「2013年3月」アーカイブ|消費者契約法判例集
◆ H25.01.25大阪高裁判決(H25.02.05更正決定)
平成24年(ネ)第281号解約金条項使用差止請求、解約金請求、解約金返還請求、不当利得返還請求控訴事件、平成24年(ネ)第941号 同附帯控訴事件
消費者庁HP(PDF)、判決写し(PDF、京都消費者契約ネットワークHP)、判例時報2187号30頁
裁判官 山田知司、水谷美穂子、和久田道雄
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワークHP
事業者 株式会社セレマ、株式会社らくらくクラブ
第1審 H23.12.13京都地裁判決
【事案の概要】
適格消費者団体が冠婚葬祭の相互扶助や儀式設備の提供等を業とする株式会社セレマ及び旅行業や相互扶助的冠婚葬祭の儀式施行に関する募集業務等を業とする株式会社らくらくクラブに対し、①被告セレマ及び被告らくらくが消費者との間で締結している互助契約又は積立契約において、それぞれ契約解約時に支払済金額から「所定の手数料」などの名目で解約金を差し引くとの条項を設けていることに関し、同条項は消費者契約法第9条第1号又は同法第10条に該当するものであり、消費者に対し解約金を差し引くことを内容とする意思表示を行わないこと、②①が記載された契約書雛形が印刷された契約書を破棄すること、③従業員らに対し、①の意思表示を行うための事務を行わないこと及び②の契約書の破棄を指示することを求めた事案の控訴審。
【判断の内容】
(セレマについて)
① 本件互助契約は、消費者が将来行う冠婚葬祭に先立って、所定の月掛金を前払いで積み立てることにより、消費者は冠婚葬祭の施行を受ける権利を取得し、被告セレマは、消費者の請求により冠婚葬祭の施行をする義務を負う役務提供契約であって、同被告は、消費者から冠婚葬祭の施行の請求を受けて初めて、当該消費者のために冠婚葬祭の施行に向けた具体的な準備等を始めるものである。すると、具体的な冠婚葬祭の施行の請求がされる前に本件互助契約が解約された場合には,損害賠償の範囲は原状回復を内容とするものに限定されるべきであり、具体的には契約の締結及び履行のために通常要する平均的な費用の額が、法第9条第1号の「平均的な損害」となるものと解される。
② 平均的な費用(経費)の額というのは、現実に生じた費用の額ではなく、同種契約において通常要する必要経費の額を指すものというべき。ここでいう必要経費とは、契約の相手方である消費者に負担させることが正当化されるもの、すなわち、性質上個々の契約(消費者契約)との間において関連性が認められるものを意味するものと解するのが相当である。
③ 本件互助契約において「平均的な損害」に含まれるものは、個々の契約との関連性が認められ、会員の管理に要する費用として同業他社でも通常支出しているものと考えられる、月掛金を1回振り替える度に被告セレマが負担する振替手数料58 円と振替不能となった場合の通知の送付費用2円を合わせた60 円、並びに年2回の「全日本ニュース」及び年1回の入金状況通知の作成・送付費用14.27 円(1件月当たりの金額1年当たりの金額)ということになる。
④ したがって、被告セレマは、消費者との間で、冠婚葬祭の互助会契約を締結するのに際し、消費者が冠婚葬祭の施行を請求するまでに解約する場合、解約時に支払済み金額から「所定の手数料」などの名目で、60 円に第1回目を除く払込みの回数を掛けた金額及び14.27 円に契約月数契約年数を掛けた金額を超える解約金を差し引いて消費者に対し返金する旨を内容とする意思表示を行ってはならない。