「2013年7月」アーカイブ|消費者契約法判例集
◆ H22.10.12さいたま地裁判決
平成21年(ワ)第3720号損害賠償等請求事件
証券取引被害判例セレクト39巻238頁、ウエストロー・ジャパン
裁判官 八木貴美子
【事案の概要】
実際の通貨価値を説明せず将来値上がりする旨告げてイラクディナールの購入を勧誘され金員を支払ったものによる、不法行為に基づく損害賠償請求、及び断定的判断の提供、不利益事実の不告知による取消に基づく不当利得返還請求の事案。
【判断の内容】
近いうちに10倍以上値上がりすると説明して勧誘したことについて断定的判断の提供を認め、また、値下がりする可能性があることや実際の通貨価値が著しく低いことを故意に告げなかったことについて不利益事実の不告知を認め、契約の取消を認め不当利得返還請求を認めた(弁護士費用も民法704条後段の損害に当たるとした)。
◆ H22.11.09東京地裁判決
平成21年(ワ)第4449号損害賠償等請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 小林昭彦、篠田賢治、北村久美
【事案の概要】
マンションの管理組合である原告が、管理組合発足前に共用部分につき締結された電気受給契約が過大であったとして、マンション販売会社や従前の管理会社らに適正な契約電力等の説明義務違反や契約上の地位譲渡に関する契約義務違反を理由とする損害賠償請求をするとともに、電力会社に契約の取消し等による電気料金の不当利得返還を求めた事案。
管理組合がマンションの区分所有者である各組合員個人の利益を守るために存在する団体であり,原告の理事は区分所有者個人の中から選任されているから,消費者契約法上の消費者に当たる等として、消費者契約法の適用又は類推適用ができるか、不利益事実の不告知による取消、不当条項による無効等が争われた。
【判断の内容】
以下の理由から本件マンション管理組合が「消費者」に当たらないとして、消費者契約法の適用を否定した。
① 消費者契約法は,「消費者契約」とは,「消費者」と「事業者」との間で締結される契約をいうと定義し(同法2条3項),その「消費者」とは,個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいうと定義している(同条1項)から,法人その他の団体は,小規模なものであっても,消費者契約法における「消費者」には当たらないことは明らか。
② マンションの区分所有者である各組合員個人の利益を守るために存在する団体であり,原告の理事は区分所有者個人の中から選任されているから,消費者契約法の適用又は類推適用が認められるべきであると主張するが,消費者契約法の明確な定義に反する独自の見解をいうものであり,到底採用することはできない。
◆ H22.10.28東京地裁判決
平成21年(ワ)第32488号貸金請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 本間健裕
【事案の概要】
貸金業者がある企業への貸付金につき連帯保証したその企業の代表取締役個人に対し保証債務の履行を求めるとともに質権の存在確認を求めた事案。不実告知・不利益事実の不告知による取消の前提として代表者個人が消費者に当たるかが争われた。
【判断の内容】
以下の理由から、本件代表者は「消費者」に当たらないとした。
① 消費者契約法は,事業者と消費者間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み消費者の利益の擁護を図ることが目的であり,事業者と消費者の区別は,取引における情報,交渉力の格差の観点から判断されるもの。
② 被告は,複数の企業の経営者であるから,企業経営のノウハウは当然に有していると推認され,資金調達のために最低限必要な法律的常識,商慣習等については,これを有しているものと認めるのが相当。
③ 金主が直接の融資先(貸主)に対する貸付けについて,融資先(貸主)から最終的に融資を受ける借主に対し,連帯保証人となることや担保権の設定を求めることは,一般にしばしば行われることであるから,企業の経営者であれば,連帯保証人となることないし担保権の設定について,その意味や当該契約から生ずる不利益を理解することは容易。
④ 本件保証契約は,理解しやすい契約の類型であり,被告と原告との間に,取引における情報,交渉力の格差において,消費者契約法が予定しているような差異があるとは認められず,被告が本件保証契約等において,消費者契約法の消費者と認めることはできない。
◆ H22.10.29東京地裁判決
平成20年(ワ)第17540号損害賠償請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 安浪亮介、小池晴彦、潮見牧子
【事案の概要】
コンビニエンスストアのフランチャイズチェーンを運営する原告が、フランチャイジーである被告Y1において、一方的に店舗を閉鎖し、半額セールを実施した上、その売上金を支払うよう求めても応じなかったことなどから契約違反を理由に解除し、被告Y1及びその連帯保証人である被告Y2に対し、清算金、違約金及び損害賠償の支払を求めた事案。フランチャイズ契約に不当条項があり9条1号、2号、10条により無効となるかが争われ、前提としてフランチャイジーが消費者に当たるかが争われた。
【判断の内容】
以下の理由から、消費者契約法の適用を否定した。
① 消費者契約法は,事業者と消費者との間の契約を規律するものであり(同法2条3項),同法における「消費者」とは,「個人(事業として又は
事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)」と定義されている。そうすると,被告Y1は,コンビニエンスストアを自ら経営するために本件契約を締結した者として,事業のために契約の当事者となる場合に当たるから,同法2条1号の「消費者」には該当しないことになる。
② 被告らは,被告Y1と原告との間には情報・交渉力について構造的な格差があるから,本件契約にも同法の趣旨を及ぼすべきであると主張するが,同法が「個人」であっても「事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。」と明確に定めている以上,原告が株式会社で被告Y1が個人であることのみをもって同法の規定を類推適用すべきとすることは,同法の趣旨を没却するものといわざるを得ない。
◆ H22.11.12神戸地裁尼崎支部判決
平成21年(ワ)第1648号敷金返還請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 善元貞彦
【事案の概要】
マンション一室の賃貸借契約における敷金返還請求。賃料月17万7000円、期間3年、敷金150万円で、契約時より10年未満の退去の場合40%を差し引く、10年以上なら全額返還するとの敷引条項の有効性が争われた。
【判断の内容】
以下の理由から、本件敷引条項は10条に反しないとした。
① 本件敷引条項は、任意規定の適用による場合に比して賃借人の義務を加重する条項というべき。
② 敷引契約は一般的に行われており、本件建物の所在する地域でも受け入れられていた。美装費用に敷金の一部を充てることは不当とはいえない。原告は本件敷引特約を理解した上で本件賃貸借契約を締結したものといえる。これらの事情からすれば、消費者の法的に保護されている利益を信義則に反する程度に両当事者間の衡平を損なう形で侵害すると認めることはできない。
◆ H22.12.15東京地裁判決
平成20年(ワ)第37803号損害賠償請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 前田志織
【事案の概要】
被告の未公開株式の購入の勧誘を受けて280万円を送金した原告が、上場し確実に値上がりがすると説明されたことが断定的判断の提供にあたるとして契約の取消による代金の返還請求をした事案。
【判断の内容】
上場すること及び上場時期を明言し断定的判断を提供して本件未公開株式の取得を決意させたものと認められるとして、4条1項2号により契約の取消を認め、返還請求を認めた。