当該販売行為は社会生活上許容することができ ないものであり,当該販売行為により消費者の法律上保護される利益を侵害したときは,販売業者等は,不法行為責任に基づき,消費者に対し,これによって生 じた損害を賠償すべき義務を負うというべきである。
③ 本件では,販売目的隠匿、重要事項の不実告知、退去妨害など、特定商取引法および消費者契約法に反する行為が多数あったとし、これらは会社ぐるみで反 復継続して行われているものであるとして,版画制作会社と販売会社とに不法行為による損害賠償を、両社の取締役には取締役としての第三者責任を認めた。

◆ H18.11.09東京地裁判決

2010年7月7日 公開

平成18年(ワ)第3471号不当利得返還請求事件
LLI
裁判官 村田渉

【事案の概要】
有料老人ホームの入居申込金等の返還請求。東京都の指針に反していることを告げないことが不利益事実の不告知となるか,入居申込金の追加支払条項,不返還条項が10条違反となるかが争われた。

【判断の内容】
次の理由から請求を棄却した。
① 東京都の指針は重要事項には当たらない。
② 本件追加支払条項は10条違反ではない。
③ 本件不返還条項は,保証金の入居月数に応じた返還金の算定方式が明確にされており,かつ一時金のうち返還対象とならない部分の割合が不適切であると認めるに足りる証拠もない。
④ 本件入居申込金,施設協力費及び保証金がいずれも実質的に居住サービスの対価であると断定することはできず,また保証金の償却が解約による平均的損害額を超えるものであると認めるに足りる証拠もない。

◆ H22.02.25東京地裁判決

2010年7月7日 公開

平成20年(ワ)第9322号,平成21年(ワ)第5693号各工事代金等請求事件
金融商事判例1338号21頁
裁判官 武笠圭志

【事案の概要】
LPガス供給設備の設置契約に,契約終了時のバルク設備の買取義務が規定されていた事案で,設置業者が買取代金を請求した事案。設置業者が,勧誘に際し顧客に買取義務を告知しなかったことが不利益事実の不告知にあたるかが争われた。

【判断の内容】
次の理由から,不利益事実の不告知による取消を認め請求を棄却した。
① 契約終了時にバルク設備の買取義務が発生すること及びその金額は当該契約の重要事項にあたる。
②設置に関して工事費その他の費用がかからないことを告げられたことにより,契約上買取義務が明記されているという事実が存在しないと通常考えると解するのが相当。

◆ H17.09.29東京地裁判決

2010年7月7日 公開

平成15年(ワ)第13323号土地建物根抵当権設定登記抹消登記等請求事件
判例タイムズ1203号173頁,LLI
裁判官 金子順一,白川純子,豊田哲也

【事案の概要】
建物建築資金の金銭消費貸借契約,根抵当権設定契約について,建築業者による不実告知,不利益事実の不告知を理由に取消を求めた事案

【判断の内容】
消費者契約法による取消は認めなかった(連帯保証人について意思無能力による無効を認めている)。
① 建築業者による建築請負契約勧誘について不実告知があったとしても,それが貸金業者による金銭消費貸借契約に関する不実告知とはならない。
② 不利益事実の不告知については,そもそも利益となる旨を告げていないのであり,不利益となる事実を告げていないか否かを検討するまでもなく4条2項による取消を認めることはできない。

◆ H21.12.22名古屋地裁判決

2010年6月27日 公開

平成20年(ワ)第6505号不当利得返還等請求事件
消費者法ニュース83号223頁,国セン報道発表資料(2011年11月11日公表)
裁判官 宮永忠明

【事案の概要】
原野商法被害者が,販売業者に対して支払った測量代,広告費用の返還を求めた事例。広告契約についての不実告知による取消が問題となった。

【判断の内容】
以下の理由から,広告契約について不実告知による取消を認め,広告費用の返還請求を認めた。
① 広告契約の締結について,本件土地の売却可能性は,4条1項1号,4条4項1号の「用途その他の内容」についての重要事項にあたる。
② 売却可能性が少なく広告掲載による原告の利得はない。

◆ H22.03.30最高裁判決(2)

2010年6月27日 公開

平成20年(受)第909号損害賠償,立替金請求事件
最高裁HP,裁判所時報1505号145頁,判例タイムズ1321号88頁,金融商事判例1341号14頁,1344号14頁,判例時報2075号32頁,国セン報道発表資料(2011年11月11日公表)
裁判官 藤田宙靖,堀籠幸男,那須弘平,田原睦夫,近藤崇晴
第一審 H19.05.22札幌地裁判決平成18年(ワ)第1096号、同第1396号
控訴審 H20.01.25札幌高裁判決

【事案の概要】
金の先物取引の勧誘を受けて契約し損害を被った者からの委託証拠金の返還請求と,業者からの差損金請求の反訴。断定的判断の提供,不利益事実の不告知による取消が争われた。

【判断の内容】
① 断定的判断の提供は認められない。
② (不利益事実の不告知について)
 4条2項本文にいう「重要事項」とは,4条4項において,当該消費者契約の目的となるものの「質,用途その他の内容」又は「対価その他の取引条件」をい うものと定義されているのであって,4条1項2号では断定的判断の提供の対象となる事項につき「将来におけるその価額,将来において当該消費者が受け取る べき金額その他の将来における変動が不確実な事項」と明示されているのとは異なり,4条2項,4項では商品先物取引の委託契約に係る将来における当該商品 の価格など将来における変動が不確実な事項を含意するような文言は用いられていない。そうすると,本件契約において,将来における金の価格は「重要事項」 に当たらないと解するのが相当。

◆ H21.05.21京都地裁判決

2010年6月16日 公開

平成21年(レ)第14号保証債務履行請求控訴事件
未登載
裁判官 辻本利雄,和久田斉,戸取謙治
原審 H21.01.13右京簡裁判決

【事案の概要】
連帯保証人に対する貸金業者からの保証債務履行請求。

【判断の内容】
次の理由から,消費者契約法による取り消しを否定して原審判決を取り消し,錯誤無効の主張も排斥して請求を認容した。
① 「消費者」(2条1項)とは,消費者契約法が制定された趣旨からすると,自らの事業としてでなく,自らの事業のためにでもなく契約の当事者となる主体をいう。
② 「媒介の委託を受けた第三者」(5条)とは,事業者が第三者に媒介を委託して事業活動を拡大し,利益を得ている以上,その第三者の行為による責任を事業者も負担すべきであるという趣旨にかんがみ,その第三者が媒介の委託を受けた事業者との共通の利益のために契約が締結されるよう尽力し,その契約締結について勧誘をするに際しての第三者の行為が事業者の行為と同視できるような両者の関係が必要となる。
 本件借主は,事業者である貸金業者の事業活動拡大等のためではなく,あくまで自らが資金を獲得するという利益のために保証人となるように依頼したのであり,貸金業者と共通の利益を有しているということはできず,第三者にあたらない。

◆ H21.06.16大阪高裁判決

2010年6月16日 公開

平成21年(ネ)第527号敷引条項使用差止請求控訴事件
消費者庁HP判決写し(PDF、京都消費者契約ネットワークHP)
裁判官 渡邉安一、安達嗣雄、明石万起子
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 大和観光開発株式会社
第1審 H21.01.28京都地裁判決

【事案の概要】
適格消費者団体が不動産賃貸業者に対し,10条違反である敷引条項の使用差止,及び差止に必要な措置を求めたところ,使用差止については業者が請求を認諾したため,差止に必要な措置の命令の可否が争われた事案

【判断の内容】
控訴棄却。
①従業員らに対して当該条項を含む意思表示を行うための事務を行わないよう指示することという主位的請求については,事業者に特定の作為を求める給付の訴えであり、債務名義として執行によって実現される事業者の義務を控訴人は明らかにする必要があるが、控訴人の請求は、当該条項を使用した意思表示を行うための事務を行わないよう指示を求めるだけであり、書面によることの要否等、その方法、程度、内容が一義的には明らかでなく、どのような措置をとれば法的義務を履行したことになるのか明らかでないことから、請求の特定を欠き不適法。
②予備的請求として、従業員らに対して、当該条項を含む意思表示を行うための事務を行わないよう周知徹底させる内容を記載した書面の配布を行うよう求めたことについて,被控訴人がその従業員等に対して、当該条項を含む意思表示を行うための事務を行わないよう周知徹底していること等を主張しているのに対し、控訴人は、被控訴人が当該条項を含んだ意思表示を行うおそれがあることを基礎付ける事実を何ら主張せず、被控訴人が当該条項を含んだ意思表示を行う蓋然性が客観的に存在していると認めることはできない。

◆ H21.06.19東京地裁判決

2010年6月16日 公開

平成20年(ワ)1275号立替金請求事件
判例時報2058号69頁,消費者法ニュース83号220頁,国セン報道発表資料(2011年11月11日公表)
裁判官 外山勝浩

【事案の概要】
医療機関との間で包茎手術とこれに付随するコラーゲン注入術の診療契約を締結した際,クレジット会社との間で治療費の立替払い契約を締結した事案。

【判断の内容】
当該手術が医学的に一般に承認された方法で行われると考えるのが通常であること,本件亀頭コラーゲン注入術が医学的に一定の効果を有するものであったとしても,当該術式が医学的に一般に承認されたものとはいえない場合には,その事実は4条2項の「当該消費者の不利益となる事実」に該当すること,本件亀頭コラーゲン注入術が医学的に一般に承認された術式と認めることが困難であり,逆に有用性については疑問が示され消費者被害救済の対象とされているものと認め られるとして,立替払い契約全部の取り消しを認めた。

◆ H21.10.02大津地裁長浜支部判決

2010年6月16日 公開

平成19年(ワ)第127号,同20年(ワ)第16号既払金返還等請求事件
消費者法ニュース82号206頁
裁判官 別所卓郎

【事案の概要】
デート商法でコート等をクレジットにより購入させられたことについて,加盟店管理責任に基づく不法行為,不実告知による立替払契約の取消を理由に,信販会社に対し既払い金の返還を求めた事案

【判断の内容】
以下の理由により,立替払契約の不実告知による取消を認め既払い金の返還請求を認めた。
① 本件加盟店契約によれば,信販会社は加盟店に対し立替払契約締結について媒介をすることを委託しているというべきであり5条の適用がある。
② 加盟店が信販会社の承諾なく第三者に媒介業務を再委託している場合も,1条の趣旨からは5条の適用がある。
③ 「本件クレジット契約を締結すれば従前のクレジット契約を解約できる」という事項は「重要事項」(4条)にあたる。

◆ H21.01.13右京簡裁判決

2010年6月12日 公開

平成19年(ハ)第542号保証債務履行請求事件
未登載
裁判官 中嶋嘉昭
控訴審 H21.05.21京都地裁判決

【事案の概要】
連帯保証人に対する貸金業者からの保証債務履行請求。

【判断の内容】
以下の理由から,連帯保証契約の取消を認めた。
① 主債務が事業のために借入をしたものであっても,連帯保証人が連帯保証することは「事業のために」する行為ではなく,消費者契約法が適用される。
② 貸金業者が,借り主に対して連帯保証人を探してくるようにと依頼することは連帯保証契約締結の媒介を依頼したものというべきである。
③ 借り主が「絶対に迷惑をかけない」と告げたことは断定的判断の提供に当たる。
④ 実際は借り換えなのに借り主が更新と告げたことは不実告知にあたる。
⑤ 取消権の消滅時効の起算点について,貸金業者が全取引を利息制限法により計算し直し請求の減縮及び請求原因の訂正を陳述した第2回口頭弁論期日が起算点となるとして,消滅時効にかかっていないとした。

◆ H21.02.27神戸地裁尼崎支部判決

2010年6月12日 公開

平成20年(ワ)第1218号損害賠償請求事件
未登載
裁判官 竹中邦夫

【事案の概要】
パチンコ攻略法の情報提供代金として約700万円を支払わされた者が業者に対し損害賠償請求をした事案

【判断の内容】
下記のように判断し,断定的判断の提供に当たるとして契約の取消を認め全額の返還請求を認めた。
① パチンコは,個別のパチンコ台の釘の配置やその角度,遊技者の技量や遊技時間,パチンコ店の営業姿勢,パチンコ台に組み込まれた電磁的に管理された絵 柄の組み合わせ等の複合的な要因により,出玉数が様々に変動するものであり,遊技者がどれくらいの出玉を獲得できるかは上記のような複合的な要因による偶 然性の高いものであり,本件情報は,将来における変動が不確実な事項に関するものに当たる。
② 被告が特別なパチンコ攻略情報を有しておりこれを購入してこれに従えば確実に利益を生み出せると誤信させるような方法で宣伝及び説明をして勧誘したものであり,これによって原告が700万円もの高額の代金を支払ったものである。

◆ H20.09.26高松地裁判決

2010年6月11日 公開

平成19年(ワ)155号不当利得等返還請求事件
国セン報道発表資料(2011年11月11日公表)
裁判官 真鍋麻子

【事案の概要】
広告記載のような医学部合格実績がないのに,その旨記載した広告が交付され,その旨を誤信して医学部系進学塾の受講契約を締結した者からの,不実告知を理由とする取消が認められた事例

【判断の内容】
① 医学部合格実績は,医学部受験のための学習塾を標榜する被告の講義内容に関わるものであり,重要事項に関する内容である。
② ①に関する原告の誤認は,本件契約締結を決定づけた要因ではないものの,原告が本件契約締結交渉を始め,本件契約締結の際に考慮した要素の1つであるとして,4条1項1号による取消を認めた。

◆ H18.12.28神戸地裁姫路支部判決

2010年6月8日 公開

平成17年(ワ)第633号売買代金等請求本訴事件,同第899号原状回復請求反訴事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 黒田豊

【事案の概要】
太陽光発電システムの勧誘につき不実告知及び不利益事実の不告知を認めた事例

【判断の内容】
当該商品を購入することによって将来生ずる経済的メリットに関する事実は,本件契約では重要事項にあたる。この点について,不実を告知し不利益事実を告知しなかったものであり,4条1項,2項,特商法9条の2により取り消すことができる。

◆ H19.01.29名古屋地裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(ワ)第4452号損害賠償請求事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 安田大二郎

【事案の概要】
パチスロ攻略法が断定的判断の提供に当たるとして4条1項2号による取消,不法行為による損害賠償請求が認められた事案。パチスロ攻略法の売買は消費者契約法による保護を受ける契約か否か,消費者の努力義務違反があるか否かも争われた。

【判断の内容】
① パチスロ攻略法は断定的判断の提供に当たる。
② 事業者と消費者の格差の観点からは,本件売買について取消を認めても消費者契約法の趣旨を逸脱するものではない。
③ 消費者の努力義務(3条2項)は,事業者から提供された情報を活用するように要請するに過ぎず,消費者自ら情報を収集する努力まで課すものではない。

◆ H19.02.20福岡地裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(ワ)第2326号損害賠償請求事件
国セン報道発表資料(2008年10月16日公表)
裁判官 細谷泰暢

【事案の概要】
パチンコ必勝法詐欺が,断定的判断の提供に当たるとして4条1項2号により取消を認め,代金の返還請求を認めた事例

【判断の内容】
① 一般的に,パチンコにおいて遊技者がどのくらいの出玉を獲得するかは,複合的な要因による偶然性の高いものであって,将来における変動が不確実な事項である。
② 被告が「絶対稼げる」「誰でもできる」などといった勧誘文句及び同趣旨の広告を用いて原告を勧誘した行為は「断定的判断の提供」にあたる。
③ 原告は,②の断定的判断の内容が確実であると誤信したものである。

◆ H19.04.27大阪高裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(ネ)第2971号預託金返還等請求控訴事件
判例時報1987号18頁,国セン報道発表資料(2008年10月16日公表)
裁判官 中路義彦,礒尾正,久末裕子

【事案の概要】
外国為替証拠金取引にかかる業者に対する預託金返還請求権の約7割を放棄する旨の和解契約につき,10条による無効又は不実告知(4条1項1号),断定的判断の提供(同2号)等を理由とする取消を主張して預託金残額の返還を求めるなどした。

【判断の内容】
今,預託金の一部を返還を受けることによって残金を放棄する旨の和解契約を締結しなければ,業者が外国為替証拠金取引の営業停止処分を受け,その結果倒産 し,預託金はほとんど戻ってこない旨の説明は,将来における変動が不確実な事項についての断定的判断の提供に該当するとして,4条1項2号による和解契約 の取消を認めた。

◆ H19.07.26東京簡裁判決

2010年6月8日 公開

平成17年(ハ)第21542号債務不存在確認等請求事件
最高裁HP国セン報道発表資料(2008年10月16日公表)
裁判官 持地明

【事案の概要】
訪問販売で,長時間家に居座り調湿剤マットを立替払契約を利用して売却した事案で,不退去を理由に立替払契約の取消が争われた。

【判断の内容】
以下の理由により,不退去を理由として立替払契約の取消を認めた。
①長時間にわたり購入を断り続けたことについて,退去の意思を黙示的に求めたと評価できるとして,不退去にあたる。
②5条1項にいう「媒介」とは,ある人と他の人との間に法律関係が成立するように,第三者が両者の間に立って尽力することと解
されるところ,本件立替払契約について,本件販売店は媒介をしたといえる。

◆ H20.01.17東京簡裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ハ)第5644号損害賠償請求事件
兵庫県弁護士会HP国セン報道発表資料(2008年10月16日公表)国セン暮らしの判例集HP2010年7月,ウエストロー・ジャパン
裁判官 長澤正人

【事案の概要】
自動車販売業者から中古車を110万円で購入した際,本件車両の走行距離計が改ざんないし交換されていたのに,故意に改ざんないし交換の事実を告げず走行 距離及び走行距離計につき説明を行わなかったとして4条1項1号(不実告知)に基づく取消,代金の返還請求が認められた事例

【判断の内容】
被告会社は,本件車両の実際の走行距離が約12万キロメートルであったにもかかわらず,HP上でも店舗内でも走行距離を8万キロメートルないし8万 1500キロメートルと表示し,本件売買契約の締結に際してもこれを明確に訂正したとは認められないから,本件売買契約の締結にあたり不実の告知があった というべきであり,4条1項1号による取消が可能であるとして,110万円の返還を認めた。

◆ H20.01.25札幌高裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ネ)第192号損害賠償・立替金請求控訴事件
判例時報2017号85頁,金融商事判例1285号44頁,兵庫県弁護士会HP国セン報道発表資料(2008年10月16日公表)
裁判官 末永進,千葉和則,住友隆行
第一審 H19.05.22札幌地裁判決平成18年(ワ)第1096号、同第1396号
上告審 H22.03.30最高裁判決(2)

【事案の概要】
金の先物取引の勧誘を受けて契約し損害を被った者からの委託証拠金の返還請求と,業者からの差損金請求の反訴。断定的判断の提供,不利益事実の不告知による取消が争われた。

【判断の内容】
次の理由から,委託証拠金の返還請求を認め,業者からの差損金請求を棄却した。
① 外務員らは、金相場の値動きからみて今後さらに金の値が上がると予想される旨の自己の相場観を述べて取引を勧誘したことが認められるが、将来の変動が 不確実な事項である金の相場について、顧客が金の相場に関する判断をする上での情報提供の限度を超えて、相場が上昇することが確実であると決めつけるような断定的な表現を使って顧客に取引を勧誘したことを認めるに足りる証拠はないとして,断定的判断の提供は否定。
② 本件取引において,将来における金の価格の上下は取引の「目的となるものの質」(4条4項1号)であり,かつ顧客が契約を「締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの」(同項柱書)であるから,4条2項の重要事項というべきであり,外務員が顧客に対し金相場に関する自己判断を告げて買注文を勧めることは「重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨告げ」ることに該当する。その場合,将来の金相場の暴落の可能性を示す事実は,「当該消費者の不利益となる事実」に該当し,これに言及せず上記告知を行うことは,「当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきもの」に該当するとして,4条2項による取消を認めた。

◆ H20.04.25倉敷簡裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ハ)第828号既払金返還請求事件,平成20年(ハ)第226号立替金反訴請求事件 
兵庫県弁護士会HP国セン報道発表資料(2008年10月16日公表),消費者法ニュース76号213頁
裁判官 堀田隆

【事案の概要】
健康食品販売業者が,高齢で身体に障害のある者宅を訪問し勧誘する際に,健康上の悩みにつけこんで,「これを飲めば,病気も治って健康になれますよ」などと説明をし,また,支払が困難であるとして自宅からの退去を要求する態度を示したにもかかわらず,契約を締結させ,信販会社との間で割賦購入あっせん契約を締結したとして,クーリングオフ,4条1項1号(不実告知),同条3項1号(不退去)に基づき取消を主張し,支払金額の返還等を求めた事例

【判断の内容】
不実告知や不退去による困惑に基づく取消の主張については,具体的な証拠に基づく証明が不十分として否定された。
その一方で,公序良俗違反の契約であることを認定し既払金の返還を認めた。

◆ H18.03.22小林簡裁判決

2010年5月30日 公開

平成17年(ハ)第247号不当利得返還請求事件
消費者法ニュース69号188頁

【事案の概要】
高齢者が不必要な住宅リフォーム工事を契約させられ,クレジット契約を締結させられた等として,既払い金の返還請求をした。立替払契約について4条による取消が認められるかが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,返還請求を認めた。
① 本件立替払契約の目的は,立替金・手数料を72回に分割して支払うことであるが,その用途は本件工事代金の立替払である。
② 本件工事が耐震としては有効な工事ではないことは消費者にとっては不利益な事実である。
③ そう考えなければ,加盟店を通じて加盟店の販売契約と一体をなすものとして立替払契約の勧誘をして利益を上げる業態において消費者を保護する趣旨を貫くことができない。
④ したがって,4条2項により取り消すことができる。

◆ H18.08.30東京地裁判決

2010年5月30日 公開

平成17年(ワ)第3018号売買代金返還請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 山崎勉
控訴審で3000万円の支払いをうけることで和解成立

【事案の概要】
不動産業者から眺望のよいマンションを購入したが,直後に隣接地にマンション建設予定があり眺望が悪くなることを知らされなかったとして,4条2項による取消を主張し,売買代金2870万円及び遅延損害金の返還を求めた。

【判断の内容】
以下の理由から,取消を認め代金返還請求を認めた。
① 勧誘するに際し眺望がよいことを告げたことは,重要事項について原告の利益となる旨を告げたというべき。
② 隣接地に前記眺望が悪くなるマンションの建設予定があることを知りながらこれを告げなかったことは,不利益事実を故意に告げなかったものというべき。
 重要事項説明書に周辺環境が将来変わる場合があると記載されていたとしても一般的説明にとどまり,当該不利益事実を告知したことにはならない。

◆ H17.08.25新潟地裁長岡支部判決

2010年5月29日 公開

平成16年(ワ)第139号立替金請求事件
未登載
裁判官 水田誠一
控訴審 H18.01.31東京高裁判決

【事案の概要】
学習教材の訪問販売における,信販会社からの立替金請求。
すでに別の業者から教育役務の提供を伴う学習教材を購入していた者に対し,別業者が訪問して他の業者の教材が古いこと,自分のところでも教育役務の提供を していること,他の業者についてこのようにすれば解約でき,返戻金で教材を購入できると告げたことが,不実告知にあたるか否かが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,4条1項1号により教材売買契約の取消を認め,割賦販売法30条の4の抗弁対抗を認めた。
① 教育役務の提供の有無は,本件教材売買契約においては重要事項であるところ,不実告知がなされた。
② 教材購入の資金調達方法は,本件教材売買契約においては重要事項であるところ,業者の指示どおりにしても解約ができず資金調達ができなかったのであり,不実告知がなされた。

◆ H17.08.25東京地裁判決

2010年5月29日 公開

平成15年(ワ)第21672号,第24133号
LLI
裁判官 柴崎哲夫

【事案の概要】
不動産業者から土地購入及び建物建築請負契約を併せて締結したが,住宅ローンが通らない場合には売買請負両契約が解除となるとの条項があったところ,住宅ローンが通らず解除となったため,手付金合計300万円の返還を求めた。
原告被告の間に入って交渉した第三者の地位,解除条項の解釈,及び不実告知(4条1項1号)が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,4条1項1号,5条1項により,売買・請負契約の取消を認め,不動産業者に手付金300万円の返還を命じた。
① 間に入って交渉した第三者は,委託を受けた第三者(5条1項)にあたる。
② 第三者が,解除条項について,本来であれば解除できないのに解除できるかのように説明しており,不実告知(4条1項1号)にあたる。

◆ H17.09.06名古屋簡裁判決

2010年5月29日 公開

平成16年(ハ)第3907号立替金請求事件
未登載
裁判官 河野文孝

【事案の概要】
浴衣を買いに来た客に対し,高額な喪服セットの購入を長時間勧誘しクレジット契約を締結させた事案で,クレジット会社から立替金請求がなされた。4条3項本文,同項2号及び5条1項による取消が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,4条3項2号,5条1項により,立替払契約の取消を認めた。
① 4条3項2号の「退去する旨の意思を示した」とは,消費者契約法の目的からは,「時間がない,用事がある,要らない」等の間接的に退去の意思を示す場 合が含まれ,「その場所から当該消費者を退去させないこと」とは,退去の意思の表示があったのに,当該消費者を当該場所から退出させるのを困難にさせた場 合を広く意味し,当該消費者にとって心理的にでも退去させない状況になっていれば足りる。
② 本件では,午後2時から3時ころから午後11時ころまでの勧誘であったこと,夕方6時に保育園に子どもを迎えに行く用事があったこと,「要らない」と告げていること,相談センターに相談が相当数寄せられていたことなどから,4条3項2号にあたる。
③ 当該勧誘・契約締結の6日後に書換をしているが,その際も取消を要請したにもかかわらず断られた経緯からは,当初の勧誘による困惑が継続していたものであり,取り消しうる。

◆ H17.10.21大阪地裁判決

2010年5月29日 公開

平成16年(ワ)第5920号学納金返還請求事件
未登載
裁判官 瀧華聡之,堀部亮一,芝本昌征

【事案の概要】
ファッションに関する専門学校に入学した原告が,入学申込手続にあたり被告から受講課程の内容が実際とは違っていた点や,卒業生の就職率が100%であると説明を受けた点が不実告知,不利益事実の不告知にあたるとして4条1項1号,2項による在学契約の取消を主張した。
また,入学後に退学をしたことにより,学納金の返還を請求し,不返還条項が9条1号,10条に反するかどうかが争われた。

【判断の内容】
①不実告知,不利益事実の不告知については事実が認定できない。
②本件専門学校の在学契約は無名契約である。
③入学金は,在学契約を締結できる資格を取得し,これを保持しうる地位を取得することに対する対価とし,かかる地位をすでに取得した以上返還を求めることはできない。
④「平均的な損害の額」(9条1号)とは,同一事業者が締結する多数の同種契約事案について,類型的に考察した場合に算定される平均的な損害の額をいう。
⑤本件では,ひとつながりのカリキュラムの部分について平均的損害が認められるとして,授業料,教育充実費,施設・設備維持費の1カリキュラム分(半年分)を超える部分について,9条1号に違反するとして,返還請求を認めた。
⑥10条違反は否定した。

◆ H17.10.28名古屋簡裁判決

2010年5月29日 公開

国セン報道発表資料HP2006年10月6日

【事案の概要】
旅行主任者教材セットを購入した被告(消費者)が,原告の勧誘内容の不自然さに気付き,契約解除をしたところ,原告は解約料を支払わないと解約できないと解約に応じず,売買代金の支払を求めた。

【判断の内容】
原告が被告に対し,本件契約締結の勧誘に際し,本件契約代金等を5年後に,ある協会に申請すれば特別奨励金として返還されると告げ,被告はそのような事実がないのにあると誤認して契約を締結したとして,不実告知による取消を認め原告の請求を棄却した。

◆ H17.11.08東京地裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(レ)第253号情報料返還請求控訴事件
判時1941号98頁,判例タイムズ1224号259頁
裁判官 水野邦夫,齊木利夫,早山眞一郎

【事案の概要】
パチンコ攻略情報について,売主から「100パーセント絶対に勝てる」等と勧誘を受けた買主が,代金の返還請求をした。断定的判断の提供(4条1項2号)に当たるか否かが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,4条1項2号による取消を認め,全額の返還請求を認めた。
① 常に多くの出玉を獲得することができるパチンコの打ち方の手順の情報は,将来における変動が不確実な事項に関するものにあたる。
② 「100パーセント絶対に勝てる」等の勧誘は,断定的判断の提供にあたる。
③ 買主は100パーセント勝てるとの内容に疑いを抱いていたとはいえ,売主の勧誘によって確実であると誤信したと認定。
④ 買主が自ら射幸的目的をもって行動していたとはいえ,これは基本的には売主の広告や勧誘の結果と評価すべきであり,返還請求を認めたとしても消費者保護の精神から逸脱するとはいえない。

◆ H18.01.31東京高裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(ネ)第4640号立替金請求控訴事件
未登載
裁判官 横山匡輝,石井忠雄,相澤眞木
第1審 H17.08.25新潟地裁長岡支部判決

【事案の概要】
学習教材の訪問販売における,信販会社からの立替金請求。
すでに別の業者から教育役務の提供を伴う学習教材を購入していた者に対し,別業者が訪問して他の業者の教材が古いこと,自分のところでも教育役務の提供を していること,他の業者についてこのようにすれば解約でき,返戻金で教材を購入できると告げたことが,不実告知にあたるか否かが争われた。

【判断の内容】
原審と同じ。
以下の理由から,4条1項1号により教材売買契約の取消を認め,割賦販売法30条の4の抗弁対抗を認めた。
① 教育役務の提供の有無は,本件教材売買契約においては重要事項であるところ,不実告知がなされた。
② 教材購入の資金調達方法は,本件教材売買契約においては重要事項であるところ,業者の指示どおりにしても解約ができず資金調達ができなかったのであり,不実告知がなされた。

◆ H18.02.02福岡地裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(ワ)第121号違約金請求本訴事件,平成17年(ワ)第496号手形金返還等請求反訴事件
判例タイムズ1224号255頁
裁判官 岸和田羊一

【事案の概要】
眺望に関する説明義務違反を理由にマンション販売契約が債務不履行解除された事例

【判断の内容】
① 居室からの眺望をセールスポイントとして,建築前のマンションを販売する場合においては,眺望に関係する情報は重要な事項ということができるから,可能な限り正確な情報を提供して説明する義務があるとして,説明義務違反を理由とする解除を認めた。
② 消費者契約法4条1項1号にいう「事実と異なること」とは,主観的な評価を含まない客観的な事実と異なることをいうと解すべきところ,本件では「事 実」に該当しない,また,同条2項につき,「故意に」告げなかったということはできない,として消費者契約法による取消は否定された。

◆ H17.03.10東京地裁判決

2010年5月27日 公開

平成15年(ワ)第18148号
LLI
裁判官 小池裕

【事案の概要】
高齢者に対する床下換気扇等の点検商法について,販売店に対して原状回復を,信販会社に対して債務不存在確認を求めた。

【判断の内容】
① 4条1項1号にいう重要事項は,商品自体の品質や性能,対価等のほか,本件建物への本件商品の設置の必要性,相当性等が含まれるものと解すべきである。
② 科学的な水分測定がなされた訳ではなく,「床下がかなり湿っているため,家が危ない」という趣旨の説明を誤信したもので,設置された換気扇の本来的な 機能を発揮しておらず,工事の必要性も相当性も認められないから,これがあるとして説明した行為は不実告知(4条1項1号)に当たり,取り消しうる。
③ 1回払いの立替であったとしても,信義則上相当と認められる特段の事情がある場合には抗弁を対抗できるというべきであり,本件は特段の事情がある。

◆ H17.03.17札幌地裁判決

2010年5月27日 公開

平成15年(ワ)第2657号立替金請求事件
消費者法ニュース64号209頁,国セン報道発表資料HP2006年10月6日
裁判官 氏本厚司

【事案の概要】
高齢の女性が宝石貴金属販売会社の従業員からホテルでの展示会に連れ出され,帰宅したいと告げたにもかかわらず勧誘を続けられやむなくネックレスを購入し,クレジット契約を締結させられた。信販会社からの立替金請求に対し,4条3項2号(退去妨害)による取消を主張した。

【判断の内容】
①販売店が信販会社との立替払契約について顧客を勧誘することを委託することは5条1項の委託にあたる。
②顧客が,販売店従業員に対し,帰宅したいと告げたにもかかわらず勧誘を続けられ,困惑してネックレスの購入,立替払契約を締結させられたとして,4条3項2号により,立替払契約の取消を認めた。

◆ H17.01.26名古屋地裁判決

2010年5月25日 公開

平成14年(ワ)第4110号帳尻差損金請求事件,第5428号不当利得返還等反訴請求事件
兵庫県弁護士会HP,消費者法ニュース63号100頁,判例時報1939号85頁
裁判官 岡田治

【事案の概要】
商品先物取引における帳尻差損金等の請求に対し,断定的判断の提供,不実の告知,不利益事実の不告知があったとして,消費者契約法4条1項2号及び同条1 項1号ないし同条2項による契約の取消を主張した。業者は,商品先物取引には取引所という第三者が存在しており,消費者契約法4条5項により,取消をもっ て善意の第三者に対抗できないから消費者契約法を適用できないと主張して争った。

【判断の内容】
以下の理由から取消を認めた。
① 2条により商品先物取引にも消費者契約法の適用がある。
② 「灯油は必ず下げてくる,あがることはあり得ないので,50枚売りでやってほしい。」「上場企業の部長の私を信用して30枚やってもらえませんか。」 「当たりの宝くじを買うみたいなものですよ。」「責任をもって利益をとって,お盆休みあけには,私が現金を持っていきます。」等の勧誘は,断定的判断の提 供(4条1項2号)にあたる。
③ 先物取引業者は商法551条の問屋にあたり,自己の名で他人のために物品の販売又は買い入れをなすもので,市場における取引契約が取り消されるわけではないから,先物取引業者による消費者契約法4条5項の主張は理由がない。

◆ H17.01.31東京地裁判決

2010年5月25日 公開

国センくらしの判例集HP2007年3月

【事案の概要】
MBAの資格取得のために,アメリカのビジネススクールの留学試験への合格を目的として,事業者が開講する授業を受講したが,留学に必要なすべてが確実に なるとか,個別指導をする旨の募集要項等において標榜されていた事項が実際には全く違っていたので,4条1項等により取消を主張した。

【判断の内容】
契約した一部のコースについては,留学に必要なすべてが確実になるような内容のものではなく,個別指導方式とはほど遠い内容のものであり,消費者契約法4 条にいう重要事項についての不実の告知があったものとして,その部分の契約については取消を認めた。残りのコースについては,特定商取引法の継続的役務提 供に当たり,消費者契約法に基づく本件受講契約の取消の意思表示は本件受講契約の中途解約の意思表示を含むものとして,特定商取引法49条に基づく中途解 約による返金が認められた。

◆ H16.10.07大阪簡裁判決

2010年5月24日 公開

平成16年(ハ)第2169号リース料請求事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 原司

【事案の概要】
電話機及び主装置一式のリース契約に基づきリース会社がリース料の支払いを求めたのに対し,リース契約の当事者ではない取扱店の従業員による勧誘が不実告知にあたるとして契約の取消しを主張した。

【判断の内容】
当該リース契約の締結に関し,申し込みの勧誘から契約書等の作成,契約内容の説明などは当該取扱店が行っていたことを前提に,当該従業員が光ファイバーを 敷設するためにはデジタル電話に替える必要があり,電話機を交換しなければならない旨を告げたため被告(消費者)がこれを信じたとし,4条1項1号による 契約の取消しを認めた。

◆ H16.11.15東京簡裁判決

2010年5月24日 公開

平成16年(少コ)第2715号売買代金返還請求事件
最高裁HP
裁判官 下里敬明

【事案の概要】
内職商法で月2万円は確実に稼げると勧誘されてシステム(CD-ROM)を購入させられた者が,断定的判断の提供を受けたとして4条1項2号による取り消しを求めた。

【判断の内容】
以下の理由から取消を認めた。
① 内職商法の被勧誘者であることを特に問題とすることなく,明らかに「消費者」にあたるとした。
② 月2万円は確実に稼げるとの発言は,将来において得るべき収入という不確実な事項につき具体的な金額を示して確実であるとの言い方をしており,断定的判断の提供(4条1項2号)にあたる。

◆ H16.11.29東京簡裁判決

2010年5月24日 公開

平成16年(ハ)第4044号立替金請求事件
最高裁HP
裁判官 野中利次

【事案の概要】
訪問販売で日本語をよく話せない中国人に教材を売りつけた事案で,信販会社が立替金を請求した。

【判断の内容】
①販売店の担当者がクレジットの返済月額を1万2000円位であると説明したが,実際にはその倍以上の引き落としであったこと等について不実告知と認め,本件クレジット契約は信販会社が販売店に媒介を委託したものであるとして(5条),4条1項による取消しを認めた。
②騙されたことを知った後に立替金を支払っていたとしても,相手方に対して追認の意思表示がなされた訳ではないとして,追認の主張を排斥しクレジット契約の取消しを認めた。

◆ H16.07.30大阪高裁判決

2010年5月23日 公開

平成15年(ネ)第3519号不当利得返還等本訴請求,受講料等反訴請求控訴事件
兵庫県弁護士会HP国セン報道発表資料HP2006年10月6日
裁判官 大谷種臣,三木昌之,島村雅之
原審 H15.10.24神戸地裁尼崎支部判決

【事案の概要】
易学受講契約及びこれに付随する契約(改名・ペンネーム作成,印鑑購入)について,勧誘方法が違法・不当であることを理由として契約の取消しを主張し,既払金の返還を求めた。

【判断の内容】
① 易学受講契約(一審は退去妨害による取消しを認めた。)につき,契約締結場所を退去した翌々日に授業料等の一部を支払ったことが民法125条1号所定 の債務の一部の履行に該当し,取消し得べき行為を追認したものとして,法4条3項2号による取消しを認めなかった(但し,当該契約自体は公序良俗に反し無 効とした。)。
② 付随契約(一審は断定的判断の提供による取消しを認めた。)につき,法4条1項2号にいう「その他将来における変動が不確実な事項」とは消費者の財産 上の利得に影響するものであって将来を見通すことがそもそも困難であるものをいうと解すべきであり,漠然とした運勢,運命といったものはこれに含まれない として,取消しを認めなかった(但し,当該契約自体は公序良俗に反し無効とした。)。

◆ H16.09.22福岡地裁判決

2010年5月23日 公開

平成15年(ワ)第974号損害賠償請求事件
最高裁HP
裁判官 亀川清長,板野俊哉,山口幸恵

【事案の概要】
マンションの購入の際,ペットの飼育に関する販売業者の説明が不適切であったためペットの飼育が可能であると誤信して購入契約を締結させられたとして,説 明義務違反による損害賠償請求(債務不履行責任)又は不利益事実の不告知(4条2項)による取消し等に基づく不当利得の返還を求めた。

【判断の内容】
マンション販売業者は制定予定の管理組合規約等の内容を説明する限りにおいてペット飼育の可否ないしその制限等についても説明する義務を負うとしたが,管 理組合規約は管理組合総会によって制定,改正されるものであるから,販売業者がマンション販売に際し説明しうるのは制定予定の管理組合規約等の内容に限ら れ,それを超えてペット飼育の可否についての説明義務までは負わないとして債務不履行責任を否定した。
マンションにおけるペット飼育の可否はマンション売買契約における重要な事項であったとしたが,販売業者による説明は制定予定の管理組合規約の解釈を述べ たにすぎず,また,購入者は本件マンションに入居する以前もマンションにおいて管理上一定の制約を受けつつペットを飼っていたことからすれば,利益となる 事実を告げたとはいえないとして,不利益事実の不告知による取消しを否定した。

◆ H14.03.12神戸簡裁判決

2010年5月16日 公開

平成13年(ハ)第2302号入所費等返還請求事件
兵庫県弁護士会HP,消費者法ニュース60号211頁
裁判官 福富昌昭
控訴後確定

【事案の概要】
歌手志望で俳優等養成所に入所直後,思っていたものと違うとして不実告知等による取消等を主張し,支払済費用の返還を求めた。

【判断の内容】
3ヶ月後の月謝の値上げを告げなかったことが不利益事実の不告知(4条2項)に該当するとして取消を認めた。

◆ H15.05.13千葉簡裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ハ)1312号,1313号貸金請求事件
消費者法ニュース65号28頁
裁判官 井上隆義
控訴審 H15.10.29千葉地裁判決
上告審 H16.02.26東京高裁判決

【事案の概要】
貸金業者の保証人に対する保証債務履行請求。実質的借主が誰であるか,主債務者の支払能力,融資金の使用目的及び弁済金の支払い方法について,虚偽の事実 を主債務者から告げられ,保証人が誤信して保証人となった,貸金業者はその事情を知っていたとして,第三者による詐欺(民法96条2項)による取消しを主張した。

【判断の内容】
主債務者(第三者)による欺罔行為により,実質的な借主が別人であることを知らなかったこと,貸金業者担当者がそのような本件背景事情を単に知っていたと いう以上に相当程度に関与していたことを認定し,民法96条2項の要件を満たすとして,第三者による詐欺取消しを認め,貸金業者の請求を棄却した。

◆ H15.05.14東京簡裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ハ)第85680号立替金請求事件
最高裁HP,消費者法ニュース60号213頁
裁判官 廣瀬信義

【事案の概要】
絵画のクレジット代金を支払わなかった消費者に対し,クレジット会社が代金の支払いを求めた。

【判断の内容】
以下の理由から,立替払契約の取消を認め,請求を棄却した。
① 販売店の担当者が「退去させない」旨告げたわけではないが,担当者の一連の言動はその意思を十分推測させるものであり,販売店の不適切な勧誘行為に困惑し,自分の意に反して契約を締結するに至ったものであるとして,4条3項2号に該当する。
② 取消権を行使した日は契約日から6ヶ月以上経過していたが,商品の引渡日からは6ヶ月が経過していなかったところ,引渡しを受けた段階でもいまだ困惑状態が継続していたとして,引渡しの時から取消権の行使期間が進行するとして,取消権の行使は有効である。

◆ H15.10.03大津地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第540号損害賠償請求事件
最高裁HP,消費者法ニュース58号129頁
裁判官 山口芳子

【事案の概要】
パソコン講座の受講生が,厚生労働省の教育訓練給付制度を利用して受講することを希望していたが,講座運営者の説明不足のために同制度を利用できなかったとして,不法行為に基づき受講料相当の損害金等の支払を求めた。

【判断の内容】
① 消費者契約法施行前(平成13年2月28日に受講申し込み)の事案であったが,同法1条,3条1項及び4条2項の趣旨を根拠として,事業者は取引上の信義則により適切な告知・説明義務を負うとして,損害賠償の一部を認容した。
② 損害について,受講料全額ではなく,給付制度が利用できれば得られたであろう給付金額部分のみを損害として認め,かつ,受講申し込みの際,給付制度を利用して受講することを申し出ていないことから3条2項の趣旨及び公平の見地から2割を過失相殺した。

◆ H15.10.24神戸地裁尼崎支部判決

2010年5月16日 公開

平成13年(ワ)第874号不当利得返還等本訴請求事件,平成14年(ワ)第470号受講料等反訴請求事件
兵庫県弁護士会HP,消費者法ニュース60号58頁,214頁
裁判官 安達嗣雄
控訴審 H16.07.30大阪高裁判決

【事案の概要】
易学受講契約及びこれに付随する契約(改名・ペンネーム作成,印鑑購入)について,勧誘方法が違法・不当であることを理由として契約の取消しを主張し,既払金の返還を求めた。

【判断の内容】
易学受講契約について,4条3項2号により,付随契約について4条1項2号によりそれぞれ取消しを認めた。
①法4条3項2号の「当該消費者を退去させないこと」とは,物理的であると心理的であるとを問わず,当該消費者の退去を困難にさせた場合をいう。
②消費者の運勢や将来の生活状態は,法4条1項2号にいう「将来の変動が不確実な事項」にあたる。

◆ H15.10.29千葉地裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(レ)第38号貸金請求控訴事件
兵庫県弁護士会HP,消費者法ニュース65号32,159頁
裁判官 小林正,佐久間政和,鎌形史子
第1審 H15.05.13千葉簡裁判決
上告審 H16.02.26東京高裁判決

【事案の概要】
貸金業者の保証人に対する保証債務履行請求。実質的借主が誰であるか,主債務者の支払能力,融資金の使用目的及び弁済金の支払い方法について,虚偽の事実 を主債務者から告げられ,保証人が誤信している状態にあることを知りながら,あえてこれを告げずに保証契約を締結させた貸金業者の行為が不実告知にあたる として,保証契約について4条1項1号による取消しを主張した。

【判断の内容】
① 本件連帯保証契約における主債務者及びその支払能力,融資金の使用目的及び弁済金の支払方法は4条1項1号の重要事項にあたる。
② これらについて主債務者から虚偽の説明を受け保証人が誤信していることを知りながら,あえて沈黙して保証契約を締結させた貸金業者の行為は不実告知に当たる。
として,不作為による不実告知を認めて4条1項1号による取消しを認め,貸金業者の請求を棄却した。

◆ H15.11.07大阪地裁判決(2)

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第6370号学納金返還請求事件
最高裁HP
裁判官 中村隆次,宮武康,籔崇司

【事案の概要】
一般入学試験による大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
①本件在学契約は消費者契約である。②入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。③法9条1号の平均的な損害に関する立証責任について,消費者が負担するとした上で,本件では平均的損害は0であるとして,授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効として返還を命じた。

◆ H16.01.09大阪簡裁判決

2010年5月16日 公開

国民生活2007年1月号64頁,国セン暮らしの判例集2007年1月

【事案の概要】
パソコン内職をすれば月々5万円以上の収入になるといわれて教材をクレジットで購入したが,その収入が稼げなかったため4条1項1号等により立替払契約の取り消し,クレジット会社に既払い金の返還を求めた。

【判断の内容】
4条2項により立替払契約の取消しを認め,クレジット会社に対し代金の返還を命じた。

◆ H16.02.19大分簡裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(ハ)第267号原状回復等請求事件
消費者法ニュース60号59頁
裁判官 角南昌伸

【事案の概要】
自宅の床下に拡散送風機等を設置する請負契約の締結前,業者の従業員に対し,退去すべき旨の意思を表示したにもかかわらず退去しないことにより困惑し,そ れによって契約を締結したとして,契約を取り消すとともに,業者に対して既払い金の返還を,信販会社に対しては抗弁対抗により,債務不存在の確認を求め た。

【判断の内容】
「そのようなものは入れんでいい,必要ない。」「帰ってくれ。」「換気扇は必要ない,私らを騙しているんじゃないんか。」などと言っているにもかかわら ず,午前11時ころから午後6時30分ころまで勧誘して契約を締結したことにつき,不退去により困惑して契約を締結したものとして,請負契約の取消しを認 め,業者に対して既払い金の返還請求を,信販会社に対しては抗弁対抗を認め債務不存在を確認した。

◆ H16.02.26東京高裁判決

2010年5月16日 公開

平成16年(ツ)第9号貸金請求上告事件
消費者法ニュース65号35頁
裁判官 鬼頭季郎,小池信行,任介辰哉
第1審 H15.05.13千葉簡裁判決
控訴審 H15.10.29千葉地裁判決

【事案の概要】
貸金業者の保証人に対する保証債務履行請求。実質的借主が誰であるか,主債務者の支払能力,融資金の使用目的及び弁済金の支払い方法について,虚偽の事実 を主債務者から告げられ,保証人が誤信している状態にあることを知りながら,あえてこれを告げずに保証契約を締結させた貸金業者の行為が不実告知にあたる として,保証契約について4条1項1号による取消しを主張した。

【判断の内容】
① 本件連帯保証契約における主債務者及びその支払能力,融資金の使用目的及び弁済金の支払方法は4条1項1号の重要事項にあたる。
② これらについて主債務者から虚偽の説明を受け保証人が誤信していることを知りながら,あえて沈黙して保証契約を締結させた貸金業者の行為は不実告知に当たる。
として,不作為による不実告知を認めて4条1項1号による取消しを認め,貸金業者の請求を棄却した。

◆ H13.07.18川越簡裁判決

2001年7月18日 公開

平成13年(少コ)第30号入会金請求事件
消費者法ニュース60号66頁
裁判官 池田聡介

【事案の概要】
事業者からの旅行情報提供サービス会員の入会金請求訴訟に対し,消費者が支払方法につき不実告知等による取消を主張した。

【判断の内容】
① 事業者の説明内容の評価について,1条の趣旨から,事業者の専門的な常識を前提に個々の説明の意味内容を確定することは妥当ではなく,当該契約時の状況を基礎として平均的な消費者を基準にして評価すべきものであるとした。
② その上で,事業者の説明内容について,サラ金からの借入が条件であるのに,自社割賦であるかのような説明内容であったとして,不実告知による取消を認めた。



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