◆ H22.05.28東京地裁判決
平成21年(レ)第324号損害賠償請求控訴事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 佐久間邦夫、石原直弥、牛尾可南
【事案の概要】
被控訴人が控訴人との間でパチンコの攻略情報の売買契約を締結したが、同契約は、断定的判断の提供によるものであり、この攻略情報を用いれば確実に利益を得ることができると誤認して締結したものであり、消費者契約法4条1項2号に基づいて取り消した、錯誤による無効である、上記のような勧誘行為は詐欺行為であるから取り消したなどと主張して不当利得の返還を請求したところ、原審が請求を認容したことから、控訴人が控訴した事案。契約日から半年以上経過した後に取消の意思表示をしていたことから、消滅時効の点も争われた。
【判断の内容】
以下の理由から、業者の控訴を棄却した。
① 本件契約は,控訴人が被控訴人に対し,パチンコの打ち方の手順等の情報を提供するものであり,これによって,被控訴人にパチンコで経済的利益を得させることを目的とした契約であると認められる。
② 一般的に,パチンコは,各台の釘の配置や角度,遊技者の玉の打ち方や遊技時間,台に組み込まれて電磁的に管理されている回転式の絵柄の組み合わせなどの複合的な要因により,出玉の数が様々に変動する遊技機であり,遊技者がどのくらいの出玉を獲得するかは,前記のような複合的な要因に左右され,偶然性が高いから、控訴人が本件契約において提供すると約した情報は,将来における変動が不確実な事項に関するものにあたる。
③ 控訴人は,自社のホームページにおいて、控訴人の提供する情報を使えば,利益を上げることができ,かつ,その情報自体が信用性の高いものである旨表示していた。
また,攻略法を利用した場合に得られる利益について、クレジットカードの一括払いを利用しても決済日までにはその額に相当する利益を上げることが可能である旨述べるなど、控訴人が提供する攻略情報の手順に従った打ち方をすれば,短期間で,かつ,別の機種の攻略情報も購入可能な程度の利益を得ることができるという趣旨の発言をしていること、効果が上がらない場合には,現地調査に赴き,控訴人の従業員が確認作業を行うという記載のある保証規約書を交付するなどしていることからは、控訴人は,控訴人が提供する攻略情報を使えば,将来の出玉によって利益を得ることが確実であるとの言動を示したものということができ,控訴人による勧誘は,被控訴人に対して断定的判断を提供したものといえる。
④ 被控訴人は,(契約日から約1年後の)平成20年7月9日に司法書士との会話の中でパチンコの攻略情報が存在しないことを知ったのであり,それ以前の段階で,被控訴人が,消費者契約法上の取消事由が存することを認識していたと認めるに足りる的確な証拠はなく,控訴人の主張は採用できない。