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「2013年」アーカイブ|消費者契約法判例集

◆ H25.03.27東京地裁判決

2013年11月26日 公開

国セン発表情報(2013年11月21日公表)

【事案の概要】
 放送法の規定に基づき設置された法人である被控訴人と控訴人は放送受信契約を締結したが、その後、控訴人は受信料を支払わなくなった。このため、被控訴人は、控訴人に対し、本件契約に基づき未払い受信料及び約定遅延損害金の支払いを求めた。控訴人は、被控訴人の会計検査院法27条違反、放送法27条違反、放送法4条及び14条違反などを理由に、本件契約が民法90条に違反し無効であると主張した。また、本件契約は消費者契約であり、被控訴人が控訴人に重要事項である受信契約の内容を十分に説明していないなどとして法4条1項1号による本件契約の取消しを主張した。さらに、本件契約に基づく受信料債権は、民法173条による2年の短期消滅時効または民法169条の定期給付債権として5年の短期消滅時効により消滅するとして、消滅時効を援用する旨の意思表示をした。原審は、被控訴人の請求を全部認容した。

【判断の内容】
 本件受信契約が公序良俗に反するとはいえない。放送受信契約は、放送法64条2項によりその締結を義務付けられている上、同条3項において、同契約の条項につきあらかじめ総務大臣の認可を受けなければならないとされていることからすれば、当事者の自由意思により締結されるものとはいえないから、放送受信契約の締結について法4条1項が適用される余地はない。本件受信料債権については、民法173条に定める債権には該当しない。本件受信料債権は、本件受信契約という基本契約に基づいて発生し、受信規約により月額が定められ、2カ月毎に支払うことを内容とするものであるから、基本権たる定期金債権から派生する支分権として、民法169条に定める債権に該当する、として控訴を棄却した。

◆ H25.04.19東京地裁判決

2013年11月26日 公開

平成23年(ワ)第38665号、平成24年(ワ)第5632号違約金請求事件(本訴)、(反訴)
ウエストロー・ジャパン、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 樋口真貴子

【事案の概要】
 本訴では、不動産業者である原告が、土地の買主である被告に対し、被告の売買代金未払いを理由に売買契約を解除した上、売買契約の違約金条項に基づき、売買代金の20%相当額から既に受領済の代金を控除した額及び遅延損害金の支払いを求めた。反訴では、被告が原告に対し、主意的には原告の建築条件(土地の売主が同土地上の建物の建築も請け負うという条件)を付さないという義務違反及び融資協力義務違反を理由に売買契約を解除した上、原状回復義務の履行として、支払済代金の返還及び売買契約の違約金条項に基づく違約金の支払い並びに遅延損害金の支払いを求めた。そして、予備的には第一に、原告が重要事項である建築条件について事実と異なることを告げて被告を誤認させたとして法4条1項1号または法4条2項による売買契約の取消し、または錯誤無効を主張して支払済代金及び遅延損害金の支払いを求め、第二に、被告は売買契約を手付解除したとして、原告に対し、支払済売買代金から手付金を控除した額及び遅延損害金の支払いを求めた。

【判断の内容】
 原告は、被告との間で、建築条件なし及び更地渡しをすることに合意して本件売買契約を締結したにもかかわらず、建物建築についても原告に請け負わせ、ひいては本件土地上の建物の解体費用を事実上被告に負担させる意図を隠して仮請負契約書を作成させ、原告と建築請負契約を締結させようと強引な営業活動を行ったことが認められるものの、原告と建築請負契約を締結しなければ本件土地を引き渡さない、現実に具体的な解体費用を被告に請求したなどの客観的事実はなく、債務不履行とまでは認められない。また、融資協力義務についても原告に債務不履行があるとは認められない。本件売買契約において、建築条件が付されていないことや更地渡しであることは法4条4項2号にいう重要事項に該当するが、重要事項についての不実告知、不利益事実の不告知は認められない。他方、被告が原告に対し行った解除の意思表示は手付解除として有効であると認められるから、原告は、被告に対し、既に受領済の売買代金から手付金を控除した額及び遅延損害金を支払う義務があるとした。

◆ H25.02.19東京地裁判決

2013年11月24日 公開

国セン発表情報(2013年11月21日公表)

【事案の概要】
 消費者である原告が、被告の発行する社債を購入した際、社債を購入する消費者にとって重要な事項である社債管理者の設置の有無について、被告がこれを設置していないという原告にとって不利益な事実をあえて告げておらず、原告はこのことを告知されていれば本件社債を購入することはなかったとして、法4条2項に基づき本件契約の申込みの意思表示を取消し、被告に対して不当利得返還請求をした。また、被告は、原告による法4条2項に基づく取消しの主張を争っているにもかかわらず原告に約束した本件の社債の利息を支払わないため、原告は契約を解除するとの意思表示をした。

【判断の内容】
 被告が社債管理者を設置していないことを原告に告げなかったことと、原告の本件社債購入申込みの意思表示との間には因果関係が認められないから、法4条2項に基づく原告の主張には理由がない。被告は、原告が社債権者であることを認め、原告による法4条2項に基づく取消しの主張を争うにもかかわらず、約束した利息の支払をしないことは、被告の債務不履行と認められ、契約解除による損害賠償として原告に購入代金相当額を支払う義務があるとして、原告の請求を認容した。

◆ H25.02.27東京地裁判決

2013年11月24日 公開

平成23年(ワ)第6307号求償金請求事件
ウエストロー・ジャパン、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 川﨑聡子

【事案の概要】
 消費者である被告は、補助参加人から宝飾品の購入契約を締結し、その資金を訴外銀行から借り受けるにあたり、別業者と保証委託契約を締結した。その後別業者の権利義務を承継した原告が、保証委託契約に基づき求償権を取得したとして、被告に対し、求償金及び遅延損害金の支払いを求めた。被告は、本件契約は特定商取引法に定める訪問販売に該当し、申込みを撤回する旨の意思表示をしたと主張した。また、補助参加人は、本件商品の質及び価格に関する重要事項の不実告知(法4条1項1号)を行い、宝石は後まで残る財産であるとの断定的判断を提供し(法4条1項2号)、被告を退去困難に陥らせ(法4条3項)、これにより誤認または困惑を生じた結果本件契約の締結に至ったものであると主張した。また、商品の対価その他の取引条件について、不利益事実の不告知(法4条2項)を行ったと主張し本件契約を取消す旨の意思表示をした。そして、法5条及び4条の類推適用によって、本件保証委託契約自体も取消すと主張した。

【判断の内容】
 被告は、補助参加人の店舗を頻繁に訪れ本件商品を自ら希望して本件販売契約に至ったものであり、訪問販売には該当しないから特定商取引法による申込みの撤回はできない。単に宝飾品の買取業者や鑑別業者が査定した価格と販売価格との間に差異があることをもって、売主が、商品の質及び価格に関する重要事項につき不実の告知をしたということはできない。本件契約において、補助参加人の従業員らが述べた内容はセールストークの域を出ず、補助参加人が被告に対し、将来における本件商品の価額その他変動が不確実な事項について断定的判断を提供したということはできない。また、補助参加人が、被告が店舗から退去すべき旨の意思表示をしたにもかかわらず被告を退去させなかったと認めることはできない。本件契約の締結につき、不利益事実の不告知があったともいえない。以上により、法4条に基づく取消しをすることはできない。そして、法4条の取消し事由に該当するような違法な勧誘が行われたとはいえないから、本件保証委託契約が法5条及び4条の類推適用により取消し得るということもできないとした。

◆ H25.03.19東京地裁判決

2013年11月24日 公開

国セン発表情報(2013年11月21日公表)

【事案の概要】
 放送法の規定に基づき設置された法人である被控訴人と控訴人は放送受信契約を締結したが、その後、控訴人は受信料を支払わなくなった。このため、被控訴人は、控訴人に対し、本件契約に基づき未払い受信料及び約定遅延損害金の支払いを求めた。控訴人は、被控訴人の会計検査院法27条違反、放送法27条違反、放送法4条及び14条違反などを理由に、本件契約が民法90条に違反し無効であると主張した。また、法4条1項1号による本件契約の取消しを主張した。さらに、本件契約に基づく受信料債権は、民法173条による2年の短期消滅時効または民法169条の定期給付債権として5年の短期消滅時効により消滅するとして、消滅時効を援用する旨の意思表示をした。原審は、被控訴人の請求を全部認容した。

【判断の内容】
 控訴人が主張する事情はいずれも控訴人と被控訴人との間の本件契約の目的及び内容が公序良俗に反することを認めるに足りるものではなく、本件契約は民法90条に違反するとは認められない。本件契約は法人である被控訴人と個人である控訴人の間で締結された契約であるから消費者契約であり、法の適用を受ける。しかし、本件契約の締結時において、法4条1項1号の要件を充足する事実は認められない。本件受信料債権については、民法169条の適用があり、弁済期から5年間これを行使しないときは時効消滅する。しかし、本件受信料債権の消滅時効は、控訴人の配偶者による債務の承認により中断した。控訴人は、配偶者による債務の承認がなされた時点で、既に消滅時効が完成していた本件受信料債権について消滅時効を援用することができないとして控訴を棄却した。

◆ H25.03.26東京地裁判決

2013年11月24日 公開

国セン発表情報(2013年11月21日公表)

【事案の概要】
 消費者である原告は、肩こりや頭痛などの症状についてインターネットで通院先を探し、被告らとの間でカイロプラクティックの施術契約を締結し、施術を受けた。原告は、被告らが、原告の猫背、頭痛、肩こりはカイロプラクティックによる施術によって治るとは限らないにもかかわらず、それを故意に告げず、かえって、原告らの症状が治ると将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供したため、原告は、本件各施術によって症状が治るのが確実であると誤認したと主張し、法4条2項により本件各施術契約を取消す旨の意思表示をし、不当利得の返還請求をした。

【判断の内容】
 カイロプラクティックの施術における「猫背、頭痛、肩こりの症状を改善させる効果の有無」については、消費者契約の目的となる役務についての「質」に該当すると認められる。被告らが、本件各施術によって猫背、頭痛、肩こりの症状が改善していく旨の説明をしたことは認められるが、施術によって症状が改善しないと認めることはできないから、被告らが本件各施術によって症状が改善しないにもかかわらず改善する場合があると告げたと認めることはできない。また、被告らが、原告に対し症状が軽減、消失しないことを告知しなかったことが法4条2項に反するとはいえない。そして、被告らが「猫背、頭痛、肩こりが治る」などという断定的明言をした事実を認めることはできず、原告において、猫背、頭痛、肩こりが確実に治ると誤信したと認めることは困難である。被告らが、症状が改善しない場合があることを故意に告げなかったとも認められない。以上により、原告の本件各施術契約の申込みの意思表示につき、法4条2項に基づいて取消すことはできないとして、原告の請求を棄却した。

◆ H23.11.25広島高裁判決

2013年11月23日 公開

平成23年(ネ)第348号損害賠償請求控訴事件
金融法務事情1966号115頁、金融商事判例1399号32頁、銀行法務21 752号51頁、銀行法務21 756号80頁、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 小林正明、古賀輝郎、野上あや
第1審 H23.04.26広島地裁判決

【事案の概要】
 被控訴人からユーロ円建て債券を購入して損失を被った控訴人が、当該債権を購入する際、被控訴人の勧誘行為に適合性原則違反、説明義務違反、断定的判断の提供があったとして、被控訴人に対し使用者責任による損害賠償を求めるとともに、本件売買契約は公序良俗違反、錯誤、詐欺、法4条違反に該当し、無効または取消し原因があると主張した。

【判断の内容】
 原審を支持して、法4条の断定的判断の提供には当たらないとした。

◆ H23.12.01東京地裁判決

2013年11月23日 公開

平成23年(レ)第1117号損害賠償請求控訴事件
LLI/DB、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 本多知成、秋元健一、鈴木美智子

【事案の概要】
 原告は、自己が経営するホームセンターで商品を購入した顧客に対し、商品の運搬のための自動車を1時間無償で貸与するサービスを行っていた。原告のホームセンターで商品を購入した未成年の被告は、自宅に商品を運搬するため、原告の軽トラックを借りて運転していたところ、ガードレールに接触させる事故を起こし、車両を損傷させた。そこで原告は、被告に対し、本件車両のリース解約料相当額の損害賠償を請求した。被告は、未成年者取消および本件車両の使用貸借契約の締結に当たっては、原告は被告に対し事故による損傷の場合、保険を適用せずに借用者に負担を求めることがあるなど顧客にとって重大かつ不利益な事実を告知しなかったことから消費者契約法4条2項による取消しを主張した。原審は、被告の未
成年者取消を認めたため、原告が控訴。

【判断の内容】
 本件契約締結の際、原告が被告に対し提示した「レンタル車使用についてのお願い」には、過失による破損、故障の修理費は顧客の負担となる旨記載されているのであって、車両保険を適用しないことを前提としている。したがって、重要事項について消費者の不利益となる事実を故意に告げなかったものと認めることはできないとして、法4条2項による取消しを認めなかった。未成年者取消についても、法定代理人の包括的な同意があったものとして取消しは認められないとして、原判決を取消し、原告の請求を認容した。

◆ H24.02.03東京地裁判決

2013年11月23日 公開

国セン発表情報(2013年11月21日公表)

【事案の概要】
 建物の賃貸人である原告が、賃借人である被告Y1及び連帯保証人である被告Y2に対し、未払賃料等の支払いを求めた。被告らは、本件建物の他の居室について賃料の値下げがあったにもかかわらず、これを隠して被告Y1との間で本件賃貸借契約を締結しており、これは法4条2項に違反する行為であると主張した。

【判断の内容】
 原告が、被告Y1に対し、本件建物の居室の賃料が一律であると説明するなどして、被告Y1に利益となる旨を告げたことは認められないから、法4条2項の不利益事実の不告知による取消しは認められない。また、原告が、被告Y1に対し、他の居室の賃料額を説明しなかったからといって、それが被告Y1に対する不法行為であるとはいえない。本件賃貸借契約が無効あるいは取消し得るものとはいえない以上、被告Y1に他の居室の賃料額との差額分の不当利得返還請求権が生ずるともいえないとして、原告の請求を認容した。

◆ H24.02.16東京地裁判決

2013年11月23日 公開

国セン発表情報(2013年11月21日公表)

【事案の概要】
 原告が、被告との間で継続的に金銭の借入、弁済を行ったことにつき、その取引について利息制限法の引直計算を行った結果、最終取引日において過払金が生じているとして不当利得の返還を請求した。なお、原告と被告は、極度額借入契約に基づく債権債務がないことを相互に確認する旨の和解契約を締結したが、原告は本件和解契約について錯誤無効、法4条2項による取消しを主張した。

【判断の内容】
 本件和解契約に関し、錯誤無効は認められない。本件和解契約は被告から勧誘されて締結されたものではなく、契約締結の際、被告担当者としては本件取引について過払金を算定し、これを原告に告知すべき法律上の義務があるとはいえないから、結果的に多額の過払金が発生していたとしても、これを原告に告げなかったことが重要事項について原告の不利益となる事実を故意に告げなかった場合に該当するとはいえない。よって、本件和解契約の無効または取消しは認められないとした。原告の主張は、本件和解契約締結後に判明した、原告が被告に対して過払金返還請求権を有するという事実を前提とするものであるところ、その権利は、本件和解契約によって消滅したことになるとして、原告の請求を棄却した。

◆ H24.03.08東京地裁判決

2013年11月23日 公開

平成22年(ワ)第38882号投資金返還等請求事件
ウエストロー・ジャパン、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 三角比呂

【事案の概要】
 64歳の原告は、証券会社である被告の担当者からの勧誘を受けて、2つのユーロ建て債券を購入した。そのうちの1つについては償還期限が30年で5000万円というものであるが、被告の担当者は原告に対し償還は1年半後になされるなどの説明をし原告を誤信させ契約を申し込ませており、これは法4条1項に定める不実の告知または断定的判断の提供にあたる。また、もう1つの契約については、円高の状況を見極めるため少し待ってほしいと言ったところ、被告の従業員は当該商品は為替レートとは関係ないのですぐに購入するようにと勧めたため申し込んだのであり、こちらの勧誘も法4条1項に該当するとして、本件契約の取消し等を求めた。他に錯誤無効、適合性原則違反を主張した。

【判断の内容】
 本件契約に際し、原告と被告の担当者の間で、本件ユーロ債の内容、為替相場の見込み、早期償還条件等について意見交換がされたことはあっても、被告の担当者が一方的に不実の事実または断定的事実の告知をしたとまでは認めるに足りないとして原告の請求を棄却した。(他の主張も認めず)

◆ H24.03.29東京地裁判決

2013年11月23日 公開

平成22年(ワ)第34621号 、平成23年(ワ)第32376号預入金返還等請求事件(本訴)、損害賠償反訴請求事件(反訴)
ウエストロー・ジャパン、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 遠藤東路

【事案の概要】
 原告X1及びX2は、建設業者である被告との間で、自宅を新築する旨の請負契約を締結したが、上棟まで工事が進んだところで請負契約を合意解除したとして、原告らが被告に対し原状回復等を求めたのに対し、被告が解除は原告の自己都合であるとして、出来高の残代金等を反訴にて請求した。原告は、被告は本件契約書約款33条1項に定める請負工事を解除した際の未完成部分の所有権が原告に存するという重要事項に関する不利益な事実を告知していないため、法4条2項により当該特約を取消すと主張した。

【判断の内容】
 本件では、何の事実をもって消費者である原告の利益となる事実を告げたことになるのか不明であるうえ、原告の不利益となる事実が仮に約款33条1項に当たるとしても、被告がこれを故意に告げなかった事実は認められないとして、法4条2項による取消しを認めなかった。

◆ H24.08.08東京地裁判決

2013年11月23日 公開

平成23年(ワ)第39994号求償金請求事件
ウエストロー・ジャパン、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 小川嘉基

【事案の概要】
 被告Y3所有の自動車を被告Y1が運転中に赤信号に従わなかったことにより交通事故が発生し、訴外被害者らは、被告Y1に対して不法行為に基づき、被告Y3に対して自賠法3条に基づき、それぞれ損害賠償請求権を取得した。その賠償金を自動車保険契約に基づき被害者らに支払った保険会社である原告が、保険法25条1項により各損害賠償請求権を代位取得し、被告Y1に対し民法709条に基づき、被告Y3に対し自賠法3条に基づき、被告Y2に対し連帯保証契約に基づいて損害賠償等の請求をした。これに対し被告Y2が、本件連帯保証契約は合意しておらず、仮に合意しているとしても主債務者の責任の範囲につき不実の告知をしているため、本件契約を法4条1項1号により取消すとの主張をした。

【判断の内容】
 被告Y2が主債務の範囲を誤認したことは認められないとして、取消しを認めなかった。

◆ H25.01.15大阪地裁判決

2013年11月23日 公開

平成22年(ワ)第16686号不当利得返還等請求事件
証券取引被害判例セレクト44巻197頁、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 髙浪晶子

【事案の概要】
 会社代表者である原告が、被告証券会社からEB債を購入したことにつき、被告に対して、選択的に、債券の購入契約は錯誤無効であるとして不当利得返還請求及び不法行為に基づく損害賠償を請求し、また、被告担当者の勧誘が消費者契約法4条1項1号、2号及び4条2項に該当するとして、不当利得返還請求及び不法行為に基づく損害賠償を請求し、さらに、被告担当者の勧誘が適合性原則違反及び説明義務違反に該当するとして、不法行為に基づく損害賠償を請求した。

【判断の内容】
 原告が会社の代表取締役であり、会社において社債発行の経験があったこと、株式の現物取引等の経験があること、金融資産を有していることなどを理由に適合性原則違反については否定し、錯誤無効、消費者契約法の断定的判断の提供、不実告知、不利益事実の不告知についても否定した。説明義務違反につき、被告担当者の勧誘を全体としてみれば、本件債券の実際のリスクに比してリスクが小さいかのような印象を与えるものであり、流動性リスクと相まった信用リスクの存在についての注意喚起としては不十分であったとして、これを認めた。(過失相殺8割)

◆ H25.01.15東京地裁判決

2013年11月23日 公開

国セン発表情報(2013年11月21日公表)

【事案の概要】
 証券会社である被告から転換社債型新株予約権付社債を購入した原告が、社債の購入契約が錯誤または公序良俗違反により無効であると主張して不当利得の返還を請求し、また、被告の従業員に虚偽説明、断定的判断の提供または説明義務違反があったと主張して債務不履行または不法行為に基づく損害賠償を請求した。

【判断の内容】
 錯誤無効、公序良俗違反、被告の従業員による虚偽説明、説明義務違反について否定した。また、社債の売却についてたずねた原告に対して断定的判断の提供を行ったとの主張についても否定し、原告の請求を棄却した。

◆ H23.04.26広島地裁判決

2013年11月22日 公開

平成20年(ワ)第2320号損害賠償請求事件
金融商事判例1399号41頁、金融法務事情1966号124頁、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 金村敏彦、岩井一真、増子由一
控訴審 H23.11.25広島高裁判決

【事案の概要】
 被告からユーロ円建て債券を購入して損失を被った原告が,被告に対し,①同債券購入時に被告従業員の勧誘行為には,適合性違反・説明義務違反・断定的判断の提供など違法事由があったとして,使用者責任に基く損害賠償等を求め,②前記債券は欠陥商品であり,そのリスクの理解不足に乗じて行われた売買で,同売買契約は公序良俗違反・錯誤・詐欺・消費者契約法4条違反(不実告知、断定的判断の提供、不利益事実の不告知)による無効・取消原因があるとして,不当利得返還請求権に基き,①と同額の支払を求めた事案。

【判断の内容】
 被告の従業員は本件債券につき元本が保証されないことを説明していること等から虚偽の説明があったとは認められない。また、重要事項の不告知があったともいえない。また、被告の従業員は原告に対し元本毀損の可能性があることも説明していることから、不利益事実の不告知があったということもできないとして、法4条による取消しはできないとした。

◆ H23.07.12大阪高裁判決

2013年11月22日 公開

国セン発表情報(2013年11月21日公表)

【事案の概要】
 原告が被告Y1会社が経営するクリニックにおいて、被告Y2による脂肪吸引手術を受けたところ、両大腿部の内側に皮膚潰瘍の障害が残り、これは被告Y2に手技上の注意義務違反および説明義務違反があったことが原因であるとして、被告Y1に対し債務不履行、使用者責任に基づく損害賠償、法4条1項2号または2項に基づく取消しを、被告Y2に対し、不法行為に基づく損害賠償、法4条1項2号または2項に基づく取消し等を求めた。
 原審では、Y2には手技上の注意義務違反があること、Y1の使用者責任を一部認めたが、消契法については、Y1が勧誘したものではなくXが脂肪吸引のために赴いていること、Y2らが断定的判断の提供をしたことを認めるに足る証拠はないとして取消しを認めなかった。Y2が控訴。

【判断の内容】
 控訴人に手技上の過失があることは認めたが説明義務違反はないとし、控訴人の請求を一部認めた。なお、法4条1項2号または2項の判断については原審の判断を支持した。

◆ H23.11.09東京地裁判決

2013年11月22日 公開

平成22年(ワ)第17681号売買代金返還等請求事件
金融法務事情1961号117頁、ウエストロー・ジャパン、銀行法務21 754号60頁、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官  松並重雄、進藤光慶、國原徳太郎

【事案の概要】
 原告は、被告の従業員らの勧誘を受けて、投資信託受益権を購入する契約を締結し、被告に代金等5億1575万円を支払ったところ、原告が被告の従業員の勧誘は適合性に反するとして債務不履行、不法行為に基づく損害賠償請求のほか、本件投資信託には10年間の解約・換金ができないという制限があるにもかかわらずその旨を説明しなかったことは、法4条2項の不利益事実の不告知に当たるとして契約の取消し等を求めた。

【判断の内容】
 本件投資信託には、受益者が信託期間である10年間中途解約を請求することができないという解約制限が付されているものと認められ、これは法4条4項の重要事項に当たると認められる。しかし、被告の従業員は原告に対しこの事実を説明したと認められるため、消費者の不利益になる事実を故意に告げなかったものとは認められないとして、法4条2項による取消しを認めなかった。

◆ H22.03.18さいたま地裁判決

2013年9月16日 公開

平成21年(レ)第167号敷金返還請求控訴事件
最高裁HP
裁判官 佐藤公美、 髙橋光雄、 川﨑慎介

【事案の概要】
 ペット可の建物賃貸借契約の際に差し入れた定額補修費8万円の返還請求。定額補修費を支払うとの条項が10条により無効となるか、前払した賃料及び共益費のうち明渡し日の翌日以降退去月の末日までの分を返還しないとする契約条項(日割精算排除条項)が10条により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 いずれも10条により無効とはならないとしつつ、一定の範囲で返還請求を認めた。
① 定額補修費は実際にかかった補修費との差額について返還すべきものであり、不返還の合意があるなどの事情がない限りは差額を返還すべき。本件ではそのような合意はない。
② 本件補修費用は,いずれも本件貸室の修復費用であり,その中に通常損耗の原状回復費用を含むものであるところ,建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは,賃借人に予測しない特別の負担を課すことになるから,賃借人に同義務が認められるためには,少なくとも,賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明示されているか,仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には,賃貸人が口頭により説明し,賃借人がその旨を明確に認識し,それを合意の内容としたものと認められるなど,その旨の特約が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当(最高裁平成17年12月16日第二小法廷判決・判例タイムズ1200号127頁)。
③ 本件補修費用のうち、ペット飼育に掛かる汚損・破損の補修費については明確な合意があるから定額補修費から支出すべきものであるが、それ以外の支出は明確な合意がなく、控除すべきでない。
④ 本件定額補修費の合意は、敷金類似の金銭預託契約であり、本件契約には他に権利金や敷金の支払いもないこと、ペット飼育できることとして2000円の賃料増額がなされているが、これはペット飼育できることの利益についての対価でありそれ以上にペット飼育に伴う賃借物件の劣化又は価値の減少を補填する趣旨を含むものではないこと等から、10条に反しない。
⑤ (日割精算排除条項について)本件日割精算排除条項及び退去条項からは、解約の意思表示が貸主に到達してから最大3カ月分の賃料を支払うことになるが、本件契約は期限の定めがあり本来一方的に解約することができないこと、期間の定めのない建物賃貸借の場合解約申し入れから3カ月後に終了することからは、10条には反しない。

◆ H25.02.22大阪簡裁判決

2013年9月11日 公開

平成24年(ハ)第17022号損害賠償請求事件(本訴)、第35076号損害賠償請求事件(反訴)
消費者法ニュース96号362頁
裁判官 鈴本浩一郎

【事案の概要】
 幼児の保護者が幼稚園と入園契約を締結し、入園金5万円を支払った後、入園式の直前になって授業料の値上げと入園式の日程変更を幼稚園が通知したことから、入園を取りやめ、既払いの入園金や授業料の返還を求めたところ、入園金はいかなる理由があっても返金しないとの条項の存在を理由に入園金5万円の返還を受けられなかったことから、その返還を求めて提訴した事案。不返還条項が10条により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から返還請求を認めた。
① 本件入園金の法的性質は、入園金の支払が契約成立の条件となっており、また、他の幼稚園への入園を前提とする解除権が留保されていることをうかがわせる事情が認められないから、入園しうる地位の対価としての性質を認めることは困難。しいていえば、一方的に入園辞退することを回避するための手付金に類する性質を有する。
② 本件不返還合意は、被告側の帰責事由がある場合にも有効とすれば社会通念に鑑みて相当性を欠く場合があるといわざるを得ず、被告側の有責的事情が原因で当該入園希望者が入園を辞退することに合理的な理由がある場合には、本件不返還合意は信義則に反し、10条後段要件を満たすから、そのような場合は変面的に無効となり効力が及ばないというべき。
③ 本件では、授業料の値上げ、入園式の日程変更のいずれも被告側の有責的事情といえ、原告の契約解約申し入れには相応の合理性があり、本件不返還合意の効力は及ばない。

◆ H22.06.11東京地裁判決

2013年9月11日 公開

平成21年(ワ)第41032号敷金返還等請求事件、建物明渡請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 綿引穣

【事案の概要】
 建物の賃借人からの敷金返還請求及び違約金条項(賃借人より契約締結後2年未満に解約・解除等がされたときは,賃借人は賃料・共益費の1か月分を支払う旨の条項)に基づき支払った違約金の返還請求。違約金条項が10条により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 本件違約金条項を無効とし、返還請求を認めた。
① 本件においては,賃借人からの解約申し出後2か月で賃貸借契約が終了する旨の特約が別途存在するから、賃貸借契約が2年以内に解約されることにより,賃貸人に特段の不利益があるとは考えられない。
② 本件賃貸借は居住用マンションの賃貸借であるが,その契約時期は,平成20年2月であるところ,一般的には,4月に居住用マンションの新規需要が生じるのであるから,契約後2年間の契約期間に特段の意味はない。
 以上から、消費者の利益を一方的に害するものとして、本件違約金条項は無効というべき。

◆ H22.05.28東京地裁判決

2013年9月11日 公開

平成21年(レ)第324号損害賠償請求控訴事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 佐久間邦夫、石原直弥、牛尾可南

【事案の概要】
 被控訴人が控訴人との間でパチンコの攻略情報の売買契約を締結したが、同契約は、断定的判断の提供によるものであり、この攻略情報を用いれば確実に利益を得ることができると誤認して締結したものであり、消費者契約法4条1項2号に基づいて取り消した、錯誤による無効である、上記のような勧誘行為は詐欺行為であるから取り消したなどと主張して不当利得の返還を請求したところ、原審が請求を認容したことから、控訴人が控訴した事案。契約日から半年以上経過した後に取消の意思表示をしていたことから、消滅時効の点も争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から、業者の控訴を棄却した。
① 本件契約は,控訴人が被控訴人に対し,パチンコの打ち方の手順等の情報を提供するものであり,これによって,被控訴人にパチンコで経済的利益を得させることを目的とした契約であると認められる。
② 一般的に,パチンコは,各台の釘の配置や角度,遊技者の玉の打ち方や遊技時間,台に組み込まれて電磁的に管理されている回転式の絵柄の組み合わせなどの複合的な要因により,出玉の数が様々に変動する遊技機であり,遊技者がどのくらいの出玉を獲得するかは,前記のような複合的な要因に左右され,偶然性が高いから、控訴人が本件契約において提供すると約した情報は,将来における変動が不確実な事項に関するものにあたる。
③ 控訴人は,自社のホームページにおいて、控訴人の提供する情報を使えば,利益を上げることができ,かつ,その情報自体が信用性の高いものである旨表示していた。
 また,攻略法を利用した場合に得られる利益について、クレジットカードの一括払いを利用しても決済日までにはその額に相当する利益を上げることが可能である旨述べるなど、控訴人が提供する攻略情報の手順に従った打ち方をすれば,短期間で,かつ,別の機種の攻略情報も購入可能な程度の利益を得ることができるという趣旨の発言をしていること、効果が上がらない場合には,現地調査に赴き,控訴人の従業員が確認作業を行うという記載のある保証規約書を交付するなどしていることからは、控訴人は,控訴人が提供する攻略情報を使えば,将来の出玉によって利益を得ることが確実であるとの言動を示したものということができ,控訴人による勧誘は,被控訴人に対して断定的判断を提供したものといえる。
④ 被控訴人は,(契約日から約1年後の)平成20年7月9日に司法書士との会話の中でパチンコの攻略情報が存在しないことを知ったのであり,それ以前の段階で,被控訴人が,消費者契約法上の取消事由が存することを認識していたと認めるに足りる的確な証拠はなく,控訴人の主張は採用できない。

◆ H22.08.31大阪高裁判決

2013年9月8日 公開

平成21年(ネ)第2785号債務不存在確認等請求控訴事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 紙浦健二、川谷道郎、宮武康
第1審 大阪地裁平成21年(ワ)第113号

【事案の概要】
 5年間で償却する約定で600万円の入居金を支払って被控訴人の高齢者用介護サービス付賃貸マンションに母親を入居させていた控訴人が、2年後、賃貸借契約の終了に伴い、入居金の返還を求めた事案。入居金の償却条項が10条により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から10条により入居金の焼却場公は無効であるとして返還請求を認めた。
① 本件入居金の法的性格は、賃貸借契約から生ずる控訴人の債務の担保、医師及び看護師による24時間対応体制が整った居室への入居の対価及び入居後の医師・看護師らによるサービスの対価としての性格を併有する。
② 本件マンションには被控訴人が宣伝していたような24時間対応体制の実態はなく、被控訴人が対価に相当するサービスを提供していないのに1年毎120万円を取得することは、民法の一般規定による場合と比較して消費者である控訴人の権利を制限するものであるから、本件約定は10条により無効である。

◆ H25.07.11大阪高裁判決

2013年9月8日 公開

平成24年(ネ)第3741号解除料条項使用差止請求控訴事件
消費者庁HP(PDF)、金融商事判例1423号9頁、ウエストロー・ジャパン
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 ソフトバンクモバイル株式会社
第1審 H24.11.20京都地裁判決

【事案の概要】
適格消費者団体が,電気通信事業等を営む事業者に対して,2年間の契約期間の定めのある携帯電話通信契約を中途解約する際に解除料として9975円の支払義務があることを定める条項が消費者契約法9条1号・10条に反するとして同条項の使用の差止めを求めたもの。1審が原告の請求を棄却し、原告が控訴していたもの。

【判断の内容】
 控訴棄却。
 本件解除金条項が法第9条第1号により無効であるかどうかについて、本件解除金条項が、「解除に伴う損害賠償の額の予定」又は「違約金」に該当するとした上で、本件解除料が法第9条第1号にいう平均的な損害を越えるか否か判断するに際しては、被告の設定した契約期間である2年間の中途における解除という時期の区分を前提に、本件契約の解除に伴い、被告に生じる損害の額の平均値を求め、これと本件解除料の比較を行えば足りるとし、法第9条第1号は、債務不履行の際の損害賠償請求権を定める民法第416条を前提とし、その内容を定型化するという意義を有するから、同号の損害は、民法第416条にいう「通常生ずべき損害」であり、逸失利益を含むと解すべきであるとした。本件契約の解除に伴って被告に生じる平均的な損害のうち、主なものは、これによって被告が失う逸失利益であり、その額は、被告と本件契約を締結した契約者の平均収入から変動コストを除いて算出される変動利益(1契約当たり平均の営業上の利益(1か月当たり))に、本件契約の契約期間である2年間から、被告と本件契約を締結した契約者の平均解約期間を除いた解除後の平均残存期間を乗じた47,689円が平均的な損害に当たるとし、これは、本件解除料を超える金額となるため、本件解除条項は、法第9条第1号に反しないと判断した。
 本件解除金条項が法第10条により無効であるかどうかについては、本件契約は、民法上の請負や委任に類似する性格を有しており、本件解除料条項は、本件契約が解除された場合には、原則として、当該契約における顧客との関係で被告に具体的に生じる損害の額にかかわらず、一律に、一定の金員(本件解除料)の支払義務を課す点において、民法の一般法理に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重するものとなる余地があるとして、法第10条前段の要件に該当するとした上で、被告から顧客に対して確認書等により十分な説明が行われており、通常は、顧客もこれを理解した上で、被告の提供するサービスの中から、本件料金プランを選択した上で本件契約を締結しているということができるのであり、本件解除料条項に関して、事業者と消費者との間に、看過できないような情報の質及び量並びに交渉力の格差等があるということはできず、さらに、本件解除料は、本件契約の解除によって被告に生じる平均的な損害の額を下回っている上、本件料金プランは、基本使用料等の面で、他の料金プランより優遇されており、かつ更新月においては、本件解除料を支払うことなく契約を解除することができるとの事情が存在するのであるから、このような本件契約の特質等に鑑みても、本件契約における本件解除料条項が、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるということはできないとして、法第10条後段の要件には該当しないと判断した。
 また、更新後の解除料についても当初の解除料と同様に法第9条第1号及び第10条に反しないと判断した。

◆ H22.08.30東京地裁判決

2013年9月8日 公開

平成21年(ワ)第40358号損害賠償請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 湯川克彦

【事案の概要】
 被告会社からパチンコの攻略情報を購入した原告が、被告会社が一連の勧誘行為において、断定的判断を提供し、虚偽の情報を提示したなどと主張して、被告会社らに対して、不法行為又は不当利得に基づき、損害の賠償又は不当利得の返還として、原告の被った財産的損害、精神的損害及び弁護士費用の支払を求めた事案。

【判断の内容】
 被告会社は実効性の認められないシステムに基づく本件攻略情報を購入するよう勧誘し、本件攻略情報が有効である旨原告を誤信させて原告から金員の交付を受けたもので、本件契約について消費者契約法上の取消事由となるだけでなく詐欺行為として不法行為に該当するとした。

◆ H22.06.29東京地裁判決

2013年9月8日 公開

平成20年(ワ)第32609号売買代金返還等請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 矢作泰幸

【事案の概要】
 原告X1が被告から購入した土地について、鉛が検出されるなど瑕疵が存在するため、瑕疵担保責任を理由として売買契約を解除したなどとして、被告に対し、代金相当額の返還等を求め、同土地に住宅を建築する予定であった原告X2が、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案。瑕疵担保責任の追及は引渡日から3か月以内にしなければならないとする特約が10条により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から上記特約は10条により無効とした。
① 買主による瑕疵担保責任に基づく解除又は損害賠償の請求の期間について,民法570条,566条3項は,買主が事実を知ったときから1年以内にしなければならないと規定するのに対し,本件特約は,本件土地の引渡日から3か月以内とするというものであって,瑕疵担保責任の行使期間を,買主の認識にかかわらず,その期間も1年以内から3か月に短縮するものであるから,同法の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し,消費者である原告X1の権利を制限するものであることは,明らか。
② 本件土地の瑕疵は,環境基準を超える鉛が検出されるとともに皮革等が多数埋設されていたというもので,発見が困難であり、買主は相当の損害を受けるものであるのに、瑕疵担保責任の行使期間を買主の認識の有無にかかわらず短期間に制限をするものであること、原告X1は調査を尽くしていたこと等の事情からは、10条後段要件を満たし、無効というべき。
③ (被告が、貴金属,宝石類の卸売業等を目的とする株式会社であって,不動産の売買を業とするものではないから,消費者契約法の事業者にはあたらないとの主張に対し)2条2項は,事業者とは,法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいうと規定するから,法人は,その業務との関連にかかわらず,事業者に該当するものというべきである。

◆ H22.10.12さいたま地裁判決

2013年7月29日 公開

平成21年(ワ)第3720号損害賠償等請求事件
証券取引被害判例セレクト39巻238頁、ウエストロー・ジャパン
裁判官 八木貴美子

【事案の概要】
 実際の通貨価値を説明せず将来値上がりする旨告げてイラクディナールの購入を勧誘され金員を支払ったものによる、不法行為に基づく損害賠償請求、及び断定的判断の提供、不利益事実の不告知による取消に基づく不当利得返還請求の事案。

【判断の内容】
 近いうちに10倍以上値上がりすると説明して勧誘したことについて断定的判断の提供を認め、また、値下がりする可能性があることや実際の通貨価値が著しく低いことを故意に告げなかったことについて不利益事実の不告知を認め、契約の取消を認め不当利得返還請求を認めた(弁護士費用も民法704条後段の損害に当たるとした)。

◆ H22.11.09東京地裁判決

2013年7月28日 公開

平成21年(ワ)第4449号損害賠償等請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 小林昭彦、篠田賢治、北村久美

【事案の概要】
 マンションの管理組合である原告が、管理組合発足前に共用部分につき締結された電気受給契約が過大であったとして、マンション販売会社や従前の管理会社らに適正な契約電力等の説明義務違反や契約上の地位譲渡に関する契約義務違反を理由とする損害賠償請求をするとともに、電力会社に契約の取消し等による電気料金の不当利得返還を求めた事案。
 管理組合がマンションの区分所有者である各組合員個人の利益を守るために存在する団体であり,原告の理事は区分所有者個人の中から選任されているから,消費者契約法上の消費者に当たる等として、消費者契約法の適用又は類推適用ができるか、不利益事実の不告知による取消、不当条項による無効等が争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から本件マンション管理組合が「消費者」に当たらないとして、消費者契約法の適用を否定した。
① 消費者契約法は,「消費者契約」とは,「消費者」と「事業者」との間で締結される契約をいうと定義し(同法2条3項),その「消費者」とは,個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいうと定義している(同条1項)から,法人その他の団体は,小規模なものであっても,消費者契約法における「消費者」には当たらないことは明らか。
② マンションの区分所有者である各組合員個人の利益を守るために存在する団体であり,原告の理事は区分所有者個人の中から選任されているから,消費者契約法の適用又は類推適用が認められるべきであると主張するが,消費者契約法の明確な定義に反する独自の見解をいうものであり,到底採用することはできない。

◆ H22.10.28東京地裁判決

2013年7月28日 公開

平成21年(ワ)第32488号貸金請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 本間健裕

【事案の概要】
 貸金業者がある企業への貸付金につき連帯保証したその企業の代表取締役個人に対し保証債務の履行を求めるとともに質権の存在確認を求めた事案。不実告知・不利益事実の不告知による取消の前提として代表者個人が消費者に当たるかが争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から、本件代表者は「消費者」に当たらないとした。
① 消費者契約法は,事業者と消費者間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み消費者の利益の擁護を図ることが目的であり,事業者と消費者の区別は,取引における情報,交渉力の格差の観点から判断されるもの。
② 被告は,複数の企業の経営者であるから,企業経営のノウハウは当然に有していると推認され,資金調達のために最低限必要な法律的常識,商慣習等については,これを有しているものと認めるのが相当。
③ 金主が直接の融資先(貸主)に対する貸付けについて,融資先(貸主)から最終的に融資を受ける借主に対し,連帯保証人となることや担保権の設定を求めることは,一般にしばしば行われることであるから,企業の経営者であれば,連帯保証人となることないし担保権の設定について,その意味や当該契約から生ずる不利益を理解することは容易。
④ 本件保証契約は,理解しやすい契約の類型であり,被告と原告との間に,取引における情報,交渉力の格差において,消費者契約法が予定しているような差異があるとは認められず,被告が本件保証契約等において,消費者契約法の消費者と認めることはできない。

◆ H22.10.29東京地裁判決

2013年7月28日 公開

平成20年(ワ)第17540号損害賠償請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 安浪亮介、小池晴彦、潮見牧子

【事案の概要】
 コンビニエンスストアのフランチャイズチェーンを運営する原告が、フランチャイジーである被告Y1において、一方的に店舗を閉鎖し、半額セールを実施した上、その売上金を支払うよう求めても応じなかったことなどから契約違反を理由に解除し、被告Y1及びその連帯保証人である被告Y2に対し、清算金、違約金及び損害賠償の支払を求めた事案。フランチャイズ契約に不当条項があり9条1号、2号、10条により無効となるかが争われ、前提としてフランチャイジーが消費者に当たるかが争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から、消費者契約法の適用を否定した。
① 消費者契約法は,事業者と消費者との間の契約を規律するものであり(同法2条3項),同法における「消費者」とは,「個人(事業として又は
事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)」と定義されている。そうすると,被告Y1は,コンビニエンスストアを自ら経営するために本件契約を締結した者として,事業のために契約の当事者となる場合に当たるから,同法2条1号の「消費者」には該当しないことになる。
② 被告らは,被告Y1と原告との間には情報・交渉力について構造的な格差があるから,本件契約にも同法の趣旨を及ぼすべきであると主張するが,同法が「個人」であっても「事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。」と明確に定めている以上,原告が株式会社で被告Y1が個人であることのみをもって同法の規定を類推適用すべきとすることは,同法の趣旨を没却するものといわざるを得ない。

◆ H22.11.12神戸地裁尼崎支部判決

2013年7月16日 公開

平成21年(ワ)第1648号敷金返還請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 善元貞彦

【事案の概要】
 マンション一室の賃貸借契約における敷金返還請求。賃料月17万7000円、期間3年、敷金150万円で、契約時より10年未満の退去の場合40%を差し引く、10年以上なら全額返還するとの敷引条項の有効性が争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から、本件敷引条項は10条に反しないとした。
① 本件敷引条項は、任意規定の適用による場合に比して賃借人の義務を加重する条項というべき。
② 敷引契約は一般的に行われており、本件建物の所在する地域でも受け入れられていた。美装費用に敷金の一部を充てることは不当とはいえない。原告は本件敷引特約を理解した上で本件賃貸借契約を締結したものといえる。これらの事情からすれば、消費者の法的に保護されている利益を信義則に反する程度に両当事者間の衡平を損なう形で侵害すると認めることはできない。

◆ H22.12.15東京地裁判決

2013年7月6日 公開

平成20年(ワ)第37803号損害賠償請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 前田志織

【事案の概要】
 被告の未公開株式の購入の勧誘を受けて280万円を送金した原告が、上場し確実に値上がりがすると説明されたことが断定的判断の提供にあたるとして契約の取消による代金の返還請求をした事案。

【判断の内容】
 上場すること及び上場時期を明言し断定的判断を提供して本件未公開株式の取得を決意させたものと認められるとして、4条1項2号により契約の取消を認め、返還請求を認めた。

◆ H23.04.20東京地裁判決

2013年6月25日 公開

平成22年(レ)第2000号不当利得返還請求控訴事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 松並重雄、伊丹恭、國原徳太郎

【事案の概要】
 馬券自動購入資産運用ソフトウェアの購入契約の取消に基づく不当利得等返還請求。不利益事実の不告知が争われた。

【判断の内容】
 以下のとおり不利益事実の不告知(消費者契約法4条2項、特商法9条の3第1項2号)による取消を認め、不当利得返還請求を認めた。
① 「プランを設定すれば,本件商品が自動的に馬券を購入し,1か月で3,4割の利益が上がる。」「ワイドは,選択した2頭の馬が順不同で3着以内に入ると当たりとなる馬券であり,当たる確率が高く,ローリスク・ローリターンなので,資本金が少ない人が利用するのに向いている。」「(本件商品を用いた資産運用による)利益を保証する。」旨を述べたことは、「重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ」たものと認められる。
② 本件商品は,被控訴人が,運用金額である「資本金」を設定し,これをパソコンが馬券に自動的に投資した結果,「投資回収額」を獲得するものであると認められ,この事実に照らせば,本件商品を用いた資産運用において「投資回収額」が「資本金」を下回ることにより,被控訴人に損失が生ずる恐れがあるものと認められるから,「投資回収額」が「資本金」を下回る恐れがあることは,被控訴人の「不利益となる事実」に当たる。
③ 本件告知は,消費者をして,本件商品が馬券の購入を機械的にナビゲートするものではなく,過去のデータを分析した上で,損失を回避して利益が出るようにナビゲートするものである旨を認識させるものと認められるから,本件不利益事実は,本件告知により「不利益となる事実が存在しないと消費者が通常考えるべきもの」に当たるものと認めるのが相当。


◆ H23.03.23東京地裁判決

2013年6月25日 公開

平成21年(ワ)第17341号不当利得返還請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 端二三彦

【事案の概要】
 沈没船引き上げに関する事業を行うと称して匿名組合契約の勧誘を受け100万円を出資した者による、不実告知による取消等に基づく不当利得返還請求。

【判断の内容】
 パンフレットの記載や勧誘行為から、業者に不実告知があったとして、4条1項1号による取消を認め全額の返還請求を認めた。

◆ H23.03.17東京地裁判決

2013年6月25日 公開

平成21年(ワ)第28066号債務不存在確認等請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 矢作泰幸

【事案の概要】
 貸金業者から1400万円を借りた者が、期限の利益を喪失したとして一括払い請求を受けたことから、契約書の約定返済方法とは異なる返済(30年分割)の説明を受けていたとして、不実告知(4条1項1号)による取消を理由として、債務不存在確認、根抵当権抹消請求をした事案。

【判断の内容】
 継続的金銭消費貸借媒介契約書の記載や返済状況等から、不実告知があったものと認定し、金銭消費貸借契約の取消を認め、債務不存在確認、根抵当権抹消請求を認めた。

◆ H23.02.24東京地裁判決

2013年6月25日 公開

平成21年(ワ)第3443号、平成22年(ワ)第1164号建物賃料増額確認等本訴請求事件、建物賃料減額確認等反訴請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 小崎賢司

【事案の概要】
 建物賃貸借契約における賃料増額請求、賃料減額請求(反訴)事件。礼金、更新料の支払いが10条にあたるかどうかが争われた。

【判断の内容】
① 礼金条項について、契約締結に対する謝礼金を原告に贈与することを義務づけるもので,被告は礼金の支払によって何らの対価も取得しないことが認められるから,かかる金銭の贈与を契約締結の条件とする旨の礼金支払条項は,本件賃貸借契約の成立において,民法による場合に比べて被告の義務を一方的に加重するものと認めるのが相当とし(10条前段要件)、また、本件賃貸借契約の締結にあたって賃貸人たる原告から金額を定めて提示された条件であると認められるところ,被告は,同条項に合意することを拒否すれば本件建物を賃借することを断念せざるを得ず,あるいは,契約締結後の関係悪化を慮ってその免除ないし減額の交渉を強硬に主張し難い立場にあるといえるから,原告と被告との間には交渉力の格差が存したものというべきであり,前記礼金支払条項は,信義則に照らして被告の利益を一方的に害するとして(10条後段要件)、10条により無効とした。
② 本件更新料条項については、主に賃貸人による更新拒絶権の放棄や契約期間中の賃借人の地位の安定という利益の対価にあたるとして、賃借人たる被告の義務のみを一方的に加重したものとは認められず,それが新賃料の1か月分にとどまることに照らせば暴利にあたるとも認められないから,同条項は無効とは認められないとした。

◆ H23.02.22東京地裁判決

2013年6月25日 公開

平成22年(ワ)第35889号、第39833号立替金請求事件、反訴請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 綿引穣、佐藤重憲、金洪周

【事案の概要】
 金銭消費貸借契約に関する媒介委託契約の手数料及び同契約に付随して立替金を支出したとしてその返還を求めた(本訴)ことに対し、原告が被告の所有する不動産に設定した根抵当権の抹消手続を協力しなかったことによる損害賠償請求及び不当利得の返還を求めた(反訴)事案。

【判断の内容】
 本訴請求を棄却し、反訴を一部認容したが、その理由中で、遅延損害金割合を年21.9%としていた立替金償還特約について、9条2号により年14.6%を超える部分を無効とした。
 

◆ H23.01.20東京地裁判決

2013年6月25日 公開

平成22年(レ)第1691号保証債務請求控訴事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 齊木敏文、日景聡、横井靖世

【事案の概要】
 貸金業者と連帯保証人との間の分割和解契約に基づき、保証債務履行請求をした事案。和解契約に9条2号の摘要があるかが争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から、9条2号により遅延損害金利率を年14.6%に制限した。
① 控訴人が事業として又は事業のために本件和解契約の当事者となったものとは認められないから,本件和解契約には消費者契約法の適用がある。
② 本件和解契約は,本件貸金契約及び本件保証契約とは別に創設的に締結された和解契約であり,それ自体として「金銭を目的とする消費貸借契約」(利息制限法1条)に該当しないから,消費者契約法11条2項の適用はなく,同法9条2号の適用は排除されない。

◆ H23.01.17東京地裁判決

2013年6月25日 公開

平成20年(ワ)第20356号保険金等請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 石井浩

【事案の概要】
 生命保険契約に基づく保険金請求事件。失効条項が10条により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 10条の要件を満たさないとして、失効を認めた。
① 前段要件について、本件失権約款が民法541条の規定に比して消費者の権利を制限するものであるということはできないとした。
② 後段要件について、未入通知や振替通知の送付が実務の運用として行われていること、自動振替制度等から、満たさないとした。

◆ H23.06.30東京地裁判決

2013年6月24日 公開

平成22年(ワ)第14216号、第39951号不当利得返還等請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 堂薗幹一郎

【事案の概要】
 パチンコ攻略情報等を購入する対価として、被告会社に金員を支払った原告が、被告会社の従業員から勧誘を受けた際に、不実の告知や断定的判断の提供があったと主張して、被告会社やその代表者、従業員らに対し、不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還を求めた事案。

【判断の内容】
 不実告知、断定的判断の提供にあたる他、詐欺にもあたり、不法行為となるとして、損害賠償を命じた。
① 被告会社の行為(自社の来訪ブースにあるパチンコ機を利用し,担当者が指示する方法で原告にパチンコをさせ,意図的に大当たりを作出した)は,原告に対し,あたかも,同様の方法を用いればあらゆるパチンコ店で同様の状態を作出することができるかのように誤信させる目的でなされたもの。また、被告会社の担当者は,原告に対し,同社の攻略法を用いれば必ず利益が上がるかのような言辞を用い,執拗に勧誘を繰り返していた。
② また,前記認定事実によれば,被告会社は,原告から,被告会社の提供するパチンコ攻略法を用いてパチンコをしても利益が上がらない旨の苦情を受けると,担当者を次々と交代させて,これを交わし,新たな担当者に同様の勧誘をさせることによって,更なる利益を上げていたものと認められる。
③ そうすると,被告会社の担当者が行っていた前記一連の行為は,いずれも,消費者契約法4条1項1号及び2号所定の不実の告知及び断定的判断の提供に当たるだけでなく,民法96条1項所定の詐欺にも当たるものというべきであって,原告に対する不法行為を構成するものと認められる。

◆ H23.06.22さいたま地裁判決

2013年6月24日 公開

平成22年(レ)第68号報酬金請求控訴事件
最高裁HP、ウエストロー・ジャパン
裁判官 原啓一郎、古河謙一、猪坂剛

【事案の概要】
 信用情報収集調査等を業務とする業者が、調査委任契約の委任者である顧客に対し、顧客による解除の意思表示までに本件契約に基づいて調査を実施したとして、その報酬の支払を求めた事案。一審が請求を全部認容したことから、顧客が控訴し、退去妨害により契約を締結させられたと主張し、退去妨害(4条3項2号)による取消が争われた。

【判断の内容】
 報酬が高額であることに驚き,「お金がないから帰る」と言って,恐くなって立ち上がったところ、「このままにしておくと,どこへ越してもつきまといますよ」「今まで説明させて帰る気か」などと言われ、忘れられないほど恐かったので,契約をせずには帰れないと思ったこと、夜9時30分ころまで2時間半ないし3時間拘束されたこと等から、退去妨害によって契約を締結したものと認め、取消を認め業者の請求を棄却した。

◆ H23.06.13横浜地裁横須賀支部判決

2013年6月24日 公開

平成21年(ワ)第337号保険金請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 杉山正己、河本晶子、中村修輔

【事案の概要】
 保険金請求事件。猶予期間中に保険料が払い込まれず、かつ、積立金からの保険料の払込みが行われないときは、保険契約は失効する旨の無催告失効特約があり、当該条項が10条により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 以下のように判断し、無催告執行特約は10条により無効とはならないとした。
① 本件無催告失効特約は、10条前段要件を満たす。
② 後段要件について、1カ月の猶予期間が設けられていること、振替制度により失効回避の配慮がされていること、美入通知や振替通知を送付して通知することがなされていることから、後段要件は満たさない。

◆ H23.05.27札幌高裁判決

2013年6月24日 公開

平成23年(ネ)第92号損害賠償請求控訴事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 小林正、片岡武、湯川克彦

【事案の概要】
 業者の未公開株を購入させられた者が、業者及び代表取締役に対し不法行為に基づく損害賠償請求等をした事案。

【判断の内容】
 以下のように判断し、断定的判断の提供にあたるのみならず不法行為となるとして、損害賠償請求を認めた。
① 顧客に対し,業務の一環として,一般公募価格は1株100円となっているが1株50円で株主のうちの希望者に割り当てる,申込み先着順に受付をするので18万株になったら締め切る,第三者割当で1株50円の優待は今回で終了するなどと言葉巧みに未公開株である同社の株式を購入するよう勧誘し,顧客はこの勧誘に応じて,本件購入1ないし4の4回にわたり,業者の株式合計20万株を1株当たり50円,代金合計1000万円で購入しているところ,代表取締役らはこれらの勧誘の際,業者が近々,遅くとも平成21年秋ころまでには株式を上場し,上場すれば株価は500円程度になる旨の説明をし,この説明を受けた顧客は,説明どおりに株式が上場され,利益を得られると考えて本件購入に至ったことが認められる。しかるに,本件購入当時,業者において株式の上場に向けて具体的に作業を進めていた様子は窺われず,現在でも株式上場の見通しは立たない状態である上,株式の価値としては50円もないのであるから、上記説明は断定的判断の提供に当たる。
② そして、このような勧誘は社会通念上許容しうる範疇を超えており、不法行為を構成する違法なものというべき。

◆ H23.10.28東京地裁判決

2013年6月23日 公開

平成22年(ワ)第8460号授業料返還等請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 生野考司、前澤功、仲田憲史

【事案の概要】
 ラインパイロットになることを目指した原告が、ニュージーランドの航空大学校で語学研修を受けた上、飛行訓練等を受けるなどして事業用免許等を取得し、帰国した後さらに事業用操縦士免許を取得して就職するという訓練システムの受講契約を被告との間で締結し、ニュージーランドの語学学校で研修していたところ、上記大学校での訓練を受けるための規定の英語能力が得られなかったことなどから、本件受講契約を解除したとして、被告に対し、前払い費用の精算として未使用授業料等の支払を求めた事案。学納金の不返還条項の効力が争われた。

【判断の内容】
① 入学金については、学生が大学に入学し得る地位を取得する対価の性質を有しており,その納付をもって学生は上記地位を取得するものとして、返還義務を否定した。
② 入学金以外の部分に係る本件不返還合意は,消費者契約法9条1号の損害賠償の額の予定に係る合意であるから,解除の事由,時期等の区分に応じ,本件契約と同種の契約の解除に伴い被告に生ずべき平均的な損害を超えるものについては無効であるとして、施設費、学費・訓練費、滞在費、寮費等の一部について返還請求を認めた。

◆ H23.10.27東京地裁判決

2013年6月23日 公開

平成22年(ワ)第13457号敷金返還等請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 和久田道雄

【事案の概要】
 マンションの貸室を目的とする賃貸借契約に関し、同貸室を退去した原告(当時司法修習生、現在弁護士)が、賃貸人である被告に対し、造作買取請求権不行使特約、礼金及び更新料の各支払特約、敷金から清掃費用を控除する旨の特約は消費者契約法10条に反し、無効であるとして、造作買取代金の支払、各既払金員相当額の不当利得返還、敷金のうち返還を受けた部分を除いた残額等の各支払を求めた事案。

【判断の内容】
 以下の理由から、いずれも請求を棄却した。
① 造作買取請求権排除条項、礼金条項、更新料条項について、当該条項が信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるか否かは,消費者契約法の趣旨,目的(同法1条参照)に照らし,当該条項の性質,契約が成立するに至った経緯,消費者と事業者との間に存する情報の質及び量並びに交渉力の格差その他諸般の事情を総合考慮して判断されるべき。
 本件条項は、いずれも内容が一義的に明確であり、金銭的負担を明確に意識した上で契約条件を比較検討して選択することが可能であったから、信義則に反して消費者である原告の利益を一方的に害するものということはできない。
② 賃貸人は契約終了時に使用状況,清掃状況にかかわらず,清掃費用7万2093
円を敷金から控除するとの条項(敷引条項)について、消費者契約である住居用建物の賃貸借契約に付された敷引特約は,当該建物に生ずる通常損耗等の補修費用として通常想定される額,賃料の額,礼金等他の一時金の授受の有無及びその額等に照し,敷引金の額が高額に過ぎると評価すべきものである場合には,当該賃料が近傍同種の建物の賃料相場に比して大幅に低額であるなど特段の事情のない限り,信義則に反して消費者である賃借人の利益を一方的に害するものであって,消費者契約法10条により無効となると解するのが相当。
 本件の場合、経過年数(4年)、賃料額、礼金額、更新料額を考慮しても、敷引金の額が高額に過ぎると評価することはできず、無効とはいえない。

◆ H23.10.24東京地裁判決

2013年6月23日 公開

平成22年(ワ)第12243号保証金返還等請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 武藤真紀子

【事案の概要】
 建物賃貸借契約の終了に基づく保証金返還請求。保証金償却条項が10条違反に当たるかが争われた。

【判断の内容】
 10条の「消費者契約」とは,消費者と事業者との間で締結される契約をいうと定義されるが(2条3項),個人であっても,事業として又は事業のために契約の当事者となる場合は「消費者」に該当しない(2条1項)ものであるところ,原告は,本件建物をクラブとして使用する目的で賃借し,現に,本件建物においてクラブを営業していたのであって,事業のために本件賃貸借契約を締結したものであるから,本件賃貸借契約は10条にいう「消費者契約」とはいえず,原告の主張は前提を欠くとして、消費者契約法は適用されないとした。

◆ H23.08.18東京地裁判決

2013年6月23日 公開

平成22年(ワ)第41347号保険金請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 志田博文、杉本宏之、後藤隆大

【事案の概要】
 責任開始期から2年以内の自殺は免責される旨及び保険契約が失効の後、復活した場合の責任開始期は、被告が延滞保険料を受け取った日とする旨の特約がある生命保険契約において、保険料猶予期間の末日の経過により保険契約が失効するとする本件失効条項に基づき失効し、復活条項に基づく復活による責任開始日から2年以内に自殺した被保険者の妻である原告が、被告に対し、生命保険金の支払等を求めた事案。本件失権条項が10条により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から本件失権条項が無効であるとして請求を認めた。
① 本件失権条項は、10条前段要件を満たす。
② 後段要件について、保険契約の継続という利益は消費者にとって極めて重要。他方、民法が履行遅滞による解除権の発生に相当期間を定めた履行の催告を要求する趣旨は、契約が解除されるという不利益を受ける前に債務者に履行の機会を付与する点にあるところ、本件保険契約における履行の催告は消費者にとって極めて重要な利益。そして、保険会社の利益は、通知コストの軽減という付随的な利益にとどまる。
 従って、消費者契約である生命保険契約に付された履行の催告及び解除の意思表示を不要とする特約は,通知コストの軽減という付随的な利益のために保険保護の継続という保険契約における本質的な利益を制限するものであり,保険料の支払が口座振替によりなされる旨合意されている場合には,保険契約者が履行遅滞にあることや保険契約が失効したことを確定的に認識しうる措置等保険保護された状態を維持しうるような措置がとられているなどの特段の事情のない限り,信義則に反して消費者である保険契約者の利益を一方的に害するものとして,消費者契約法10条により無効となると解するのが相当。
③ 本件の猶予期間の定め、自動振替貸付制度の定め、復活条項は前記特段の事情を肯定する事情としては足りない。催告の実質を有する特則通知書を送付する社内体制となっていることだけでは、催告を不要とする根拠となるとはいえない。

◆ H24.02.01東京地裁判決

2013年6月21日 公開

平成23年(ワ)第948号保険金請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 篠田賢治

【事案の概要】
 原告株式会社の代表取締役であったCを被保険者とする保険契約を被告との間で締結していた原告が、Cの死亡により、死亡保険金の支払を求めたところ、被告が、本件契約は、保険料未払のため本件約款の無催告失効条項により失効した後、原告の申込みにより復活したものであり、復活後1年以内のCの自殺は保険金支払免責事由に当たる旨主張したのに対し、さらに原告が、本件失効条項は、継続的契約の本質及び消費者契約法の精神に鑑み、信義則違反及び公序良俗違反により無効であるなどとして争った事案。

【判断の内容】
 以下の理由から、消費者契約法の適用、類推適用を否定した。
① 本件保険契約は平成13年4月1日より前に締結されているから、消費者契約法の適用はない。
② 原告は法人であり、2条1項に規定する「消費者」にあたらないから、消費者契約法の適用はない。
③ 原告と被告との間に情報及び交渉力に格差があることは十分にうかがわれるが、原告の組織の実態等からも類推適用することはできない。
④ 仮に、本件保険契約につき消費者契約法が類推適用されるとしても、10条の類推適用の可否の問題となるが、本件失効条項は,保険契約者の保護の観点、保険契約者のモラル・ハザードを防止する必要の点から、合理性があり、保険契約者に有利な内容も含まれており、これらの事情からすると,原告と被告との間に情報の質及び量並びに交渉力の格差があるとしても、消費者の利益を一方的に害するものとはいえない。

◆ H24.01.31東京地裁判決

2013年6月21日 公開

平成22年(ワ)第34752号慰謝料等請求事件
ウエストロー・ジャパン、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 上田哲

【事案の概要】
 旅行業者である被告との間で旅行契約を締結して被告主催のツアーに参加した原告らが、クルーズ船において割り当てられた客室が身体障害者仕様の海の見えない客室であったことが被告の債務不履行又は消費者契約法4条4項1号所定の「重要事項」に係る説明義務違反の不法行為を構成すると主張して、被告に対し、損害賠償を求めた事案。

【判断の内容】
 以下のように判断し、請求を棄却した。
① 「重要事項」(4条4項1号)とは,当該消費者契約の目的となるものの質,用途その他の内容等であって消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきものをいうところ,この「消費者の・・・判断に通常影響を及ぼすべきもの」とは,契約締結の時点の社会通念に照らし,当該消費者契約を締結しようとする一般平均的な消費者が当該消費者契約を締結するか否かについて,その判断を左右すると客観的に考えられるような,当該消費者契約についての基本的事項,換言すれば,通常予見される契約の目的に照らし,一般平均的な消費者が当該消費者契約の締結について合理的な意思形成を行う上で通常認識することが必要とされる重要なものをいうと解される。
② 本件の事情からは、「バルコニー付スタンダード」中に本件船室が含まれていることが,一般平均的な消費者が旅行契約の締結について合理的な意思形成を行う上で通常認識することが必要とされる重要なものであるとはいえないから,「重要事項」に当たるとはいえないし,その他,信義則等の一般原則に照らしても,本件契約の締結に際し,被告が原告ら主張のような説明義務を負っていたとは認められない。

◆ H24.01.25東京地裁判決

2013年6月21日 公開

平成22年(ワ)第17665号、第38763号サイト制作代金等請求事件(本訴)、(反訴)
ウエストロー・ジャパン
裁判官 秋元健一

【事案の概要】
 原告が、被告会社との間でインターネットサイト制作等の委託契約を締結したとして、被告会社に対し、代金等の支払を求めるとともに、被告会社の代表取締役である被告Y2に対し、同Y2に金銭を貸し付けた又は同Y2が被告会社の原告に対する金銭債務を引き受けたとして、金員の支払を求めた事案。

【判断の内容】
 被告会社に対する請求を一部認める一方で、被告代表取締役に対する請求については、債務引受契約の成立を認めつつ、遅延損害金利率については消費者契約法所定の制限利率の範囲内である約定の年14.6%に制限して認めた(明示はないが9条2号を適用したものと思われる。)。

◆ H24.04.17東京地裁判決

2013年6月19日 公開

平成22年(ワ)第25620号手付金返還等請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 阿閉正則

【事案の概要】
 マンションの居室の売買契約(売主は宅建業者)後、エレベーターの設置工事で死亡事故が生じたことから、買主が債務不履行解除、瑕疵担保責任による解除、事情変更による解除を主張するとともに、手付金の返還を請求した事案。手付金相当額を違約金として支払うものとする条項が9条1号に違反するかが争われた。

【判断の内容】
 売主が宅建業者であるところ、宅建業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約における契約の解除に伴う違約金の額については、宅建業法38条に別段の定めがあり、この規定が消費者契約法9条1号に優先して適用される(11条2項)として、本件違約金条項は9条1号に違反し無効とはいえないとした。

◆ H24.03.27東京地裁判決

2013年6月19日 公開

平成22年(ワ)第38195号不当利得返還請求事件
ウエストロー・ジャパン、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 杉本宏之

【事案の概要】
 原告が被告から,不動産投資と勧められて2件の不動産を購入したが,その後,本件不動産の価格が下落していることが判明したこと,被告から重要事項について不実の事実を告げられ,かつ,断定的判断の提供をされたなどを主張し,4条1項2項等による本件不動産の売買契約の取消しを求めた事案。

【判断の内容】
 本件契約締結の際,重要事項である物件の客観的な市場価格を提示していないこと,家賃収入が30年以上に亘り一定であるなど非現実的なシュミレーションを提示し,原告に月々の返済が小遣い程度で賄えると誤信させたこと及びその他原告が物件についての不動産投資をするに当たっての不利益な事情を十分説明していなかったことを認定し、不利益事実の不告知により契約を締結したものとして、4条2項による取消を認めた。

◆ H24.02.16東京高裁判決

2013年6月19日 公開

平成23年(ネ)第5197号保険金請求控訴事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 園尾隆司 櫻井佐英 吉田尚弘

【事案の概要】
 被保険者が自殺したことによる保険金請求。無催告失効特約が10条違反かが争われた。

【判断の内容】
 本件無催告執行特約は、その要件として,保険料支払期限後1か月の猶予期間を設け,その間になお支払がない場合に失効するものとしていること,保険料の払込みがないまま猶予期間を経過しても,保険契約者からあらかじめ反対の申出がなく,かつ,猶予期間満了の日の解約返戻金が未払込みの保険料相当額を超えているときは,猶予期間満了の日に積立金から保険料が払い込まれたものとして取り扱うものとされている。また,保険契約が失効した日から3年以内であれば,保険契約者は,保険者の承諾を得て,失効期間に対応する保険料を払い込むことにより,保険契約を復活させることができる措置が用意されており,保険料の不払が生じたときは,その旨及び猶予期間内に保険料の支払がなければ一定の日に保険契約が失効する旨の葉書を保険契約者に送付することとされている。
 上記の無催告失効条項は,上記の関連条項全体の中で考察すると,保険契約に係る大量の事務を合理的に処理することを目的として,保険者と保険契約者の利害得失を考慮して定められたものであると認められ,これが消費者である保険契約者に一方的に不利益であるということはできないから,この条項について消費者契約法10条に規定する無効事由があるものということはできない。

◆ H24.05.29東京地裁判決

2013年6月18日 公開

平成23年(ワ)第38990号、第41357号損害賠償請求事件、不当利得返還等反訴請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 井出弘隆

【事案の概要】
 行政書士への在留資格に関する申請書類の作成等の委任契約を解除したことによる報酬の返還請求。いったん納入された料金については理由の如何を問わず返還しない旨の特約が9条1号により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から、一部について返還を命じた。
① 本件不返還条項は、委任者が本件委任契約を解除した場合における損害賠償の予定又は違約金を定める趣旨のものと解することができ、9条1号にあたる。
② 本件における「平均的な損害」とは、本件事務と同種の書類作成等の事務を行政書士に委任した依頼者がこれを解除することによって当該行政書士に一般的、客観的に生ずると認められる損害をいう。
③ 本件では、既払い報酬10万5000円のうち、平均的損害は1万円を超えないとして、9万5000円の返還請求を認めた。
④ なお、10条と9条1号の関係について、9条1号によって無効とならない部分が、10条にいう「民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」に該当しないことは明らかであり、同条適用の要件を欠くものというべきとした。

◆ H24.05.15東京地裁判決

2013年6月18日 公開

平成23年(ワ)第616号損害賠償請求事件
ウエストロー・ジャパン、国セン発表情報(2013年11月21日公表)
裁判官 始関正光

【事案の概要】
 土地売買契約の解除にともなう違約金請求。契約の締結に際し原告に不実告知があったとして、売買契約の取消が争われた。

【判断の内容】
 見積書に記載された試算は、本来の意味における評価額の算定をしたものではなく、原告の見積額として提案する額が被告にとって本件各土地を保有し続けて地代を収受するよりもはるかに有利であると見せかけるために記載されたものと認定し、本件各土地の対価という重要事項について事実と異なることを告げ、被告をして、本件各土地を原告に1450万円で売却する方が、これらを保有し続けて地代を収受するよりも有利であると誤信させたものであるとして、4条1項1号による取消を認め、違約金請求を棄却した。

◆ H24.08.27東京地裁判決

2013年6月15日 公開

平成22年(ワ)38688号損害賠償等請求反訴事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 前澤功

【事案の概要】
 建物賃貸借契約についての敷金返還等請求。契約終了日までに明け渡さない場合、終了日の翌日から明渡完了の日まで賃料等相当額の倍額を支払うとの合意が9条1号により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 建物の貸主に生ずべき平均的な損害の額は賃料の限度と推認でき、これを超える損害が生じることを窺わせる特別な事情も見当たらないから、合意のうち月額40万円(1カ月の賃料)を超える部分は9条1号により無効であるとして、敷金から控除する金額の一部を否定し返還請求を認めた。

◆ H24.09.18東京地裁判決

2013年6月7日 公開

平成24年(レ)第547号キャンセル料請求差止め請求控訴事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 三村晶子、大嶋洋志、行川雄一郎

【事案の概要】
 会社の従業員(控訴人)が、会社が締結している福利厚生サービス会社(被控訴人)が提供する、提携ホテル割引サービスを利用して、提携ホテルの宿泊予約をしたが、宿泊予定日の7日前にキャンセルしたところ、被控訴人からキャンセル料として宿泊料金の50%を請求されたもの。9条1号により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から、9条1号にはあたらないとして、キャンセル料の請求を認めた。
① 本件キャンセル料の契約当事者は控訴人と福利厚生サービス会社(被控訴人)であり、ホテルではない。事業者が消費者契約法の適用を免れる目的で消費者との間に形式的第三者を介在させたというような特段の事情があれば格別、単に事業者が広く顧客を獲得するために他の事業者と提携をしたというだけでは、その両者を一体として消費者契約法上の事業者にあたると解することはできない。
② 福利厚生サービス会社(被控訴人)とホテルとの間でのキャンセル料の取り決めがあり(これ自体は消費者契約法の適用はない)、控訴人が被控訴人に支払うとされるキャンセル料とは連動しており、ことさらに被控訴人独自に高額のキャンセル料を定めたものではないから、そのまま平均的損害と認められる。
③ なお、本件ホテルが隣接するテーマパークの知名度や人気の高さから、宿泊予定日の7日前にキャンセルがされたとしても宿泊予定日までに新たな宿泊予約が行われる可能性が高いこと、他の著名なホテルでは2日前より前にはキャンセル料の支払い義務の定めがないことからは、ホテルに生じる平均的損害の額については50%を相当程度下回るのではないかとの疑念があり、直接ホテルと宿泊予約をした場合には9条1項の関係で問題となる余地がないではない。しかし、控訴人はホテルと直接契約をしたものではなく、ホテルと被控訴人との契約は消費者契約ではないからホテルと被控訴人との間のキャンセル料特約は消費者契約法によって無効となることはないし、他にこれが無効であることを伺わせる事情はない。そして、本件宿泊予約にかかる契約の当事者が控訴人と被控訴人で有り、被控訴人がホテルに本件キャンセルにかかるキャンセル料の支払義務を負う以上、本件キャンセル料規程が9条1号により無効ということはできない。

◆ H24.08.08半田簡裁判決

2013年6月5日 公開

平成23年(ハ)第313号損害賠償等請求事件
名古屋消費者信用問題研究会HP同HP(PDF)
裁判官 鈴木章夫

【事案の概要】
 建物賃貸借契約(「資金礼金ゼロ」物件)につき、「敷金礼金」は不要であったものの「内装工事費負担金」名目で、入居時に金員を徴収した。「内装工事負担金」は、入居時に賃借人に内装工事費を負担させるものであったが、退去時にも賃借人は原状回復費用を支払わされた。内装工事費負担金の返還を求めた事案。

【判断の内容】
 以下の理由から、内装工事負担金から原状回復費用(一部)を差し引いた残額について返還請求を認めた。
① 本件内装工事費特約は、賃借人が本件建物に入居するにあたって施工された内装工事に要した費用の一部を賃借人に負担させるものである。
② 本件賃貸借契約では、賃貸借契約終了による本件建物明け渡し時、賃借人の故意又は重過失による原状回復費用があれば、賃貸人は賃借人に対しその原状回復費用を請求することができるとされており、内装工事費負担金をもって清算することは予定されていない。
③ とすれば、本件内装工事費特約は、賃貸借契約の目的物である建物を使用収益させる義務を負っている賃貸人が負担すべき費用の一部を賃借人に負担させるものであり、消費者の義務を加重し、民法1条2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものであって、10条により無効と解するのが相当である。

◆ H24.10.16東京地裁判決

2013年6月5日 公開

平成23年(ワ)第15640号売掛金請求事件
ウェストロー・ジャパン
裁判官 杉山順一

【事案の概要】
 ホストクラブ経営者から顧客への飲食代金請求。原告が飲食等の提供にあたり独身である旨の虚偽の事実を告知し被告との間で性的関係を持ち、これにより被告が来店し顧客となることが原告との交際に有意義であることを誤信させたことが不実告知にあたるとして契約を取り消すなどと争われた。

【判断の内容】
 ホストクラブは女性の遊戯場的な飲食店であり,その営業内容からして,ホストと客が真剣に交際することや結婚するに至ることが予定されているものでないことは明らかであるから,本件飲食等提供契約において,ホストである被告が独身か否かはそもそも重要事項に当たると認めることはできないとして、不実告知による取消を否定した。

◆ H24.05.17福岡地裁八女支部判決

2013年6月1日 公開

平成22年(ワ)第137号、平成23年(ワ)第89号損害賠償請求事件
消費者法ニュース94号357頁
裁判官 秋本昌彦

【事案の概要】
 興信所と調査委任契約を締結した原告から興信所に対する不法行為による損害賠償請求。
 原告が興信所との調査委任契約(基本料金210万円)の2日後に解約を申し出たのに、着手後の解約の場合には一切返金に応じないことを内容とする不返還条項を理由に、被告が返金に一切応じず、返金がない以上契約を継続した方がよいと申し向けたため、原告が契約解除を撤回したことについて、不返還条項が、解除権を不当に制限するものであり10条にあたるか、違約金等条項であり9条1号にあたるかが争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から、基本料金210万円のうち、平均的損害を超える部分170万円については無効であり、当該部分について不法行為が成立するとして、損害賠償請求を認めた。
① 本件不返還条項は、直接解約を制限するものではないほか、調査に係る契約締結後に、依頼者が自己の意向にそぐわない結果となった場合等にこれを理由に解約がなされた結果、被告会社が損害を被ることを防止する等の目的を有するものと認められ、調査業務の進展状況や、案件の内容等如何では、必ずしも消費者の利益を一方的に害するとまでは断じがたく、調査中との場合、成功報酬の支払いは省いていることも踏まえると、10条により無効とすべきとまではいえない。
② 本件契約では調査料金については成功報酬が定められておらず基本料金のみで210万円と設定された結果、調査が着手されてしまうと、その着手後数日しか経過していないような場合であっても、その全額が返還されないこととなるが、これは1年の調査期間内において、主に聴き取り調査を実施することを前提に、定められた調査料金全額を解除に伴う損害賠償の額と予定するもの又は違約金として定めるものといえ、事業者に生じる平均的損害を超えるものといえ、当該超過部分については、9条1号により無効となると解する。
③ 本件不返還条項においては、解約の時期や解約事由に応じた区分はされていないところ、諸般の事情から、本件においては40万円を当該平均的損害額とするのが相当であり、210万円から40万円を控除した170万円の返還を認めない部分については無効である。
④ 被告は本件不返還条項の一部が無効であるにもかかわらず、原告からの解約申し入れに対し、これとは異なる説明をして、原告にその旨誤信させ、解約を断念させ、原告の解約する権利を違法に侵害したものであるとして、弁護士費用1割(17万円)を加えて、不法行為による損害賠償請求を認めた。

◆ H24.08.22神戸地裁判決

2013年6月1日 公開

平成22年(レ)第275号、平成23年(レ)第385号敷金返還請求控訴同附帯控訴事件
消費者法ニュース94号362頁
裁判官 工藤涼二、末永雅之、今野智紀
第1審 神戸簡裁平成21年(ハ)第13822号

【事案の概要】
 アパート(賃料月8万円)の賃借人が、明け渡し後、賃貸人に対して、敷金80万円の返還請求をしたところ、50万円の敷引特約があること等を理由としてその支払いを拒んだ事案。

【判断の内容】
 本件敷引特約が10条により無効であるとして、返還請求を認容した原判決を維持した。
① 居住用建物の賃貸借契約に付された敷引特約は、契約当事者間にその趣旨について別異に解すべき合意等のない限り、通常損耗等の補修費用を賃借人に負担させる趣旨を含むものというべきである。本件敷引特約はそうであり、10条前段要件を満たす。
② 後段要件については、平成23年7月12日最高裁判決と同様の判断基準を示しつつ、本件では、(1)敷引額が賃料月額8万円の6.25倍であること、(2)賃借人退去後の補修費用は9万8175円であること、(3)賃貸期間は2年半あまりであること、(4)賃料が近傍同種の物件の賃料相場と比較して大幅に低額といった事情はないことから、本件敷引特約は、信義則に反して消費者である賃借人の利益を一方的に害するものであって10条により向こうと解するのが相当。

◆ H25.04.26京都地裁判決

2013年5月27日 公開

平成23年(ワ)第3426号結婚式場解約金条項使用差止等請求事件
京都消費者契約ネットワークHP(PDF)消費者庁HP(PDF)
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 株式会社ベストブライダル

【事案の概要】
 適格消費者団体が、結婚式場等の企画、運営等を業とする被告に対し、被告が不特定かつ多数の消費者との間で、キャンセル料条項が、9条1号により無効であるとして、上記契約条項を内容とする意思表示の差止め等を求めた事案。

【判断の内容】
 請求棄却。
① 本件キャンセル料条項は、9条1号にいう違約金等条項にあたる。
② 平均的損害の算定方法について、9条1号は、民法第416条を前提としその内容を定型化するという意義を有し、同号にいう損害とは、民法第416条にいう「通常生ずべき損害」に対応するものであるから、本件契約の解約に伴う被告の平均的損害についても、解約に伴う逸失利益(得べかりし利益)から、再販売(被告が他の顧客との間で本件契約を締結し、ほぼ同一の日時、場所で挙式披露宴を実施したような場合)により塡補される利益及び解約により支出を免れる経費を控除することにより算定すべきである。
③ 具体的には、(1)本件契約における平均実施金額(挙式披露宴実施代金の平均額)を基礎として、同金額から、(2)同金額と被告の利益率から算出される、解約に伴い被告が支出を免れる経費の額、及び(3)被告の非再販売率から算出される、再販売により填補される利益の額を控除する方法により、本件各キャンセル料条項に係る各解約時期において解約された場合に、被告に生じる平均的損害の額を算定し、本件各キャンセル料条項に係る各解約時期におけるキャンセル料の額を、各個別料金項目(会場使用料、ウエディングケーキ代等)の上記平均実施金額に占める平均的割合を用いてその値を算出するなどして算定した上で、同キャンセル料について、各解約時期において解約がされた場合に被告に生じる上記平均的損害の額を上回るかどうかを検討し、いずれも同損害の額を超えるキャンセル料を定める条項とはいえないとした。

◆ H24.11.27高松高裁判決

2013年5月9日 公開

平成24年(ネ)第339号解約金返還請求控訴事件
判例時報2176号33頁
裁判官 小野洋一、池町知佐子、大嶺崇
第1審 H24.5.30高松地裁判決

【事案の概要】
 携帯電話会社(エヌ・ティ・ティ・ドコモ)との携帯電話利用契約締結について、割引サービスにおける解約金の説明が不利益事実の不告知にあたるとして契約の取消、解約金の返還請求をした事案。請求を棄却した第1審に対する控訴審。

【判断の内容】
4条2項による取消を否定し、控訴棄却。
① 契約の際に交付されたガイドブックの記載内容や記載状況から、契約の際の説明はこれら文書に記載されたところに従って行われたとの推認が可能。
② これら記載からは、解約金の内容を理解しうるものであり、その記載が、本件契約における解約金が自動更新後には生じないなどと故意に誤認させ、故意に不利益事実を告知しないものであるとまでいうことはできない。

◆ H24.07.10東京地裁判決

2013年5月4日 公開

平成24年(レ)第9号授業料返還請求控訴事件
判例秘書、ウエストロー・ジャパン
裁判官 本多知成、倉地真寿美、鈴木美智子

【事案の概要】
 外国語を使用する幼稚園(インターナショナルスクール)に子どもを通園させるため、平成20年6月9日に、平成20年9月1日以降の授業料87万7800円を支払った後,日本国外への転勤命令を受けて授業開始前に在籍契約を解約したことを理由に授業料の返還請求をした事案。一旦支払われた授業料は授業開始前でも返還しない旨の特約が9条1号により無効であるとの主張を控訴審で追加した。

【判断の内容】
 以下の理由から返還請求を認めた。
① 本件在籍契約は消費者契約に該当する。
② 本件不返還条項は、違約金等条項に該当する。
③ 在籍契約の解除に伴い本件のような施設に生ずべき平均的な損害とは,1人の生徒についての在籍契約が解除されることによって当該施設に一般的,客観的に生ずると認められる損害をいうものと解される。
④ 本件在籍契約は、施設の特殊性等から、授業料支払後授業開始前の期間に解除される場合があることは織り込み済みのものというべき。生徒が当該施設に通園することが客観的にも高い蓋然性をもって予測される時点よりも前の時期における解除については,原則として,当該施設に生ずべき平均的な損害は存しないものというべきであり,納付された授業料は,原則として,その全額が当該施設に生ずべき平均的な損害を超えるものというべき。
 本件施設のようなインターナショナルスクール等においては,その第1学期が9月1日に開始されるものであるから,少なくとも,第1学期の開始日である同日以降は,入園申込者が特定のインターナショナルスクール等に在籍することが高い蓋然性をもって予測されるものというべきである。そうすると,本件在籍契約の解除の意思表示がその前日である8月31日までにされた場合には,原則として,本件施設に生ずべき平均的な損害は存在しないものであって,本件不返還特約は全て無効となるというべきである。

◆ H25.03.28東京高裁判決

2013年5月3日 公開

平成24年(ネ)第5480号消費者契約法12条に基づく差止請求控訴事件
消費者機構日本HP(判決写しあり),判例時報2188号57頁,判例時報2214号156頁
裁判官 市村陽典、團藤丈士、菅家忠行
適格消費者団体 消費者機構日本
事業者 三井ホームエステート株式会社
第1審 H24.07.05東京地裁判決

【事案の概要】
適格消費者団体が,不動産賃貸業者に対し,①更新料の支払を定めた条項及び②契約終了後に明渡しが遅滞した場合の損害賠償額の予定を定めた条項が9条1号及び10条に規定する消費者契約の条項に当たると主張して,消費者契約法12条3項に基づき,その契約の申込み又は承諾の意思表示の停止及び契約書用紙の破棄並びにこれらを従業員に周知・徹底させる措置をとることを求めた事案の控訴審。

【判断の内容】
控訴棄却。
① (更新料について)契約書上、本件更新料は、賃貸借契約を締結する際に、賃貸人が、普通借家契約を選択することにより、法定更新制度を背景に自らの選択により契約期間を更新できる地位を取得し、契約期間満了時において、賃貸借契約の継続を選択する利益が具体化した場合に、その具体化した利益、すなわち、賃貸借契約を継続することの対価として支払われるものとされているものであるから、その根拠が不明確であるとは認められない。
 額が不当に高すぎるという特段の事情はない。契約締結について賃貸人と賃借人との間に情報の質、量、交渉力の格差があるとは認められない。 
② (倍額賠償予定条項について)
 本件倍額賠償予定条項は、契約解除時においては損害発生の有無自体が不明であるから、9条1号にいう損害賠償額を予定し又は違約金を定める条項であると解することは相当でない。
 本件倍額賠償予定条項には合理性があり、額も高額に過ぎるというものではない。

◆ H25.03.29大阪高裁判決

2013年4月13日 公開

平成24年(ネ)第2488号解約違約金条項使用差止請求、不当利得返還請求控訴事件
消費者庁HP(PDF)判決写し(PDF、京都消費者契約ネットワークHP)
裁判官 小島浩、三木昌之、橋本都月
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 KDDI株式会社
第1審 H24.07.19京都地裁判決

【事案の概要】
 適格消費者団体が、携帯電話会社に対し、消費者が二年間の定期契約を契約期間の途中に解約する際に解約金を支払うことを定める契約条項が、9条1号及び10条により無効であると主張して、12条3項に基づき、条項使用差し止めを求め(第1事件)、解約金の不当利得返還請求を求める事案(第2事件、第3事件)で、第1審は請求を一部認容した。控訴審。

【判断の内容】
一審を取消し、適格消費者団体の請求を棄却した。
① 法第9条第1号は、債務不履行の際の損害賠償請求権の範囲を定める民法第416条を前提とし、その内容を定型化するという意義を有するから、同号の損害は、民法第416条にいう「通常生ずべき損害」であり、逸失利益を含むと解すべきである。
② 平均的な損害の算定方法については、当該条項すなわち契約に定められた解除事由、時期等により同一の区分に分類される同種の契約における違約による損害の平均値を求めることによって算定すべきであり、当事者が設定した区分を裁判所がさらに細分化することを認める趣旨とは解されない。
③ 本件定期契約は、2年間の期間の定めのある契約であり2年間継続して使用されることを基本的条件として、基本使用料、通話料等が設定されているものと認められるところ、本件解約金条項は、2年間という期間を一つの区分とし、その契約が解除されたことによる損害をてん補するものは本件解約金条項のほかにはないということができるとし、平均的な損害の算定の基礎となる損害額について、本件定期契約が中途解約されることなく契約が期間満了時まで継続していれば被告が得られたであろう通信料収入等(解約に伴う逸失利益)を基礎とすべき。
④ 10条後段該当性については、本件定期契約において、社会通念上著しい長期間にわたって解約を制限するものではなく、解約金が法第9条第1号の平均的な損害を超えるものでないこと、契約者は、通常契約と比較した上で、本件定期契約を選択することができ、しかもその場合基本使用料割引の利益を受けられることからすると、本件解約金条項が、信義則に反して消費者の利益を一方的に害する条項であるとはいえず、法第10条後段に該当しない。
⑤ 本件定期契約の更新は、新規の契約締結と同様の効果を有するものであるから、更新後においても、本件解約金条項が法第10条後段に該当することはない。

◆ H25.01.25大阪高裁判決(H25.02.05更正決定)

2013年3月2日 公開

平成24年(ネ)第281号解約金条項使用差止請求、解約金請求、解約金返還請求、不当利得返還請求控訴事件、平成24年(ネ)第941号 同附帯控訴事件
消費者庁HP(PDF)判決写し(PDF、京都消費者契約ネットワークHP)、判例時報2187号30頁
裁判官 山田知司、水谷美穂子、和久田道雄
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワークHP
事業者 株式会社セレマ、株式会社らくらくクラブ
第1審 H23.12.13京都地裁判決

【事案の概要】
適格消費者団体が冠婚葬祭の相互扶助や儀式設備の提供等を業とする株式会社セレマ及び旅行業や相互扶助的冠婚葬祭の儀式施行に関する募集業務等を業とする株式会社らくらくクラブに対し、①被告セレマ及び被告らくらくが消費者との間で締結している互助契約又は積立契約において、それぞれ契約解約時に支払済金額から「所定の手数料」などの名目で解約金を差し引くとの条項を設けていることに関し、同条項は消費者契約法第9条第1号又は同法第10条に該当するものであり、消費者に対し解約金を差し引くことを内容とする意思表示を行わないこと、②①が記載された契約書雛形が印刷された契約書を破棄すること、③従業員らに対し、①の意思表示を行うための事務を行わないこと及び②の契約書の破棄を指示することを求めた事案の控訴審。

【判断の内容】
(セレマについて)
① 本件互助契約は、消費者が将来行う冠婚葬祭に先立って、所定の月掛金を前払いで積み立てることにより、消費者は冠婚葬祭の施行を受ける権利を取得し、被告セレマは、消費者の請求により冠婚葬祭の施行をする義務を負う役務提供契約であって、同被告は、消費者から冠婚葬祭の施行の請求を受けて初めて、当該消費者のために冠婚葬祭の施行に向けた具体的な準備等を始めるものである。すると、具体的な冠婚葬祭の施行の請求がされる前に本件互助契約が解約された場合には,損害賠償の範囲は原状回復を内容とするものに限定されるべきであり、具体的には契約の締結及び履行のために通常要する平均的な費用の額が、法第9条第1号の「平均的な損害」となるものと解される。
② 平均的な費用(経費)の額というのは、現実に生じた費用の額ではなく、同種契約において通常要する必要経費の額を指すものというべき。ここでいう必要経費とは、契約の相手方である消費者に負担させることが正当化されるもの、すなわち、性質上個々の契約(消費者契約)との間において関連性が認められるものを意味するものと解するのが相当である。
③ 本件互助契約において「平均的な損害」に含まれるものは、個々の契約との関連性が認められ、会員の管理に要する費用として同業他社でも通常支出しているものと考えられる、月掛金を1回振り替える度に被告セレマが負担する振替手数料58 円と振替不能となった場合の通知の送付費用2円を合わせた60 円、並びに年2回の「全日本ニュース」及び年1回の入金状況通知の作成・送付費用14.27 円(1件月当たりの金額1年当たりの金額)ということになる。
④ したがって、被告セレマは、消費者との間で、冠婚葬祭の互助会契約を締結するのに際し、消費者が冠婚葬祭の施行を請求するまでに解約する場合、解約時に支払済み金額から「所定の手数料」などの名目で、60 円に第1回目を除く払込みの回数を掛けた金額及び14.27 円に契約月数契約年数を掛けた金額を超える解約金を差し引いて消費者に対し返金する旨を内容とする意思表示を行ってはならない。

◆ H24.10.23最高裁決定

2013年2月2日 公開

平成23年(受)第1698号
決定写し(PDF、ひょうご消費者ネットHP)
裁判官 岡部喜代子、田原睦夫、大谷剛彦、寺田逸郎、大橋正春
適格消費者団体 ひょうご消費者ネット
事業者 株式会社ジャルパック(旧商号株式会社ジャルツアーズ)
第1審 H22.12.08神戸地裁判決
控訴審 H23.06.07大阪高裁判決

【事案の概要】
適格消費者団体が、旅行業を営む株式会社ジャルツアーズに対し、株式会社日本航空インターナショナル(JAL)の発行する企業ポイントにより旅行代金等が決済された後の契約の取消しないし変更があった場合に、同企業ポイントの返還をしない旨の条項が、被告と消費者との間で締結する企画旅行契約における契約条項となっており、消費者契約法第10条及び第9条第1号に違反して無効であるとして、本件条項を含む契約の締結の差止め等を求めた事案。契約条項とならない等として請求を棄却した控訴審判決に対する上告受理申立。

【判断の内容】
上告不受理。



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