◆ H21.10.29東京高裁判決
判決年月日: 2009年10月29日
2011年2月4日 公開
平成19年(ネ)第1353号,平成19年(ネ)第3025号各大学年金受給権確認請求控訴,同付帯控訴事件
判例時報2071号129頁,労働判例995号5頁
裁判官 青柳馨,小林敬子,大野和明
【事案の概要】
私立大学が年金規則(私的年金)を改定し年金を減額したことに対し,受給者(退職者やその遺族)である原告らが,改定前の年金額を受給する権利の確認請求をした事案。一方的な年金規則の改定で減額できることについて10条違反か等が争われた。
【判断の内容】
以下の理由から10条違反ではないとされた。
① 本件年金契約は終身定期金契約に類似した契約であるが,本件年金規則には,本件年金制度が超長期にわたり継続することを考慮して,経済変動や本件年金基金の財政状況等により本件年金制度の維持・存続のために必要な合理的な変更を許容する定めが置かれているのであって,給付内容を含め契約内容の変更があり得ない契約でないことは明らか。
② 本件年金制度における大学の拠出は,教職員の福利厚生,功労報償としての性格が強いもので,積立不足が生じた場合に大学がこれを負担すべきものとはされていない。
③ 本件年金規則の改正により給付額の減額が可能であったからといって,大学が何らの制限も受けず,自由に本件年金規則の規定を改定することは許されず,本件年金制度の維持,存続のため,あるいは同制度の目的を達成するため,合理的な裁量の範囲に限って改定が許されるにすぎない。