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◆ H24.07.11東京高裁判決

判決年月日: 2012年7月11日
2012年7月11日 公開

平成23年(ネ)第6129号保険金請求控訴事件
金融商事判例1399号8頁、国セン発表情報(2012年11月1日公表)
裁判官 福田剛久、塩田直也、東亜由美

【事案の概要】
 生命保険契約で、①失効条項(月払契約の場合、払込期月の翌日初日から末日まで保険料を猶予するが、猶予期間内に保険料が払い込まれないときは、保険契約は猶予期間満了の日の翌日から効力を失う旨の条項)、②復活条項(保険契約者は、保険契約が効力を失った日から起算して3年以内は保険契約の復活を請求することができる旨の条項)、③自殺免責条項(責任開始期〔復活の取扱いが行われた後は最後の復活の際の責任開始期〕の属する日から起算して2年以内の自殺を免責事由とする条項)があり、本件保険契約は、①平成19年8月31日の経過により、同年7月分の保険料の不払を理由として本件失効条項により失効したものと扱われ、②同年10月31日、契約者兼被保険者からの復活の申込みに基づいて本件復活条項に基づいて復活したものと扱われていたところ、③契約者兼被保険者は、本件免責条項により復活後に再開された自殺免責期間内の平成21年7月22日、自殺により死亡したというもので、保険金請求の事案。
 ①本件失効条項は消費者契約法10条により無効であり、②仮にそうでないとしても、控訴人が本件免責条項による免責を主張することは権利の濫用ないし信義則違反として許されないと主張して、死亡保険金等の請求をした。
 原審は、本件失効条項は消費者契約法10条により無効であると判断し、被控訴人の請求を認容していた。

【判断の内容】
① 多数の保険契約者を対象とするという保険契約の特質に加え、本件約款において保険契約者が保険料の不払をした場合にもその権利保護を図るために一定の配慮をした定めが置かれていることにかんがみれば、控訴人において、本件保険契約の締結当時、保険料支払債務の不履行があった場合に契約失効前に保険契約者に対して保険料払込みの督促を行う態勢を整え、そのような実務上の運用が確実にされていたとすれば、通常、保険契約者は保険料支払債務の不履行があったことに気付くことができると考えられるから、本件失効条項は、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものに当たらない(最高裁平成24年判決)。
② 控訴人(保険会社)は、本件保険契約の締結当時、保険料支払債務の不履行があった場合に契約失効前に保険契約者に対して保険料払込みの督促を行う態勢を整え、そのような実務上の運用が確実にされていたと認められ、通常、控訴人の保険契約者は、保険料支払債務の不履行があったことに気付くことができると認められる。したがって、本件失効条項は、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものには当たらないというべきである。
③ 本件免責条項が復活時にも一定の期間を自殺免責期間として再開することとしているのは、当初の自殺免責期間と同様に、一定の期間内の被保険者の自殺による死亡の場合に限って、動機・目的にかかわりなく、一律に保険者を免責することによって生命保険契約が不当な目的に利用されることを防止する考えによるものと解され、個別の保険契約者の動機・目的により、その適用が左右されることは相当ではない。



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