◆ H24.09.18東京地裁判決
平成24年(レ)第547号キャンセル料請求差止め請求控訴事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 三村晶子、大嶋洋志、行川雄一郎
【事案の概要】
会社の従業員(控訴人)が、会社が締結している福利厚生サービス会社(被控訴人)が提供する、提携ホテル割引サービスを利用して、提携ホテルの宿泊予約をしたが、宿泊予定日の7日前にキャンセルしたところ、被控訴人からキャンセル料として宿泊料金の50%を請求されたもの。9条1号により無効となるかが争われた。
【判断の内容】
以下の理由から、9条1号にはあたらないとして、キャンセル料の請求を認めた。
① 本件キャンセル料の契約当事者は控訴人と福利厚生サービス会社(被控訴人)であり、ホテルではない。事業者が消費者契約法の適用を免れる目的で消費者との間に形式的第三者を介在させたというような特段の事情があれば格別、単に事業者が広く顧客を獲得するために他の事業者と提携をしたというだけでは、その両者を一体として消費者契約法上の事業者にあたると解することはできない。
② 福利厚生サービス会社(被控訴人)とホテルとの間でのキャンセル料の取り決めがあり(これ自体は消費者契約法の適用はない)、控訴人が被控訴人に支払うとされるキャンセル料とは連動しており、ことさらに被控訴人独自に高額のキャンセル料を定めたものではないから、そのまま平均的損害と認められる。
③ なお、本件ホテルが隣接するテーマパークの知名度や人気の高さから、宿泊予定日の7日前にキャンセルがされたとしても宿泊予定日までに新たな宿泊予約が行われる可能性が高いこと、他の著名なホテルでは2日前より前にはキャンセル料の支払い義務の定めがないことからは、ホテルに生じる平均的損害の額については50%を相当程度下回るのではないかとの疑念があり、直接ホテルと宿泊予約をした場合には9条1項の関係で問題となる余地がないではない。しかし、控訴人はホテルと直接契約をしたものではなく、ホテルと被控訴人との契約は消費者契約ではないからホテルと被控訴人との間のキャンセル料特約は消費者契約法によって無効となることはないし、他にこれが無効であることを伺わせる事情はない。そして、本件宿泊予約にかかる契約の当事者が控訴人と被控訴人で有り、被控訴人がホテルに本件キャンセルにかかるキャンセル料の支払義務を負う以上、本件キャンセル料規程が9条1号により無効ということはできない。