◆ H25.03.27東京地裁判決
【事案の概要】
放送法の規定に基づき設置された法人である被控訴人と控訴人は放送受信契約を締結したが、その後、控訴人は受信料を支払わなくなった。このため、被控訴人は、控訴人に対し、本件契約に基づき未払い受信料及び約定遅延損害金の支払いを求めた。控訴人は、被控訴人の会計検査院法27条違反、放送法27条違反、放送法4条及び14条違反などを理由に、本件契約が民法90条に違反し無効であると主張した。また、本件契約は消費者契約であり、被控訴人が控訴人に重要事項である受信契約の内容を十分に説明していないなどとして法4条1項1号による本件契約の取消しを主張した。さらに、本件契約に基づく受信料債権は、民法173条による2年の短期消滅時効または民法169条の定期給付債権として5年の短期消滅時効により消滅するとして、消滅時効を援用する旨の意思表示をした。原審は、被控訴人の請求を全部認容した。
【判断の内容】
本件受信契約が公序良俗に反するとはいえない。放送受信契約は、放送法64条2項によりその締結を義務付けられている上、同条3項において、同契約の条項につきあらかじめ総務大臣の認可を受けなければならないとされていることからすれば、当事者の自由意思により締結されるものとはいえないから、放送受信契約の締結について法4条1項が適用される余地はない。本件受信料債権については、民法173条に定める債権には該当しない。本件受信料債権は、本件受信契約という基本契約に基づいて発生し、受信規約により月額が定められ、2カ月毎に支払うことを内容とするものであるから、基本権たる定期金債権から派生する支分権として、民法169条に定める債権に該当する、として控訴を棄却した。