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「2012年」アーカイブ|消費者契約法判例集

◆ H24.12.21名古屋地裁判決

判決年月日: 2012年12月21日

平成23年(ワ)第5915号不当条項差止等請求事件
最高裁HP消費者庁HP(PDF)判決写し(PDF、あいち消費者被害防止ネットワークHP)、判例時報2177号92頁、消費者法ニュース97号241頁
裁判官 片田信宏、鈴木陽一郎、古賀千尋
適格消費者団体 あいち消費者被害防止ネットワーク
事業者 学校法人モード学園

【事案の概要】
 適格消費者団体が,専門学校に対し,AO入試,推薦入試,専願での一般・社会人入試及び編入学によって入学を許可された場合,入学辞退の申出の時期(在学契約が解除される時期)にかかわらず,一律に学費を返還しないとの不返還条項を含む契約の申込み又はその承諾の意思表示等の差止めを求めた事件。

【判断の内容】
以下のように判断し、不返還条項を含む契約の申込又はその承諾の意思表示等の差し止めを認め、条項が記載された書面、電子データの破棄、従業員への周知徹底を命じた。
① 在学契約の解除に伴い被告に生ずべき平均的な損害は,一人の学生と被告との在学契約が解除されることによって,被告に一般的,客観的に生ずると認められる損害をいうものと解するのが相当である。
② 当該在学契約が解除された場合には,その時期が当該大学において当該解除を前提として他の入学試験等によって代わりの入学者を通常容易に確保することができる時期を経過していないなどの特段の事情がない限り,当該大学には当該解除に伴い初年度に納付すべき授業料等及び諸会費等に相当する平均的な損害が生ずるものというべきである。
③ 本件では特段の事情があり、9条1号に反する。
④ 本件不返還条項は9条1号により一部無効であるが,同法12条3項は,このような不当な契約条項を含む消費者契約の申込み又は承諾の意思表示の差止めを認めていると解される。

◆ H24.12.07大阪高裁判決

判決年月日: 2012年12月 7日

平成24年(ネ)第1476号解約違約金条項使用差止・不当利得返還請求控訴事件
消費者庁HP(PDF)判決写し(PDF、京都消費者契約ネットワークHP)、金融商事判例1409号40頁、判例時報2176号33頁、現代消費者法21号73頁
裁判官 渡邉安一、池田光宏、善元貞彦
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ
【第1審】H24.03.28京都地裁判決

【事案の概要】
 適格消費者団体が携帯電話会社に対し、解約金に関する条項が9条1号又は10条に該当して無効であると主張して、12条3項に基づき当該条項の内容を含む契約締結の意思表示の差止めを求め、同条項に基づく違約金を被告に対して支払った者が不当利得返還請求を行った事案。

【判断の内容】
 当該解約金の額にいわゆる「平均的な損害」の額を超える部分がないと認められるとして、これを棄却した第1審判決は、原判示および本判示の事実関係の下においては、当該「平均的な損害」の額は第1審判決の認定の額を下回るが、これを是認することができる。

◆ H24.11.20京都地裁判決

判決年月日: 2012年11月20日

平成23年(ワ)第146号解除料条項使用差止請求事件
最高裁HP消費者庁HP(PDF)判決写し(PDF、京都消費者契約ネットワークHP)、判例時報2169号68頁、判例タイムズ1389号340頁
裁判官 杉江佳治、小堀悟、畦地英稔
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 ソフトバンクモバイル株式会社
控訴審 H25.07.11大阪高裁判決

【事案の概要】
適格消費者団体が,電気通信事業等を営む事業者に対して,2年間の契約期間の定めのある携帯電話通信契約を中途解約する際に解除料として9975円の支払義務があることを定める条項が消費者契約法9条1号・10条に反するとして同条項の使用の差止めを求めたもの。

【判断の内容】
① 契約の主要な目的や物品又は役務等の対価それ自体(いわゆる中心条項)については,契約自由の原則が最も強く働くものであるから,消費者と事業者との格差が存在することを踏まえても,当事者の合意に委ねるべきであり,公序良俗違反となるような例外的な場合に民法によって無効とされることがあるにとどまり,法9条及び10条は適用されない。
 中心条項に該当するか否かについては,当該条項の文言,契約全体での位置づけ及び当事者の意思などを総合的に考慮して決すべき。
 本件解除料条項は中心条項にはあたらない。
② 本件契約の平均的損害を算定するためには,逸失利益も考慮に入れるべきであるところ、本件解除料の額は平均的損害を超えることはないので、9条1号に反しない。
③ 本件当初解除料条項及び本件更新後解除料条項はいずれも10条に反しない。

◆ H24.11.12大阪地裁判決

判決年月日: 2012年11月12日

平成23年(ワ)第13904号契約解除意思表示差止等請求事件
最高裁HP消費者庁HP(PDF)消費者支援機構関西HP、金融・商事判例1407号14頁、判例時報2174号77頁、判例タイムズ1387号207頁
裁判官 松田亨、西村欣也、諸井明仁
適格消費者団体 消費者支援機構関西HP
事業者 株式会社明来

【事案の概要】
 適格消費者団体が、不動産賃貸業を営む事業者である被告に対し、被告の使用する賃貸借契約書の条項が法9条各号又は10条に該当するとして、法12条3項に基づき、同契約書による意思表示の差止め、契約書用紙の破棄並びに差止め及び契約書破棄のための従業員への指示を求めた事案。

【判断の内容】
① 法41条1項に基づく事前請求があったか
 本件事前請求は、本件旧契約書の条項数を示しているものの、その請求内容としては、本件請求の内容の意思表示の差止めを求めたものである。そして、原告は、本件事前請求と同一内容の本件訴訟を提起しているのであるから、本件事前請求が法41条1項の事前請求に該当し、本件訴えが適法であるといえる。
② 本件請求は12条の2第1項(不当な目的に出た請求)又は23条2項(差止請求の濫用)に当たらない。
③ 別紙契約条項目録記載の契約条項について、被告に意思表示を行うおそれがあるか
 被告は、本件旧契約書を改訂し、本件新契約書のひな型には当該(争われている)条項が印刷されていないことや被告の訴訟態度から、(記載されている条項について意思表示を被告が行うそれはあるとして)記載されていない条項については意思表示を被告が行うおそれはないというべきである。
④ 事業者である賃貸人に対して消費者である賃借人との間で建物の賃貸借契約を締結する際の契約条項の差止め等を求める適格消費者団体の請求は、当該契約条項のうち、賃借人が後見開始ないし保佐開始の審判を受け、あるいは、その申立てを受けた場合に賃貸人が賃貸借契約を解除することができる旨の条項に係る部分については、当該契約条項が消費者契約法10条に該当する以上、賃貸人が賃貸借契約を締結する際にその旨の意思表示を行ってはならないことおよび当該意思表示が記載された契約書ひな形が印刷された契約書用紙を廃棄することを求める限度で、その請求に理由があるが、賃貸人の従業員に対するその旨の指示を求める請求およびその余の契約条項に係る請求については、いずれもその理由がない。

◆ H24.10.25東京高裁判決

判決年月日: 2012年10月25日

平成24年(ネ)第2459号生命保険契約存在確認請求控訴事件
金融商事判例1404号16頁、判例タイムズ1387号266頁、LLI/DB
裁判官 齋藤隆、一木文智、春名茂
第1審 H20.12.04横浜地裁判決
控訴審 H21.09.30東京高裁判決
上告審 H24.03.16最高裁判決

【事案の概要】
 無催告失効条項が消費者契約法10条に違反せず、復活の申込不承諾が信義則違反ないし権利の濫用に当たるとはいえないとした事例。
 H24.03.16最高裁判決の差し戻し審。

【判決要旨】
 本件保険契約においては、保険料の不払いにより直ちに契約が失効するものではなく、本件猶予期間条項により払込期月の翌月の末日までの1ヵ月間に債務不履行が解消されない場合に初めて当然失効すること、その猶予期間も、金銭債務の不履行について民法541条を適用する場合に通常求められる催告期間が通常は数日から1週間程度にとどまるのに対比して、1ヵ月と長く定められていること、不払いのまま上記猶予期間が経過しても、払い込むべき保険料と利息の合計額が解約返戻金を超えない場合に本件自動貸付条項により契約の存続を図るなど、保険契約者の保護のための方策が採られているのであって、一概に履行の催告を不要としている点だけを捉えて、保険契約者の利益を一方的に害するとするのは相当ではない。
 履行の催告は、債務者に対して債務不履行の状態にあることを知らしめてその履行を促し、契約の存続を図る機会を与えるための制度であるから、保険契約者に対して契約の失効を防ぐための配慮をする一方、形式的には催告に当たらなくとも、その前段階である債権管理の場面で保険料の支払いを怠った保険契約者に対して債務不履行の状態にあることを知らしめて契約の失効を防ぐための方策を講じていることになるので、本件失効条項をもって信義則に反するものとすることはできない。
 保険契約者は、毎月の保険料を支払う経済力があるとの前提で保険に加入したはずであって、未納保険料が発生した場合のこれに対する督促の態勢の整備およびその実務上の運用の確実性は、保険契約者が保険料支払債務の不履行があったことに気付くことができる程度に整えられ、かつ、確実に運用されることをもって足りると解されるから、保険料の支払督促を受けてから払込猶予期間内の振替日まで7日程度の時間的余裕がある本件において、未納通知書の送付から振替日ないし支払猶予期間満了日までの期間が不当に短いとはいえない。
 本件各保険契約の3度目の失効直前に被控訴人の営業担当者があえて控訴人方へ集金に赴かなかったことを考慮しても、被控訴人との間で締結した保険契約を過去に2度失効させ、3度目の失効により生じる不利益を十分知りながら、あえて払込猶予期間中に保険料の支払いをしなかった控訴人による復活の申込を不承諾としたことが、被控訴人による信義則違反ないし権利の濫用に当たるとはいえない。

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