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「2013年9月」アーカイブ|消費者契約法判例集

◆ H22.03.18さいたま地裁判決

2013年9月16日 公開

平成21年(レ)第167号敷金返還請求控訴事件
最高裁HP
裁判官 佐藤公美、 髙橋光雄、 川﨑慎介

【事案の概要】
 ペット可の建物賃貸借契約の際に差し入れた定額補修費8万円の返還請求。定額補修費を支払うとの条項が10条により無効となるか、前払した賃料及び共益費のうち明渡し日の翌日以降退去月の末日までの分を返還しないとする契約条項(日割精算排除条項)が10条により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 いずれも10条により無効とはならないとしつつ、一定の範囲で返還請求を認めた。
① 定額補修費は実際にかかった補修費との差額について返還すべきものであり、不返還の合意があるなどの事情がない限りは差額を返還すべき。本件ではそのような合意はない。
② 本件補修費用は,いずれも本件貸室の修復費用であり,その中に通常損耗の原状回復費用を含むものであるところ,建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは,賃借人に予測しない特別の負担を課すことになるから,賃借人に同義務が認められるためには,少なくとも,賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明示されているか,仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には,賃貸人が口頭により説明し,賃借人がその旨を明確に認識し,それを合意の内容としたものと認められるなど,その旨の特約が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当(最高裁平成17年12月16日第二小法廷判決・判例タイムズ1200号127頁)。
③ 本件補修費用のうち、ペット飼育に掛かる汚損・破損の補修費については明確な合意があるから定額補修費から支出すべきものであるが、それ以外の支出は明確な合意がなく、控除すべきでない。
④ 本件定額補修費の合意は、敷金類似の金銭預託契約であり、本件契約には他に権利金や敷金の支払いもないこと、ペット飼育できることとして2000円の賃料増額がなされているが、これはペット飼育できることの利益についての対価でありそれ以上にペット飼育に伴う賃借物件の劣化又は価値の減少を補填する趣旨を含むものではないこと等から、10条に反しない。
⑤ (日割精算排除条項について)本件日割精算排除条項及び退去条項からは、解約の意思表示が貸主に到達してから最大3カ月分の賃料を支払うことになるが、本件契約は期限の定めがあり本来一方的に解約することができないこと、期間の定めのない建物賃貸借の場合解約申し入れから3カ月後に終了することからは、10条には反しない。

◆ H25.02.22大阪簡裁判決

2013年9月11日 公開

平成24年(ハ)第17022号損害賠償請求事件(本訴)、第35076号損害賠償請求事件(反訴)
消費者法ニュース96号362頁
裁判官 鈴本浩一郎

【事案の概要】
 幼児の保護者が幼稚園と入園契約を締結し、入園金5万円を支払った後、入園式の直前になって授業料の値上げと入園式の日程変更を幼稚園が通知したことから、入園を取りやめ、既払いの入園金や授業料の返還を求めたところ、入園金はいかなる理由があっても返金しないとの条項の存在を理由に入園金5万円の返還を受けられなかったことから、その返還を求めて提訴した事案。不返還条項が10条により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から返還請求を認めた。
① 本件入園金の法的性質は、入園金の支払が契約成立の条件となっており、また、他の幼稚園への入園を前提とする解除権が留保されていることをうかがわせる事情が認められないから、入園しうる地位の対価としての性質を認めることは困難。しいていえば、一方的に入園辞退することを回避するための手付金に類する性質を有する。
② 本件不返還合意は、被告側の帰責事由がある場合にも有効とすれば社会通念に鑑みて相当性を欠く場合があるといわざるを得ず、被告側の有責的事情が原因で当該入園希望者が入園を辞退することに合理的な理由がある場合には、本件不返還合意は信義則に反し、10条後段要件を満たすから、そのような場合は変面的に無効となり効力が及ばないというべき。
③ 本件では、授業料の値上げ、入園式の日程変更のいずれも被告側の有責的事情といえ、原告の契約解約申し入れには相応の合理性があり、本件不返還合意の効力は及ばない。

◆ H22.06.11東京地裁判決

2013年9月11日 公開

平成21年(ワ)第41032号敷金返還等請求事件、建物明渡請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 綿引穣

【事案の概要】
 建物の賃借人からの敷金返還請求及び違約金条項(賃借人より契約締結後2年未満に解約・解除等がされたときは,賃借人は賃料・共益費の1か月分を支払う旨の条項)に基づき支払った違約金の返還請求。違約金条項が10条により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 本件違約金条項を無効とし、返還請求を認めた。
① 本件においては,賃借人からの解約申し出後2か月で賃貸借契約が終了する旨の特約が別途存在するから、賃貸借契約が2年以内に解約されることにより,賃貸人に特段の不利益があるとは考えられない。
② 本件賃貸借は居住用マンションの賃貸借であるが,その契約時期は,平成20年2月であるところ,一般的には,4月に居住用マンションの新規需要が生じるのであるから,契約後2年間の契約期間に特段の意味はない。
 以上から、消費者の利益を一方的に害するものとして、本件違約金条項は無効というべき。

◆ H22.05.28東京地裁判決

2013年9月11日 公開

平成21年(レ)第324号損害賠償請求控訴事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 佐久間邦夫、石原直弥、牛尾可南

【事案の概要】
 被控訴人が控訴人との間でパチンコの攻略情報の売買契約を締結したが、同契約は、断定的判断の提供によるものであり、この攻略情報を用いれば確実に利益を得ることができると誤認して締結したものであり、消費者契約法4条1項2号に基づいて取り消した、錯誤による無効である、上記のような勧誘行為は詐欺行為であるから取り消したなどと主張して不当利得の返還を請求したところ、原審が請求を認容したことから、控訴人が控訴した事案。契約日から半年以上経過した後に取消の意思表示をしていたことから、消滅時効の点も争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から、業者の控訴を棄却した。
① 本件契約は,控訴人が被控訴人に対し,パチンコの打ち方の手順等の情報を提供するものであり,これによって,被控訴人にパチンコで経済的利益を得させることを目的とした契約であると認められる。
② 一般的に,パチンコは,各台の釘の配置や角度,遊技者の玉の打ち方や遊技時間,台に組み込まれて電磁的に管理されている回転式の絵柄の組み合わせなどの複合的な要因により,出玉の数が様々に変動する遊技機であり,遊技者がどのくらいの出玉を獲得するかは,前記のような複合的な要因に左右され,偶然性が高いから、控訴人が本件契約において提供すると約した情報は,将来における変動が不確実な事項に関するものにあたる。
③ 控訴人は,自社のホームページにおいて、控訴人の提供する情報を使えば,利益を上げることができ,かつ,その情報自体が信用性の高いものである旨表示していた。
 また,攻略法を利用した場合に得られる利益について、クレジットカードの一括払いを利用しても決済日までにはその額に相当する利益を上げることが可能である旨述べるなど、控訴人が提供する攻略情報の手順に従った打ち方をすれば,短期間で,かつ,別の機種の攻略情報も購入可能な程度の利益を得ることができるという趣旨の発言をしていること、効果が上がらない場合には,現地調査に赴き,控訴人の従業員が確認作業を行うという記載のある保証規約書を交付するなどしていることからは、控訴人は,控訴人が提供する攻略情報を使えば,将来の出玉によって利益を得ることが確実であるとの言動を示したものということができ,控訴人による勧誘は,被控訴人に対して断定的判断を提供したものといえる。
④ 被控訴人は,(契約日から約1年後の)平成20年7月9日に司法書士との会話の中でパチンコの攻略情報が存在しないことを知ったのであり,それ以前の段階で,被控訴人が,消費者契約法上の取消事由が存することを認識していたと認めるに足りる的確な証拠はなく,控訴人の主張は採用できない。

◆ H22.08.31大阪高裁判決

2013年9月8日 公開

平成21年(ネ)第2785号債務不存在確認等請求控訴事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 紙浦健二、川谷道郎、宮武康
第1審 大阪地裁平成21年(ワ)第113号

【事案の概要】
 5年間で償却する約定で600万円の入居金を支払って被控訴人の高齢者用介護サービス付賃貸マンションに母親を入居させていた控訴人が、2年後、賃貸借契約の終了に伴い、入居金の返還を求めた事案。入居金の償却条項が10条により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から10条により入居金の焼却場公は無効であるとして返還請求を認めた。
① 本件入居金の法的性格は、賃貸借契約から生ずる控訴人の債務の担保、医師及び看護師による24時間対応体制が整った居室への入居の対価及び入居後の医師・看護師らによるサービスの対価としての性格を併有する。
② 本件マンションには被控訴人が宣伝していたような24時間対応体制の実態はなく、被控訴人が対価に相当するサービスを提供していないのに1年毎120万円を取得することは、民法の一般規定による場合と比較して消費者である控訴人の権利を制限するものであるから、本件約定は10条により無効である。

◆ H25.07.11大阪高裁判決

2013年9月8日 公開

平成24年(ネ)第3741号解除料条項使用差止請求控訴事件
消費者庁HP(PDF)、金融商事判例1423号9頁、ウエストロー・ジャパン
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 ソフトバンクモバイル株式会社
第1審 H24.11.20京都地裁判決

【事案の概要】
適格消費者団体が,電気通信事業等を営む事業者に対して,2年間の契約期間の定めのある携帯電話通信契約を中途解約する際に解除料として9975円の支払義務があることを定める条項が消費者契約法9条1号・10条に反するとして同条項の使用の差止めを求めたもの。1審が原告の請求を棄却し、原告が控訴していたもの。

【判断の内容】
 控訴棄却。
 本件解除金条項が法第9条第1号により無効であるかどうかについて、本件解除金条項が、「解除に伴う損害賠償の額の予定」又は「違約金」に該当するとした上で、本件解除料が法第9条第1号にいう平均的な損害を越えるか否か判断するに際しては、被告の設定した契約期間である2年間の中途における解除という時期の区分を前提に、本件契約の解除に伴い、被告に生じる損害の額の平均値を求め、これと本件解除料の比較を行えば足りるとし、法第9条第1号は、債務不履行の際の損害賠償請求権を定める民法第416条を前提とし、その内容を定型化するという意義を有するから、同号の損害は、民法第416条にいう「通常生ずべき損害」であり、逸失利益を含むと解すべきであるとした。本件契約の解除に伴って被告に生じる平均的な損害のうち、主なものは、これによって被告が失う逸失利益であり、その額は、被告と本件契約を締結した契約者の平均収入から変動コストを除いて算出される変動利益(1契約当たり平均の営業上の利益(1か月当たり))に、本件契約の契約期間である2年間から、被告と本件契約を締結した契約者の平均解約期間を除いた解除後の平均残存期間を乗じた47,689円が平均的な損害に当たるとし、これは、本件解除料を超える金額となるため、本件解除条項は、法第9条第1号に反しないと判断した。
 本件解除金条項が法第10条により無効であるかどうかについては、本件契約は、民法上の請負や委任に類似する性格を有しており、本件解除料条項は、本件契約が解除された場合には、原則として、当該契約における顧客との関係で被告に具体的に生じる損害の額にかかわらず、一律に、一定の金員(本件解除料)の支払義務を課す点において、民法の一般法理に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重するものとなる余地があるとして、法第10条前段の要件に該当するとした上で、被告から顧客に対して確認書等により十分な説明が行われており、通常は、顧客もこれを理解した上で、被告の提供するサービスの中から、本件料金プランを選択した上で本件契約を締結しているということができるのであり、本件解除料条項に関して、事業者と消費者との間に、看過できないような情報の質及び量並びに交渉力の格差等があるということはできず、さらに、本件解除料は、本件契約の解除によって被告に生じる平均的な損害の額を下回っている上、本件料金プランは、基本使用料等の面で、他の料金プランより優遇されており、かつ更新月においては、本件解除料を支払うことなく契約を解除することができるとの事情が存在するのであるから、このような本件契約の特質等に鑑みても、本件契約における本件解除料条項が、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるということはできないとして、法第10条後段の要件には該当しないと判断した。
 また、更新後の解除料についても当初の解除料と同様に法第9条第1号及び第10条に反しないと判断した。

◆ H22.08.30東京地裁判決

2013年9月8日 公開

平成21年(ワ)第40358号損害賠償請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 湯川克彦

【事案の概要】
 被告会社からパチンコの攻略情報を購入した原告が、被告会社が一連の勧誘行為において、断定的判断を提供し、虚偽の情報を提示したなどと主張して、被告会社らに対して、不法行為又は不当利得に基づき、損害の賠償又は不当利得の返還として、原告の被った財産的損害、精神的損害及び弁護士費用の支払を求めた事案。

【判断の内容】
 被告会社は実効性の認められないシステムに基づく本件攻略情報を購入するよう勧誘し、本件攻略情報が有効である旨原告を誤信させて原告から金員の交付を受けたもので、本件契約について消費者契約法上の取消事由となるだけでなく詐欺行為として不法行為に該当するとした。

◆ H22.06.29東京地裁判決

2013年9月8日 公開

平成20年(ワ)第32609号売買代金返還等請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 矢作泰幸

【事案の概要】
 原告X1が被告から購入した土地について、鉛が検出されるなど瑕疵が存在するため、瑕疵担保責任を理由として売買契約を解除したなどとして、被告に対し、代金相当額の返還等を求め、同土地に住宅を建築する予定であった原告X2が、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案。瑕疵担保責任の追及は引渡日から3か月以内にしなければならないとする特約が10条により無効となるかが争われた。

【判断の内容】
 以下の理由から上記特約は10条により無効とした。
① 買主による瑕疵担保責任に基づく解除又は損害賠償の請求の期間について,民法570条,566条3項は,買主が事実を知ったときから1年以内にしなければならないと規定するのに対し,本件特約は,本件土地の引渡日から3か月以内とするというものであって,瑕疵担保責任の行使期間を,買主の認識にかかわらず,その期間も1年以内から3か月に短縮するものであるから,同法の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し,消費者である原告X1の権利を制限するものであることは,明らか。
② 本件土地の瑕疵は,環境基準を超える鉛が検出されるとともに皮革等が多数埋設されていたというもので,発見が困難であり、買主は相当の損害を受けるものであるのに、瑕疵担保責任の行使期間を買主の認識の有無にかかわらず短期間に制限をするものであること、原告X1は調査を尽くしていたこと等の事情からは、10条後段要件を満たし、無効というべき。
③ (被告が、貴金属,宝石類の卸売業等を目的とする株式会社であって,不動産の売買を業とするものではないから,消費者契約法の事業者にはあたらないとの主張に対し)2条2項は,事業者とは,法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいうと規定するから,法人は,その業務との関連にかかわらず,事業者に該当するものというべきである。



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