◆ H24.05.10東京地裁判決
判決年月日: 2012年5月10日
2012年12月1日 公開
【事案の概要】
原告は、通信機器の開発製造等を行っているという被告の従業員から、被告の株式を購入すれば被告が上場後に倍額で買い取り可能であるなどと執拗な勧誘を受けて株式を購入し、その後、被告の株式を高値で買い取るという業者からの勧誘を受けて、さらに購入を続けた(本件売買契約)。しかし、被告には事業の実態が存在しないにもかかわらず、被告が勧誘時に不実の告知をしたことにより、被告がその事業所において通信機器の開発製造等の事業を行っていると誤信したとして、本件売買契約を法4条1項1号により取り消し、不当利得として既に支払った売買代金の返還を請求した。
【判断の内容】
被告は、原告を知らないし、被告が原告に対して被告の株式を売却したこともなく金員も受領していないなどと主張した。しかし、原告が被告の株式の売買代金を振り込んだ被告名義の預金口座は、被告の預金口座であると被告も認めており、売買代金の一部の送金先が被告の預金口座であったこと等からすれば、被告が会社として本件売買契約に関与したことは明らかである。被告に事業の実態がほとんどなく、その株式に実質的な価値がなかったことも明らかであり、原告が、被告従業員を名乗る者から被告の事業の実態等について不実の告知を受けてこれを誤信し、本件売買契約を締結したと認められる。よって、被告は、原告が支払った売買代金を不当利得として原告に返還する義務を負うとした。