「2013年5月」アーカイブ|消費者契約法判例集
◆ H25.04.26京都地裁判決
平成23年(ワ)第3426号結婚式場解約金条項使用差止等請求事件
京都消費者契約ネットワークHP(PDF),消費者庁HP(PDF)
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 株式会社ベストブライダル
【事案の概要】
適格消費者団体が、結婚式場等の企画、運営等を業とする被告に対し、被告が不特定かつ多数の消費者との間で、キャンセル料条項が、9条1号により無効であるとして、上記契約条項を内容とする意思表示の差止め等を求めた事案。
【判断の内容】
請求棄却。
① 本件キャンセル料条項は、9条1号にいう違約金等条項にあたる。
② 平均的損害の算定方法について、9条1号は、民法第416条を前提としその内容を定型化するという意義を有し、同号にいう損害とは、民法第416条にいう「通常生ずべき損害」に対応するものであるから、本件契約の解約に伴う被告の平均的損害についても、解約に伴う逸失利益(得べかりし利益)から、再販売(被告が他の顧客との間で本件契約を締結し、ほぼ同一の日時、場所で挙式披露宴を実施したような場合)により塡補される利益及び解約により支出を免れる経費を控除することにより算定すべきである。
③ 具体的には、(1)本件契約における平均実施金額(挙式披露宴実施代金の平均額)を基礎として、同金額から、(2)同金額と被告の利益率から算出される、解約に伴い被告が支出を免れる経費の額、及び(3)被告の非再販売率から算出される、再販売により填補される利益の額を控除する方法により、本件各キャンセル料条項に係る各解約時期において解約された場合に、被告に生じる平均的損害の額を算定し、本件各キャンセル料条項に係る各解約時期におけるキャンセル料の額を、各個別料金項目(会場使用料、ウエディングケーキ代等)の上記平均実施金額に占める平均的割合を用いてその値を算出するなどして算定した上で、同キャンセル料について、各解約時期において解約がされた場合に被告に生じる上記平均的損害の額を上回るかどうかを検討し、いずれも同損害の額を超えるキャンセル料を定める条項とはいえないとした。
◆ H24.11.27高松高裁判決
平成24年(ネ)第339号解約金返還請求控訴事件
判例時報2176号33頁
裁判官 小野洋一、池町知佐子、大嶺崇
第1審 H24.5.30高松地裁判決
【事案の概要】
携帯電話会社(エヌ・ティ・ティ・ドコモ)との携帯電話利用契約締結について、割引サービスにおける解約金の説明が不利益事実の不告知にあたるとして契約の取消、解約金の返還請求をした事案。請求を棄却した第1審に対する控訴審。
【判断の内容】
4条2項による取消を否定し、控訴棄却。
① 契約の際に交付されたガイドブックの記載内容や記載状況から、契約の際の説明はこれら文書に記載されたところに従って行われたとの推認が可能。
② これら記載からは、解約金の内容を理解しうるものであり、その記載が、本件契約における解約金が自動更新後には生じないなどと故意に誤認させ、故意に不利益事実を告知しないものであるとまでいうことはできない。
◆ H24.07.10東京地裁判決
平成24年(レ)第9号授業料返還請求控訴事件
判例秘書、ウエストロー・ジャパン
裁判官 本多知成、倉地真寿美、鈴木美智子
【事案の概要】
外国語を使用する幼稚園(インターナショナルスクール)に子どもを通園させるため、平成20年6月9日に、平成20年9月1日以降の授業料87万7800円を支払った後,日本国外への転勤命令を受けて授業開始前に在籍契約を解約したことを理由に授業料の返還請求をした事案。一旦支払われた授業料は授業開始前でも返還しない旨の特約が9条1号により無効であるとの主張を控訴審で追加した。
【判断の内容】
以下の理由から返還請求を認めた。
① 本件在籍契約は消費者契約に該当する。
② 本件不返還条項は、違約金等条項に該当する。
③ 在籍契約の解除に伴い本件のような施設に生ずべき平均的な損害とは,1人の生徒についての在籍契約が解除されることによって当該施設に一般的,客観的に生ずると認められる損害をいうものと解される。
④ 本件在籍契約は、施設の特殊性等から、授業料支払後授業開始前の期間に解除される場合があることは織り込み済みのものというべき。生徒が当該施設に通園することが客観的にも高い蓋然性をもって予測される時点よりも前の時期における解除については,原則として,当該施設に生ずべき平均的な損害は存しないものというべきであり,納付された授業料は,原則として,その全額が当該施設に生ずべき平均的な損害を超えるものというべき。
本件施設のようなインターナショナルスクール等においては,その第1学期が9月1日に開始されるものであるから,少なくとも,第1学期の開始日である同日以降は,入園申込者が特定のインターナショナルスクール等に在籍することが高い蓋然性をもって予測されるものというべきである。そうすると,本件在籍契約の解除の意思表示がその前日である8月31日までにされた場合には,原則として,本件施設に生ずべき平均的な損害は存在しないものであって,本件不返還特約は全て無効となるというべきである。
◆ H25.03.28東京高裁判決
平成24年(ネ)第5480号消費者契約法12条に基づく差止請求控訴事件
消費者機構日本HP(判決写しあり),判例時報2188号57頁,判例時報2214号156頁
裁判官 市村陽典、團藤丈士、菅家忠行
適格消費者団体 消費者機構日本
事業者 三井ホームエステート株式会社
第1審 H24.07.05東京地裁判決
【事案の概要】
適格消費者団体が,不動産賃貸業者に対し,①更新料の支払を定めた条項及び②契約終了後に明渡しが遅滞した場合の損害賠償額の予定を定めた条項が9条1号及び10条に規定する消費者契約の条項に当たると主張して,消費者契約法12条3項に基づき,その契約の申込み又は承諾の意思表示の停止及び契約書用紙の破棄並びにこれらを従業員に周知・徹底させる措置をとることを求めた事案の控訴審。
【判断の内容】
控訴棄却。
① (更新料について)契約書上、本件更新料は、賃貸借契約を締結する際に、賃貸人が、普通借家契約を選択することにより、法定更新制度を背景に自らの選択により契約期間を更新できる地位を取得し、契約期間満了時において、賃貸借契約の継続を選択する利益が具体化した場合に、その具体化した利益、すなわち、賃貸借契約を継続することの対価として支払われるものとされているものであるから、その根拠が不明確であるとは認められない。
額が不当に高すぎるという特段の事情はない。契約締結について賃貸人と賃借人との間に情報の質、量、交渉力の格差があるとは認められない。
② (倍額賠償予定条項について)
本件倍額賠償予定条項は、契約解除時においては損害発生の有無自体が不明であるから、9条1号にいう損害賠償額を予定し又は違約金を定める条項であると解することは相当でない。
本件倍額賠償予定条項には合理性があり、額も高額に過ぎるというものではない。