【レイアウトの手動変更】

レイアウトの種類は目安です。
【レイアウト】と【文字サイズ】を変更し、最適な閲覧環境でご覧ください。


PC・タブレット横に最適
タブレット縦に最適
ファブレット・スマホ横に最適
スマホ縦に最適
※設定は90日間有効です。
×

「2014年3月」アーカイブ|消費者契約法判例集

◆ H18.01.31東京地裁判決

2014年3月29日 公開

平成16年(ワ)第14344号学納金返還請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 石井浩、間部泰、川原田貴弘

【事案の概要】
 被告が設置する大学に合格し、入学金や授業料等を納入した後、他大学への合格を理由に入学を辞退した原告が、不当利得返還請求権に基づき、被告に対し、入学時納入金の返還等を求めた事案。

【判断の内容】
① 平均的損害の立証責任は消費者が負うが,平均的な損害に関する情報及び証拠の多くは事業者側にあるものと認められるところ、消費者と事業者との間の情報の質及び量の格差を是正し、消費者の利益を擁護することを目的とする消費者契約法の趣旨にかんがみれば、平均的な損害の額を超えることが一応の合理的理由に基づいて認められた場合には、事業者において必要な反証がされない限り、消費者の立証責任は尽くされたものとして、立証された金額が平均的な損害の額であると事実上推定されると解するのが相当。
② 入学金は大学に入学し得る地位を取得することなどの対価であり、大学はその返還をすることを要しない。
③ 授業料・教育充実費については,入学予定者の入学辞退により何らかの平均的損害はないものと認めるのが相当であるから、授業料及び教育充実費を返還することを要しない旨の合意は9条1号により無効であり、被告大学はこれを返還することを要する。

◆ H18.05.25東京地裁判決

2014年3月29日 公開

平成17年(ワ)第16768号入学金返還請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 松本明敏

【事案の概要】
 原告が、被告設置の大学の入学試験に合格し、入学時納付金として入学金及び授業料その他の費用を納付した後、入学を辞退したことにより在学契約は解除されたとして、被告に対し、不当利得返還請求権に基づき、未返還の学納金及びその遅延損害金の支払を求めた事案。

【判断の内容】
① 入学金は、入学し得る地位または学生たる地位取得の対価であり、入学事務手続の手数料としての性格を併せ有する。被告に対し入学金を納付したことにより、被告の原告に対する入学事務手続が履践されて本件在学契約を成立させることができ、本件大学に入学し得る地位を取得したのであるから、原告としては、納入した入学金の対価的利益を享受したのであり、原告から納付された入学金を取得することについて、被告に法律上の原因があるというべき。
② 授業料については,本件不返還特約は9条1号により無効であり,返還すべき。

◆ H19.01.29東京地裁判決

2014年3月29日 公開

平成18年(ワ)11115号不当利得返還請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 永野厚郎

【事案の概要】
 被告から未公開株式を購入した際に、被告従業員から株式が上場されることにより値上がりすることは間違いないとの断定的判断の提供を受けたとして、4条1項1号及び2号に基づく売買契約の取消しと代金の返還を求めた事案。

【判断の内容】
 被告による断定的判断の提供があったとして,4条1項2号により売買契約の取消を認め,代金の返還を命じた。

◆ H17.03.15東京地裁判決

2014年3月23日 公開

平成16年(ワ)第13205号貸金請求本訴,不当利得返還等請求反訴事件
判例時報1913号91頁,ウエストロー・ジャパン
裁判官 工藤正

【事案の概要】
 特定の法律事務所の弁護士らが主体となり、報酬を得る目的で、業として、債務整理を受任した依頼者のうちから大手消費者金融業者甲に対して不当利得返還請求権を有している不特定多数の者から甲に対して貸金債務を負担している不特定多数の者に同請求権を譲渡させ、これらの権利実現を訴訟等の手段を用いて実行している場合において、このような債権譲渡は、公序良俗に反し無効であるとされた事例。
 金銭消費貸借契約の債務不履行に基づく返済債務に関する債務弁済契約における賠償額の予定の定めには、利息制限法4条が適用されるか、消費者契約法9条2号が適用されるかが争われた。

【判断の内容】
 11条2項は、「消費者契約の条項の効力について民法及び商法以外の他の法律に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。」と規定しているところ、利息制限法が、消費貸借契約の場合における相当な利得の利率及び遅延損害金の割合の上限を定めることを目的としていることに鑑み、「金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定」については、利息制限法の規定が優先して適用されるものと解するのが相当である。そして、このことは、「金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定」についての和解契約についても同様であると解するのが相当である。

◆ H17.04.22大阪高裁判決

2014年3月23日 公開

平成16年(ネ)第1083号学納金返還請求控訴事件
民集60巻9号3698頁,ウエストロー・ジャパン
上告審 H18.11.27最高裁判決(5)

【事案の概要】
 学納金返還請求。①在学契約及び学納金の法的性格,入学辞退の法的効果,②在学契約に消費者契約法が一般的に適用されるか,③本件特約が9条1号により無効となるか,本件特約が10条により無効となるか,等が争われた。入学手続要綱等に「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものと見なす」などの記載があった。

【判断の内容】
① 学生からの在学契約解消については民法651条の類推適用を認め,同条1項により,いつでも在学契約を将来に向かって解除することができるものと解するのが相当であり,学生からの入学辞退の意思表示はこの在学契約解除の意思表示と理解するのが相当。
② 授業料等の不返還を定める部分は,9条1号に当たる。
③ 平均的損害の額の立証責任は,消費者が負う。
④ 3月31日までに在学契約を解除した場合,授業料部分は平均的な損害を超えるものとなる。
⑤ 4月1日以降に在学契約を解除した場合,学部・学科の授業内容,定員数,発生すると考えられる損害の内容,等の事情を考慮し,大学,各部,学科ごとに,20万円から30万円の範囲で平均的損害を算定した。
⑥ 本件特約には10条は適用されない。

◆ H15.11.26東京地裁判決

2014年3月15日 公開

平成14年(ワ)第27108号契約金請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 遠山廣直

【事案の概要】
 被告らとの間で国際結婚仲介契約を締結したとするコンサルタント会社(原告)が、中国人女性を紹介したにもかかわらず、被告らが中国への渡航を中止したとして、違約金等の支払を求めた事案。損害賠償額の予定が9条により無効となるか,契約者が契約を解約するときには原告の定める解約書を提出することによって行う旨、及び提出されたパスポートは一切返却しない旨の定めが10条により無効となるか等が争われた。

【判断の内容】
① 契約者が契約を解約するときには原告の定める解約書を提出することによって行う旨の条項は,本来意思表示をもって足りる解約の意思表示について消費者である被告の利益を害する条項というべきであり,10条により無効となる。
② 提出されたパスポートは一切返却しない旨の条項は,消費者の海外渡航の自由を制限するものであって10条により無効というべきである。
③ 10条により当該条項が無効となるとしても,本件契約全体が無効ということは出来ない。

◆ H16.03.25山口簡裁判決

2014年3月15日 公開

平成15年(ハ)第406号,第411号貸金等請求事件,不当利得返還請求事件
消費者法ニュース60号109頁,兵庫県弁護士会HP
裁判官 德丸哲夫

【事案の概要】
 貸金業者である原告が、原告と訴外Aとの間の金銭消費貸借契約の連帯保証人である被告に対し、貸金残金等の支払を求めた(甲事件)のに対し、被告が、過払金が生じているとして、原告に対し、不当利得返還請求権に基づき過払金等の支払を求めた(乙事件)事案。約定利息の支払を遅滞することにより、当然に期限の利益を失う旨の条項と支払いの任意性について争われた。

【判断の内容】
 貸金業規制法43条の適用要件については厳格に解釈すべきこととあわせ,消費者契約法の消費者保護の精神を総合的に考慮すれば,契約証書等の内容については,債務者に弁済を強要することになるようなあいまいな表現を避けて,明確な記述をし,債務者に不利益を与えないようにすべきであると判示して,貸金業者の主張を排斥し,みなし弁済の適用を否定した。

◆ H25.09.18東京高裁判決

2014年3月12日 公開

平成25年(ネ)第3187号損害賠償請求控訴事件
判例秘書
裁判官 下田文男,橋本英史,脇由紀
第1審 H25.04.19東京地裁判決

【事案の概要】
 スイスの銀行に口座を有する日本人が銀行から勧誘を受けて株式を購入させられたことが適合性原則違反,説明義務違反に当たるとして不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を日本の裁判所に提起したところ,スイスの裁判所を専属管轄とする合意があるとして訴えを却下されたことに対する控訴審。この管轄の合意について消費者契約法10条が適用されるかについても争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から,被控訴人の消費者契約法10条が適用される余地はないとの主張を排斥し,10条該当性を判断した(なお,本件については無効とはならないとした)。
① 本件各申込書には,本件各口座開設契約の準拠法をスイス連邦法とする旨の条項があるが,国際的専属的裁判管轄合意の効力に関する準拠法は,法廷地法である我が国の国際民事訴訟法であると解される。被控訴人が主張するように法例7条を適用し,あるいは類推適用してスイス連邦法が準拠法となると解するのは相当でない。
② 国際的専属的裁判管轄合意の効力は,我が国の国際民事訴訟法の見地から,公序法違反の有無のほかに,契約(意思表示)の効力に関する我が国の民法その他の成文法の規定の趣旨(法意)を参酌して判断される場合がある。
③ 控訴人らは個人であって,事業として又は事業のために契約の当事者となったものではなく,一方,被控訴人は法人であるから,両者の間に成立した本件管轄合意の効力について,消費者契約法10条の規定の趣旨を参酌して判断する余地があるというべきであって(同法1条,2条1項ないし3項参照),同法10条の適用が問題となることはない旨の被控訴人の主張は,採用することができない。

◆ H25.08.26東京地裁判決

2014年3月12日 公開

平成23年(ワ)第4089号預託金返還等請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 亀村恵子、坂本雅史、吉田徹

【事案の概要】
 証券会社から仕組債を購入した顧客が,当該契約について瑕疵があると主張して預託金の返還や損害賠償を請求した事案。不実告知,不利益事実の不告知,断定的判断の提供の有無が争点の1つとなった。

【判断の内容】
 不実告知,不利益事実の不告知,断定的判断の提供について,以下の理由からこれを否定した。
① (仕組債の組成に要する費用や被告が仕組債を販売することによって得る利益が4条1項にいう「重要事項」に該当するか否かについて)
 本件各仕組債は,日経平均株価の変動に従って損益が確定する金融商品であり,適用利率決定の条件や早期償還の条件,満期償還金額の計算式等を理解すれば本件各仕組債のリスクとリターンの具体的な内容を知ることができ,投資の適否の判断に必要な情報は与えられているといえるのであって,本件各仕組債の組成に要した費用や被告がその販売により得る利益の額を知らなければ,本件各仕組債のリスクとリターンとが見合っているかを判断することができないとはいえない。本件各仕組債が生み出すキャッシュフローの具体的内容は,将来日経平均株価がどのように推移するかという点に左右されるのであって,これは個々の投資家が現在・将来の経済情勢に関する認識・見通し,各々の相場観に基づいて判断すべき事項であり,一般的な投資判断と異なるところはなく,殊更困難な予測・判断を要求されるものではない。
 確かに,抽象的には,本件各仕組債の組成に要する費用その他発行体及び販売者側に生じた費用が投資家に転嫁されることによって,投資家が得る利得がその分だけ減少しているものと考えられるが,そこで生じた費用の額を知ったからといって,本件各仕組債のリスクとリターンに関する投資判断に直ちに影響が及ぶことになるともいえない(換言すれば,その費用にかかわらず,将来の日経平均株価に関する見通しと本件各仕組債の発行条件とを照らし合わせることで,本件各仕組債が生み出すキャッシュフローの具体的な内容について認識・予測することができ,本件各仕組債のリスクとリターンに関する一応の投資判断は可能なものといえる。)。
 したがって,仕組債の組成に要する費用や金融商品取引業者が仕組債を販売することによって得る利益の存否やその多寡が,一般投資家が当該仕組債を購入するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきものということはできず,法4条にいう重要事項に当たるとはいえない。
② (不利益事実の不告知について)被告が本件各仕組債の販売により利益を得ている旨やその組成に費用を要したことを告知しなかったとしても,通常の投資家が,被告が本件各仕組債の販売によって利益を得ておらず,その組成に費用を要しなかったと考えるとはいえない。
③ (断定的判断の提供について)販売担当者の説明によって,原告が将来にわたり日経平均株価が60パーセントまで低下することは確実にないと誤信したものと認めることはできない。



ひとつ前のページにもどる弁護士法人 近江法律事務所|トップページにもどる