◆ H22.10.28東京地裁判決
判決年月日: 2010年10月28日
2013年7月28日 公開
平成21年(ワ)第32488号貸金請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 本間健裕
【事案の概要】
貸金業者がある企業への貸付金につき連帯保証したその企業の代表取締役個人に対し保証債務の履行を求めるとともに質権の存在確認を求めた事案。不実告知・不利益事実の不告知による取消の前提として代表者個人が消費者に当たるかが争われた。
【判断の内容】
以下の理由から、本件代表者は「消費者」に当たらないとした。
① 消費者契約法は,事業者と消費者間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み消費者の利益の擁護を図ることが目的であり,事業者と消費者の区別は,取引における情報,交渉力の格差の観点から判断されるもの。
② 被告は,複数の企業の経営者であるから,企業経営のノウハウは当然に有していると推認され,資金調達のために最低限必要な法律的常識,商慣習等については,これを有しているものと認めるのが相当。
③ 金主が直接の融資先(貸主)に対する貸付けについて,融資先(貸主)から最終的に融資を受ける借主に対し,連帯保証人となることや担保権の設定を求めることは,一般にしばしば行われることであるから,企業の経営者であれば,連帯保証人となることないし担保権の設定について,その意味や当該契約から生ずる不利益を理解することは容易。
④ 本件保証契約は,理解しやすい契約の類型であり,被告と原告との間に,取引における情報,交渉力の格差において,消費者契約法が予定しているような差異があるとは認められず,被告が本件保証契約等において,消費者契約法の消費者と認めることはできない。