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◆ H24.07.19京都地裁判決

判決年月日: 2012年7月19日
2012年7月19日 公開

平成22年(ワ)第2497号、平成23年(ワ)第917号、平成24年(ワ)第555号解約違約金条項使用差止請求事件(第1事件)、不当利得返還請求事件(第2事件、第3事件)
最高裁HP消費者庁HP(PDF)判決写し(PDF、京都消費者契約ネットワークHP)、金融商事判例1402号31頁、判例時報2158号95頁、判例タイムズ1388号343頁、国セン発表情報(2012年11月1日公表)
裁判官 佐藤明、柳本つとむ、板東純
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 KDDI株式会社
控訴審 H25.03.29大阪高裁判決

【事案の概要】
 適格消費者団体が、携帯電話会社に対し、消費者が二年間の定期契約を契約期間の途中に解約する際に解約金を支払うことを定める契約条項が、9条1号及び10条により無効であると主張して、12条3項に基づき、条項使用差し止めを求め(第1事件)、解約金の不当利得返還請求を求める事案(第2事件、第3事件)。請求を一部認容した。

【判断の内容】
① 9条1号の趣旨は、事業者が、消費者に対し、消費者契約の解除に伴い事業者に「通常生ずべき損害」(民法416条1項)を超過する過大な解約金等の請求をすることを防止するという点にある。したがって、9条1号は、債務不履行の際の損害賠償請求権の範囲を定める民法416条を前提とし、その内容を定型化するという意義を有し、同号にいう損害とは、民法416条にいう「通常生ずべき損害」に対応するものである。
② 同号が「平均的」という文言を用いたのは、消費者契約は不特定かつ多数の消費者との間で締結されるという特徴を有し、個別の契約の解除に伴い事業者に生じる損害を算定・予測することは困難であること等から、解除の事由、時期等により同一の区分に分類される複数の契約における平均値を用いて、解除に伴い事業者に生じる損害を算定することを許容する趣旨に基づくもの。
③ 9条1号は、「当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ」て事業者に生ずべき平均的損害を算定することを定めるが、事業者が解除の事由、時期等による区分をせずに、一律に一定の解約金の支払義務があることを定める契約条項を使用している場合であっても、解除の事由、時期等により事業者に生ずべき損害に著しい差異がある契約類型においては、解除の事由、時期等により同一の区分に分類される複数の同種の契約における平均値を用いて、各区分毎に、解除に伴い事業者に生じる損害を算定すべきである。
④ 以上によれば、9条1号の平均的損害の算定は、民法416条に基づく損害の算定方法を前提とし、解除事由、時期等により同一の区分に分類される同種の契約における平均値を求める方法により行うべきである。
⑤ 本件解約金条項中、①本件定期契約が締結又は更新された日の属する月から数えて二二か月目の月の末日までに解約がされた場合に解約金の支払義務があることを定める部分は有効であるが、②本件定期契約が締結又は更新された日の属する月から数えて二三か月目以降に解約した場合に「平均的損害の額」(別紙として算定)を超過する解約金の支払義務があることを定める部分は、上記超過額の限度で、9条1号により、無効である。
⑥ 解約に伴い、別の契約を締結する機会が新たに生じ、これにより損害が填補されたといえる場合には、解約に伴う逸失利益から上記損害の填補額を控除することにより平均的損害を算定するが、解約に伴い別の契約を締結する機会が新たに生じたといえない場合には、平均的損害の算定にあたり、他の契約を締結することによる損害の填補の可能性を考慮することはできない。本件通信契約においては、ある契約が締結されることにより、他の契約を締結する機会を喪失するとはいえず、それゆえ、解約に伴い別の契約を締結する機会が新たに生じるともいえないから、他の契約を締結することによる損害の填補の可能性を考慮することはできない。



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