「2013年」アーカイブ|消費者契約法判例集
◆ H23.10.28東京地裁判決
平成22年(ワ)第8460号授業料返還等請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 生野考司、前澤功、仲田憲史
【事案の概要】
ラインパイロットになることを目指した原告が、ニュージーランドの航空大学校で語学研修を受けた上、飛行訓練等を受けるなどして事業用免許等を取得し、帰国した後さらに事業用操縦士免許を取得して就職するという訓練システムの受講契約を被告との間で締結し、ニュージーランドの語学学校で研修していたところ、上記大学校での訓練を受けるための規定の英語能力が得られなかったことなどから、本件受講契約を解除したとして、被告に対し、前払い費用の精算として未使用授業料等の支払を求めた事案。学納金の不返還条項の効力が争われた。
【判断の内容】
① 入学金については、学生が大学に入学し得る地位を取得する対価の性質を有しており,その納付をもって学生は上記地位を取得するものとして、返還義務を否定した。
② 入学金以外の部分に係る本件不返還合意は,消費者契約法9条1号の損害賠償の額の予定に係る合意であるから,解除の事由,時期等の区分に応じ,本件契約と同種の契約の解除に伴い被告に生ずべき平均的な損害を超えるものについては無効であるとして、施設費、学費・訓練費、滞在費、寮費等の一部について返還請求を認めた。
◆ H23.10.27東京地裁判決
平成22年(ワ)第13457号敷金返還等請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 和久田道雄
【事案の概要】
マンションの貸室を目的とする賃貸借契約に関し、同貸室を退去した原告(当時司法修習生、現在弁護士)が、賃貸人である被告に対し、造作買取請求権不行使特約、礼金及び更新料の各支払特約、敷金から清掃費用を控除する旨の特約は消費者契約法10条に反し、無効であるとして、造作買取代金の支払、各既払金員相当額の不当利得返還、敷金のうち返還を受けた部分を除いた残額等の各支払を求めた事案。
【判断の内容】
以下の理由から、いずれも請求を棄却した。
① 造作買取請求権排除条項、礼金条項、更新料条項について、当該条項が信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるか否かは,消費者契約法の趣旨,目的(同法1条参照)に照らし,当該条項の性質,契約が成立するに至った経緯,消費者と事業者との間に存する情報の質及び量並びに交渉力の格差その他諸般の事情を総合考慮して判断されるべき。
本件条項は、いずれも内容が一義的に明確であり、金銭的負担を明確に意識した上で契約条件を比較検討して選択することが可能であったから、信義則に反して消費者である原告の利益を一方的に害するものということはできない。
② 賃貸人は契約終了時に使用状況,清掃状況にかかわらず,清掃費用7万2093
円を敷金から控除するとの条項(敷引条項)について、消費者契約である住居用建物の賃貸借契約に付された敷引特約は,当該建物に生ずる通常損耗等の補修費用として通常想定される額,賃料の額,礼金等他の一時金の授受の有無及びその額等に照し,敷引金の額が高額に過ぎると評価すべきものである場合には,当該賃料が近傍同種の建物の賃料相場に比して大幅に低額であるなど特段の事情のない限り,信義則に反して消費者である賃借人の利益を一方的に害するものであって,消費者契約法10条により無効となると解するのが相当。
本件の場合、経過年数(4年)、賃料額、礼金額、更新料額を考慮しても、敷引金の額が高額に過ぎると評価することはできず、無効とはいえない。
◆ H23.10.24東京地裁判決
平成22年(ワ)第12243号保証金返還等請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 武藤真紀子
【事案の概要】
建物賃貸借契約の終了に基づく保証金返還請求。保証金償却条項が10条違反に当たるかが争われた。
【判断の内容】
10条の「消費者契約」とは,消費者と事業者との間で締結される契約をいうと定義されるが(2条3項),個人であっても,事業として又は事業のために契約の当事者となる場合は「消費者」に該当しない(2条1項)ものであるところ,原告は,本件建物をクラブとして使用する目的で賃借し,現に,本件建物においてクラブを営業していたのであって,事業のために本件賃貸借契約を締結したものであるから,本件賃貸借契約は10条にいう「消費者契約」とはいえず,原告の主張は前提を欠くとして、消費者契約法は適用されないとした。
◆ H22.08.31大阪高裁判決
平成21年(ネ)第2785号債務不存在確認等請求控訴事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 紙浦健二、川谷道郎、宮武康
第1審 大阪地裁平成21年(ワ)第113号
【事案の概要】
5年間で償却する約定で600万円の入居金を支払って被控訴人の高齢者用介護サービス付賃貸マンションに母親を入居させていた控訴人が、2年後、賃貸借契約の終了に伴い、入居金の返還を求めた事案。入居金の償却条項が10条により無効となるかが争われた。
【判断の内容】
以下の理由から10条により入居金の焼却場公は無効であるとして返還請求を認めた。
① 本件入居金の法的性格は、賃貸借契約から生ずる控訴人の債務の担保、医師及び看護師による24時間対応体制が整った居室への入居の対価及び入居後の医師・看護師らによるサービスの対価としての性格を併有する。
② 本件マンションには被控訴人が宣伝していたような24時間対応体制の実態はなく、被控訴人が対価に相当するサービスを提供していないのに1年毎120万円を取得することは、民法の一般規定による場合と比較して消費者である控訴人の権利を制限するものであるから、本件約定は10条により無効である。
◆ H22.08.30東京地裁判決
平成21年(ワ)第40358号損害賠償請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 湯川克彦
【事案の概要】
被告会社からパチンコの攻略情報を購入した原告が、被告会社が一連の勧誘行為において、断定的判断を提供し、虚偽の情報を提示したなどと主張して、被告会社らに対して、不法行為又は不当利得に基づき、損害の賠償又は不当利得の返還として、原告の被った財産的損害、精神的損害及び弁護士費用の支払を求めた事案。
【判断の内容】
被告会社は実効性の認められないシステムに基づく本件攻略情報を購入するよう勧誘し、本件攻略情報が有効である旨原告を誤信させて原告から金員の交付を受けたもので、本件契約について消費者契約法上の取消事由となるだけでなく詐欺行為として不法行為に該当するとした。