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「2010年」アーカイブ|消費者契約法判例集

◆ H22.03.26奈良地裁判決

2010年9月28日 公開

平成20年(ワ)第1084号不当利得返還等請求事件
ウエストロー・ジャパン、消費者法ニュース84号293頁、証券取引被害判例セレクト37巻175頁
裁判官 宮本初美
控訴審 H22.10.08大阪高裁判決

【事案の概要】
インターネットで株取引を行い損失が生じていた主婦が,ネット上で見つけた投資相談電話に電話したところ,投資顧問契約を締結し会費200万円を支払わされたことについて,断定的判断の提供による取消等を主張し返還を求めた事案。

【判断の内容】
過去に受けた損失500万円及び会費200万円も含め700万円を取り戻すことができるとして勧誘を受けたものと認定し,断定的判断の提供による投資顧問契約の取消を認め,不当利得返還請求を認めた。

◆ H21.12.10仙台高裁判決

2010年9月28日 公開

平成21年(ネ)第第330号損害賠償請求控訴事件
消費者法ニュース84号389頁
裁判官 小磯武男,山口均,岡田伸太

【事案の概要】
商品先物取引業者に対する損害賠償請求。主位的に不法行為による損害賠償請求,予備的に断定的判断の提供による取消による不当利得返還請求を求めた事例

【判断の内容】
主位的請求について,断定的判断の提供による不法行為を認め過失相殺6割として賠償請求を認めつつ,予備的請求の断定的判断の提供による取消を認め,実損から主位的請求で認められた部分を除いた残額の返還請求を認めた。

◆ H20.11.27東京高裁判決

2010年9月28日 公開

平成20年(ネ)第884号損害賠償請求控訴事件
LLI,国民生活センターHP消費者問題の判例集
裁判官 渡邉等,高世三郎,山口信恭

【事案の概要】
キャッチセールスによって展示会場に誘導され,高額な絵画を購入させられたことにつき,販売会社らに損害賠償を求めた事案。不法行為の理由として,特商法違反,消費者契約法違反(退去妨害)が争われた。

【判断の内容】
次の理由から,売買代金から絵画の実質的価値を差し引いた差額,弁護士費用について損害賠償請求を認めた。
① 1条,4条3項2号の趣旨から,消費者は,事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し,当該事業者が同法4条3項2号所定の行為をしたことに より困惑し,それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をすることがないように保護されているのであって,消費者のこのような立場は法律 上保護に値する法的利益というべきである。
② 特商法3条もしくは6条1項違反行為,又は消費者契約法4条3項2号に該当する行為をした場合において,①これらの違反行為等がたまたま当該勧誘にお いて行われたものか,あるいは当該事業者において繰り返し違反行為等が行われているか,②違反行為等が単一であるか,あるいは複数の違反行為等が組み合わ されて勧誘が行われているか,③違反行為等の違反の程度が軽微であるか,あるいは重大であるか,④勧誘を受けた消費者が販売される商品を購入するか否かを 決めるために必要な知識をあらかじめ有していたか,否か,⑤勧誘を受けた消費者が販売される商品を購入する意思をあらかじめ有していたか,否か,⑥違反行 為等により勧誘の相手方の置かれた状況(違反行為等によって生じた認識や心身の状況を含む。),⑦販売された商品の価値(市場価値等の客観的価値や主観的 価値)と販売価格との合致の有無,あるいは乖離の程度,⑧特定商取引に関する法律9条1項所定の申込みの撤回等(いわゆるクーリングオフ)が行われ,又は 消費者契約法4条3項所定の意思表示の取消しが行われた場合の事業者の対応等を総合考慮し,違反行為等を要素とする一連の販売行為を全体としてみて特定商 取引に関する法律及び消費者契約法が実現し保護しようとする法秩序に実質的に反するものと評価すべきときは,当該販売行為は社会生活上許容することができ ないものであり,当該販売行為により消費者の法律上保護される利益を侵害したときは,販売業者等は,不法行為責任に基づき,消費者に対し,これによって生 じた損害を賠償すべき義務を負うというべきである。
③ 本件では,販売目的隠匿、重要事項の不実告知、退去妨害など、特定商取引法および消費者契約法に反する行為が多数あったとし、これらは会社ぐるみで反 復継続して行われているものであるとして,版画制作会社と販売会社とに不法行為による損害賠償を、両社の取締役には取締役としての第三者責任を認めた。

◆ H21.01.21神戸地裁判決

2010年7月31日 公開

平成20年(レ)第98号敷金返還請求控訴事件
未登載
裁判官 下野恭裕,齋藤大,桂川瞳
原審 神戸簡裁平成19年(ハ)第11981号

【事案の概要】
敷金返還請求。原審は敷引条項が10条違反であるとして返還請求を認めたが,控訴された。

【判断の内容】
原判決を取り消し,敷引条項が10条違反でなく有効とした。
① 民法は賃料以外の金銭負担を予定していないが,これと異なる合意を当事者間ですることが全て不当とまではいえない。
② 関西においては敷引の慣行が相当定着している。
③ 敷引特約があれば長く刈り続ければ賃借人にも一定のメリットがある。
④ 退去時の修繕費を巡る無用な争いを避けることができるなど一定の利点もある。
⑤ 後段要件については,賃借人が敷引特約の内容について認識していたかどうか,敷引特約があることによって,敷引額に相応して賃料が低額になっていたか どうか,敷引特約が存在しない賃貸物件を選択する可能性がどの程度あったか,原状回復費用の負担はどうなっていたのか等の諸般の事情を総合考慮して判断す べき。
⑥ 本件では,敷引条項は一義的に明確であり,賃借人は明確に認識していた。他のマンションを賃借する可能性もあった。敷引額も不当に高額とは言えない。 賃借期間が4年3ヶ月にわたった。修繕費が66万円かかっており,賃借人が負担を免れていること等から,後段要件は満たさない。

◆ H21.07.10横浜地裁判決

2010年7月9日 公開

平成19年(ワ)第2840号報酬契約金請求事件
判例時報2074号97頁、2111号154頁
裁判官 宮坂昌利

【事案の概要】
弁護士である原告が,依頼者である被告から委任の途中で解任されたことに関し,未払いの着手金残額及びみなし報酬特約または民法130条の規定によるみなし条件成就を主張して報酬の支払いを求めた事案。

【判断の内容】
みなし報酬特約は9条1号に反し無効であるとして請求を棄却した。
① 弁護士との委任契約は消費者契約にあたる。
② 委任者が受任者をその責めによらない事由によって解任したときは,委任の目的を達したものとみなし,報酬の全額を請求できるとするみなし報酬特約は,民法648条3項の特則にあたり,損害賠償額の予定または違約金の定めにあたる。
③ 平均的損害について,当該事件処理のために特別に出捐した代替利用の困難な設備,人員整備の負担,当該事件処理のために多の依頼案件を断らざるを得な かったことによる逸失利益については,通常の弁護士業務体制を想定した場合,本件遺産分割調停事件の受任のためにこのような損害が通常発生するとは言い難 い。
 当該事件にかかる委任事務処理費用の支出,当該事件処理のために費やした時間及び労力については,通常,着手金によってまかなうことが予定されている。
 本件委任契約の定める報酬を得ることができなかった逸失利益については,中途解約にかかる損害賠償額の予定を適正な限度に制限する9条1号の趣旨からは,民法130条の適用があり得ることは格別,平均的損害には含められない。

◆ H17.10.26東京地裁判決

2010年7月8日 公開

平成17年(レ)第149号更新料請求控訴事件
LLI
裁判官 井上哲男,桑原直子,西尾洋介

【事案の概要】
居室賃貸借契約の更新料請求。更新料特約が10条に違反するか否かが争われた。更新料は賃料1ヶ月分,期間2年。

【判断の内容】
更新料請求を認めた。
本件更新特約は,更新料という負担はあるが,期間満了後の使用継続状況をもって,期間の定めのあった建物賃貸借契約が期間の定めのない賃貸借契約になるこ とを防ぎ,2年間という契約期間は本件居室についての賃借権を確保するものであり,むしろ,本件更新特約は賃借人としての権利を実質的に強化するものとし た。

◆ H21.06.19大阪高裁判決

2010年7月8日 公開

平成20年(ネ)第3256号敷金返還等請求控訴事件
未登載

【事案の概要】
敷引特約を有効とした。
判例時報2066号84頁(H21.09.25京都地裁判決(1)の解説)に記載あり。

◆ H21.03.27大津地裁判決

2010年7月8日 公開

平成20年(ワ)第525号
判例時報2064号70頁
裁判官 阿多麻子
控訴審 H21.10.29大阪高裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,更新料支払条項が10条違反であるとして,更新料の返還を求めた事例

【判断の内容】
次の理由から,10条違反とはいえないとして請求を棄却した。
① 更新料は,京滋地域では慣行となっており,借りようとする者も一般的に認識しており,また,賃貸人賃借人とも,物件の使用収益の対価としてかかる一時金が設けられているという限度で認識は一致しており,賃料の補充の性質を有する。
② 更新拒絶権放棄の対価の性質,賃借権強化の機能は認められるが,本件では希薄。
③ 約款を用いた取引であっても,核心的合意部分については交渉過程及び契約内容に顧客の意向が反映されるのであるから,企業者が定型的処理のため一方的に定めた技術的事項や付随的条件とは異なり,解釈にあたって,約款の特殊性に応じた厳密な内容規制を及ぼす必要はない。
④ 10条前段要件は満たす。
⑤ 10条後段要件について,「消費者の利益を一方的に害する」とは,事業者と消費者との間の情報力・交渉力の格差によって消費者に判断の前提となるべき情報が提供されず条項の了知が期待できないこと,あるいは,市場における競争原理が有効に機能していないことから,私的自治の原則や契約自由の原則に修正を加えなければならないほどに,消費者の利益が不当に侵害されていることと解するのが相当。
⑥ 本件では,原告は更新料の内容を認識しており,自由な選択で契約したもの。格差につけ込んで押しつけたものとはいえない。中途解約の場合も返還されないことを認識した上で放棄したもの。

◆ H18.11.09東京地裁判決

2010年7月7日 公開

平成18年(ワ)第3471号不当利得返還請求事件
LLI
裁判官 村田渉

【事案の概要】
有料老人ホームの入居申込金等の返還請求。東京都の指針に反していることを告げないことが不利益事実の不告知となるか,入居申込金の追加支払条項,不返還条項が10条違反となるかが争われた。

【判断の内容】
次の理由から請求を棄却した。
① 東京都の指針は重要事項には当たらない。
② 本件追加支払条項は10条違反ではない。
③ 本件不返還条項は,保証金の入居月数に応じた返還金の算定方式が明確にされており,かつ一時金のうち返還対象とならない部分の割合が不適切であると認めるに足りる証拠もない。
④ 本件入居申込金,施設協力費及び保証金がいずれも実質的に居住サービスの対価であると断定することはできず,また保証金の償却が解約による平均的損害額を超えるものであると認めるに足りる証拠もない。

◆ H21.05.19東京地裁判決

2010年7月7日 公開

平成20年(ワ)第7387号入居金返還請求事件
判例時報2048号56頁,現代消費者法7号92頁

【事案の概要】
介護付有料老人ホームの終身利用権金,入居一時金の返還請求。終身利用権金についての不返還合意,入居一時金の償却合意が9条1号,10条違反となるかが争われた。

【判断の内容】
次の理由から請求棄却した。
① 本件終身利用権金は,入居予定者が原則として終身にわたって利用し各種サービスを受けうる地位を取得するための対価。違約金の定めではなく,10条違反でもない。
② 本件入居一時金は,老人ホームを維持運営するための重要な財源。償却合意は,入居者の入居のための人的物的設備の維持等にかかる諸費用の一部を補う目的,意義を有する。
③ 償却期間は設置者が経営に関する諸事情を踏まえて決定しうる。簡易生命表に照らして,2年6月,3年の期間で償却することも不当ではない。

◆ H22.02.25東京地裁判決

2010年7月7日 公開

平成20年(ワ)第9322号,平成21年(ワ)第5693号各工事代金等請求事件
金融商事判例1338号21頁
裁判官 武笠圭志

【事案の概要】
LPガス供給設備の設置契約に,契約終了時のバルク設備の買取義務が規定されていた事案で,設置業者が買取代金を請求した事案。設置業者が,勧誘に際し顧客に買取義務を告知しなかったことが不利益事実の不告知にあたるかが争われた。

【判断の内容】
次の理由から,不利益事実の不告知による取消を認め請求を棄却した。
① 契約終了時にバルク設備の買取義務が発生すること及びその金額は当該契約の重要事項にあたる。
②設置に関して工事費その他の費用がかからないことを告げられたことにより,契約上買取義務が明記されているという事実が存在しないと通常考えると解するのが相当。

◆ H17.09.29東京地裁判決

2010年7月7日 公開

平成15年(ワ)第13323号土地建物根抵当権設定登記抹消登記等請求事件
判例タイムズ1203号173頁,LLI
裁判官 金子順一,白川純子,豊田哲也

【事案の概要】
建物建築資金の金銭消費貸借契約,根抵当権設定契約について,建築業者による不実告知,不利益事実の不告知を理由に取消を求めた事案

【判断の内容】
消費者契約法による取消は認めなかった(連帯保証人について意思無能力による無効を認めている)。
① 建築業者による建築請負契約勧誘について不実告知があったとしても,それが貸金業者による金銭消費貸借契約に関する不実告知とはならない。
② 不利益事実の不告知については,そもそも利益となる旨を告げていないのであり,不利益となる事実を告げていないか否かを検討するまでもなく4条2項による取消を認めることはできない。

◆ H21.12.15大阪高裁判決

2010年6月27日 公開

平成21年(ネ)第2154号保証金返還請求控訴事件,同第2551号同附帯控訴事件
未登載
裁判官 一宮和夫,富川照雄,山下寛
原審 H21.07.30京都地裁判決
上告審 H23.07.12最高裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,敷引条項が無効であるとして返還を求めた事例

【判断の内容】
敷引条項が無効であるとして返還請求を認めた。

◆ H21.12.22名古屋地裁判決

2010年6月27日 公開

平成20年(ワ)第6505号不当利得返還等請求事件
消費者法ニュース83号223頁,国セン報道発表資料(2011年11月11日公表)
裁判官 宮永忠明

【事案の概要】
原野商法被害者が,販売業者に対して支払った測量代,広告費用の返還を求めた事例。広告契約についての不実告知による取消が問題となった。

【判断の内容】
以下の理由から,広告契約について不実告知による取消を認め,広告費用の返還請求を認めた。
① 広告契約の締結について,本件土地の売却可能性は,4条1項1号,4条4項1号の「用途その他の内容」についての重要事項にあたる。
② 売却可能性が少なく広告掲載による原告の利得はない。

◆ H22.02.19京都簡裁判決

2010年6月27日 公開

平成21年(少コ)第194号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 谷澤和明

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,敷引条項が無効であるとして返還を求めた事例

【判断の内容】
敷引条項が無効であるとして返還請求を認めた。
消費者が契約内容を理解するよう努めるとの3条は努力義務であり,仮に違反があっても消費者契約法が適用されないことにはならない。

◆ H22.02.24大阪高裁判決

2010年6月27日 公開

平成21年(ネ)第2690号更新料返還等,更新料反訴,保証債務履行請求控訴事件
金融商事判例1338号21頁,消費者法ニュース84号233頁
裁判官 安原清藏,坂倉充信,和田健
第1審 H21.09.25京都地裁判決(1)
上告審 H23.07.15最高裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,更新料条項及び定額補修分担金条項はいずれも10条に反し無効であるとして,賃貸借契約中に3回にわたり支払った更新料合計22万8000円及び契約締結時に支払った定額補修分担金12万円の返還を求めた事案

【判断の内容】
更新料条項,定額補修分担金条項がいずれも10条違反で無効として返還請求を認めた。
更新料の収入を確保しようとするのであれば,端的に更新料相当分を賃料に上乗せした賃料の設定をして賃借人となろうとする者に提示し,賃借するか否かを選択させることが要請される。

◆ H22.03.11大阪高裁判決

2010年6月27日 公開

平成21年(ネ)第2691号定額補修分担金返還請求控訴事件
未登載
裁判官 紙浦健二,川谷道郎,神山隆一
原審 京都地裁判決平成20年(ワ)第3152号

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,定額補修分担金条項は10条に反し無効であるとして,契約締結時に支払った定額補修分担金25万円の返還を求めた事案

【判断の内容】
定額補修分担金条項が10条違反で無効として返還請求を認めた。
① 「民法,商法その他の法律の公の秩序に関しない規定」には,民法等の解釈に関する最高裁判所の判例も含まれる。
② 定額補修分担金条項が「射幸契約」であり10条後段要件に該当しないとの点は,情報格差のない対等な立場にある当事者が互いに駆け引きをしながら具体的な分担金額を決定するのであればよいが,本件ではそうではない。

◆ H22.03.26大阪高裁判決

2010年6月27日 公開

平成21年(ネ)第2692号定額補修分担金条項使用差止請求控訴事件
消費者庁HP(PDF)判決写し(PDF、京都消費者契約ネットワークHP)
裁判官 三浦潤,中村昭子,森宏司
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 株式会社長栄
第1審 H21.09.30京都地裁判決
強制執行 H23.11.24京都地裁決定

【事案の概要】
適格消費者団体が,不動産賃貸業及び不動産管理業を目的とする事業者である被告に対し,定額補修分担金条項が10条に反して無効であるとして,定額補修分担金条項を含む意思表示をすることの差止め及び同条項を含む契約書用紙の破棄等を求めた事案

【判断の内容】
① 41条1項の事前の書面による請求は,事業者等に対し早期に取引の実情を把握して自ら是正する機会を与えるとともに,これにより紛争の早期解決と取引の適正化を図る観点から,訴訟に先立ち請求することを義務づけたものであり,同項及び同法施行規則32条1項に定められた事項以外の事項が記載されていたからといって事前の書面による請求にあたらないとはいえない。
② 定額補修分担金条項は10条に反して無効。
③ マスコミを通じて使用しないことを表明していても,経営判断が状況に応じて変転する可能性も高く,また,10条違反性を強く争っている以上,使用する恐れがあるといえる。
④ 合意更新の際には,定額補修分担金条項を含んだ契約の申し込みまたは承諾の意思表示があるものとは認められない。
⑤ 従業員への指示を求める請求は,特定として欠けるところはない。
⑥ 2年近く使用していないこと等から,従業員らへの指示の必要性はない。

◆ H22.03.30最高裁判決(1)

2010年6月27日 公開

平成21年(受)第1232号学納金返還請求事件
最高裁HP,裁判所時報1505号148頁,判例タイムズ1323号102頁,判例時報2077号44頁、国センHP(消費者問題の判例集)
裁判官 田原睦夫,藤田宙靖,堀籠幸男,那須弘平,近藤崇晴
第一審 大阪地裁平成19年(ワ)第4451号
控訴審 H21.04.09大阪高裁判決

【事案の概要】【判断の内容】
専願等を資格要件としない大学の推薦入試の合格者が入学年度開始後に在学契約を解除した場合において,学生募集要項に,一般入試の補欠者とされた者につき 4月7日までに補欠合格の通知がない場合は不合格となる旨の記載があるなどの事情があっても,授業料等不返還特約は有効であるとされた事案

◆ H21.04.09大阪高裁判決

2010年6月27日 公開

平成20年(ネ)2706号学納金返還請求控訴事件
法ニュース速報1043
裁判官 一宮和夫,富川照雄,山下寛
第1審 大阪地裁平成19年(ワ)第4451号
上告審 H22.03.30最高裁判決(1)

【事案の概要】
医大における推薦入学合格者の前期授業料の返還請求

【判断の内容】
4月1日以降(4月5日)に入学辞退した場合についても,4月7日まで補欠合格をする取り扱いがされているとの特段の事由があり,平均的損害を生じていないとして,返還請求を認めた。

◆ H22.03.30最高裁判決(2)

2010年6月27日 公開

平成20年(受)第909号損害賠償,立替金請求事件
最高裁HP,裁判所時報1505号145頁,判例タイムズ1321号88頁,金融商事判例1341号14頁,1344号14頁,判例時報2075号32頁,国セン報道発表資料(2011年11月11日公表)
裁判官 藤田宙靖,堀籠幸男,那須弘平,田原睦夫,近藤崇晴
第一審 H19.05.22札幌地裁判決平成18年(ワ)第1096号、同第1396号
控訴審 H20.01.25札幌高裁判決

【事案の概要】
金の先物取引の勧誘を受けて契約し損害を被った者からの委託証拠金の返還請求と,業者からの差損金請求の反訴。断定的判断の提供,不利益事実の不告知による取消が争われた。

【判断の内容】
① 断定的判断の提供は認められない。
② (不利益事実の不告知について)
 4条2項本文にいう「重要事項」とは,4条4項において,当該消費者契約の目的となるものの「質,用途その他の内容」又は「対価その他の取引条件」をい うものと定義されているのであって,4条1項2号では断定的判断の提供の対象となる事項につき「将来におけるその価額,将来において当該消費者が受け取る べき金額その他の将来における変動が不確実な事項」と明示されているのとは異なり,4条2項,4項では商品先物取引の委託契約に係る将来における当該商品 の価格など将来における変動が不確実な事項を含意するような文言は用いられていない。そうすると,本件契約において,将来における金の価格は「重要事項」 に当たらないと解するのが相当。

◆ H22.05.27大阪高裁判決

2010年6月27日 公開

平成21年(ネ)第2548号更新料支払請求控訴事件
未登載
裁判官 紙浦健二,川谷道郎,宮武康
第1審 H21.09.25京都地裁判決(3)

【事案の概要】
居室賃貸借契約における更新料請求。更新料条項が10条違反かが争われた。

【判断の内容】
以下のように判断し,更新料請求を棄却した原判決を維持した。非常に詳細に検討がなされている。
① 更新料がいかなる性質のものであるかは,当該賃貸借契約成立後の当事者双方の事情,当該更新料の支払の合意が成立するに至った経緯その他諸般の事情を総合考慮したうえ,具体的事実関係に即して判断されるべきもの。
② (更新料発生経緯からの検討)昭和30年代末ころ以降地価の高騰が激しかった当時においては,長期間の賃貸借契約の場合に賃料に反映させることができ ず更新料として回収がはかられ,高騰が続いていた当時においては合理性がないとまでは言えないが,地価の高騰がおさまりむしろ賃料の横ばい,下落が認めら れるようになった平成18年時点においては合理性はなく,賃貸人の利益確保を狙った不合理な制度である。
③ (更新料の性質からの検討)賃料の補充,更新拒絶権の放棄の対価,賃借権強化の対価の性質も認められない。
④ 更新料が社会的承認を得ているとは言えない。生活保護において更新料が扶助されているとしても,それは更新料を合理的な制度と認めているものではない。
⑤ 本件更新料条項は,10条前段,後段を満たす。更新料条項はいわゆる中心条項ではない。

◆ H21.10.29大阪高裁判決

2010年6月25日 公開

平成21年(ネ)第1211号更新料返還等請求控訴事件
判例時報2064号65頁
裁判官 三浦潤,大西忠重,井上博喜
原審 H21.03.27大津地裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,更新料支払条項が10条違反であるとして,更新料の返還を求めた事例

【判断の内容】
以下の理由により,更新料の返還請求を棄却した。
① 本件更新料支払条項は10条前段を満たす。
② 礼金の趣旨は,賃貸借期間を2年とする賃借権の設定を受けた賃借人としての地位を取得する対価。
③ 更新料の支払により,期間の定めのある賃貸借契約として更新されることや,更新料を含めた負担額を事前に計算することが特段困難とはいえないこと,更新料が比較的低額であることなどから,10条後段を満たさない。

◆ H21.12.03大阪高裁判決

2010年6月25日 公開

平成21年(ネ)第2005号敷金返還請求控訴事件
未登載
裁判官 三浦潤,大西忠重,井上博喜
原審 H21.07.02京都地裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,保証金から一定の金額を解約引金として控除して返還するとの特約が10条違反であるとして返還を求めた事例

【判断の内容】
解約引条項が無効であるとして返還請求を認めた。

◆ H21.05.21京都地裁判決

2010年6月16日 公開

平成21年(レ)第14号保証債務履行請求控訴事件
未登載
裁判官 辻本利雄,和久田斉,戸取謙治
原審 H21.01.13右京簡裁判決

【事案の概要】
連帯保証人に対する貸金業者からの保証債務履行請求。

【判断の内容】
次の理由から,消費者契約法による取り消しを否定して原審判決を取り消し,錯誤無効の主張も排斥して請求を認容した。
① 「消費者」(2条1項)とは,消費者契約法が制定された趣旨からすると,自らの事業としてでなく,自らの事業のためにでもなく契約の当事者となる主体をいう。
② 「媒介の委託を受けた第三者」(5条)とは,事業者が第三者に媒介を委託して事業活動を拡大し,利益を得ている以上,その第三者の行為による責任を事業者も負担すべきであるという趣旨にかんがみ,その第三者が媒介の委託を受けた事業者との共通の利益のために契約が締結されるよう尽力し,その契約締結について勧誘をするに際しての第三者の行為が事業者の行為と同視できるような両者の関係が必要となる。
 本件借主は,事業者である貸金業者の事業活動拡大等のためではなく,あくまで自らが資金を獲得するという利益のために保証人となるように依頼したのであり,貸金業者と共通の利益を有しているということはできず,第三者にあたらない。

◆ H21.06.04名古屋簡裁判決

2010年6月16日 公開

平成20年(少コ)第438号敷金等返還請求事件(通常訴訟手続に移行)
最高裁HP
裁判官 佐藤有司

【事案の概要】
建物賃貸借契約において,敷引条項を無効として返還請求を認めた事例。

【判断の内容】
以下の理由から,本件敷引条項は10条違反で無効として返還請求を認めた。
① 敷金は一般に賃貸借契約から生ずる賃借人の債務を担保するために賃借人から賃貸人に差し入れられたものであるから,賃借人に未払家賃,修繕費等の債務 がない場合には,他に合理的な理由がない限り,賃貸人は賃借人に返還する義務を負い,これと異なる定めは10条により無効になる。
② 本件で合理的理由はない。

◆ H21.06.16大阪高裁判決

2010年6月16日 公開

平成21年(ネ)第527号敷引条項使用差止請求控訴事件
消費者庁HP判決写し(PDF、京都消費者契約ネットワークHP)
裁判官 渡邉安一、安達嗣雄、明石万起子
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 大和観光開発株式会社
第1審 H21.01.28京都地裁判決

【事案の概要】
適格消費者団体が不動産賃貸業者に対し,10条違反である敷引条項の使用差止,及び差止に必要な措置を求めたところ,使用差止については業者が請求を認諾したため,差止に必要な措置の命令の可否が争われた事案

【判断の内容】
控訴棄却。
①従業員らに対して当該条項を含む意思表示を行うための事務を行わないよう指示することという主位的請求については,事業者に特定の作為を求める給付の訴えであり、債務名義として執行によって実現される事業者の義務を控訴人は明らかにする必要があるが、控訴人の請求は、当該条項を使用した意思表示を行うための事務を行わないよう指示を求めるだけであり、書面によることの要否等、その方法、程度、内容が一義的には明らかでなく、どのような措置をとれば法的義務を履行したことになるのか明らかでないことから、請求の特定を欠き不適法。
②予備的請求として、従業員らに対して、当該条項を含む意思表示を行うための事務を行わないよう周知徹底させる内容を記載した書面の配布を行うよう求めたことについて,被控訴人がその従業員等に対して、当該条項を含む意思表示を行うための事務を行わないよう周知徹底していること等を主張しているのに対し、控訴人は、被控訴人が当該条項を含んだ意思表示を行うおそれがあることを基礎付ける事実を何ら主張せず、被控訴人が当該条項を含んだ意思表示を行う蓋然性が客観的に存在していると認めることはできない。

◆ H21.06.19東京地裁判決

2010年6月16日 公開

平成20年(ワ)1275号立替金請求事件
判例時報2058号69頁,消費者法ニュース83号220頁,国セン報道発表資料(2011年11月11日公表)
裁判官 外山勝浩

【事案の概要】
医療機関との間で包茎手術とこれに付随するコラーゲン注入術の診療契約を締結した際,クレジット会社との間で治療費の立替払い契約を締結した事案。

【判断の内容】
当該手術が医学的に一般に承認された方法で行われると考えるのが通常であること,本件亀頭コラーゲン注入術が医学的に一定の効果を有するものであったとしても,当該術式が医学的に一般に承認されたものとはいえない場合には,その事実は4条2項の「当該消費者の不利益となる事実」に該当すること,本件亀頭コラーゲン注入術が医学的に一般に承認された術式と認めることが困難であり,逆に有用性については疑問が示され消費者被害救済の対象とされているものと認め られるとして,立替払い契約全部の取り消しを認めた。

◆ H21.07.02京都地裁判決

2010年6月16日 公開

平成20年(ワ)第2307号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 辻本利雄,和久田斉,戸取謙治
控訴審 H21.12.03大阪高裁判決

【事案の概要】
マンション居室の敷金返還請求。敷引条項の有効性が争われた。借主が司法修習生であり法律的知識があるとして,10条違反にはならないと貸し主から主張された。

【判断の内容】
以下の理由から,本件敷引条項は10条違反であるとした。
① 本件敷引条項は,10条前段に該当する。
② 10条後段該当性については,法1条にかんがみ,当事者の属性,契約条項の内容,契約条項が具体的かつ明確に説明され消費者がその条項を理解できるものであったか等守株の事情を総合考慮して判断すべきである。
③ 借り主は法律知識を有していたことは認められるが,建物賃貸借上の諸条件に関する情報について一般の消費者以上の情報を有していたとは認められない。また,借り主は当該条項について交渉の余地がほとんどない。

◆ H21.07.23京都地裁判決

2010年6月16日 公開

平成20年(ワ)第3224号敷金返還請求事件
最高裁HP,判例時報2051号119頁
裁判官 辻本利雄,和久田斉,戸取謙治

【事案の概要】
マンション居室の敷金返還請求。敷引条項,更新料条項の有効性が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,本件敷引条項,更新料条項は10条違反であるとした。
① 本件敷引条項は,10条前段に該当する。
② 10条後段該当性については,法1条にかんがみ,当事者の属性,契約条項の内容,契約条項が具体的かつ明確に説明され消費者がその条項を理解できるものであったか等種々の事情を総合考慮して判断すべきである。
③ 貸主の主張する敷引,更新料の性質はいずれも合理性がない。

◆ H21.07.30京都地裁判決

2010年6月16日 公開

平成20年(ワ)第3216号保証金返還請求事件
未登載
裁判官 辻本利雄,和久田斉,戸取謙治
控訴審 H21.12.15大阪高裁判決
上告審 H23.07.12最高裁判決

【事案の概要】
マンション居室の敷金返還請求。敷引条項の有効性が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,本件敷引条項は10条違反であるとした。
① 本件敷引条項は,10条前段に該当する。
② 10条後段該当性については,法1条にかんがみ,当事者の属性,契約条項の内容,契約条項が具体的かつ明確に説明され消費者がその条項を理解できるものであったか等種々の事情を総合考慮して判断すべきである。
③ 貸主の主張する敷引の性質はいずれも合理性がない。

◆ H21.08.07東京簡裁判決

2010年6月16日 公開

平成21年(少コ)第998号敷金返還請求本訴事件(通常手続移行),平成21年(ハ)第23060号解約違約金等請求反訴事件
最高裁HP
裁判官 藤岡謙三

【事案の概要】
建物賃貸借契約で,敷金返還請求に対し,貸主が修理代,及び,1年未満での解約を理由として2ヶ月分の違約金を請求した事案。2ヶ月分の違約金の定めが9条違反となるかが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,2ヶ月分の違約金の定めが9条1項違反として,1ヶ月分を超える部分の請求を棄却した。
① 中途解約の場合の違約金の定め自体は,直ちに10条違反となるとはいえない。
② 違約金については,一般の居住用建物の賃貸借契約において途中解約の場合に支払うべき違約金額は賃料の1ヶ月分とする例が多数であり,相当。これを超える部分は9条1号により無効。

◆ H21.08.27大阪高裁判決

2010年6月16日 公開

平成20年(ネ)第474号更新料返還等請求控訴事件,平成20年(ネ)第1023号賃料請求反訴事件
判例時報2062号40頁
裁判官 成田喜達,亀田廣美,高瀬順久

【事案の概要】
居室の更新料返還請求。更新料条項の有効性が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,本件更新料条項は10条違反であるとして,更新料の返還請求を認めた。
① 更新拒絶権放棄の対価,賃借権強化の対価,賃料の補充という賃借人側の主張を詳細に検討していずれも否定し,特に性質も対価となるべきものも定められ ないままであって,法律的には容易に説明することが困難で,対価性の乏しい給付というほかないとし,10条前段に該当するとした。
② 10条後段該当性については,法1条にかんがみ,契約当事者の情報収集力等の格差の状況及び程度,消費者が趣旨を含めて契約条項を理解できるもので あったかどうか等の契約に至る経緯のほか,消費者が契約条件を検討する上で事業者と実質的に対等な機会を付与され自由にこれを検討していたかどうかなど諸 般の事情を総合的に検討し,あくまでも消費者契約法の見地から,信義則に反して消費者の利益が一方的に害されているかどうかを判断すべきである。
③ 本件更新料条項の10条後段該当性についても詳細に検討し,不合理性,不当な顧客誘因性,強行放棄の存在から目をそらせる役割を果たしているとして,該当するとした。
④ 主たる給付の対価に関する条項は,取引の本体部分となり,それは基本的に市場の取引により決定されるべきであるから10条の適用対象とならないのが原 則であるが,対価を理解すべき情報に不当な格差があり,又は理解に誤認がある場合には上記原則のように言うことができないことは自明であり,上記原則が適 用されるためには,その前提として,契約当事者双方が対価について実質的に対等にまた自由に理解しうる状況が保障されていることが要請されるとして,本件 ではこれを満たしていないとした。

◆ H21.09.25京都地裁判決(1)

2010年6月16日 公開

平成20年(ワ)第947号更新料返還等請求事件,同第1287号更新料反訴請求事件,同第1285号保証債務履行請求事件
最高裁HP,判例時報2066号95頁
裁判官 瀧華聡之,佐野義孝,梶山太郎
控訴審 H22.02.24大阪高裁判決
上告審 H23.07.15最高裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,更新料条項及び定額補修分担金条項はいずれも10条に反し無効であるとして,賃貸借契約中に3回にわたり支払った更新料合計22万8000円及び契約締結時に支払った定額補修分担金12万円の返還を求めた事案

【判断の内容】
以下の理由により,更新料,定額補修分担金の返還請求を認めた。
① 更新料について,賃料の補充とみることや,賃借権強化の対価の性質を有するとみることは困難であるし,更新拒絶権放棄の対価という性質も希薄であって,更新料は,更新の際,賃借人が賃貸人に支払う金銭という一種の贈与的な性格を有するもの。
② 更新料条項について,賃貸借契約締結の際の考慮要素になっており中心条項であり10条前段違反にならないという考えは,寄るべき法的基準がなく私的自 治にゆだねられている場合であって,更新料条項については民法601条の規定が存在し,全く私的自治にゆだねられているわけではない。
② 原告と被告との間の情報量の格差等の事情から,10条に反して無効。
③ 定額補修分担金についても,10条に反して無効。

◆ H21.09.25京都地裁判決(2)

2010年6月16日 公開

平成20年(ワ)第558号保証金・更新料返還等請求事件
最高裁HP
裁判官 瀧華聡之,谷口園恵,碩水音

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,更新料条項は10条に反し無効であるとして,賃貸借契約期間中に支払った更新料11万4000円の返還及び被告が原告のプライバシーを侵害したとして,不法行為に基づき10万円の損害賠償を求めた事例

【判断の内容】
以下の理由により,更新料の返還請求を認めた。
① 更新料を賃料の補充とみることや,賃借権強化の対価を有するとみることは困難であるし,更新拒絶権放棄の対価という性質も希薄であって,更新料は,更新の際,賃借人が賃貸人に支払う金銭という一種の贈与的な性格を有するもの。
② 原告と被告との間の情報量の格差等の事情も考慮して,10条に反して無効。

◆ H21.09.25京都地裁判決(3)

2010年6月16日 公開

平成20年(ワ)第1286号更新料支払請求事件
最高裁HP
裁判官 佐野義孝
控訴審 H22.05.27大阪高裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,賃貸借契約の更新に際して更新料10万6000円の支払を求めたところ,更新料条項は10条に反して無効であると主張した事例

【判断の内容】
以下の理由により,更新料の請求を棄却した。
① 更新料を賃料の補充とみることは困難であって,更新拒絶権放棄の対価や賃借権強化の対価ということもできない。
② 更新料の額や原告と被告との間の情報量の格差等の事情を考慮して,更新料条項が10条に反して無効。

◆ H21.09.30東京高裁判決

2010年6月16日 公開

平成21年(ネ)第207号生命保険契約存在確認請求控訴事件
消費者法ニュース82号214頁
裁判官 大坪丘,宇田川基,尾島明
第1審 H20.12.04横浜地裁判決
上告審 H24.03.16最高裁判決
差戻審 H24.10.25東京高裁判決

【事案の概要】
医療保険契約の保険料滞納による無催告失効条項による失効が,当該条項が10条違反であり失効していないことの確認を求めた事例

【判断の内容】
以下の理由により,無催告失効条項が10条違反であるとして,契約の存在を確認した。
① 本件無催告失効条項は,民法540条1項及び541条の場合に比べて消費者である保険契約者の権利を制限しており,10条前段を満たす。
② 保険料の自動引き落とし特約があるが,ささいな不注意による振替不能の危険があり,これによって直ちに失効するとすることは契約者にとって酷。
③ 振替不能,再請求の通知を出していることは,本件保険約款自体の有効性を判断する際に考慮すべき事項ではない。

◆ H21.09.30京都地裁判決

2010年6月16日 公開

平成20年(ワ)第871号定額補修分担金条項使用差止請求事件
最高裁HP消費者庁HP(PDF)京都消費者契約ネットワークHP(PDF)判決写し(京都消費者契約ネットワークHP)、判例時報2068号134頁、判例タイムズ1319号262頁,消費者法ニュース84号237頁
裁判官 瀧華聡之,谷口園恵,碩水音
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 株式会社長栄
控訴審 H22.3.26大阪高裁判決
強制執行 H23.11.24京都地裁決定

【事案の概要】
適格消費者団体が,不動産賃貸業及び不動産管理業を目的とする事業者である被告に対し,定額補修分担金条項が10条に反して無効であるとして,定額補修分担金条項を含む意思表示をすることの差止め及び同条項を含む契約書用紙の破棄等を求めた事案。

【判断の内容】
① 定額補修分担金条項は10条に反して無効であるとした上で,同条項を含む意思表示をすることの差止めを認めた。
② 被告が,その従業員らに対し,被告が消費者との間で建物賃貸借契約を締結し,又は合意更新するに際し、定額補修分担金条項を含む契約の申込み又はその承諾の意思表示を行うための事務を行わないことを指示することを求める部分は、作為を求める給付の訴えであり、一義的に明らかでなく執行にも問題を生ずるとして、却下した。
③ 契約書雛形の廃棄、従業員への周知については、すでに廃棄済みで、周知がなされているとして、請求を棄却した。

◆ H21.10.02大津地裁長浜支部判決

2010年6月16日 公開

平成19年(ワ)第127号,同20年(ワ)第16号既払金返還等請求事件
消費者法ニュース82号206頁
裁判官 別所卓郎

【事案の概要】
デート商法でコート等をクレジットにより購入させられたことについて,加盟店管理責任に基づく不法行為,不実告知による立替払契約の取消を理由に,信販会社に対し既払い金の返還を求めた事案

【判断の内容】
以下の理由により,立替払契約の不実告知による取消を認め既払い金の返還請求を認めた。
① 本件加盟店契約によれば,信販会社は加盟店に対し立替払契約締結について媒介をすることを委託しているというべきであり5条の適用がある。
② 加盟店が信販会社の承諾なく第三者に媒介業務を再委託している場合も,1条の趣旨からは5条の適用がある。
③ 「本件クレジット契約を締結すれば従前のクレジット契約を解約できる」という事項は「重要事項」(4条)にあたる。

◆ H21.10.23大阪高裁判決

2010年6月16日 公開

平成21年(ネ)第1437号契約条項使用差止等請求控訴事件
消費者庁HP(pdf)消費者支援機構関西HP
裁判官 永井ユタカ,上田日出子,谷口安史
適格消費者団体 消費者支援機構関西
事業者 ニューファイナンス株式会社
第1審 H21.04.23京都地裁判決

【事案の概要】
適格消費者団体が貸金業者に対し,10条違反である早期完済違約金条項(債務者自ら繰り上げ償還する場合をA,期限の利益喪失による繰り上げ償還の場合をB)の使用差止,及び差止に必要な措置を求めた事案。事前請求の有効性についても争われた。

【判断の内容】
以下のように判断し,条項Aについては差止,契約書の破棄を命じ,Bについては棄却した。
① 41条1項の「請求の要旨」とは,差止請求の相手方である事業者等に対し,訴えによって差止の対象となる行為がどのような行為かを示す程度の事項をいうところ,本件ではその記載がある。
② 事前請求書を受領拒否していたとしても,41条2項により到達したものとみなされる。
③ 被告が条項Bについて無効であることを認めていないとしても,被告が契約書式を改訂し,Bを現在使用していないこと,本件訴訟において今後使用の予定はないと述べていることからは,条項Bについて将来の使用の恐れがあるとは認められない。
④ 条項Aについては,貸付利率いかんによっては10条違反となる場合がある。 
⑤ 条項Aについて,他の条項によって当該契約条項が10条に該当し無効・有効の判断が分かれる場合であって,当該契約条項を使用した契約締結を差し止め るべき必要性が高い場合には,当該契約条項を使用した契約締結を差止の対象とすることも許容するのが12条の趣旨であるとして,差止を認めた。
⑥ 条項Aを含む借用証書の廃棄は契約の停止もしくは予防に必要な措置である。

◆ H21.03.10大阪高裁判決

2010年6月14日 公開

平成20年(ネ)第2700号敷金返還等請求控訴事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 安原清蔵,樋口英明,本多久美子

【事案の概要】
建物賃貸借契約に付随した定額補修分担金特約の有効性が争われた。

【判断の内容】
定額補修分担金条項が10条違反であるとして,返還請求を認めた。

◆ H21.03.31大阪地裁判決

2010年6月14日 公開

平成20年(ワ)第10436号建物明渡請求事件
消費者法ニュース85号173頁
裁判官 藤倉徹也

【事案の概要】
 建物賃貸借契約で,家賃等を3ヶ月以上滞納したときは、貸主は催告によらないで契約を解除することができ、契約解除後も本件建物を明け渡さないときは、契約解除の翌日から本件建物明渡しの日まで家賃相当額の1.5倍の損害賠償金を貸主に支払うという条項の効力が争われた。

【判断の内容】
① 賃貸借契約の終了に基づく目的物返還義務の履行遅滞を原因とする損害賠償における損害は、当該不動産の有する使用価値それ自体が侵害されたことによる積極的損害であると解されるところ、賃貸借契約においては当該不動産の使用価値をもって賃料とするのが通常であるから、賃料相当損害金の算定については、特段の事情がない限り、従前の賃料を基準として算定するのが相当と解される。
 そうすると、不動産賃貸借契約において、賃貸借契約の終了に基づく目的物返還義務の履行遅滞が生じた場合における「平均的損害」は、原則として、従前の賃料を基準として算定される賃料相当損害金を指すものと解するのが相当。
② 家賃等相当額の1.5倍の賠償金の支払いに関する規定は、家賃等損害金相当額の支払いを求める部分をこえる部分について、9条1号に反し、無効。

◆ H21.04.23京都地裁判決

2010年6月14日 公開

平成20年(ワ)第1079号契約条項使用差止等請求事件
最高裁HP消費者庁HP(PDF)消費者支援機構関西HP,判例時報2055号123頁
裁判官 辻本利雄,和久田斉,波多野紀夫
適格消費者団体 消費者支援機構関西
事業者 ニューファイナンス株式会社
控訴審 H21.10.23大阪高裁判決

【事案の概要】
適格消費者団体が貸金業者に対し,10条違反である早期完済違約金条項(債務者自ら繰り上げ償還する場合をA,期限の利益喪失による繰り上げ償還の場合をB)の使用差止,及び差止に必要な措置を求めた事案。事前請求の有効性についても争われた。

【判断の内容】
以下のように判断し,条項Aについては差止,契約書の破棄を命じ,Bについては棄却した。
① 41条1項の「請求の要旨」とは,差止請求の相手方である事業者等に対し,訴えによって差止の対象となる行為がどのような行為かを示す程度の事項をいうところ,本件ではその記載がある。
② 事前請求書を受領拒否していたとしても,41条2項により到達したものとみなされる。
③ 被告が条項Bについて無効であることを認めていないとしても,被告が契約書式を改訂し,Bを現在使用していないこと,本件訴訟において今後使用の予定はないと述べていることからは,条項Bについて将来の使用の恐れがあるとは認められない。
④ 条項Aについては,貸付利率いかんによっては10条違反となる場合がある。 
⑤ 条項Aについて,他の条項によって当該契約条項が10条に該当し無効・有効の判断が分かれる場合であって,当該契約条項を使用した契約締結を差し止め るべき必要性が高い場合には,当該契約条項を使用した契約締結を差止の対象とすることも許容するのが12条の趣旨であるとして,差止を認めた。
⑥ 条項Aを含む借用証書の廃棄は契約の停止もしくは予防に必要な措置である。

◆ H21.06.04最高裁判決

2010年6月14日 公開

平成19年(受)第1987号保険金請求事件
最高裁HP,判例タイムズ1306号229頁,金融商事判例1334号9頁,判例時報2054号144頁,金融法務事情1884号48頁
裁判官 涌井紀夫,甲斐中辰夫,宮川光治,櫻井龍子,金築誠志

【事案の概要】
店舗総合保険契約に適用される普通保険約款中に,保険の目的が受けた損害に対して支払われる水害保険金の支払額につき上記損害に対して保険金を支払うべき 他の保険契約があるときには同保険契約に基づく保険給付と調整する旨の条項がある場合における,同条項にいう「他の保険契約」の意義

【判断の内容】
店舗総合保険契約に適用される普通保険約款の解釈について,一定の限定をした判決である。
宮川光治裁判官は補足意見で,保険約款が複雑で容易に理解し難いこと,損害保険料率算出機構作成の標準保険約款が保険実務に浸透していないこと,契約者で ある市民の合理的意思と乖離しない,分かりやすい約款の作成と保険実務における消費者保護の精神に沿った約款の解釈・運用が望まれると指摘した。

◆ H20.09.30京都地裁判決

2010年6月12日 公開

平成20年(レ)第4号礼金返還請求控訴事件
最高裁HP
吉川愼一,上田卓哉,森里紀之

【事案の概要】
控訴人は,被控訴人との間で締結した賃貸借契約に基づいて,被控訴人に礼金18万円を交付したが,同賃貸借契約には,賃貸借契約終了時に礼金を返還しない 旨の約定が付されており,被控訴人から礼金18万円が返還されなかったことから,この礼金を返還しない旨の約定が10条により全部無効であるとして,被控 訴人に対し,不当利得に基づき,礼金18万円及びこれに対する遅延損害金の支払いを求めた(1審では請求棄却)。これに対し,礼金約定が信義則に反して消 費者の利益を一方的に害するものであるような事情は認められないから,礼金約定が10条に反し無効であるということはできないとした事例

【判断の内容】
以下の理由から,10条後段の要件を欠くとして返還請求を認めなかった。
① 礼金は,賃貸人にとっては賃貸物件を使用収益させることによる対価として,賃借人にとっては賃貸物件を使用収益するに当たり必要となる経済的負担とし て,それぞれ把握されている金員であり,かかる当事者の意思を合理的に解釈すると,賃料の一部前払としての性質を有するというべきである。また,礼金が返 還されないことについては説明があったもので,何らの根拠もなく,何らの対価でもなく,賃借人が一方的に支払を強要されているとはいえない。
② 礼金は賃料の前払としての性質を有しており,これを契約時に徴求したとしても被控訴人が不当な利益を得ることにはならない。また,控訴人は自由な意思に基 づき礼金約定が付された賃貸物件を選択したというべきであり,控訴人に交渉の余地がなかったことは特段問題とするに足りない。
③ 「賃貸借住宅標準契約書」の体裁や政府委員の答弁,公営住宅法や旧国庫法などが礼金を禁止していること,本件礼金の額などから,礼金約定が非難に値するということはできない。

◆ H20.10.17東京地裁判決

2010年6月12日 公開

平成18年(ワ)第3751号卒業認定等請求事件
判例時報2028号50頁
裁判官 佐久間邦夫,石原直弥,中依子

【事案の概要】
私立高校の生徒が,退学処分の効力を争うとともに,予備的に納付済みの授業料等は理由のいかんを問わず返還しない旨の学則(学費不返還特約)の効力は9条1号等に反して無効であるとして,退学処分日以降の学費の返還を求めた。

【判断の内容】
年度途中の退学処分は高校にとって予測困難であったところ,一般に在学契約に基づく生徒に対する給付は4月1日から翌年3月31日までの1年を単位として 準備されており,新年度開始日(4月1日)には当年度における教育役務等の給付の準備がされていたことに鑑みれば,在籍予定期間の授業料等に相当する金員 は,平均的な損害額に該当するものというべきであり,不返還特約は平均的な損害額を超えるものではない,学費の返還請求を認めなかった。

◆ H20.11.27東京簡裁判決

2010年6月12日 公開

平成20年(少エ)第25号敷金返還請求事件
最高裁HP
裁判官 中島寛

【事案の概要】
マンション居室賃貸借契約終了による敷金返還請求。未払賃料の遅延損害金が日歩70銭(年利73%)とされていたのが10条違反か否かが争われた。

【判断の内容】
未払賃料についての遅延損害金の約定は損害賠償額の予定または違約金の定めであり,利率の上限は14.6%に制限されるとして,これを超える部分は無効としてその範囲内で相殺を認めた。

◆ H20.11.28大阪高裁判決

2010年6月12日 公開

平成20年(ネ)第1597号定額補修分担金・更新料返還請求控訴事件
兵庫県弁護士会HP,判例時報2052号93頁
裁判官 安原清蔵,八木良一,本多久美子
原審 H20.04.30京都地裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約の定額補修分担金条項について10条で無効とした事例

【判断の内容】
控訴人(賃貸人)からの,契約締結時において原状回復額を定額で確定させて,賃貸人と賃借人の双方がリスクと利益を分け合う交換条件的内容を定めたもので あり10条にはあたらないとの追加主張に対し,多くの賃貸借契約を締結している賃貸人側がリスクの分散を図るに過ぎず賃借人にはメリットがあるかどうかは 疑問として,控訴を棄却した。

◆ H20.12.02大阪地裁判決

2010年6月12日 公開

平成19年(ワ)第8639号賃料等請求事件,平成19年(ワ)第8639号保証金返還反訴請求事件
未登載
裁判官 深見敏正

【事案の概要】
敷引特約につき,その一部を無効とする判決

【判断の内容】
本件敷引特約全体が信義則に反していると判断するには困難な面があるとしつつ,建物の使用期間に関わらず保証金の71.4%を控除するのが過酷だとして,30%を超える部分を10条違反とした。

◆ H20.12.04横浜地裁判決

2010年6月12日 公開

平成20年(ワ)第721号生命保険契約存在確認請求事件
未登載
裁判官 小林正,志田原信三,安部利幸
控訴審 H21.09.30東京高裁判決
上告審 H24.03.16最高裁判決
差戻審 H24.10.25東京高裁判決

【事案の概要】
医療保険契約の保険料滞納による無催告失効条項による失効が,当該条項が10条違反であり失効していないことの確認を求めた事例

【判断の内容】
以下の理由から,無催告失効条項は10条違反ではないとして契約の失効を認めた。
① 本件無催告失効条項は10条前段を満たす。
② 他の条項により契約を簡単には失効させず存続させるように一定の配慮がされていることから,10条後段は満たさない。

◆ H20.12.17東京高裁判決

2010年6月12日 公開

平成18年(ネ)第141号設備費用請求控訴事件
金融商事判例1313号42頁
裁判官 藤村啓,佐藤陽一,岸日出夫

【事案の概要】
顧客らがそれぞれ取得した各建物に業者があらかじめ設置しておいたLPガス消費設備及び給湯器に関して顧客らとの間で締結した各貸与契約に定められた中途 解約の場合の補償費支払に関する合意に基づき,顧客らに対し,各補償費の支払を求めた事案。同条項が9条1号にあたるか否かが争われた。

【判断の内容】
① 建物に設置された機器類が附合あるいは即時取得により建物所有者である顧客らの所有に属することとなるとした上で,補償費の支払いが機器類の売買代金の支払い又は利益調整であるとの業者の主張を排斥し,結局違約金条項と解するほかないと判断した。
② 平均的損害を超える額についても認められないとして,結局9条1号により同条項は無効であるとして,業者の請求を棄却した。

◆ H21.01.13右京簡裁判決

2010年6月12日 公開

平成19年(ハ)第542号保証債務履行請求事件
未登載
裁判官 中嶋嘉昭
控訴審 H21.05.21京都地裁判決

【事案の概要】
連帯保証人に対する貸金業者からの保証債務履行請求。

【判断の内容】
以下の理由から,連帯保証契約の取消を認めた。
① 主債務が事業のために借入をしたものであっても,連帯保証人が連帯保証することは「事業のために」する行為ではなく,消費者契約法が適用される。
② 貸金業者が,借り主に対して連帯保証人を探してくるようにと依頼することは連帯保証契約締結の媒介を依頼したものというべきである。
③ 借り主が「絶対に迷惑をかけない」と告げたことは断定的判断の提供に当たる。
④ 実際は借り換えなのに借り主が更新と告げたことは不実告知にあたる。
⑤ 取消権の消滅時効の起算点について,貸金業者が全取引を利息制限法により計算し直し請求の減縮及び請求原因の訂正を陳述した第2回口頭弁論期日が起算点となるとして,消滅時効にかかっていないとした。

◆ H21.01.28京都地裁判決

2010年6月12日 公開

平成20年(ワ)第2498号敷引条項使用差止請求事件
消費者庁HP(PDF)判決写し(PDF、京都消費者ネットワークHP)
裁判官 瀧華聡之,谷口園恵,向健志
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 大和観光開発株式会社
控訴審 H21.06.16大阪高裁判決

【事案の概要】
適格消費者団体が不動産賃貸業者に対し,10条違反である敷引条項の使用差止,及び差止に必要な措置を求めたところ,使用差止については業者が請求を認諾したため,差止に必要な措置の命令の可否が争われた事案

【判断の内容】
請求の趣旨は,「被告は,その従業員らに対し,被告が消費者との間で建物賃貸借契約を締結又は合意更新をするに際し,当該消費者から受領する敷金又は保証金に関して,当該消費者との建物賃貸借契約終了時において,その名目の如何にかかわらず,当該消費者に返還すべき敷金又は保証金より無条件に一定額を控除する旨の条項を含む意思表示を行うための事務を行わないよう指示せよ。」というものであるところ,差止命令とは別に,その命令の実現過程に介入して,事業者に対して,別途義務を課すことができる行為は,不当行為の停止又は予防の実効性を確保するために必要な具体的に特定された措置に限られるというべきであり,このように解しなければ,事業者としてはどのような措置をとれば義務を履行したことになるのか明らかでなく困難を強いられるし,強制執行にも困難が生じるとし,本件では請求の特定ができていないとして,訴えを却下した。

◆ H21.02.20東京簡裁判決

2010年6月12日 公開

平成20年(少コ)第3509号解約予告不足金請求事件
最高裁HP
裁判官 藤岡謙三

【事案の概要】
建物賃貸人が,中途解約をした賃借人に対し,解約予告不足金を請求した事案。解約予告不足金条項が10条,9条違反,民法90条違反となるとして争われた。

【判断の内容】
下記のように判断し,1ヶ月分の賃料・共益費相当額及び年14.6%の遅延損害金のみ認め,その余を棄却した。
① 解約予告不足金を定めること自体は,民法上でも期間の定めのある場合でも解約権の留保が認められていることから,一律に無効としなければならないものではない。
② 一般に,解約予告期間及び予告に代えて支払うべき違約金額の設定は1ヶ月分とする例が多数であり,解約後次の入居者を獲得するまでの一般的な所要期間 として相当と認められるので,解約により原告が受けることがある平均的な損害は賃料・共益費の1ヶ月分相当額であると認めるのが相当(民事訴訟法248 条)。
③ 遅延損害金は,9条2号により年14.6%を超える部分は無効。

◆ H21.02.27神戸地裁尼崎支部判決

2010年6月12日 公開

平成20年(ワ)第1218号損害賠償請求事件
未登載
裁判官 竹中邦夫

【事案の概要】
パチンコ攻略法の情報提供代金として約700万円を支払わされた者が業者に対し損害賠償請求をした事案

【判断の内容】
下記のように判断し,断定的判断の提供に当たるとして契約の取消を認め全額の返還請求を認めた。
① パチンコは,個別のパチンコ台の釘の配置やその角度,遊技者の技量や遊技時間,パチンコ店の営業姿勢,パチンコ台に組み込まれた電磁的に管理された絵 柄の組み合わせ等の複合的な要因により,出玉数が様々に変動するものであり,遊技者がどれくらいの出玉を獲得できるかは上記のような複合的な要因による偶 然性の高いものであり,本件情報は,将来における変動が不確実な事項に関するものに当たる。
② 被告が特別なパチンコ攻略情報を有しておりこれを購入してこれに従えば確実に利益を生み出せると誤信させるような方法で宣伝及び説明をして勧誘したものであり,これによって原告が700万円もの高額の代金を支払ったものである。

◆ H20.07.24京都地裁判決

2010年6月11日 公開

平成19年(ワ)第3565号定額補修分担金返還請求事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 田中義則

【事案の概要】
建物賃貸借契約の定額補修分担金条項(月額賃料の3.25倍)について,10条で無効とし,返還請求を認めた事例

【判断の内容】
下記の理由から,定額補修分担金条項につき,10条により無効とした。
① 賃貸人は,損害賠償請求権の事前放棄ではあるが,全体としては定額補修分担金の額を採算が取れるように設定していると考えられる。
② 賃借人は定額補修分担金の額について賃貸人の定める額に従うほかなく,交渉による変更の余地が考えられない。また,賃借人にとって退去は1回限りのこ とであり,賃借人にとって利益となるか否かは退去時にならないとわからないことであるから,あらかじめ不利益の生じるリスクを他に転嫁したり分散すること はできない。
③ 分担金の額は,被告の賃貸業の経営上の観点から被告があらかじめ決定した者であるが,その具体的根拠は明らかでなく,賃借人にはこの金額の適否を判断することは不可能である上,交渉により金額の変更を求めることができたとも考えられない。

◆ H20.08.27京都簡裁判決

2010年6月11日 公開

平成19年(ハ)第10984号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 谷澤和明

【事案の概要】
分譲貸の建物賃貸借契約につき,敷引特約(50万円のうち40万円を敷引)は10条により無効であるなどとして敷金の返還を求めたのに対し,分譲貸の事業者(2条2項)該当性等が争点となった。

【判断の内容】
① 2条2項にいう「事業」とは「一定の目的をもってなされる同種の行為の反復継続的遂行」であり,個人がその所有不動産を継続して賃貸することは,不動産業者ではなく一つの部屋を貸す場合であっても「事業」にあたる。
② 敷引特約につき,信義則に反し消費者の権利を制限するものであり,解約引率8割が慣習であると認めるに足りる証拠もないから,10条により無効である。
③ 契約締結から5年後に敷引特約の無効を主張したとしても,信義則に違反するものではない。

◆ H20.09.26京都地裁判決

2010年6月11日 公開

平成20年(ワ)第1469号敷金返還等請求事件
未登載
裁判官 吉川愼一

【事案の概要】
定額補修分担金特約,日割計算に関する特約,早期退去特約が10条に違反しないとされた事例

【判断の内容】
①  定額補修分担金特約は,賃借人(消費者)にとってもメリットのある特約であって,「消費者の利益を一方的に害するもの」ではない。
② 賃料の計算方法,支払方法については,「民法,商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合」を明らかにする任意規定が存在せず,退去月において賃料の日割計算をしない特約も有効である。
③ 早期退去特約は「消費者の利益を一方的に害するもの」ではない。

◆ H20.09.26高松地裁判決

2010年6月11日 公開

平成19年(ワ)155号不当利得等返還請求事件
国セン報道発表資料(2011年11月11日公表)
裁判官 真鍋麻子

【事案の概要】
広告記載のような医学部合格実績がないのに,その旨記載した広告が交付され,その旨を誤信して医学部系進学塾の受講契約を締結した者からの,不実告知を理由とする取消が認められた事例

【判断の内容】
① 医学部合格実績は,医学部受験のための学習塾を標榜する被告の講義内容に関わるものであり,重要事項に関する内容である。
② ①に関する原告の誤認は,本件契約締結を決定づけた要因ではないものの,原告が本件契約締結交渉を始め,本件契約締結の際に考慮した要素の1つであるとして,4条1項1号による取消を認めた。

◆ H18.12.15大阪地裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(レ)第137号保証金返還請求控訴事件
未登載
裁判官 山下郁夫,横路朋生,矢野紀夫

【事案の概要】
敷金返還請求。敷引特約(45万円から30万円を差し引く)の効力が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,敷引特約が10条違反により無効であるとして返還請求を認めた。
① 敷引特約は,敷引をする趣旨が合理的なものと認められ,かつ,敷金契約締結の際に敷引の趣旨が賃借人に説明されて賃借人もこれを了解しているなど特段の事情のない限り,信義則に反して賃借人の利益を一方的に害すると解すべき。
② 本件では,説明がなされこれを賃借人が認識したことを認めるに足りる証拠はないから,合理性の有無を検討するまでもなく,10条違反となる。

◆ H18.12.22最高裁判決

2010年6月8日 公開

平成17年(受)第1762号学納金返還請求事件
最高裁HP,判例時報1958号69頁,判例タイムズ1232号84頁
裁判官 古田佑紀,滝井繁男,津野修,今井功,中川了滋

【事案の概要】
いわゆる鍼灸学校の入学試験に合格し,同学校との間で納付済みの授業料等を返還しない旨の特約の付された在学契約を締結した者が,入学年度の始まる数日前に同契約を解除した場合において,同特約が9条1号により無効とされた事例

【判断の内容】
"鍼灸学校であっても,在学契約の性質,学納金の性質,不返還特約の性質及び効力については,大学に関する平成18年11月27日の判例の説示が基本的に妥当する。
3月31日より前に辞退しているのであれば平均的損害は損しないのであり,不返還特約は無効である。

◆ H18.12.28神戸地裁姫路支部判決

2010年6月8日 公開

平成17年(ワ)第633号売買代金等請求本訴事件,同第899号原状回復請求反訴事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 黒田豊

【事案の概要】
太陽光発電システムの勧誘につき不実告知及び不利益事実の不告知を認めた事例

【判断の内容】
当該商品を購入することによって将来生ずる経済的メリットに関する事実は,本件契約では重要事項にあたる。この点について,不実を告知し不利益事実を告知しなかったものであり,4条1項,2項,特商法9条の2により取り消すことができる。

◆ H19.01.11大阪地裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(レ)第176号敷金返還請求控訴事件,同第251号同附帯控訴事件
未登載
裁判官 塚本伊平,府内覚,烏田真人

【事案の概要】
分譲貸の建物賃貸借契約につき,敷引特約(全額敷引の合意)は10条,民法90条により無効であるなどとして敷金の返還を求めたのに対し,分譲貸の事業者(2条2項)該当性等が争点となった。

【判断の内容】
① 転勤により空室になるため賃貸したものであること,当該建物以外の物件につき賃貸しているという事実も認められないことなどから,賃貸を反復継続的に行っていたということはできず,「事業者」(2条2項)には該当しない。
② 敷引特約は契約書,重要事項説明書に明記されており,賃借人が敷引特約を押しつけられたといった事情もうかがえないことから,敷金全額(90万円。なお,賃料月額14万円,管理費月額2万3940円。)であっても直ちに公序良俗に反するとはいえない。

◆ H19.01.29名古屋地裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(ワ)第4452号損害賠償請求事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 安田大二郎

【事案の概要】
パチスロ攻略法が断定的判断の提供に当たるとして4条1項2号による取消,不法行為による損害賠償請求が認められた事案。パチスロ攻略法の売買は消費者契約法による保護を受ける契約か否か,消費者の努力義務違反があるか否かも争われた。

【判断の内容】
① パチスロ攻略法は断定的判断の提供に当たる。
② 事業者と消費者の格差の観点からは,本件売買について取消を認めても消費者契約法の趣旨を逸脱するものではない。
③ 消費者の努力義務(3条2項)は,事業者から提供された情報を活用するように要請するに過ぎず,消費者自ら情報を収集する努力まで課すものではない。

◆ H19.02.06西宮簡裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(ハ)第108号敷金返還請求事件
消費者法ニュース72号211頁
裁判官 西田文則

【事案の概要】
建物賃貸借契約の敷引特約が10条違反かどうかが争われた。

【判断の内容】
① 法人は「事業者」(2条2項)にあたる。
② 原告が学者であっても,事業としてまたは事業のために契約したものでないことは明らかであり「消費者」(2条1項)にあたる。
③ 本件敷引特約は10条違反である。

◆ H19.02.20福岡地裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(ワ)第2326号損害賠償請求事件
国セン報道発表資料(2008年10月16日公表)
裁判官 細谷泰暢

【事案の概要】
パチンコ必勝法詐欺が,断定的判断の提供に当たるとして4条1項2号により取消を認め,代金の返還請求を認めた事例

【判断の内容】
① 一般的に,パチンコにおいて遊技者がどのくらいの出玉を獲得するかは,複合的な要因による偶然性の高いものであって,将来における変動が不確実な事項である。
② 被告が「絶対稼げる」「誰でもできる」などといった勧誘文句及び同趣旨の広告を用いて原告を勧誘した行為は「断定的判断の提供」にあたる。
③ 原告は,②の断定的判断の内容が確実であると誤信したものである。

◆ H19.03.30長崎地裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(ワ)第453号生命保険金請求事件
消費者法ニュース72号207頁
裁判官 上拂大作

【事案の概要】
生命保険契約の保険金請求に対し,保険料の支払いが猶予期間を2日過ぎてなされたとして,失効約款の適用により失効しているとして争われ,生命保険契約の 失効約款の適用に関し,未払保険料の支払が猶予期間を2日も経過しないうちに行われている場合は,消費者契約法・消費者基本法等の消費者保護の理念に基づ き,保険契約の失効を主張することは信義則上相当ではないとされた事例

【判断の内容】
次の理由から,原告の請求を認めた。
① 本件保険約款は,一応,有効。
② しかし,信義則や当事者間の衡平の見地,消費者契約法等,消費者と事業者との格差に鑑み,約款の規制を検討する必要がある。
③ 本件失効約款は,民法の原則よりも消費者に不利益になっている。
④ 保険ではわずか2日の遅れで,それまでは継続して払われていたし,自動振替制度で引き落としがなされない場合には取立債務に準じた債務の履行ということになり,実際に預金があった場合には不履行を認めることができず,原告に帰責性がない。軽微。
⑤ よって,本件失効約款を適用することは信義則上相当ではなく,失効を主張することはできない。

◆ H19.03.30大阪地裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(レ)第196号損害賠償請求控訴事件,平成18年(レ)第239号損害賠償請求附帯控訴事件
判例タイムズ1273号221頁
裁判官 横山光雄,高木勝己,小川清明

【事案の概要】
建物賃貸借契約の敷引特約が10条により一部無効であるとして,賃借人の賃貸業者に対する敷金返還請求が一部認容された事例

【判断の内容】
次の理由から,25万円について請求を認めた。
① 敷引金の性質は,契約成立の謝礼,自然損耗の修繕費用,更新料免除の対価,終了後の空室賃料,賃料を低額にすることの代償などの様々な要素を有するものが渾然一体となったものである。
② 本件敷引金のうち,契約更新の際賃料を下げる代わりに敷引金を5万円上げたことが明らかであり,この部分は賃料減額の代償である。残りの25万円については元々予定されていた敷引金であり,①の性質を有する。
③ 5万円の部分は賃料低額の代償として賃借人に一方的に不利益ということはできず有効であるが,25万円の部分は一方的に不利益である。
④ 敷引特約は,賃借人の交渉努力によって特約自体を排除することは困難であり,事業者が一方的に押しつけている状況にあるといっても過言ではない。本件敷引特約についても,25万円については交渉の余地がなかったと認められる。

◆ H19.04.03最高裁判決

2010年6月8日 公開

平成17年(受)第1930号解約精算金請求事件
最高裁HP,最高裁判所民事判例集61巻3号967頁,判例時報1976号40頁,判例タイムズ1246号95頁,金融商事判例1275号17頁,1277号8頁
裁判官 那須弘平,上田豊三,藤田宙靖,堀籠幸男,田原睦夫

【事案の概要】
外国語会話教室の受講契約の解除に伴う受講料の精算について定める約定が,特商法49条2項1号に定める額を超える額の金銭の支払を求めるものとして無効であるとされた事例

【判断の内容】
① 本件使用済ポイントの対価額も,契約時単価によって算定されると解するのが自然。
② 契約時よりも常に高額となる精算規定は,実質的には,損害賠償額の予定又は違約金の定めとして機能するもので,受講者による自由な解除権の行使を制約するものといわざるを得ない。

◆ H19.04.20京都地裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(レ)第79号敷金返還請求控訴事件
最高裁HP,消費者法ニュース73号214頁
裁判官 山下寛,森里紀之,衣斐瑞穂

【事案の概要】
控訴人が,被控訴人との間で締結した賃貸借契約には,賃貸借契約終了時に敷金の一部を返還しない旨のいわゆる敷引特約が付されており,被控訴人から敷金 35万円のうち5万円しか返還されなかったことから,上記敷引特約が10条により全部無効であるとして,被控訴人に対し,敷金残金30万円などの返還を求 めたところ,上記敷引特約は10条により無効であると判断された事例

【判断の内容】
以下の理由から,敷引特約が10条違反により無効であるとして返還請求を認めた。
① 賃貸借においては賃借人に債務不履行があるような場合を除き,賃借人が賃料以外の金銭の支払を負担することは法律上予定されておらず,また,関西地方 において敷引特約が事実たる慣習として成立していることを認めるに足りる証拠はないから,本件敷引特約は,民法の公の秩序に関しない規定の適用による場合 に比し,消費者の権利を制限するものである。
③ 自然損耗についての必要費は賃料により回収され,更に敷引特約によりこれを回収することは,契約時に敷引特約の存在と敷引金額が明示されていたとして も,賃借人に二重の負担を課すことになる。また,敷引特約は関西地区における不動産賃貸借において付加されることが相当数あり,賃借人が交渉でこれを排除 することは困難であって,消費者が敷引特約のなされない物件を選択すればよいとは当然にはいえない状況にあることなどを総合すると,本件敷引特約は,信義 則に反して消費者の利益を一方的に害するものである。

◆ H19.04.20大阪地裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(レ)第274号保証金返還請求控訴事件
未登載
裁判官 角隆博,伊藤佑子,伊藤正晴
第1審 大阪簡裁平成18年(ハ)第70359号
上告審 H19.09.13大阪高裁判決

【事案の概要】
敷金90万円のうち45万円を差し引くという平成9年締結の敷引特約付賃貸借契約が,自動更新条項により1年ごとに8回自動更新された後に賃貸借契約が終了し,敷引された45万円を請求し,原審は10条違反として請求を認めたが,控訴審でこれを否定した事例

【判断の内容】
① 本件自動更新条項による更新の際には賃貸借の条件について協議がなされて合意が成立する事情はない。
② 消費者契約法施行後に賃貸借契約を締結する場合には賃貸人は同法の適用があることを前提として契約条件を定めることができるが,本件に同法を適用すると,更新拒絶に正当事由が要求されている関係から,賃貸人に不測の損害を与えかねない。
③ 本件敷引特約は,民法90条違反とは認められない。

◆ H19.04.27大阪高裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(ネ)第2971号預託金返還等請求控訴事件
判例時報1987号18頁,国セン報道発表資料(2008年10月16日公表)
裁判官 中路義彦,礒尾正,久末裕子

【事案の概要】
外国為替証拠金取引にかかる業者に対する預託金返還請求権の約7割を放棄する旨の和解契約につき,10条による無効又は不実告知(4条1項1号),断定的判断の提供(同2号)等を理由とする取消を主張して預託金残額の返還を求めるなどした。

【判断の内容】
今,預託金の一部を返還を受けることによって残金を放棄する旨の和解契約を締結しなければ,業者が外国為替証拠金取引の営業停止処分を受け,その結果倒産 し,預託金はほとんど戻ってこない旨の説明は,将来における変動が不確実な事項についての断定的判断の提供に該当するとして,4条1項2号による和解契約 の取消を認めた。

◆ H19.05.23東京高裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(ネ)第5683号不当利得返還請求控訴事件
未登載
裁判官 石川善則,倉吉敬,徳増誠一
第1審 H16.03.30 東京地裁判決
控訴審 H17.03.10 東京高裁判決
上告審 H18.11.27最高裁判決(1)

【事案の概要】
推薦入学の解除の場合,特段の事情がない限り,初年度授業料等に相当する平均的な損害が生ずるとした上告審(H18.11.27最高裁判決)を受けて,特段の事情の有無を審理した学納金事件差戻審判決

【判断の内容】
学生が在学契約を解除した時期を平成14年3月13日と認定した上で,当該解除の時点においては,推薦入試はもとより一般入試に至るすべての入学試験およ び合格発表も完了していたことから,大学が代わりの入学者を通常容易に確保することができる時期を経過していないなどの特段の事情が存在すると認めること はできず,学納金不返還特約のうち授業料等相当額部分についても大学に生ずべき平均的損害を超えるものとは認められず有効とした。

◆ H19.06.01京都地裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(レ)第94号保証金返還請求控訴事件
未登載
裁判官 田中義則,阪口彰洋,溝口優

【事案の概要】
賃借人(被控訴人)が清掃代,原状回復費用,解約手数料(解約した場合家賃2ヶ月分の解約手数料を支払う約定がある)の控除により返還されなかった保証金20万円を請求し,賃貸人(控訴人)は過去の更新料を反訴請求した訴訟の控訴審判決。

【判断の内容】
控訴棄却。
① 原状回復特約のうち通常損耗分を賃借人に負担させる部分は10条で無効である。本件では通常損耗を超える汚損を生じさせたと認めるに足りる証拠はない。
② 解約手数料の定めは9条1号により無効。
③ 平成14年6月1日更新の際の更新料の請求については,更新料特約の締結が消費者契約法施行前であり,消費者契約法の適用がない。本件更新料の特約は 公序良俗には反しないが,すでに契約終了時にも請求していなかったこと等からは,現段階で請求するのは信義則に反し許されない。

◆ H19.06.15大阪簡裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ハ)第70073号賃貸借契約更新料請求事件
未登載
裁判官 山本晃與

【事案の概要】
賃貸人が,賃借人に対して過去の4回分の更新料を請求した事案

【判断の内容】
建物賃貸借契約が法定更新された場合に,更新料を定める約定は法定更新には適用されないとして,過去4年分の更新料の請求を棄却した。

◆ H19.06.19大阪高裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ツ)第20号敷金返還請求上告,同附帯上告事件
未登載
裁判官 井垣敏生,森宏司,山本善彦
控訴審 大阪地裁平成18年(レ)第176号,251号

【事案の概要】
転勤に伴って自宅を貸した賃貸人に対し賃借人が敷金返還請求をした事例。敷金90万円を預託する際の合意内容が敷引特約か否かが争われた。

【判断の内容】
本件敷金合意の内容は全額敷引を内容とするものとしたうえで,貸主は自宅を転勤にともなって賃貸したもので消費者契約法にいう「事業者」にはあたらないとして,消費者同士の契約であり,消費者契約法の適用はないとして,請求を棄却した原審判断を是認した。

◆ H19.07.13日向町簡裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ハ)第65号保証金返還請求事件
未登載
裁判官 喜久本朝正

【事案の概要】
建物賃貸借の保証金に関して,解約時に全額を控除して返還しないとする解約引き条項の効力が争われた事例

【判断の内容】
保証金は,本来全額を賃借人に返還すべきものであり,賃貸借契約から生じた賃借人の債務の不履行がある場合にその額を差し引くことができるに過ぎないもの であるところ,本件解約引き条項は,退去時に全額を返還しないとするものであるから,これが10条により無効であることは明らかとした。

◆ H19.07.26東京簡裁判決

2010年6月8日 公開

平成17年(ハ)第21542号債務不存在確認等請求事件
最高裁HP国セン報道発表資料(2008年10月16日公表)
裁判官 持地明

【事案の概要】
訪問販売で,長時間家に居座り調湿剤マットを立替払契約を利用して売却した事案で,不退去を理由に立替払契約の取消が争われた。

【判断の内容】
以下の理由により,不退去を理由として立替払契約の取消を認めた。
①長時間にわたり購入を断り続けたことについて,退去の意思を黙示的に求めたと評価できるとして,不退去にあたる。
②5条1項にいう「媒介」とは,ある人と他の人との間に法律関係が成立するように,第三者が両者の間に立って尽力することと解
されるところ,本件立替払契約について,本件販売店は媒介をしたといえる。

◆ H19.09.13大阪高裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ツ)第42号保証金返還請求上告事件
未登載
裁判官 井垣敏生,森宏司,山本善彦
第1審 大阪簡裁平成18年(ハ)第70359号
控訴審 H19.04.20大阪地裁判決

【事案の概要】
敷金90万円のうち45万円を差し引くという平成9年締結の敷引特約付賃貸借契約が,自動更新条項により1年ごとに8回自動更新された後に賃貸借契約が終了し,敷引された45万円を10条により請求したが否定した事例

【判断の内容】
本件賃貸借契約は,双方異議がなければ自動的に更新されるという内容であり,更新に際しても賃貸借条件について協議がなされて合意が成立したり,新たに書 面が作成されたといった事情はないまま自動的に更新されてきたというのであるから,更新後の賃貸借契約は消費者契約法施行後に締結された契約と認めること はできない。

◆ H19.11.09奈良地裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(ワ)第824号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 坂倉充信

【事案の概要】
敷金40万円から控除された,敷引部分20万円と原状回復費用のうち19万8425円の返還を求めた(賃貸人からの反訴あり)。

【判断の内容】
一部認容。
① 賃借人は原則として故意・過失による建物の毀損や通常でない使用方法による劣化などについてのみ原状回復義務を負う。
② 敷引特約は,10条により無効として賃借人に責任ある修繕費用(13万7271円)のみ敷金からの控除を認めた。

◆ H20.01.17東京簡裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ハ)第5644号損害賠償請求事件
兵庫県弁護士会HP国セン報道発表資料(2008年10月16日公表)国セン暮らしの判例集HP2010年7月,ウエストロー・ジャパン
裁判官 長澤正人

【事案の概要】
自動車販売業者から中古車を110万円で購入した際,本件車両の走行距離計が改ざんないし交換されていたのに,故意に改ざんないし交換の事実を告げず走行 距離及び走行距離計につき説明を行わなかったとして4条1項1号(不実告知)に基づく取消,代金の返還請求が認められた事例

【判断の内容】
被告会社は,本件車両の実際の走行距離が約12万キロメートルであったにもかかわらず,HP上でも店舗内でも走行距離を8万キロメートルないし8万 1500キロメートルと表示し,本件売買契約の締結に際してもこれを明確に訂正したとは認められないから,本件売買契約の締結にあたり不実の告知があった というべきであり,4条1項1号による取消が可能であるとして,110万円の返還を認めた。

◆ H20.01.25札幌高裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ネ)第192号損害賠償・立替金請求控訴事件
判例時報2017号85頁,金融商事判例1285号44頁,兵庫県弁護士会HP国セン報道発表資料(2008年10月16日公表)
裁判官 末永進,千葉和則,住友隆行
第一審 H19.05.22札幌地裁判決平成18年(ワ)第1096号、同第1396号
上告審 H22.03.30最高裁判決(2)

【事案の概要】
金の先物取引の勧誘を受けて契約し損害を被った者からの委託証拠金の返還請求と,業者からの差損金請求の反訴。断定的判断の提供,不利益事実の不告知による取消が争われた。

【判断の内容】
次の理由から,委託証拠金の返還請求を認め,業者からの差損金請求を棄却した。
① 外務員らは、金相場の値動きからみて今後さらに金の値が上がると予想される旨の自己の相場観を述べて取引を勧誘したことが認められるが、将来の変動が 不確実な事項である金の相場について、顧客が金の相場に関する判断をする上での情報提供の限度を超えて、相場が上昇することが確実であると決めつけるような断定的な表現を使って顧客に取引を勧誘したことを認めるに足りる証拠はないとして,断定的判断の提供は否定。
② 本件取引において,将来における金の価格の上下は取引の「目的となるものの質」(4条4項1号)であり,かつ顧客が契約を「締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの」(同項柱書)であるから,4条2項の重要事項というべきであり,外務員が顧客に対し金相場に関する自己判断を告げて買注文を勧めることは「重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨告げ」ることに該当する。その場合,将来の金相場の暴落の可能性を示す事実は,「当該消費者の不利益となる事実」に該当し,これに言及せず上記告知を行うことは,「当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきもの」に該当するとして,4条2項による取消を認めた。

◆ H20.01.30京都地裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ワ)第1793号更新料返還等請求事件
最高裁HP,判例時報2015号94頁,判例タイムズ1279号66頁,金融商事判例1327号45頁,消費者法ニュース76号268頁
裁判官 池田光宏,井田宏,中嶋謙英

【事案の概要】
賃貸借契約における更新料を支払う旨の約定が,民法90 条及び消費者契約法10条により無効であるとはいえないと判断された事例

【判断の内容】
① 本件更新料は,主として賃料の補充(賃料の前払い)としての性質を有しており,併せて,その程度は希薄ではあるものの,更新拒絶権放棄の対価及び賃借権強化の対価としての性質を有している。
② (民法90条について)本件更新料が主として賃料の補充(賃料の前払い)としての性質を有しているところ,その金額は10万円であり,契約期間(1年間)や月払いの賃料の金額(4万5000円)に照らし,直ちに相当性を欠くとまでいうことはできない。
③ (10条について)任意規定による場合に比し消費者の義務を加重する条項にはあたるが,金額,期間に照らして過大ではなく,更新料約定の内容は明確で 説明を受けていることから不測の損害を与えるものでもなく,また,更新拒絶権放棄の対価及び賃借権強化の対価としての性質をも有していることからは,消費 者の利益を一方的に害するとはいえない。

◆ H20.02.19福岡地裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ワ)第3937号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 伊藤聡

【事案の概要】
建物賃貸借契約で,敷金家賃3ヶ月分,敷引家賃3ヶ月分とした敷引特約を無効とし,敷金の返還請求を認めた事例

【判断の内容】
① 本件敷引特約は,任意規定に比して消費者の権利を制限しまたは消費者の義務を加重するものである。
② 本件敷引特約には,合理性が認められず,信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものである。

◆ H20.03.28福岡高裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ネ)第202号手付金返還,損害賠償請求控訴事件
判例時報2024号32頁
裁判官 丸山昌一,川野雅樹,金光健二

【事案の概要】
マンション売買契約締結後,買主が代金を支払わないために契約解除となったことから,宅建業者である売主が売買代金の2割とする違約金条項に基づき違約金を請求した事案。違約金条項が9条1号,10条に違反するか否かが問題となった。

【判断の内容】
次のように判断し,消費者契約法の適用がないとしつつ,信義則により違約金の額を制限した。
① 宅建業法38条により,違約金の額は代金の10分の2を超えてはならず,これに反する特約は無効としているから,本件違約金特約は宅建業法38条には違反しない。
② 宅建業法38条があるので,消費者契約法11条2項により,9条1号,10条は適用されない。

◆ H20.04.25東京地裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ワ)第23907号不当利得返還等請求事件
未登載
裁判官 綿引穣

【事案の概要】
セクハラ発言を受け,プロダクションとの所属タレント契約を解除したタレントが,契約金(25万円)の返還を求めるなどしたのに対し,契約金は受領後如何なる場合であっても一切返還しない旨の条項の効力が争われた。

【判断の内容】
契約金は受領後如何なる場合であっても一切返還しない旨の条項につき,解除に伴い当該事業者に発生する平均的損害を超える部分は9条1号により無効と解す べきところ,事実関係に照らし,プロモートのために撮った写真代(1万2600円)のほかに合理的な出費の存在を認めることはできないとし,これを差し引 いた残金につき返還請求を認めた。

◆ H20.04.25倉敷簡裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ハ)第828号既払金返還請求事件,平成20年(ハ)第226号立替金反訴請求事件 
兵庫県弁護士会HP国セン報道発表資料(2008年10月16日公表),消費者法ニュース76号213頁
裁判官 堀田隆

【事案の概要】
健康食品販売業者が,高齢で身体に障害のある者宅を訪問し勧誘する際に,健康上の悩みにつけこんで,「これを飲めば,病気も治って健康になれますよ」などと説明をし,また,支払が困難であるとして自宅からの退去を要求する態度を示したにもかかわらず,契約を締結させ,信販会社との間で割賦購入あっせん契約を締結したとして,クーリングオフ,4条1項1号(不実告知),同条3項1号(不退去)に基づき取消を主張し,支払金額の返還等を求めた事例

【判断の内容】
不実告知や不退去による困惑に基づく取消の主張については,具体的な証拠に基づく証明が不十分として否定された。
その一方で,公序良俗違反の契約であることを認定し既払金の返還を認めた。

◆ H20.04.30京都地裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ワ)第2242号定額補償分担金・更新料返還請求事件
判例時報2052号86頁,判例タイムズ1281号316頁,金融商事判例1299号56頁,最高裁HP国セン報道発表資料(2008年10月16日公表)
裁判官 中村哲,和久田斉,波多野紀夫
控訴審 H20.11.28大阪高裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約の定額補修分担金条項について10条で無効とした事例

【判断の内容】
16万円の定額補修分担金条項につき,下記のとおり判示した。
建物賃貸借の場合はその使用に伴う物件の損耗は賃貸借契約の中で当然に予定されているから物件の通常損耗の回収は通常賃料の支払を受けることで行われる。 そうすると,原則として,賃借人に通常損耗についての回復義務を負わせることはできない。賃貸人は通常修繕費用にどの程度要するかの情報をもっているが賃 借人はこれらの情報をもっていないので,賃借人がこれらの点について賃貸人と交渉することは難しく定額補修分担金額は賃貸人が一方的に決定している。軽過 失損耗の回復費用が設定額より多額であったという特段の事情がない限り賃借人に有利とはいえない。分担金額は月額賃料の2.5倍程度で一般的な回復費用に 比べて高額である。これらの事情からは消費者の不利益を負わせるもので,10条により無効である。

◆ H20.06.10大阪地裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ワ)第5823号損害賠償請求事件
判例タイムズ1290号176頁
裁判官 西岡繁靖

【事案の概要】
自動車販売会社からインターネットオークションで中古車を購入した者が,メーターの巻き戻しによって実際の走行距離が表示の8倍以上であったとして瑕疵担保責任,不法行為責任を追及した事例。現状のまま引き渡し,保証なしとの約定の有効性が争われた。

【判断の内容】
販売業者が,本件契約が業者向け販売であるから,消費者契約でないと主張したのに対し,情報・交渉力の格差が事業に由来することから,消費者と事業者の概 念を区別して消費者契約の定義で用いているのであるから,本件契約が業者向けの価格,内容で締結されたことをもって,消費者契約であることを否定すること はできないとして,消費者契約法の適用を認め,8条1項5号により免責条項を無効として,瑕疵担保責任を認めた。

◆ H20.07.16東京地裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ワ)第22625号損害賠償請求事件
金融法務事情1871号51頁,消費者法ニュース78号203頁,国民生活センター消費者問題の判例集
裁判官 澤野芳夫,荻原弘子,長井清明

【事案の概要】
FX業者側のシステムの不具合により直ちに決済できなかったとしても一切賠償責任を負わないとの約款について,8条の趣旨からは,限定的に解釈すべきとした事例

【判断の内容】
① 原告のロスカット・ルールへの期待は合理的で法的保護に値し,被告は有効証拠金額が維持証拠金額を割り込んだ時にロスカット手続に着手する義務を負っていた。
② 被告は不十分なコンピューターシステムしか用意しておらず,そのシステムの不具合により,本件ロスカット時においてカバー取引の注文を出せなかったのであって(①の義務違反),これにより原告が受けた損害につき不法行為又は債務不履行の責任を負う。
③ コンピューターシステムの不具合によるカバー取引の遅延に関する被告の免責約款は,8条1項1号,同条項3号の趣旨に照らし,真に予測不可能な障害や 被告の影響力の及ぶ範囲の外で発生した損害といった被告に帰責性の認められない事態によって顧客に生じた損害について,被告が損害賠償の責任を負わない旨 を規定したものと解するほかなく,本件はこれに該当しない(被告は免責されない)。

◆ H20.07.17亀岡簡裁判決

2010年6月8日 公開

平成20年(少コ)第3号保証金返還請求事件
未登載
裁判官 藤野美子

【事案の概要】
保証金35万円から30万円を差し引いて返還する旨の解約引特約が10条により無効とされた事例

【判断の内容】
契約成立の謝礼や新規賃借員募集の費用,空き室損料等は,賃借人が当然に支払わなければならない性質の金員ではないにもかかわらず,その趣旨を明示せずに 解約引という形で支払強要するのは不当であり,また,賃料先払であるとしても,解約引特約により賃料が低額に抑えられたと認めるに足りる証拠はなく,賃貸 借期間が判然としない契約時に固定金額を賃料先払として受領する合理性もなく,本件解約引特約は合理的な趣旨・目的に基づくものとは認められない。解約引 率も約85.7%と高く,本件解約引特約は10条により無効というべきである。

◆ H18.11.27最高裁判決(4)

2010年6月6日 公開

平成16年(受)2117号学納金返還請求事件
最高裁HP,最高裁判所民事判例集60巻9号3732頁,判例時報1958号12頁,判例タイムズ1232号97頁
裁判官 古田佑紀,滝井繁男,津野修,今井功,中川了滋
控訴審 H16.09.10大阪高裁判決(1)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。消費者契約法施行前の事例。

【判断の内容】
① 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約の公序良俗違反該当性。
② 私立医科大学の平成13年度の入学試験に合格し,同大学との間で納付済みの授業料等を返還しない旨の特約の付された在学契約を締結した者が,同契約を解除した場合において,同特約は公序良俗に反しないなどとして,授業料等の返還請求が棄却された。
③ 【滝井反対意見】不返還条項は公序良俗には反しないが,追加合格により現に定員割れを起こしていない場合には,信義則上返還を拒むことは許されない。

◆ H18.11.27最高裁判決(5)

2010年6月6日 公開

平成17年(受)第1437号学納金返還請求事件
最高裁HP,最高裁判所民事判例集60巻9号3597頁,判例時報1958号12頁,判例タイムズ1232号97頁
裁判官 中川了滋,滝井繁男,津野修,今井功
控訴審 H17.04.22大阪高裁判決

【事案の概要】
学納金返還請求。入学手続要項等に「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものとみなす」等の記載があった場合で,入学式の無断欠席した場合,在学契約の解除の意思表示をしたことになるか,なるとしても,その場合の平均的損害が問題となった。

【判断の内容】
1 入学手続要項等に「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものとみなす」,「入学式を無断欠席した場合には入学を取り消す」等の記載がある大学 の入学試験の合格者が当該大学との間で在学契約を締結した場合において,当該合格者が入学式を無断で欠席することは,特段の事情のない限り,黙示の在学契 約の解除の意思表示に当たる。
2 入学手続要項等に「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものとみなす」,「入学式を無断欠席した場合には入学を取り消す」等の記載がある大学 の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約は,入学式の日までに明示又は黙示に同契約が解除された場 合には,原則として,当該大学に生ずべき消費者契約法9条1号所定の平均的な損害は存しないものとして,同号によりすべて無効となる。

◆ H18.11.27最高裁判決(6)

2010年6月6日 公開

平成17年(受)第1283号学納金返還請求事件
未登載
裁判官 古田佑紀,滝井繁男,津野修,今井功,中川了滋
第1審 H16.04.30東京地裁判決
控訴審 H17.03.30東京高裁判決

【事案の概要】
大学の入学試験に合格し,学納金を納付した後に入学を辞退し,民法又は9条1号,10条により学納金の返還を求めた。

【判断の内容】
① 学生はいつでも任意に在学契約等を将来に向かって解除することができ,口頭による意思表示も可能。
② 入学手続要項等に4月2日の就学手続日に就学手続を行わなければ入学許可が取り消される旨記載がある大学について,手続を行わなかった者について,4月2日の解除を認め,大学に平均的損害は存しないとして,授業料の返還請求を認めた。

◆ H18.11.27最高裁判決(3)

2010年6月4日 公開

平成18年(受)第1130号不当利得返還請求事件
最高裁HP,判例時報1958号62頁,判例タイムズ1232号89頁
裁判官 古田佑紀,滝井繁男,津野修,今井功,中川了滋
控訴審 H18.03.23東京高裁判決平成17(ネ)第5282号

【事案の概要】
学納金の返還請求。大学の職員から入学式に出席しなければ入学辞退として取り扱う旨告げられたため3月31日までに在学契約を解除することなく入学式に欠席することにより同契約を解除した場合であった。

【判断の内容】
大学の入学試験に合格し,納付済みの授業料等の返還を制限する旨の特約のある在学契約を締結した者が,同大学の職員から入学式に出席しなければ入学辞退として取り扱う旨告げられ,入学式に欠席した場合において,同大学が同特約が有効である旨主張することは許されない。

◆ H18.11.27最高裁判決(1)

2010年5月31日 公開

平成17年(受)第1158号不当利得返還請求事件
最高裁HP,最高裁判所民事判例集60巻9号3437頁,判例時報1958号12頁,判例タイムズ1232号97頁
裁判官 古田佑紀,滝井繁男,津野修,今井功,中川了滋
第一審 H16.03.30東京地裁判決
控訴審 H17.03.10東京高裁判決
差戻審 H19.05.23東京高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
① 在学契約は有償双務契約としての性質を有する私法上の無名契約。
② 在学契約は,特段の事情がない限り,学生が要項等に定める入学手続の期間内に学生納付金の納付を含む入学手続を完了することによって成立する。双務契約としての在学契約における対価関係は4月1日以降に発生する。
③ 入学金は,その額が不相当に高額であるなど他の性質を有するものと認められる特段の事情がない限り,学生が当該大学に入学しうる地位を取得するための対価としての性質を有する。
④ 学生はいつでも任意に在学契約等を将来に向かって解除することができ,口頭による意思表示も可能。
⑤ 入学金については,その納付をもって学生は上記地位を取得するから,その後に在学契約が解除されても返還義務を負わない。
⑥ 授業料の不返還特約部分は,在学契約の解除に伴う損害賠償額の予定又は違約金の定めの性質を有する。
⑦ 9条1号については,事実上の推定が働く余地があるとしても,基本的には平均的損害を超えて無効であると主張する学生が主張立証責任を負う。
⑧ 4月1日には,学生が特定の大学に入学することが客観的にも高い蓋然性をもって予測されるから,それ以前の解除については大学側は織り込み済みと解され,原則として平均席損害は存しない。
⑨ 4月1日以降の解除の場合は,授業料等はそれが初年度に納付すべき範囲内のものにとどまる限り大学に生ずべき平均的な損害を超えず不返還特約は有効。
⑩ 推薦入学の場合,解除は大学にとって織り込み済みではないので,特段の事情のない限り平均的損害が生じ不返還特約は有効。

◆ H18.11.27最高裁判決(2)

2010年5月31日 公開

平成17年(オ)第886号不当利得返還請求事件
最高裁HP,判例時報1958号61頁,判例タイムズ1232号82頁
裁判官 古田佑紀,滝井繁男,津野修,今井功,中川了滋
第一審 H15.10.23東京地裁判決(1)
控訴審 H17.02.24東京高裁判決(2)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
9条1号は,憲法29条に違反しない。

◆ H18.02.28大阪地裁判決

2010年5月30日 公開

平成17年(レ)第●号敷金返還請求控訴事件,平成17年(レ)第●号原状回復費用反訴請求事件
未登載
裁判官 岡原剛,遠藤東路,湯浅徳恵
上告審 H18.07.26大阪高裁判決

【事案の概要】
建物及び駐車場の賃貸借契約の借主が,保証金の返還を求めた。貸主は,建物について敷引特約,駐車場について償却特約の合理性を主張し,同特約が10条に違反するか否かが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,建物について借主の故意過失による損傷部分についての費用を差引いた残額の保証金,駐車場について償却特約に基づく残額の保証金の返還を認めた。
①敷引特約は,自然損耗料,空室損料等の趣旨を兼ね備えており,関西地方では長年の慣行となっており,一定の合理性があり,暴利行為と認められる場合を除き有効である。
②償却特約も,自然損耗料,空区画損料等の趣旨を兼ね備えており,暴利行為と認められる場合を除き有効である。
③本件敷引特約は,保証金60万円に対して50万円(約83%),賃料の6ヶ月分以上であり,10条に違反し無効である。
④本件償却特約は,保証金3万3000円について年20%ずつ償却,賃料の約半月分にとどまり,チェーンゲートの保守管理に費用を要する等,暴利行為とまでは認めがたく,有効である。

◆ H18.03.10右京簡裁判決

2010年5月30日 公開

平成17年(ハ)第212号損害賠償請求請求事件
兵庫県弁護士会HP

裁判官 喜久本朝正

【事案の概要】
中古車買取業者が中古車を117万円で買い受けたところ,約2週間後までに接合車であることが判明したとして,代金の返還請求をした。「本契約締結後,売 主の認識の有無に係わらず,契約車両に重大な瑕疵(盗難車,接合車,車台番号改ざん車など)の存在が判明した場合には,買主は本契約を解除することができ る」との条項が10条に反するか否かが争われた。

【判断の内容】
①民法570条にいう「隠れた瑕疵」とは,買主が瑕疵のあることを知らず,かつ,知らないことについて過失のない瑕疵をいい,買主に過失がある場合には解除することはできないし,瑕疵の存在を発見したときから1年以内にしか解除権を行使できない。
②本条項は買主が瑕疵の存在を知らなかったことについて過失がある場合も解除でき,解除権の行使期間の定めがないから解除権行使による原状回復請求権の消滅時効(10年と解される)完成までは解除することができることになる。
③したがって,消費者(売主)の瑕疵担保責任を加重する条項であり,民法1条2項の信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害するから,10条により同条項は無効である。

◆ H18.03.22小林簡裁判決

2010年5月30日 公開

平成17年(ハ)第247号不当利得返還請求事件
消費者法ニュース69号188頁

【事案の概要】
高齢者が不必要な住宅リフォーム工事を契約させられ,クレジット契約を締結させられた等として,既払い金の返還請求をした。立替払契約について4条による取消が認められるかが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,返還請求を認めた。
① 本件立替払契約の目的は,立替金・手数料を72回に分割して支払うことであるが,その用途は本件工事代金の立替払である。
② 本件工事が耐震としては有効な工事ではないことは消費者にとっては不利益な事実である。
③ そう考えなければ,加盟店を通じて加盟店の販売契約と一体をなすものとして立替払契約の勧誘をして利益を上げる業態において消費者を保護する趣旨を貫くことができない。
④ したがって,4条2項により取り消すことができる。

◆ H18.03.27福岡簡裁判決

2010年5月30日 公開

平成17年(ハ)第60340号敷金等返還請求事件
未登載

【事案の概要】
マンションの居室賃貸借契約で,中途解約をした借主が,敷金及び違約金の返還を求めた。敷引特約(家賃3ヶ月分,15万6000円)及び中途解約違約金特約(家賃1ヶ月分)の効力が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,敷引特約が10条違反により無効であるとして返還請求を認め,違約金特約は有効であるとして違約金については返還請求を認めなかった。
① 敷引特約は,その合意内容が当事者間において明確で,合理性があり,賃借人に一方的に不利益なものでなければ,直ちに無効とはいえない。
② しかし,敷引には合理性がない。
③ 賃貸借期間1年以内の借主による一方的解約は,貸主に不測の損害を与えること,1ヶ月前の予告があったとしても,新たな借り主を見つけるには2ヶ月程度を要することから,本件特約は9条1号,10条には反しない。

◆ H18.04.14松山地裁西条支部決定

2010年5月30日 公開

平成18年(モ)第25号移送申立事件(基本事件平成18年(ワ)第61号不当利得返還請求事件)
兵庫県弁護士会HP
裁判官 中嶋功

【事案の概要】
貸金業者に対し,不当利得返還請求訴訟を提起したところ,「訴訟行為について松山簡易裁判所を以て専属的合意管轄とします。」との条項を根拠に松山簡裁への移送申立をされた。

【判断の内容】
以下の理由から,専属的合意管轄は生じておらず,仮に合意をしたとしても10条違反であり無効となるとした。
①貸金請求とは訴訟物が異なる。
②借りる際に,業者側の違法行為による不当利得返還請求の訴訟について管轄の合意をすることは考えにくく合理的意思解釈に反する。
③約款が業者側の利益を考慮して定型文書で作成され,そのまま署名しなければ借入自体ができなかった。
④業者が全国展開する企業で,法律及び訴訟の理解度や経済力の点で借主とは比較にならないほど優位に立っている。

◆ H18.04.28木津簡裁判決

2010年5月30日 公開

平成17年(ハ)第170号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 根本正彦
控訴審 H18.11.08京都地裁判決

【事案の概要】
敷金返還請求。敷引特約(35万円から30万円を差し引く)の効力が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,敷引特約が10条違反により無効であるとして返還請求を認めた。
① 敷引特約は,その合意内容が当事者間において明確で,合理性があり,賃借人に一方的に不利益なものでなければ,直ちに無効とはいえない。阪神地区においては慣行として存在するのも事実。
② しかし,まだまだ賃貸人,賃借人間においては対等の立場で契約することは困難である。
③ 敷引には合理性がない。

◆ H18.05.19枚方簡裁判決

2010年5月30日 公開

平成17年(少コ)第89号保証金返還請求事件
未登載
裁判官 矢野隆

【事案の概要】
建物賃貸借における,保証金の返還請求。保証金45万円の内30万円を控除するとの条項の効力が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,当該条項について,賃貸物件の価値を高めるものではなく,また,賃貸期間の長短に関係なく賃借人が交替する毎に生ずる費用(例えば不動産 業者の仲介手数料)については有効であるが,それ以外については10条違反により無効であるとしてその部分について返還請求を認めた。
① 民法に,賃借人に賃料以外の金銭的負担を負わせる旨の明文がないから,賃借人の義務を加重する条項である。
② 賃貸人側,賃借人側の事情を検討すると,賃貸期間の長短に関係なく賃借人が交替する毎に生ずる費用については,賃借人に負担させることも合理性があり,消費者の利益を一方的に害するとはいえない。

◆ H18.05.24大阪高裁判決

2010年5月30日 公開

平成18年(ツ)第13号敷金返還請求上告事件
http://www.geocities.jp/blackwhitelaw/
第1審 H17.07.12京都簡裁判決
控訴審 H17.12.22京都地裁判決

【事案の概要】
敷金返還請求。敷引特約の有効性が争われた。

【判断の内容】
通常損耗部分の原状回復費用を借主が負担することの合意は成立していないとの原審判断を維持した。
また,仮に合意が成立していたとしても,このような合意は許されないとも付言している。

◆ H18.06.06大阪地裁判決

2010年5月30日 公開

平成18年(レ)第5号敷金返還請求控訴事件
未登載
裁判官 堀正博,武部知子,湯浅徳恵
原審 大阪簡裁平成17年(ハ)第70334号

【事案の概要】
建物賃貸借契約における保証金返還請求。保証金35万円の内25万円を控除するとの条項の効力が争われた。

【判断の内容】
敷引特約は特段の合理性,必要性がない限り10条違反により無効であり,本件でも合理性を認められないとした。
 なお,原審では保証金の3割相当額の敷引を有効としていたものを全部無効としたが,借主側の控訴・附帯控訴がなかったため,控訴棄却となっている。

◆ H18.06.12東京地裁判決

2010年5月30日 公開

平成17年(ワ)第22799号契約金返還請求事件
未登載
裁判官 田中俊行

【事案の概要】
建物建築請負契約を建築開始前に解約し,支払済みの契約金300万円から10万円を差し引いた金額の返還請求をした。「請負代金総額の3分の1または請負人に生じた損害額のどちらか高い方を賠償する」との条項の効力が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,当該条項について9条1項に違反し,10万円を超える限度で無効とし,返還請求を認めた。
① 9条1号の「平均的な損害」とは,当該損害賠償額の予定条項において設定された解除の事由,時期等により同一の区分に分類される多数の同種契約事案の解除に伴い,当該事業者に生じる損害の額の平均値を意味する。
② 「平均的な損害」の立証責任は事業者側にある。
③ 本件条項は,解除の事由,時期を問わず一律に契約金の3分の1以上が平均的損害となるというものであるが,その合理性について立証はなく,本件解除の時期ではむしろ10万円を超えないことが明らか。
④ 民訴法248条による損害額の認定は,損害が生じたことが立証されたがその額を立証するのが困難な場合の規定であり,本件では損害の立証がそもそも10万円を超えない範囲でしかされていないので,適用の前提を欠く。

◆ H18.06.27高知地裁判決

2010年5月30日 公開

国セン報道発表資料HP2006年10月6日

【事案の概要】
学納金不返還特約は,9条1号,10条,民法90条に反し無効であるとして,学納金の返還を求めた。

【判断の内容】
社会人特別選抜入学試験を受験しながら年度末になって入学を辞退したからといって,学納金の返還を請求することが信義則に違反するとまではいえない。
入学金は,入学手続事務の諸経費に要する手数料的なものという性質を一部有しているほか,入試合格者ないし入学者が当該大学に入学し得る地位を取得するこ とについての対価(一種の権利金)の面を有するものである。原告は入学手続を完了しており,その後に原告が自己の都合で入学を辞退したとしても被告が入学 金を返還すべき義務は負わない。
本件不返還特約は9条1号に該当するとして,授業料等については返還を認めた。

◆ H18.06.27東京地裁判決

2010年5月30日 公開

平成16年(ワ)第7327号不当利得返還請求事件
国セン報道発表資料HP2006年10月6日,判例時報1955号49頁,判例タイムズ1251号257頁
裁判官 永野厚郎,西村康一郎,佐野文規

【事案の概要】
学納金の不返還合意は民法651条2項但書の趣旨に反すること,9条1号の平均的損害を超えること,あるいは10条ないし民法90条に該当することから無効であるとして,不当利得に基づき学納金の返還を求めた。

【判断の内容】
入学金を納入することによって,大学との間の在外契約を締結し得る地位を得たものであり,既履行部分の対価たる入学金を保持することが不当利得となる余地はない。
授業料等については,不返還合意が9条1号に違反するとして返還を認めた。

◆ H18.06.28大津地裁判決

2010年5月30日 公開

平成17年(ワ)第701号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 阿多麻子

【事案の概要】
建物賃貸借契約における敷金返還請求。敷引特約が10条に違反するか否かが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,敷引特約について10条に違反するとして,全額の返還請求を認めた。
① 1条の趣旨からは,10条は,民法の一般条項によっては無効とはならない条項でも,事業者と消費者との間の情報力・交渉力の格差によって消費者の利益が不当に侵害されているものと評価される場合にはこれを無効とするとして消費者の利益を擁護する趣旨。
② したがって,民商法の規定に比べて過大な負担を負わせる条項がある場合には,事業者の側において(1)消費者が法的に負担すべき義務の対価であるこ と,(2)契約締結時までにその旨の情報が提供され,格差が是正され,消費者が契約締結後になって初めて契約締結時に予定していたよりも不利益な状態に 陥ったとはいえないことを立証すれば,10条違反にはならない。
③ 賃料の一部前払い,更新料免除の対価,礼金という性質については,合理性がなく,説明もない。

◆ H18.07.26大阪高裁判決

2010年5月30日 公開

平成18年(ツ)第28号敷金返還請求・原状回復費用反訴請求上告事件
未登載
裁判官 井垣敏生,森野俊彦,大島雅弘
第1審 H18.02.28大阪地裁判決

【事案の概要】
建物及び駐車場の賃貸借契約の借主が,保証金の返還を求めた。貸主は,建物について敷引特約,駐車場について償却特約の合理性を主張し,同特約が10条に違反するか否かが争われた。

【判断の内容】
原審と同じ。
以下の理由から,建物について借主の故意過失による損傷部分についての費用を差引いた残額の保証金,駐車場について償却特約に基づく残額の保証金の返還を認めた。
①敷引特約は,自然損耗料,空室損料等の趣旨を兼ね備えており,関西地方では長年の慣行となっており,一定の合理性があり,暴利行為と認められる場合を除き有効である。
②償却特約も,自然損耗料,空区画損料等の趣旨を兼ね備えており,暴利行為と認められる場合を除き有効である。
③本件敷引特約は,保証金 60万円に対して50万円(約83%),賃料の6ヶ月分以上であり,10条に違反し無効である。
④本件償却特約は,保証金3万3000円について年20%ずつ償却,賃料の約半月分にとどまり,チェーンゲートの保守管理に費用を要する等,暴利行為とまでは認めがたく,有効である。

◆ H18.08.30東京地裁判決

2010年5月30日 公開

平成17年(ワ)第3018号売買代金返還請求事件
ウエストロー・ジャパン
裁判官 山崎勉
控訴審で3000万円の支払いをうけることで和解成立

【事案の概要】
不動産業者から眺望のよいマンションを購入したが,直後に隣接地にマンション建設予定があり眺望が悪くなることを知らされなかったとして,4条2項による取消を主張し,売買代金2870万円及び遅延損害金の返還を求めた。

【判断の内容】
以下の理由から,取消を認め代金返還請求を認めた。
① 勧誘するに際し眺望がよいことを告げたことは,重要事項について原告の利益となる旨を告げたというべき。
② 隣接地に前記眺望が悪くなるマンションの建設予定があることを知りながらこれを告げなかったことは,不利益事実を故意に告げなかったものというべき。
 重要事項説明書に周辺環境が将来変わる場合があると記載されていたとしても一般的説明にとどまり,当該不利益事実を告知したことにはならない。

◆ H18.09.08大阪高裁判決

2010年5月30日 公開

平成18年(ネ)第466号不当利得返還請求控訴事件
未登載
裁判官 渡邉安一,矢延正平,川口泰司
第1審 H18.01.30京都地裁判決

【事案の概要】
外国語会話教室において,レッスンを受講するためのレッスンポイントを事前に一括して購入することとされ,その料金は購入ポイント数が多くなればなるほど 単価が安くなる制度が採用されている一方,途中解約する場合には,当初の単価ではなく,消化済みのレッスンポイントと同程度のコースの契約時単価(購入時よりも割高となる)を単価として精算することとされている約款が,特定商取引法49条2項1号イに違反して無効であるとして,精算金を請求した。教室側は,約款の合理性を主張した。

【判断の内容】
原審と同じ。
以下の理由から,精算金の返還請求を認めた。
① 本件規定は特定商取引法49条2項,同法49条7項の規制を受ける。
② 合理的な理由なく契約締結時ないし前払金の受領時に適用された単価と異なる単価を用いることは,これにより,役務受領者に対し,契約締結時ないし前払 金の受領時に適用された単価を用いて精算を行う場合に比較して高額の金銭的負担を与える場合には,実質的に,役務提供事業者に特定商取引法49条2項1号が許容する金額以上の請求を認めるものであり,特定商取引法が許容しない違約金ないしこれに類する金員を請求するものであるとして,同約款規定は無効であ る。

◆ H18.11.08京都地裁判決

2010年5月30日 公開

平成18年(レ)第37号敷金返還請求控訴事件
最高裁HP
裁判官 田中義則,阪口彰洋,大橋弘治
第1審 H18.04.28木津簡裁判決

【事案の概要】
敷金返還請求。敷引特約(35万円から30万円を差し引く)の効力が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,敷引特約が10条違反により無効であるとして返還請求を認めた。
① 敷引特約は,敷引の目的,敷引金の性質,敷引率が合理的なものであり,かつ,賃借人がこれを十分に理解・認識した上で敷引特約に合意をした場合は,賃借人の利益を一方的に害するということはできない。
② しかし,賃貸人の主張(賃料の一部前払い,契約更新時の更新料免除の対価,賃貸借契約成立の謝礼)は,合理性がない。敷引率も高い(85.7%)。

◆ H17.07.12京都簡裁判決

2010年5月29日 公開

平成16年(少コ)第184号敷金返還本訴(通常移行),同年(ハ)第10763号原状回復費用反訴請求事件
http://www.geocities.jp/blackwhitelaw/
控訴審 H17.12.22京都地裁判決
上告審 H18.05.24大阪高裁判決 

【事案の概要】
敷金返還請求に対し,賃貸人は,退去時に全内装分室内のカーペットの張替え,クロスの張替え,畳・襖の張替え及び退室清掃その他修復費用金額を居住年月日 に関係なく,敷金より差し引くものとし,内装修復個所は居住日数に関係なく借主の復元責任とする原状回復特約を主張した。

【判断の内容】
本件原状回復特約について,賃貸人が賃貸の当初における優越的地位を行使して賃借人に過大な義務を設定するものであるから,特約中通常損耗の原状回復費用を賃借人の負担とする部分は民法90条により無効と解すべきであるとし,自然損耗部分についての返還請求を認めた。

◆ H17.07.13大阪高裁判決

2010年5月29日 公開

平成16年(ネ)第2721号保険金請求控訴事件
自動車保険ジャーナル1622号3頁
裁判官 竹中省吾,竹中邦夫,矢田廣高
上告審 H17.11.17最高裁上告不受理決定

【事案の概要】
自動車の盗難の損害200万円について保険金請求した。譲渡後名義変更前に盗難にあった事案であり,保険会社は自動車保険約款一般条項5条(免責条項)を主張した。同条項が10条に反するか否かが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,10条違反ではないとした。
① 本件免責条項は,商法650条の適用を排除したものであるが,自動車保険の特殊性を考慮して定められたもので合理性があり,消費者の利益を一方的に害する内容のものとはいえない。
② 本件免責条項の「譲渡」の意義について,消費者が明確,平易に理解できるように,本件約款の文言の改訂について検討されることが望ましいとは考えられるが,不明確で信義則等に反するとまではいえない。

◆ H17.07.14神戸地裁判決

2010年5月29日 公開

平成16年(レ)第109号保証金返還請求控訴事件
兵庫県弁護士会HP,判例時報1901号87頁,消費者法ニュース65号161頁,国セン報道発表資料HP2006年10月6日
裁判官 村岡泰行,三井教匡,山下隼人
第1審 H16.11.30神戸簡裁判決

【事案の概要】
敷金30万円のうち25万円(83.3%)を差し引く敷引特約は10条により無効であるとして返還を求めた。

【判断の内容】
本件敷引特約は,民法にない義務を負担させるものであって,民法の適用による場合に比して消費者の義務を加重する条項であるとし,また,信義則に反し消費 者の利益を一方的に害するかどうかについては,敷引特約はさまざまな要素を有するものが渾然一体となったものとの立場(いわゆる渾然一体説)に立ちつつ, 賃貸借契約成立の謝礼(礼金),自然損耗の修繕費用,更新料免除の対価,空室損料,賃料を低額にすることの代償,といった要素について分析をし,いずれも その合理性を否定し,敷引特約は「賃貸事業者が消費者である賃借人に敷引特約を一方的に押しつけている状況にある」として,信義則に反し消費者の利益を一 方的に害するものであると判断し,10条に違反し無効であるとし,25万円の返還請求を認めた。

◆ H17.07.20東京高裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(ネ)第1333号解約精算金請求控訴事件
消費者法ニュース65号163頁,国センくらしの判例集HP2005年7月
裁判官 雛形要松,都築弘,中島肇
第1審 H17.02.16東京地裁判決

【事案の概要】
外国語会話教室において,レッスンを受講するためのレッスンポイントを事前に一括して購入することとされ,その料金は購入ポイント数が多くなればなるほど 単価が安くなる制度が採用されている一方,途中解約する場合には,当初の単価ではなく,消化済みのレッスンポイントと同程度のコースの契約時単価(購入時 よりも割高となる)を単価として精算することとされている約款が,特定商取引法49条2項1号イに違反して無効であるとして,精算金を請求した。教室側 は,約款の合理性を主張した。

【判断の内容】
原審と同じ。
以下の理由から,精算金の不足分についての返還請求を認めた。
① 特定商取引法49条2項の趣旨は,継続的役務取引において,中途解約を申し出た者に対し,事業者が控除できる金額の上限規制をもうけることにより,役 務受領者が高額の請求をおそれて中途解約権の行使をためらうことがないようにして,中途解約権を実質的にも行使可能なものとするところにある。
② 事業者が役務の対価を前払金として受領しており,役務受領者の中途解約があり,その受領済みの前払金の中からすでに提供された役務の対価に相当する部 分を控除して返還するという場合において,前払金の授受に際して役務の対価に単価が定められていたときは,その単価に従って提供済みの役務の対価を算出す るのが精算の原則となる。教室側の主張する理由はいずれも合理性がなく,当該約款が特定商取引法49条2項1号イに違反し無効である。

◆ H17.07.21東京地裁判決

2010年5月29日 公開

平成16年(ワ)第21104号
LLI
裁判官 杉山正己,瀬戸口壯夫,大畠崇史

【事案の概要】
大学入学を辞退した原告らが入学金・授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
以下の理由から,授業料の返還請求を認めた。
① 入学金の法的性質について,それ以外の趣旨を含むとの特段の事情のない限り,学生としての地位を取得する対価であるから,その返還を請求することはできない。
② 授業料について,4月1日以降の入学式前の時点で辞退した原告も含めて,平均的損害が生じたことをうかがわせる証拠はないから,その返還を要しないとする規定は全部無効であり,その返還を請求することができる。

◆ H17.08.25新潟地裁長岡支部判決

2010年5月29日 公開

平成16年(ワ)第139号立替金請求事件
未登載
裁判官 水田誠一
控訴審 H18.01.31東京高裁判決

【事案の概要】
学習教材の訪問販売における,信販会社からの立替金請求。
すでに別の業者から教育役務の提供を伴う学習教材を購入していた者に対し,別業者が訪問して他の業者の教材が古いこと,自分のところでも教育役務の提供を していること,他の業者についてこのようにすれば解約でき,返戻金で教材を購入できると告げたことが,不実告知にあたるか否かが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,4条1項1号により教材売買契約の取消を認め,割賦販売法30条の4の抗弁対抗を認めた。
① 教育役務の提供の有無は,本件教材売買契約においては重要事項であるところ,不実告知がなされた。
② 教材購入の資金調達方法は,本件教材売買契約においては重要事項であるところ,業者の指示どおりにしても解約ができず資金調達ができなかったのであり,不実告知がなされた。

◆ H17.08.25東京地裁判決

2010年5月29日 公開

平成15年(ワ)第21672号,第24133号
LLI
裁判官 柴崎哲夫

【事案の概要】
不動産業者から土地購入及び建物建築請負契約を併せて締結したが,住宅ローンが通らない場合には売買請負両契約が解除となるとの条項があったところ,住宅ローンが通らず解除となったため,手付金合計300万円の返還を求めた。
原告被告の間に入って交渉した第三者の地位,解除条項の解釈,及び不実告知(4条1項1号)が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,4条1項1号,5条1項により,売買・請負契約の取消を認め,不動産業者に手付金300万円の返還を命じた。
① 間に入って交渉した第三者は,委託を受けた第三者(5条1項)にあたる。
② 第三者が,解除条項について,本来であれば解除できないのに解除できるかのように説明しており,不実告知(4条1項1号)にあたる。

◆ H17.09.06名古屋簡裁判決

2010年5月29日 公開

平成16年(ハ)第3907号立替金請求事件
未登載
裁判官 河野文孝

【事案の概要】
浴衣を買いに来た客に対し,高額な喪服セットの購入を長時間勧誘しクレジット契約を締結させた事案で,クレジット会社から立替金請求がなされた。4条3項本文,同項2号及び5条1項による取消が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,4条3項2号,5条1項により,立替払契約の取消を認めた。
① 4条3項2号の「退去する旨の意思を示した」とは,消費者契約法の目的からは,「時間がない,用事がある,要らない」等の間接的に退去の意思を示す場 合が含まれ,「その場所から当該消費者を退去させないこと」とは,退去の意思の表示があったのに,当該消費者を当該場所から退出させるのを困難にさせた場 合を広く意味し,当該消費者にとって心理的にでも退去させない状況になっていれば足りる。
② 本件では,午後2時から3時ころから午後11時ころまでの勧誘であったこと,夕方6時に保育園に子どもを迎えに行く用事があったこと,「要らない」と告げていること,相談センターに相談が相当数寄せられていたことなどから,4条3項2号にあたる。
③ 当該勧誘・契約締結の6日後に書換をしているが,その際も取消を要請したにもかかわらず断られた経緯からは,当初の勧誘による困惑が継続していたものであり,取り消しうる。

◆ H17.09.07富山簡裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(少コ)第48号キャンセル料請求事件
消費者法ニュース65号164頁,66号93頁
裁判官 大西守

【事案の概要】
ペンション経営者がインターネット広告掲載申込契約を締結し13日後にキャンセルをしたところ,約款に基づき70パーセントのキャンセル料を請求された。キャンセル料について合意が成立しているか否かが争われた。
事業者であり消費者契約法の適用がない事案。

【判断の内容】
被告にとって極めて不利益な条項であるにもかかわらず,キャンセル料について十分に説明を行ったと認めるに足りる証拠はなく,被告が書面上承諾したとの外 形事実があることをもって,被告の真摯な承諾があったと認めることはできない,として,合意があったと認められないとし,請求を棄却した。

◆ H17.09.09東京地裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(レ)第67号不当利得返還請求控訴事件
最高裁HP国セン報道発表資料HP2006年10月6日,判時1948号96頁
裁判官 藤山雅行,大須賀綾子,筈井卓矢

【事案の概要】
挙式予定日から1年以上前に結婚式場の予約をし,その数日後に予約を取り消した場合において,予約金10万円の返還を認めない条項は10条,9条1項により無効であるとして,不当利得による返還請求をした。

【判断の内容】
挙式予定日の1年以上前から得べかりし利益を想定することは通常困難であり,仮にこの時点で予約が解除されたとしてもその後1年以上の間に新たな予約が入 ることも十分期待し得る時期にあることも考え合わせると,その後新たな予約が入らないことにより被控訴人が結果的に当初の予定どおりに挙式等が行われたな らば得られたであろう利益を喪失する可能性が絶無ではないとしても,そのような事態はこの時期に平均的なものとして想定し得るものとは認め難いとして,本 件取消料条項は9条1号により無効であるとし,返還請求を認めた。

◆ H17.09.27京都地裁判決

2010年5月29日 公開

平成16年(ワ)第2571号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 水上敏

【事案の概要】
敷金20万円余りの返還を求めた。原状回復条項が公序良俗違反,10条違反かどうかが争われた。

【判断の内容】
本件賃貸借契約が消費者契約法施行後に合意更新されていることから同法の適用を受けるとし,自然損耗分を借主負担と定めた部分を10条に違反するとし,返還請求を認めた。

◆ H17.09.30大阪地裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(レ)第72号受講料等返還請求控訴事件
消費者法ニュース66号209頁
裁判官 三代川俊一郎,金田洋一,三芳純平
第1審 H17.01.27東大阪簡裁判決

【事案の概要】
こども英会話講師養成認定資格の受講契約を締結し,入会金と受講料を振り込んだが,受講前に解約し,入会金と受講料の返還を求めた。

【判断の内容】
次の理由から,入学金2万円を除く既払い金25万円の返還請求を認めた。
① 本件受講契約は準委任契約である。
② 不解除条項は10条違反であり無効である。
③ 不返還条項は9条1号の趣旨に反する。
④ 入学金2万円は約定のクーリングオフ期間中申込者の受講枠を確保する対価(権利金)の性質を有する。
⑤ 入学金部分について平均的損害を超えることの立証がない(9条1号の「平均的な損害」の立証責任が消費者にあることを前提)。

◆ H17.10.14枚方簡裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(ハ)第181号敷金返還請求事件,第665号同反訴請求事件
消費者法ニュース66号207頁,国セン報道発表資料HP2006年10月6日
裁判官 淵脇洋

【事案の概要】
敷金25万円の返還請求に対し,敷引特約(敷金25万円,敷引25万円)が10条違反かどうかが争われた。

【判断の内容】
本件敷引特約が,賃借人の故意過失によらない損耗までその費用を負わせるものであること,賃借人には敷引特約のない物件を自由に選択できる状況にないのが 現状であること,いわば賃借人の無知を利用して賃貸人の有利な地位に基づき一方的に賃借人に不利な特約として締結されたものであり賃借人の真の自由意思に よったものとはいえず,信義に反する等として,10条に違反するとし,返還請求を認めた。

◆ H17.10.18佐世保簡裁判決

2010年5月29日 公開

平成16年(ハ)412号求償金請求事件
未登載
裁判官 大家嘉朗

【事案の概要】
この化粧品を使えば10代の肌のようになり,しみもしわもなくなってきれいになる,併用して青汁を飲めばアトピーが治ると告げられ,提携ローンにより化粧 品と青汁を購入した者に対する,信販会社からの求償金請求に対し,不実告知,不利益事実の不告知等を理由として取消を主張した。

【判断の内容】
①この化粧品を使えば10代の肌のようになり,しみもしわもなくなってきれいになるとの説明について,表示自体が一義的でなく,主観的要素を多分に含むので不実告知にあたらないとした。
②健康食品に医薬品的効能があるなど医薬品等との混同が生ずるような広告,表示は,それ自体事実でないというべきであるとし,化粧品と併用して青汁を飲めばアトピーが治ると告げたことが不実告知にあたるとして取消を認めた。
③契約から約11ヶ月後に取消の意思表示をした点について,誤認に気づいてから起算すればまだ6ヶ月を経過していないとして,信販会社の時効主張を排斥した。
④信販会社からの4条5項の「第三者」にあたるとの主張を排斥して,抗弁の対抗(割賦販売法30条の4)を認めた。

◆ H17.10.21大阪地裁判決

2010年5月29日 公開

平成16年(ワ)第5920号学納金返還請求事件
未登載
裁判官 瀧華聡之,堀部亮一,芝本昌征

【事案の概要】
ファッションに関する専門学校に入学した原告が,入学申込手続にあたり被告から受講課程の内容が実際とは違っていた点や,卒業生の就職率が100%であると説明を受けた点が不実告知,不利益事実の不告知にあたるとして4条1項1号,2項による在学契約の取消を主張した。
また,入学後に退学をしたことにより,学納金の返還を請求し,不返還条項が9条1号,10条に反するかどうかが争われた。

【判断の内容】
①不実告知,不利益事実の不告知については事実が認定できない。
②本件専門学校の在学契約は無名契約である。
③入学金は,在学契約を締結できる資格を取得し,これを保持しうる地位を取得することに対する対価とし,かかる地位をすでに取得した以上返還を求めることはできない。
④「平均的な損害の額」(9条1号)とは,同一事業者が締結する多数の同種契約事案について,類型的に考察した場合に算定される平均的な損害の額をいう。
⑤本件では,ひとつながりのカリキュラムの部分について平均的損害が認められるとして,授業料,教育充実費,施設・設備維持費の1カリキュラム分(半年分)を超える部分について,9条1号に違反するとして,返還請求を認めた。
⑥10条違反は否定した。

◆ H17.10.24福岡地裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(レ)第36号敷金返還等請求控訴事件
未登載
裁判官 野尻純夫,川﨑聡子,森中剛

【事案の概要】
敷金22万5000円他の返還を求めた。入居期間の長短を問わず75%を敷金から差し引くとの敷引条項が公序良俗違反,10条違反かどうかが争われた。

【判断の内容】
敷引について,新たなる賃借人のために必要となる賃貸物件の内装等の補修費用の負担等について,賃貸人と賃借人との間の利害を調整し,無用な紛争を防止す るという一定の合理性があることは否定できないとしつつ,自然損耗部分について賃借人に二重に負担させることになってしまうとし,実際に補修工事費用とし て賃貸人が挙げているものについて目的物の通常の使用に伴う自然損耗を超える損耗の補修に要する費用であると直ちに断定しがたいこと等からは,75%もの 敷引には正当な理由がないとし,前述の一定の合理性があることに鑑みて,敷金の25%を超えて控除するとの部分を10条に反して無効であるとして,その 75%の部分について返還請求を認めた(一部無効)。

◆ H17.10.28名古屋簡裁判決

2010年5月29日 公開

国セン報道発表資料HP2006年10月6日

【事案の概要】
旅行主任者教材セットを購入した被告(消費者)が,原告の勧誘内容の不自然さに気付き,契約解除をしたところ,原告は解約料を支払わないと解約できないと解約に応じず,売買代金の支払を求めた。

【判断の内容】
原告が被告に対し,本件契約締結の勧誘に際し,本件契約代金等を5年後に,ある協会に申請すれば特別奨励金として返還されると告げ,被告はそのような事実がないのにあると誤認して契約を締結したとして,不実告知による取消を認め原告の請求を棄却した。

◆ H17.11.08東京地裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(レ)第253号情報料返還請求控訴事件
判時1941号98頁,判例タイムズ1224号259頁
裁判官 水野邦夫,齊木利夫,早山眞一郎

【事案の概要】
パチンコ攻略情報について,売主から「100パーセント絶対に勝てる」等と勧誘を受けた買主が,代金の返還請求をした。断定的判断の提供(4条1項2号)に当たるか否かが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,4条1項2号による取消を認め,全額の返還請求を認めた。
① 常に多くの出玉を獲得することができるパチンコの打ち方の手順の情報は,将来における変動が不確実な事項に関するものにあたる。
② 「100パーセント絶対に勝てる」等の勧誘は,断定的判断の提供にあたる。
③ 買主は100パーセント勝てるとの内容に疑いを抱いていたとはいえ,売主の勧誘によって確実であると誤信したと認定。
④ 買主が自ら射幸的目的をもって行動していたとはいえ,これは基本的には売主の広告や勧誘の結果と評価すべきであり,返還請求を認めたとしても消費者保護の精神から逸脱するとはいえない。

◆ H17.11.28明石簡裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(ハ)第392号敷金返還請求事件
兵庫県弁護士会HP国セン報道発表資料HP2006年10月6日
裁判官 神吉正則

【事案の概要】
解約引(敷引)された25万円の返還を求めた。敷引条項が10条違反かどうかが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,全額の返還請求を認めた。
本件敷引条項は,賃借人に対し賃料以外の金銭的負担を負わせるものであること,敷引が関西地方で長年の慣行になっている,その他,敷引の合理性として主張 する点(謝礼,自然損耗の修繕費用,更新料免除の対価,空室補償,賃料を低額にすることの代償)について,いずれも合理性を認めがたいこと等より,本件敷 引特約は10条違反である。

◆ H17.11.29東京簡裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(少コ)第2807号敷金返還請求(本訴,通常手続移行),同年(ハ)第19941号損害賠償請求(反訴)
最高裁HP国セン報道発表資料HP2006年10月6日
裁判官 行田豊

【事案の概要】
敷金返還請求。自然損耗部分の修繕費用を借主の負担とする条項が10条違反かどうかが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,本件原状回復条項が10条に違反するとして,全額の返還請求を認めた。
① 自然損耗等の原状回復費用を借主に負担させることは,借主に二重の負担を強いることになり,信義則に反する。
② 本件原状回復条項は,自然損耗等に係る原状回復についてどのように想定し,費用をどのように見積もるのか,借主に適切な情報が提供されておらず,貸主 が汚損,破損,あるいは回復費用を要すると判断した場合には,借主に関与の余地なく原状回復費用が発生する態様となっている。このように,借主に必要な情 報が与えられず,自己に不利益であることが認識できないままされた合意は, 借主に一方的に不利益であり,この意味でも信義則に反するといえる。

◆ H17.12.06大阪簡裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(ハ)第70334号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 堤秀起

【事案の概要】
敷金35万円の返還を求めた。25万円を敷金から差し引くとの敷引条項が10条違反かどうかが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,24万5000円の返還請求を認めた。
① 敷引について,賃貸借契約成立の謝礼,更新料の免除の対価,空室損料の要素に関しては敷引金の負担を強いることに正当な理由はない。
② 賃料を低額にすることの代償との主張について,関西地方での敷引が長年の慣習となっており慣習自体不合理なものであるとは言えず,関西地方では敷引があることを前提に賃料が低く設定されていると見ることができる。
③ 敷引特約は,保証金の額,敷引金額や控除割合,契約期間等を総合考慮して,敷引金の額が適正であればその限度で有効であり,適正額を超える部分についてのみ10条違反となる。
④ 本件では,保証金の約71%(賃料の約4ヶ月分)を控除していること,契約期間が1年との事情から,適正な敷引金はせいぜい保証金の3割の10万5000円である。

◆ H17.12.22京都地裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(レ)第67号敷金返還請求控訴事件
http://www.geocities.jp/blackwhitelaw/
第1審 H17.07.12京都簡裁判決
上告審 H18.05.24大阪高裁判決

【事案の概要】
敷金返還請求に対し,賃貸人は,退去時に全内装分室内のカーペットの張替え,クロスの張替え,畳・襖の張替え及び退室清掃その他修復費用金額を居住年月日 に関係なく,敷金より差し引くものとし,内装修復個所は居住日数に関係なく借主の復元責任とする原状回復特約を主張した。

【判断の内容】
通常損耗部分の原状回復費用を借主が負担することの合意は成立していないとして,敷金返還請求を認めた。

◆ H18.01.30京都地裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(ワ)第784号不当利得返還請求事件
最高裁HP
裁判官 衣斐瑞穂
控訴審 H18.09.08大阪高裁判決

【事案の概要】
外国語会話教室において,レッスンを受講するためのレッスンポイントを事前に一括して購入することとされ,その料金は購入ポイント数が多くなればなるほど単価が安くなる制度が採用されている一方,途中解約する場合には,当初の単価ではなく,消化済みのレッスンポイントと同程度のコースの契約時単価(購入時よりも割高となる)を単価として精算することとされている約款が,特定商取引法49条2項1号イに違反して無効であるとして,精算金を請求した。教室側は,約款の合理性を主張した。

【判断の内容】
以下の理由から,精算金の返還請求を認めた。
① 本件規定は特定商取引法49条2項,同法49条7項の規制を受ける。
② 合理的な理由なく契約締結時ないし前払金の受領時に適用された単価と異なる単価を用いることは,これにより,役務受領者に対し,契約締結時ないし前払金の受領時に適用された単価を用いて精算を行う場合に比較して高額の金銭的負担を与える場合には,実質的に,役務提供事業者に特定商取引法49条2項1号が許容する金額以上の請求を認めるものであり,特定商取引法が許容しない違約金ないしこれに類する金員を請求するものであるとして,同約款規定は無効である。

◆ H18.01.31東京高裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(ネ)第4640号立替金請求控訴事件
未登載
裁判官 横山匡輝,石井忠雄,相澤眞木
第1審 H17.08.25新潟地裁長岡支部判決

【事案の概要】
学習教材の訪問販売における,信販会社からの立替金請求。
すでに別の業者から教育役務の提供を伴う学習教材を購入していた者に対し,別業者が訪問して他の業者の教材が古いこと,自分のところでも教育役務の提供を していること,他の業者についてこのようにすれば解約でき,返戻金で教材を購入できると告げたことが,不実告知にあたるか否かが争われた。

【判断の内容】
原審と同じ。
以下の理由から,4条1項1号により教材売買契約の取消を認め,割賦販売法30条の4の抗弁対抗を認めた。
① 教育役務の提供の有無は,本件教材売買契約においては重要事項であるところ,不実告知がなされた。
② 教材購入の資金調達方法は,本件教材売買契約においては重要事項であるところ,業者の指示どおりにしても解約ができず資金調達ができなかったのであり,不実告知がなされた。

◆ H18.02.02福岡地裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(ワ)第121号違約金請求本訴事件,平成17年(ワ)第496号手形金返還等請求反訴事件
判例タイムズ1224号255頁
裁判官 岸和田羊一

【事案の概要】
眺望に関する説明義務違反を理由にマンション販売契約が債務不履行解除された事例

【判断の内容】
① 居室からの眺望をセールスポイントとして,建築前のマンションを販売する場合においては,眺望に関係する情報は重要な事項ということができるから,可能な限り正確な情報を提供して説明する義務があるとして,説明義務違反を理由とする解除を認めた。
② 消費者契約法4条1項1号にいう「事実と異なること」とは,主観的な評価を含まない客観的な事実と異なることをいうと解すべきところ,本件では「事 実」に該当しない,また,同条2項につき,「故意に」告げなかったということはできない,として消費者契約法による取消は否定された。

◆ H18.02.28東京高裁判決

2010年5月29日 公開

平成17年(ネ)第4805号授業料返還請求控訴事件
未登載
裁判官 西田美昭,犬飼眞二,小池喜彦

【事案の概要】
外国語会話教室において,レッスンを受講するためのレッスンポイントを事前に一括して購入することとされ,その料金は購入ポイント数が多くなればなるほど 単価が安くなる制度が採用されている一方,途中解約する場合には,当初の単価ではなく,消化済みのレッスンポイントと同程度のコースの契約時単価(購入時 よりも割高となる)を単価として精算することとされている約款が,特定商取引法49条2項1号イに違反して無効であるとして,精算金を請求した。教室側 は,約款の合理性を主張した。

【判断の内容】
役務提供事業者が役務の対価を前払金として受領しており,役務受領者から中途解約がなされ,その受領済みの前払金の中から既提供役務の対価に相当する部分 を控除して返還するという場合において,前払金の収受に際して役務の対価に単価が定められているときは,その単価に従って既提供役務の対価を計算するのが 精算の原則となるものと解すべきであるとして,本約款規定が特定商取引法49条2項1号の趣旨に反し無効であるとして,精算金の返還請求を認めた。

◆ H17.02.24東京高裁判決(1)

2010年5月27日 公開

未登載
第1審 H16.03.22東京地裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【内容の判断】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。4月22日に辞退を申し出た者については,授業料の返還義務を否定した。

◆ H17.02.24東京高裁判決(2)

2010年5月27日 公開

東京高裁平成15年(ネ)第6002号
未登載
第一審 H15.10.23東京地裁判決(1)
上告審 H18.11.27最高裁判決(2)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
消費者契約法施行以前の契約については返還義務を否定した。消費者契約法施行後の授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じ た。ただし,原告のうち4月1日以降の入学辞退者については,授業料の返還を否定した。入学金については,「入学資格を得た対価」として返還義務を否定し た。一般入試以外の場合には,当該学部・学科を第1志望とすることが出願資格であり,学納金等の返還を求めることは信義則違反とし,返還請求を認めなかっ た。

◆ H17.03.01千葉簡裁判決

2010年5月27日 公開

平成16年(少コ)第77号敷金等返還請求事件
消費者法ニュース63号97頁
裁判官 伊藤みさ子

【事案の概要】
敷金等の返還請求に対し,賃貸人が,賃貸借契約書に,賃借人が原状回復をし賃貸人がその原状回復を承認した時を明け渡し日時とする旨,及び,前記承認まで賃借人は賃料の倍額相当の損害金を支払う義務がある旨の条項があることを主張した。

【判断の内容】
社会一般に通常行われている賃貸借契約に比し賃借人に特に義務を負担させる条項が有効であるためには,賃借人に対しその義務の内容について説明がなされ て,賃借人がその義務を十分に理解し,自由な意思に基づいて同意したことが必要であるとし,これを認めるに足る証拠はないとして,同条項について賃借人の 意思を欠き無効であるとして,返還請求を認めた。また,原状回復条項について,自然損耗についてまで賃借人に負担させるものと定めたものではないとして, 適用を制限した。

◆ H17.03.10東京高裁判決

2010年5月27日 公開

未登載
第一審 H16.03.30東京地裁判決
上告審 H18.11.27最高裁判決(1)
差戻審 H19.05.23東京高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
消費者契約法施行以前の契約については返還義務を否定した。授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。但し,原告のうち 4月1日以降に辞退を申し出た者については,授業料の返還を否定した。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H17.03.10東京地裁判決

2010年5月27日 公開

平成15年(ワ)第18148号
LLI
裁判官 小池裕

【事案の概要】
高齢者に対する床下換気扇等の点検商法について,販売店に対して原状回復を,信販会社に対して債務不存在確認を求めた。

【判断の内容】
① 4条1項1号にいう重要事項は,商品自体の品質や性能,対価等のほか,本件建物への本件商品の設置の必要性,相当性等が含まれるものと解すべきである。
② 科学的な水分測定がなされた訳ではなく,「床下がかなり湿っているため,家が危ない」という趣旨の説明を誤信したもので,設置された換気扇の本来的な 機能を発揮しておらず,工事の必要性も相当性も認められないから,これがあるとして説明した行為は不実告知(4条1項1号)に当たり,取り消しうる。
③ 1回払いの立替であったとしても,信義則上相当と認められる特段の事情がある場合には抗弁を対抗できるというべきであり,本件は特段の事情がある。

◆ H17.03.17札幌地裁判決

2010年5月27日 公開

平成15年(ワ)第2657号立替金請求事件
消費者法ニュース64号209頁,国セン報道発表資料HP2006年10月6日
裁判官 氏本厚司

【事案の概要】
高齢の女性が宝石貴金属販売会社の従業員からホテルでの展示会に連れ出され,帰宅したいと告げたにもかかわらず勧誘を続けられやむなくネックレスを購入し,クレジット契約を締結させられた。信販会社からの立替金請求に対し,4条3項2号(退去妨害)による取消を主張した。

【判断の内容】
①販売店が信販会社との立替払契約について顧客を勧誘することを委託することは5条1項の委託にあたる。
②顧客が,販売店従業員に対し,帰宅したいと告げたにもかかわらず勧誘を続けられ,困惑してネックレスの購入,立替払契約を締結させられたとして,4条3項2号により,立替払契約の取消を認めた。

◆ H17.03.25佐野簡裁判決

2010年5月27日 公開

平成16年(ハ)第150号敷金返還等請求事件
特優賃住宅敷金返還訴訟(HP)
裁判官 畑山明則

【事案の概要】
敷金返還請求に対し,賃貸人は,自然損耗部分も賃借人の負担とするという原状回復特約を主張した。

【判断の内容】
本件原状回復特約について,自然損耗部分については賃貸人の負担とするのが合理的意思であり,これに反する内容で合意したとの特段の事情が窺われないの で,賃借人の意思を欠き無効とした。また,消費者契約法施行前の契約であっても,施行後に更新されている場合には同法の適用があるとし,本件原状回復特約 は10条により無効であるから,いずれにせよ自然損耗部分についての返還請求を認めるべきとした。

◆ H17.03.25京都地裁判決

2010年5月27日 公開

平成16年(ワ)第1622号学納金返還請求事件
未登載
裁判官 楠本新

【事案の概要】
入学金35万円,運営協力金35万円の合計70万円の学納金の返還を求めた。

【判断の内容】
本件納付金(入学金,運営協力金)の法的性質について,募集要項と過去5年間の決算内容を検討し,結局学校は本件納付金を経常的な運営費として取り扱って いることが明らかとし,入学者に負担させるべきであり,入学辞退者に負担させるには特段の事情が必要であるとして,入学辞退者が生ずることにより空きが増 えることは特段の事情には当たらないとして,10条により不返還条項を無効とした。

◆ H17.03.30東京高裁判決

2010年5月27日 公開

平成16年(ネ)第3109号不当利得返還請求事件
未登載
第1審 H16.04.30東京地裁判決
上告審 H18.11.27最高裁判決(6)

【事案の概要】
大学の入学試験に合格し,学納金を納付した後に入学を辞退し,民法又は9条1号,10条により学納金の返還を求めた。

【判断の内容】
① 消費者契約法施行以前の契約については返還義務を否定した。
② 入学金については,「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。
③ 原審の平均的損害額であることの主張立証責任は事業者が負うという部分は削除され,消費者にあるとされた。
④ 消費者契約法施行後の授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。ただし,原告のうち4月1日以降の入学辞退者については,授業料の返還を否定した。

◆ H17.04.20大阪地裁判決

2010年5月27日 公開

平成16年(ワ)第10347号敷金返還請求事件
兵庫県弁護士会HP,消費者法ニュース64号213頁
裁判官 横山光雄

【事案の概要】
敷金の80%(40万円)を差し引く敷引特約は10条により無効であるとして返還を求めた。

【判断の内容】
本件敷引特約の趣旨を通常損耗部分の補修費に充てるものであるとして,敷金の額,敷引の額,賃料額,賃貸物件の広さ,賃貸借契約期間等を総合考慮して,敷 引額が適正額の範囲内では本件敷引特約は有効とし,超える部分は無効として,本件では2割(10万円)の敷引は有効とした。

◆ H17.04.28横浜地裁判決

2010年5月27日 公開

平成14年(ワ)第3573号,平成15年(ワ)第1179号,第3452号不当利得返還請求事件
判例時報1903号111頁,金融商事判例1225号41頁
裁判官 河邉義典,太田雅之,小林元二

【事案の概要】
学納金の返還を求めた。

【判断の内容】
入学金の法的性質について,「学生としての地位」の対価(推薦入学の場合は推薦合格の対価としての性質も併有)とし,現実にその地位を取得するのは4月1 日であるから,それ以前に入学を辞退した場合には返還すべきとし,不返還条項については,平均的損害を超える部分について返還すべきとした。
平均的損害の主張立証責任は原告にあるとしつつ,立証が困難であることから,民事訴訟法248条により損害を認定した(入学事務手続のための費用として徴収している『諸経費』と同等額と認定)。
授業料については,返還すべきとした。

◆ H17.06.24盛岡地裁遠野支部決定

2010年5月27日 公開

平成17年(ワ)第12号不当利得返還等事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 神山千之

【事案の概要】
貸金業者に対する過払い金返還請求訴訟について専属的合意管轄条項に基づき移送の申立がなされたことに対し,当該合意管轄条項が10条に反し無効であるとして移送しないように求めた。

【判断の内容】
本件専属的合意管轄条項は10条により無効とし,貸金業者の移送申立を一部却下した。

◆ H17.01.26名古屋地裁判決

2010年5月25日 公開

平成14年(ワ)第4110号帳尻差損金請求事件,第5428号不当利得返還等反訴請求事件
兵庫県弁護士会HP,消費者法ニュース63号100頁,判例時報1939号85頁
裁判官 岡田治

【事案の概要】
商品先物取引における帳尻差損金等の請求に対し,断定的判断の提供,不実の告知,不利益事実の不告知があったとして,消費者契約法4条1項2号及び同条1 項1号ないし同条2項による契約の取消を主張した。業者は,商品先物取引には取引所という第三者が存在しており,消費者契約法4条5項により,取消をもっ て善意の第三者に対抗できないから消費者契約法を適用できないと主張して争った。

【判断の内容】
以下の理由から取消を認めた。
① 2条により商品先物取引にも消費者契約法の適用がある。
② 「灯油は必ず下げてくる,あがることはあり得ないので,50枚売りでやってほしい。」「上場企業の部長の私を信用して30枚やってもらえませんか。」 「当たりの宝くじを買うみたいなものですよ。」「責任をもって利益をとって,お盆休みあけには,私が現金を持っていきます。」等の勧誘は,断定的判断の提 供(4条1項2号)にあたる。
③ 先物取引業者は商法551条の問屋にあたり,自己の名で他人のために物品の販売又は買い入れをなすもので,市場における取引契約が取り消されるわけではないから,先物取引業者による消費者契約法4条5項の主張は理由がない。

◆ H17.01.27東大阪簡裁判決

2010年5月25日 公開

平成16年(ハ)第608号受講料等返還請求事件
消費者法ニュース63号137頁
裁判官 中島嘉昭
控訴審 H17.09.30大阪地裁判決

【事案の概要】
こども英会話講師養成認定資格の受講契約を締結し,入会金と受講料を振り込んだが,受講前に解約し,入会金と受講料の返還を求めた。

【判断の内容】
「一度ご入金頂いた費用は,ご自身のご都合による返金はできません。」という不返還条項は,民法651条1項の解除権を排除するもので,消費者の権利を制限し,消費者の利益を一方的に害する条項であるから,消費者契約法10条により無効であるとし,返還請求を認めた。

◆ H17.01.28大阪高裁判決

2010年5月25日 公開

平成16年(ネ)第2217号敷金返還請求控訴事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 柳田幸三,磯尾正,金子修
原審 H16.06.11京都地裁判決
上告審 H17.06.14最高裁第三小法廷上告申立不受理

【事案の概要】
通常の使用に伴う自然損耗分も含めて賃借人の負担で契約開始当時の原状に回復する旨の特約のある建物賃貸借契約の解約に際し,当該特約が無効であるとして敷金の返還を求めた。

【判断の内容】
原審と同じ
原状回復の要否の判断が専ら賃貸人に委ねられていることや,賃貸人が賃借人に代わって原状回復を実施した場合に賃借人が負担すべき費用を算出する基礎とな る単価について上限の定めがないことに加え,集合住宅の賃貸借において,入居申込者は賃貸人側の作成した定型的な賃貸借契約書の契約条項の変更を求めるよ うな交渉力を有していない一方,賃貸人は将来の自然損耗による原状回復費用を予測して賃料額を決定するなどの方法を採用することが可能であることなどか ら,当該特約はその具体的内容について客観性,公平性及び明確性を欠く点において信義則に反する程度に消費者の利益を一方的に害するものとして10条によ り無効とされた。

◆ H17.01.31大阪高裁決定

2010年5月25日 公開

未登載
抗告審 H16.09.15大阪地裁決定

【事案の概要】
貸金業者に対する過払い金返還請求訴訟について合意管轄条項に基づき移送の決定がなされたことに対し,当該合意管轄条項が10条に反し無効であるとして当該決定の取消しを求めた。

【判断の内容】
原審と同じ
当該金銭消費貸借はいわゆる無店舗営業の方法により貸し付けられたものであることに加え,当該貸金業者は,管理本部により債権の管理を一元的に行っていた ことも窺われるため,取引に関する資料が存することが窺われる本店所在地を管轄裁判所として指定することにもある程度の合理性が認められ,当該合意管轄条 項は民法1条2項に規定する信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものとは認められないとした。

◆ H17.01.31東京地裁判決

2010年5月25日 公開

国センくらしの判例集HP2007年3月

【事案の概要】
MBAの資格取得のために,アメリカのビジネススクールの留学試験への合格を目的として,事業者が開講する授業を受講したが,留学に必要なすべてが確実に なるとか,個別指導をする旨の募集要項等において標榜されていた事項が実際には全く違っていたので,4条1項等により取消を主張した。

【判断の内容】
契約した一部のコースについては,留学に必要なすべてが確実になるような内容のものではなく,個別指導方式とはほど遠い内容のものであり,消費者契約法4 条にいう重要事項についての不実の告知があったものとして,その部分の契約については取消を認めた。残りのコースについては,特定商取引法の継続的役務提 供に当たり,消費者契約法に基づく本件受講契約の取消の意思表示は本件受講契約の中途解約の意思表示を含むものとして,特定商取引法49条に基づく中途解 約による返金が認められた。

◆ H17.02.03東京簡裁判決

2010年5月25日 公開

平成16年(ハ)第11333号貸金請求事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 山本正名

【事案の概要】
約定利息を年29%とする貸金業者の貸金返還請求において,契約書面に記載された「元金又は利息の支払いを遅滞したとき,(略)催告の手続を要せずして債 務者は期限の利益を失い直ちに元利金を一括して支払います。」との期限の利益喪失条項との関係で,貸金業規制法43条1項の適用の有無が争われた。

【判断の内容】
本件期限の利益喪失条項を記載した契約書面は,信義則上,もはや例外規定たる貸金業法43条1項の適用の特典は受けられず,本則規定の利息制限法が適用される。
資金需要者(債務者)も広い意味で消費者であること等も考慮する必要があり,かかる観点からは,事業者には契約締結に必要かつ正確な情報の提供と説明義務 が求められ,消費者契約法4条では,不実告知,不利益事実の不告知等により消費者が誤認して契約を締結した場合契約の取消ができるとされているのであり, 金銭消費貸借契約においてもその法の精神は,信義則の適用として及ぼされなければならない。貸金業者には,信義則上,債務者の利益のために,必要かつ正確 な情報を提供する義務があり,重要事項につき事実と異なる不正確な内容を記載したり,債務者の利益を害する契約条件を記載した場合には,貸金業法43条1 項の適用は受けられない。本件の期限の利益喪失条項は,実際の効力以上の無効な内容が表記された不適正,不正確な内容であり,債務者の誤解を招き,債務者 にとって不利益な条項と認められるとし,本件契約書面は貸金業法17条の要件を充さず,したがって,貸金業法43条1項の適用はないものとして,利息制限 法による残債務のみの請求を認めた。

◆ H17.02.16東京地裁判決

2010年5月25日 公開

平成16年(ワ)第25621号解約精算金請求事件
最高裁HP,判例時報1893号48頁,国センくらしの判例集HP2005年7月
裁判官 水野邦夫
控訴審 H17.07.20東京高裁判決

【事案の概要】
外国語会話教室において,レッスンを受講するためのレッスンポイントを事前に一括して購入することとされ,その料金は購入ポイント数が多くなればなるほど 単価が安くなる制度が採用されている一方,途中解約する場合には,当初の単価ではなく,消化済みのレッスンポイントと同程度のコースの契約時単価(購入時 よりも割高となる)を単価として精算することとされている約款が,特定商取引法49条2項1号イに違反して無効であるとして,精算金を請求した。教室側 は,約款の合理性を主張した。

【判断の内容】
以下の理由から,精算金の不足分についての返還請求を認めた。
① 特定商取引法49条2項の趣旨は,継続的役務取引において,中途解約を申し出た者に対し,事業者が控除できる金額の上限規制をもうけることにより,役 務受領者が高額の請求をおそれて中途解約権の行使をためらうことがないようにして,中途解約権を実質的にも行使可能なものとするところにある。
② 事業者が役務の対価を前払金として受領しており,役務受領者の中途解約があり,その受領済みの前払金の中からすでに提供された役務の対価に相当する部 分を控除して返還するという場合において,前払金の授受に際して役務の対価に単価が定められていたときは,その単価に従って提供済みの役務の対価を算出す るのが精算の原則となる。教室側の主張する理由はいずれも合理性がなく,当該約款が特定商取引法49条2項1号イに違反し無効である。

◆ H17.02.17堺簡裁判決

2010年5月25日 公開

平成16年(ハ)第2107号敷金返還請求事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 小林七六

【事案の概要】
敷金の約83%を差し引く敷引特約は10条により無効であるとして返還を求めた。

【判断の内容】
敷引特約は10条により無効とし,全額返還を命じた。

◆ H16.10.01大阪高裁判決(1)

2010年5月24日 公開

未登載
原審 H15.11.27京都地裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。一部当事者につき消費者契約法施行前の事案。

【判断の内容】
原審と同じ
①在学契約は施設利用等を要素とする有償双務契約であり,かつ消費者契約である。②入学金は「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。③授業料を 返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じる一方,公序良俗には違反しないとして,消費者契約法施行前の当事者については返還義務を 否定した。

◆ H16.10.01大阪高裁判決(2)

2010年5月24日 公開

未登載
第1審 H15.12.22大阪地裁判決(1)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
4月1日以降間もない期間内(遅くとも入学式以前)に在学契約を解除した場合においては,特段の事情がない限り,大学には具体的な損害(平均的損害)は発生しないとして,授業料について返還を命じた。

◆ H16.10.07大阪簡裁判決

2010年5月24日 公開

平成16年(ハ)第2169号リース料請求事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 原司

【事案の概要】
電話機及び主装置一式のリース契約に基づきリース会社がリース料の支払いを求めたのに対し,リース契約の当事者ではない取扱店の従業員による勧誘が不実告知にあたるとして契約の取消しを主張した。

【判断の内容】
当該リース契約の締結に関し,申し込みの勧誘から契約書等の作成,契約内容の説明などは当該取扱店が行っていたことを前提に,当該従業員が光ファイバーを 敷設するためにはデジタル電話に替える必要があり,電話機を交換しなければならない旨を告げたため被告(消費者)がこれを信じたとし,4条1項1号による 契約の取消しを認めた。

◆ H16.10.22大阪高裁判決

2010年5月24日 公開

平成16年(ネ)第295号学納金返還請求控訴事件
未登載
裁判官 大谷種臣,三木昌之,島村雅之
第1審 H15.12.22大阪地裁判決(2)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
下記の理由から,消費者契約法施行前に在学契約を締結した原告を含めて,入学金以外の学納金の返還を認めた。
① 入学金の法的性格は「大学に入学し得る資格ないし地位を得ることの対価」等であり,返還を求めることはできない。
② 4月1日以降間もない時期(遅くとも入学式以前)に在学契約が解除された場合には,実質的には4月1日以より前の入学辞退と異なるところはなく,特段 の事情がない限り,平均的損害は存在しないと推認するのが相当であるところ,この推認を覆すに足りる特段の事情は認められず,授業料不返還特約は9条1号 に反し無効である。
③ 授業料不返還特約は暴利行為の要件を満たし,公序良俗に反し無効である。

◆ H16.11.12福岡高裁判決

2010年5月24日 公開

平成15年(ネ)第752号不当利得返還等請求控訴事件
最高裁HP,判例タイムズ1187号231頁
裁判官 簑田孝行,駒谷孝雄,岸和田羊一

【事案の概要】
手形貸付を反復継続して受ける方法で長期間にわたって高利での借入をしていた者からの貸金業者に対する不当利得返還請求。

【判断の内容】
過払い金の充当方法について,当事者間における情報の質及び量並びに交渉力の格差という1条の趣旨をあげて借主にもっとも容易に検算ができる後払計算方式を借主が指定充当したものと推認した。

◆ H16.11.15東京簡裁判決

2010年5月24日 公開

平成16年(少コ)第2715号売買代金返還請求事件
最高裁HP
裁判官 下里敬明

【事案の概要】
内職商法で月2万円は確実に稼げると勧誘されてシステム(CD-ROM)を購入させられた者が,断定的判断の提供を受けたとして4条1項2号による取り消しを求めた。

【判断の内容】
以下の理由から取消を認めた。
① 内職商法の被勧誘者であることを特に問題とすることなく,明らかに「消費者」にあたるとした。
② 月2万円は確実に稼げるとの発言は,将来において得るべき収入という不確実な事項につき具体的な金額を示して確実であるとの言い方をしており,断定的判断の提供(4条1項2号)にあたる。

◆ H16.11.18大阪地裁判決

2010年5月24日 公開

平成15年(ワ)第13395号学納金返還請求事件
未登載
裁判官 中本敏嗣

【事案の概要】
コンピュータ専門学校に入学した後,2学年の授業料の内金を支払ったが,その後2学年に進級する前に退学したとして,不当利得返還請求権に基づき支払った内金の返還を求めた。

【判断の内容】
①一般に在学契約は,準委任契約の性質を有しつつも,施設利用契約等の性質を併せ持つ複合的な無名契約であり,学生はいつでも将来に向けて在学契約を解約できる。
②「平均的な損害の額」(9条1号)の立証責任は,学納金不返還特約の効力を否定する消費者の側にある。
③本件では,在学契約の解除が年度を超えた6月21日であると認定しつつ,退学の意思を表明したのが2月10日であり,2学年次の初めから休学扱いとさ れ,2学年次の授業を全く受けていないこと,学校側が入学定員を設定している以上,定員割れがあるかどうかにかかわらず,それだけの設備は当然に備えてお かなければならないことなどから,退学者が出ても学校側に損害が生じたとは言い難いとし,既に納付した授業料相当額全額が平均的な損害を超えるものとし て,全額の返還請求を認めた。

◆ H16.11.18大津簡裁判決

2010年5月24日 公開

平成16年(ハ)第317号不当利得返還請求事件
未登載
裁判官 清野住和

【事案の概要】
専門学校合格後,入学式前に入学を辞退した受験生が,納付した入学金及び運営協力金のうち運営協力金の返還を求めた。

【判断の内容】
①運営協力金は,入学後の教育施設の利用及び教育的役務の享受に対する対価であり,入学金のように入学し得る地位を保持することの対価としての性質を有するものではない。
②損害賠償義務の一部について無効という利益を受ける消費者が「平均的な損害の額を超える」ことの立証責任を負う。
③在学契約を完全に履行した場合に得られる利益額が平均的損害に含まれるとする学校側の主張を斥け,被告の主張以外に損害及び損害額を認め得る証拠は存在しないとして,運営協力金全額の返還を命じた。

◆ H16.11.19佐世保簡裁判決

2010年5月24日 公開

平成16年(少コ)第7号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 久保正志

【事案の概要】
敷金として差し入れた家賃4ヶ月分の金員のうち,3.5ヶ月分を差し引く敷引特約は10条により無効であるとして返還を求めた。

【判断の内容】
賃貸借契約締結時に十分な説明のないまま敷金4ヶ月分のうち一律に3.5ヶ月分を差し引く敷引特約は10条により無効であり,また,建物につき自然損耗を超えた損害についての原状回復費用を認定する証拠もないとして,敷引特約にかかる金員全額について返還を命じた。

◆ H16.11.29東京簡裁判決

2010年5月24日 公開

平成16年(ハ)第4044号立替金請求事件
最高裁HP
裁判官 野中利次

【事案の概要】
訪問販売で日本語をよく話せない中国人に教材を売りつけた事案で,信販会社が立替金を請求した。

【判断の内容】
①販売店の担当者がクレジットの返済月額を1万2000円位であると説明したが,実際にはその倍以上の引き落としであったこと等について不実告知と認め,本件クレジット契約は信販会社が販売店に媒介を委託したものであるとして(5条),4条1項による取消しを認めた。
②騙されたことを知った後に立替金を支払っていたとしても,相手方に対して追認の意思表示がなされた訳ではないとして,追認の主張を排斥しクレジット契約の取消しを認めた。

◆ H16.11.30大阪簡裁判決

2010年5月24日 公開

未登載

【事案の概要】
「保証金」として差し入れた家賃5.3ヶ月分の金員のうち,4.5ヶ月分を差し引く敷引特約は10条により無効であるとして返還を求めた。

【判断の内容】
建物賃貸借契約に伴う保証金の返還について,敷引特約あるいは類似の契約に関する民法,商法上その他の法規上の任意規定はなく,また,賃借人の転居は自己 都合であることなどから敷引特約は信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものということはできないとして,返還を否定した。

◆ H16.11.30神戸簡裁判決

2010年5月24日 公開

平成16年(ハ)第10756号保証金返還請求事件
未登載
控訴審 H17.07.14神戸地裁判決

【事案の概要】
賃貸借契約終了時には賃借人から預託を受けた保証金から一定額を控除した残額を返還する約束をしたが,賃借人は,その約束は10条により無効として保証金の返還を求めた。

【判断の内容】
本件特約は10条に違反しないとして,請求を棄却した。

◆ H16.12.17大阪高裁判決

2010年5月24日 公開

平成16年(ネ)第1308号敷金返還請求控訴事件
兵庫県弁護士会HP,判例時報1894号19頁,消費者法ニュース63号92頁
裁判官 若林諒,三木昌之,島村雅之
第1審 H16.03.16京都地裁判決

【事案の概要】
賃貸マンションの解約時にクロスの汚れなどの自然損耗分の原状回復費用を借主に負担させる特約を理由に,敷金を返還しないのは違法として,家主に敷金20 万円の返還を求めた。なお,賃料には原状回復費用は含まないと定められている。

【判断の内容】
原審と同じ
通常の使用による損耗(自然損耗)の原状回復費用を借主の負担と定めた入居時の特約について,「自然損耗等による原状回復費用を賃借人に負担させること は,賃借人の目的物返還を加重するもの」であり,「契約締結にあたっての情報力及び交渉力に劣る賃借人の利益を一方的に害する」と判断し,10条に照らし て無効とし,全額返還するよう命じた(10条と民法90条との関係は特別法と一般法との関係にあたり10条により無効とされれば,民法90条により無効か 否かを判断する必要はないとした。)。なお,本件賃貸借契約は平成13年4月の消費者契約法施行前だったが,施行後に合意更新されていることから,消費者 契約法は適用できるとの判断も示した。

◆ H16.12.20東京地裁判決

2010年5月24日 公開

平成14年(ワ)第20658号,第24250号,第28684号不当利得返還請求事件
判例タイムズ1194号184頁
裁判官 野山宏,酒井正史,出口亜衣子

【事案の概要】
大学の入学試験に合格し,学納金を納付した後に入学を辞退し,民法又は9条1号,10条により学納金の返還を求めた。

【判断の内容】
① 消費者契約法施行以前の契約については,返還義務を否定した。
(施行後の契約について)
② 入学金は入学資格を取得するための権利金又は予約完結権の対価の性質を有するとして返還義務を否定した。
③ 授業料等入学金以外の学納金については,学校側が最終的な入学者数が定員を若干上回るように補欠・繰上含めて合格者数を定め,毎年最終の入学者数とこ れに伴う授業料収入をある程度の幅をもって予測し,これに必要な人的・物的手当を準備すると共に,人件費,物件費の支出見込額を計上していること,入学手 続完了後の入学辞退者の全体に占める比率も小さいこと等から,予測した入学者数の加減を下回ることは通常考えられず,学校側に生じる平均的な損害はないも のとして,9条1号により返還を認めた。

◆ H17.01.12大阪地裁判決

2010年5月24日 公開

平成15年(ワ)第10259号損害賠償請求事件
未登載
裁判官 岡原剛

【事案の概要】
通学定期乗車券の不正使用について,旅客鉄道規則の規定に基づき,乗車区間の往復の旅客運賃を基準に有効期限の翌日から不正使用が発覚した日までの全期間を乗じた運賃に2倍の増運賃を加算した損害賠償金等の支払いを求めた。

【判断の内容】
旅客鉄道規則の規定が増運賃を定めた趣旨は,不正使用に対する違約罰であり,多数の案件を画一的に取り扱う普通取引約款の性質上,定型的に不正使用に対す る徴収金を定める規定の一般的合理性は是認でき,規定自体が消費者契約法10条に違反するとの主張は採用できない。しかしながら,旅客鉄道規則の規定は不 正使用の蓋然性の高いことが前提となっており,不正使用の蓋然性が認められない期間にまで機械的に適用して増運賃を請求することは10条の法意に照らして 許されないとして適用を制限した。

◆ H16.07.28大阪地裁判決

2010年5月23日 公開

国セン報道発表資料HP2006年10月6日

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。4月1日以後間もない入学辞退者についても,在学契約の解除によって大学に発 生する具体的な損害はないことについて4月1日より前の入学辞退者と異なることはないとした。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否 定した。

◆ H16.07.30大阪高裁判決

2010年5月23日 公開

平成15年(ネ)第3519号不当利得返還等本訴請求,受講料等反訴請求控訴事件
兵庫県弁護士会HP国セン報道発表資料HP2006年10月6日
裁判官 大谷種臣,三木昌之,島村雅之
原審 H15.10.24神戸地裁尼崎支部判決

【事案の概要】
易学受講契約及びこれに付随する契約(改名・ペンネーム作成,印鑑購入)について,勧誘方法が違法・不当であることを理由として契約の取消しを主張し,既払金の返還を求めた。

【判断の内容】
① 易学受講契約(一審は退去妨害による取消しを認めた。)につき,契約締結場所を退去した翌々日に授業料等の一部を支払ったことが民法125条1号所定 の債務の一部の履行に該当し,取消し得べき行為を追認したものとして,法4条3項2号による取消しを認めなかった(但し,当該契約自体は公序良俗に反し無 効とした。)。
② 付随契約(一審は断定的判断の提供による取消しを認めた。)につき,法4条1項2号にいう「その他将来における変動が不確実な事項」とは消費者の財産 上の利得に影響するものであって将来を見通すことがそもそも困難であるものをいうと解すべきであり,漠然とした運勢,運命といったものはこれに含まれない として,取消しを認めなかった(但し,当該契約自体は公序良俗に反し無効とした。)。

◆ H16.08.25大阪高裁判決

2010年5月23日 公開

未登載
第1審 H15.07.16京都地裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.09.03大阪高裁判決

2010年5月23日 公開

未登載
第1審 H16.01.20大阪地裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
原審と同じ
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.09.08東京地裁判決

2010年5月23日 公開

未登載

【事案の概要】
大学の入学試験に合格し,学納金を納付した後に入学を辞退し,民法又は9条1号,10条により学納金の返還を求めた。

【判断の内容】
消費者契約法施行以前の契約については,返還義務を否定した。施行後の契約については,入学金以外の学納金は,9条1号により返金を認めたが,入学金は入学しうる地位の対価として返還義務を否定した。

◆ H16.09.10大阪高裁判決(1)

2010年5月23日 公開

平成15年(ネ)第3707号学納金返還請求控訴事件
最高裁HP,判例時報1882号44頁,1909号174頁,消費者法ニュース62号139頁
裁判官 井垣敏生,高山浩平,神山隆一
上告審 H18.11.27最高裁判決(4)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。消費者契約法施行前の事例。

【判断の内容】
入学金については,その目的に照らして相当な価額を超える場合は,その超える部分は,他の学納金と同様に,大学が提供する教育役務に対する費用ないし報酬 と評価せざるを得ないとしつつ,本件については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。授業料を返還しない旨の特約は,暴利行為であり民法の公 序良俗に反して無効として,授業料の返還を命じた。

◆ H16.09.10大阪高裁判決(2)

2010年5月23日 公開

平成16年(ネ)第21号学納金返還請求控訴事件
最高裁HP,判例時報1882号44頁,1909号174頁
裁判官 井垣敏生,高山浩平,大島雅弘
上告審 H18.11.27最高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。消費者契約法施行前の事例。

【判断の内容】
入学金については,その目的に照らして相当な価額を超える場合は,その超える部分は,他の学納金と同様に,大学が提供する教育役務に対する費用ないし報酬 と評価せざるを得ないとしつつ,本件については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。授業料を返還しない旨の特約は,暴利行為であり民法の公 序良俗に反して無効として,授業料の返還を命じた。

◆ H16.09.15大阪地裁決定

2010年5月23日 公開

未登載
再抗告審 H17.01.31大阪高裁決定

【事案の概要】
貸金業者に対する過払い金返還請求訴訟について合意管轄条項に基づき移送の決定がなされたことに対し,当該合意管轄条項が10条に反し無効であるとして当該決定の取消しを求めた。

【判断の内容】
当該金銭消費貸借はいわゆる無店舗営業の方法により貸し付けられたものであることに加え,当該貸金業者は,管理本部により債権の管理を一元的に行っていたことも窺われるため,取引に関する資料が存することが窺われる本店所在地を管轄裁判所として指定することにもある程度の合理性が認められ,当該合意管轄条項は民法1条2項に規定する信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものとは認められないとした。

◆ H16.09.22福岡地裁判決

2010年5月23日 公開

平成15年(ワ)第974号損害賠償請求事件
最高裁HP
裁判官 亀川清長,板野俊哉,山口幸恵

【事案の概要】
マンションの購入の際,ペットの飼育に関する販売業者の説明が不適切であったためペットの飼育が可能であると誤信して購入契約を締結させられたとして,説 明義務違反による損害賠償請求(債務不履行責任)又は不利益事実の不告知(4条2項)による取消し等に基づく不当利得の返還を求めた。

【判断の内容】
マンション販売業者は制定予定の管理組合規約等の内容を説明する限りにおいてペット飼育の可否ないしその制限等についても説明する義務を負うとしたが,管 理組合規約は管理組合総会によって制定,改正されるものであるから,販売業者がマンション販売に際し説明しうるのは制定予定の管理組合規約等の内容に限ら れ,それを超えてペット飼育の可否についての説明義務までは負わないとして債務不履行責任を否定した。
マンションにおけるペット飼育の可否はマンション売買契約における重要な事項であったとしたが,販売業者による説明は制定予定の管理組合規約の解釈を述べ たにすぎず,また,購入者は本件マンションに入居する以前もマンションにおいて管理上一定の制約を受けつつペットを飼っていたことからすれば,利益となる 事実を告げたとはいえないとして,不利益事実の不告知による取消しを否定した。

◆ H16.07.13大阪高裁判決

2010年5月22日 公開

未登載
第1審 H15.11.27神戸地裁尼崎支部判決(1)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
原審と同じ
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.07.13東京地裁判決

2010年5月22日 公開

平成15年(ワ)第24336号損害賠償請求事件
消費者法ニュース61号158頁,国セン暮らしの判例集HP2004年11月
裁判官 原敏雄

【事案の概要】
外国語会話教室において,レッスンを受講するためのレッスンポイントを事前に一括して購入することとされ,その料金は購入ポイント数が多くなればなるほど 単価が安くなる制度が採用されている一方,途中解約する場合には,当初の単価ではなく,消化済みのレッスンポイントと同程度のコースの契約時単価(購入時 よりも割高となる)を単価として精算することとされている約款が,特定商取引法49条2項1号イに違反して無効であるとして,精算金を請求した。教室側 は,約款の合理性を主張した。

【判断の内容】
特定商取引法49条2項の規定の趣旨や勧誘事情からすると,約款により,実際に提供されていないレッスンポイントを有効期間の経過等を理由に消化済みのものとみなして精算することは許されない(但し,精算金全額を供託したため,請求棄却となった。)

◆ H16.07.15京都地裁判決

2010年5月22日 公開

平成16年(ワ)第750号不当利得金請求事件
未登載
裁判官 山下寛

【事案の概要】
建物賃貸借契約の解約に際し,賃借人が賃貸人に保証金全額の返還を求めた事案で,賃貸人の事業者性や敷引特約の不当性が争われた。

【判断の内容】
自ら居住目的で購入した建物を転居を余儀なくされたため賃貸したもので反復継続性を欠くとして,賃貸人の「事業者」性(2条2項)を否定した。

◆ H16.07.22大阪高裁判決(1)

2010年5月22日 公開

未登載
第1審 H16.01.21大阪地裁判決

【事案の概要】
入学手続後,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。
4月以降訴状によって解除と認定された。

【判断の内容】
原審と同じ
在学契約は準委任類似の無名契約とし,入学金は授業料の前払的性格を有するものではなく,入学済みとして返還を否定。授業料等の不返還特約は9条1号により無効であるとし,訴状送達により解除した時点までの日割り計算をし,残りの期間分について返還を命じた。

◆ H16.07.22大阪高裁判決(2)

2010年5月22日 公開

国セン報道発表資料HP2006年10月6日
第1審 H15.11.27神戸地裁尼崎支部(2)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
原審と同じ
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.07.28千葉地裁判決

2010年5月22日 公開

平成14年(ワ)第1550号違約金等請求事件
消費者法ニュース65号170頁
裁判官 小林正,佐久間政和,鎌形史子

【事案の概要】
建築業者が,建物工事請負契約を契約直後に解除した消費者に対し,「請負代金の20%に相当する額の違約金を支払う」との契約条項に基づき違約金の支払いを求めた。

【判断の内容】
① 9条1号の「平均的な損害」の主張立証責任は事業者側にある。
② 建築業者が契約条項があることのみを主張立証し,他に平均的損害につき主張立証しない以上,平均的損害は既に支出した費用相当の損害を超えないとして,当該金額を超える部分の違約金条項は9条1号により無効である。

◆ H16.06.29大阪地裁判決

2010年5月21日 公開

国セン報道発表資料HP2006年10月6日

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.07.05東京簡裁判決

2010年5月21日 公開

平成16年(少コ)第325号敷金返還等請求事件
最高裁HP
裁判官 松田雅人

【事案の概要】
建物賃貸借契約を締結した賃借人が,当該賃貸借契約の始期に先立ち,賃貸人に対し,賃料・共益費1ヶ月分や敷金及び礼金等の預入金を支払うとともに当該建 物の補修を求めていたが,賃貸人がこれに応じなかったことから当該賃貸借契約の解約を申し入れ当該預入金の返還を求めたところ,解約の要件及びいったん支 払われた礼金や賃料・共益費は一切返還しない旨の約定があることから返還を拒絶された。

【判断の内容】
賃借人の都合により解約するときには解約日の3ヶ月前に書面により賃貸人に解約届けを提出しなければならず,これに従った解約をしない場合には賃料・共益 費合計額の6ヶ月分を賃貸人に保証する旨の約定及びいったん支払われた礼金や賃料・共益費は一切返還しない旨の約定は,公の秩序に関するものではないが, 著しく原告の権利を制限し,又は原告の義務を加重する条項であり10条の趣旨に照らし無効とした。

◆ H14.03.12神戸簡裁判決

2010年5月16日 公開

平成13年(ハ)第2302号入所費等返還請求事件
兵庫県弁護士会HP,消費者法ニュース60号211頁
裁判官 福富昌昭
控訴後確定

【事案の概要】
歌手志望で俳優等養成所に入所直後,思っていたものと違うとして不実告知等による取消等を主張し,支払済費用の返還を求めた。

【判断の内容】
3ヶ月後の月謝の値上げを告げなかったことが不利益事実の不告知(4条2項)に該当するとして取消を認めた。

◆ H14.03.25東京地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(レ)第12号営業保証料請求控訴事件
判例タイムズ1117号289頁,1149号73頁,金融商事判例1152号36頁,私法判例リマークス27号38頁,NBL753号72頁
裁判官 難波孝一,足立正佳,笹川ユキコ
上告

【事案の概要】
パーティーの予約を解約すると営業保証料として一律1人当たり5,229円徴収すると定めた規約は,「平均的損害」を超える請求であるとして,消費者が,平均的な損害を超える請求を不服と主張した。

【判断の内容】
① 「平均的損害」は,契約の類型毎に合理的な算出根拠に基づき算出された平均値であり,解除の事由,時期の他,当該契約の特殊性,逸失利益,準備費用・ 利益率等の損害の内容,契約の代替可能性・変更ないし転用可能性等の損害の生じる蓋然性等の事情に照らして判断するのが相当,とした。
② その上で,民事訴訟法248条を適用して「平均的損害」を認定した。

◆ H14.07.19大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成13年(ワ)第9030号損害賠償請求事件
最高裁HP(別紙略)
,判例タイムズ1114号73頁,金融商事判例1162号32頁,NBL761号77頁,消費者法ニュース57号
裁判官 曳野久男
確定

【事案の概要】
中古車販売の解約において車両価格の15%の損害賠償金と作業実費を請求するとの条項に基づき,販売会社が支払いを求めて提訴したのに対し,消費者が,本件では「平均的な損害」が発生していないと主張した。

【判断の内容】
① 「平均的な損害の額」(9条1号)の立証責任について,同法が消費者を保護することを目的とする法律であること,消費者側からは事業者にどのような損 害が生じ得るのか容易には把握しがたいこと,損害が生じていないという消極的事実の立証は困難であることなどに照らし事業者側が負うとした。
② 注文から2日後の撤回であること等から損害が発生しうるものとは認められないとして販売会社の請求を棄却した。

◆ H14.12.12広島高裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ネ)第232号 貸金等請求控訴事件
最高裁HP
裁判官 竹中省吾,廣永伸行,河野清孝

【事案の概要】
貸金請求に対し,債権保全を必要とする相当の事由があるときには,貴行の請求によって貴行に対するいっさいの債務の期限の利益を失い,直ちに債務を弁済しますという約款が,10条の直接適用又は同条の準用ないし類推適用により無効と主張した。

【判断の内容】
当事者において債務者の期限の利益喪失にかかる合意をすることは契約自由の原則上有効であるというべきであるから(最高裁判所昭和39年(オ)第155号 同45年6月24日判決・民集24巻6号587頁参照),消費者契約法の趣旨や民法1条2項に照らしても,本件約款の効力を否定することはできないものと いうべきであるとして,排斥した。(傍論)

◆ H15.03.26さいたま地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第2347号違約金請求事件
金融商事判例1179号58頁,私法判例リマークス29号50頁
裁判官 豊田建夫,松田浩養,菱山泰男
確定

【事案の概要】
消費者が,LPガスの切り替え工事,ボンベ交換の契約後1年未満で販売会社を変更した場合には,88,000円の違約金を支払う旨の違約金条項は,9条1号により無効であると主張した。

【判断の内容】
① 「平均的な損害の額」(9条1号)の立証責任について,同法が消費者を保護することを目的とする法律であること,消費者側からは事業者にどのような損 害が生じ得るのか容易には把握しがたいこと,損害が生じていないという消極的事実の立証は困難であることなどに照らし事業者側が負うとした。
② 本件においては,平均的な損害について事業者から具体的な主張立証がない以上,「平均的な損害」やそれを超える部分を認定することは相当ではないとし,88,000円の返金を命じた。

◆ H15.04.22東大阪簡裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(ハ)第234号損害賠償請求事件
消費者法ニュース56号148頁
控訴審 H15.09.26大阪地裁判決

【事案の概要】
子犬の売買において,感染症に罹患した子犬が引き渡された後に同犬が死亡したことにつき,消費者が,売買代金の返還を求めた。

【判断の内容】
生命保証制度に加入しなかった場合,販売会社は免責されるとの契約条項は,1条及び10条に照らして無効であるとして消費者からの請求を全面的に認めた。

◆ H15.05.13千葉簡裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ハ)1312号,1313号貸金請求事件
消費者法ニュース65号28頁
裁判官 井上隆義
控訴審 H15.10.29千葉地裁判決
上告審 H16.02.26東京高裁判決

【事案の概要】
貸金業者の保証人に対する保証債務履行請求。実質的借主が誰であるか,主債務者の支払能力,融資金の使用目的及び弁済金の支払い方法について,虚偽の事実 を主債務者から告げられ,保証人が誤信して保証人となった,貸金業者はその事情を知っていたとして,第三者による詐欺(民法96条2項)による取消しを主張した。

【判断の内容】
主債務者(第三者)による欺罔行為により,実質的な借主が別人であることを知らなかったこと,貸金業者担当者がそのような本件背景事情を単に知っていたと いう以上に相当程度に関与していたことを認定し,民法96条2項の要件を満たすとして,第三者による詐欺取消しを認め,貸金業者の請求を棄却した。

◆ H15.05.14東京簡裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ハ)第85680号立替金請求事件
最高裁HP,消費者法ニュース60号213頁
裁判官 廣瀬信義

【事案の概要】
絵画のクレジット代金を支払わなかった消費者に対し,クレジット会社が代金の支払いを求めた。

【判断の内容】
以下の理由から,立替払契約の取消を認め,請求を棄却した。
① 販売店の担当者が「退去させない」旨告げたわけではないが,担当者の一連の言動はその意思を十分推測させるものであり,販売店の不適切な勧誘行為に困惑し,自分の意に反して契約を締結するに至ったものであるとして,4条3項2号に該当する。
② 取消権を行使した日は契約日から6ヶ月以上経過していたが,商品の引渡日からは6ヶ月が経過していなかったところ,引渡しを受けた段階でもいまだ困惑状態が継続していたとして,引渡しの時から取消権の行使期間が進行するとして,取消権の行使は有効である。

◆ H15.07.16京都地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第1789号学納金返還請求事件,平成14年(ワ)第1832号入学金返還請求事件,平成14年(ワ)第2642号学納金返還請求事件
最高裁HP,判例時報1825号46頁,消費者法ニュース56号165・167頁
裁判官 水上敏,福井美枝,尾河吉久
控訴審 H16.08.25大阪高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
① 学納金の法的性格について,特段の事情がない限り,その名目にかかわらず,広い意味ではすべて大学等が提供する狭義の教育活動その他の役務,施設利用 の対価であるとし,そのうち,入学金の法的性格について,学生としての地位を取得するについて一括して支払われるべき金銭であって入学に伴って必要な学校 側の手続き及び準備のための諸経費に要する手数料の性格を併せ有するとした。
② 「平均的な損害の額」(9条1号)の主張立証責任は事業者が負うとした。
③ 在学契約の始期となっている4月1日以降に入学を辞退した者については,学生としての身分を取得した以上,大学は入学金に対応する契約上の義務を履行 済であるとして,入学金の返還は認めず,それ以外の学納金の返還を認めた。4月1日より前に入学を辞退した者については入学金と授業料の返還を命じた。い ずれも,平均的損害の主張立証が不十分,またはないとして,学納金不返還特約全体が無効とした。

◆ H17.08.18郡山簡裁判決

2010年5月16日 公開

平成16年(ハ)第2248号授業料請求事件
未登載
裁判官 坂井和雄

【事案の概要】
高校を卒業した浪人生が予備校に入学後2,3日でやめたところ,予備校から授業料等不返還特約に基づき授業料等70万5000円の支払を求められた(まだ支払っていなかった)事案。

【判断の内容】
① 平均的損害の主張立証責任は事業者が負う。
② 本件では,平均的損害の立証がなされたとはいえない。
として,9条1号により予備校の請求を棄却した。

◆ H15.09.19大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第9615号学納金返還請求事件
最高裁HP,判例時報1838号104頁,判例タイムズ1143号276頁
裁判官 中村次,宮武康,藪崇司
控訴審 H16.5.20大阪高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。消費者契約法施行前の事例であり,不返還条項が公序良俗違反か否かが争われた。

【判断の内容】
① 入学金は,大学に入学しうる地位ないし資格の対価(一種の権利金)としての性質を有する。いったん地位を取得した以上返還する義務はない。
② その他の学納金については,本件大学が定員100名で,ほぼ毎年正規合格者のうち実際に入学する者が30%未満であり,学納金納付後に入学を辞退する 者が20名以上いること,欠員補充のため繰り上げ合格させた者で納付後に辞退する者もいること,例年3月30日ころまで10回程度も繰り上げ合格を実施し ていること等から,欠員補充が困難となる一定時期以降,学納金不返還によって欠員が生じること及び欠員が生じた場合に発生する損害を可及的に回避しようと 試みることは,全く不合理とは言い切れず,いまだ公序良俗に反するとまでは言えないとして,不返還条項を有効とした。

◆ H15.09.26大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(レ)第178号損害賠償請求控訴事件
消費者法ニュース57号157頁
裁判官 谷口幸博,阪口彰洋,辻井由雅
原審 H15.4.22東大阪簡裁判決

【事案の概要】
子犬の売買において,感染症に罹患した子犬が引き渡された後に同犬が死亡したことにつき,売主の瑕疵担保責任に基づき売買代金,葬儀費用等の賠償を求めた。

【判断の内容】
生命保証制度に加入しなかった場合,販売会社は免責されるとの契約条項は,そもそも売主の瑕疵担保責任を排除するものではないとして,同条項により瑕疵担保責任免除の合意があったとの売主の主張を排斥し,瑕疵担保責任を全面的に認めた。

◆ H15.10.03大津地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第540号損害賠償請求事件
最高裁HP,消費者法ニュース58号129頁
裁判官 山口芳子

【事案の概要】
パソコン講座の受講生が,厚生労働省の教育訓練給付制度を利用して受講することを希望していたが,講座運営者の説明不足のために同制度を利用できなかったとして,不法行為に基づき受講料相当の損害金等の支払を求めた。

【判断の内容】
① 消費者契約法施行前(平成13年2月28日に受講申し込み)の事案であったが,同法1条,3条1項及び4条2項の趣旨を根拠として,事業者は取引上の信義則により適切な告知・説明義務を負うとして,損害賠償の一部を認容した。
② 損害について,受講料全額ではなく,給付制度が利用できれば得られたであろう給付金額部分のみを損害として認め,かつ,受講申し込みの際,給付制度を利用して受講することを申し出ていないことから3条2項の趣旨及び公平の見地から2割を過失相殺した。

◆ H15.10.06大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第6374号,第9624号学納金返還請求事件
最高裁HP,判例タイムズ1148号289頁,判例時報1838号104頁,国セン暮らしの判例集HP2004年4月
裁判官 佐賀義史,永谷幸恵,神原浩
控訴審 H16.05.19大阪高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
① 在学契約について,主として準委任契約,付随的に施設利用契約等の性質を併せ持つ有償双務の無名契約であるとした。
② 入学金について,当該大学に入学し得る地位を取得することへの対価であり,一部は,全体としての教育役務等の提供のうち,入学段階における人的物的設 備の準備,事務手続費用等,大学が学生を受け入れるために必要な準備行為の対価としての性質をも併せ有しているとして,返還義務を否定した。
③ 授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして,授業料の返還を命じた。
④ 「平均的な損害の額」(9条1号)の立証責任は消費者側にあるとした。

◆ H15.10.16大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第6377号学納金返還請求事件
最高裁HP,消費者法ニュース60号212頁
裁判官 田中俊次,朝倉佳秀,小川紀代子

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
① 在学契約について,準委任契約類似の無名契約とした。
② 在学契約が消費者契約となることについて,1条の趣旨(交渉力の格差からの消費者の保護)が妥当することを指摘した。
③ 入学金について,入学し得る地位を取得することの対価であり,入学事務手続等の対価たる性格をも有するとして返還義務を否定した。
④ 授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。
⑤ 「平均的な損害の額」(9条1号)の立証責任は消費者にあるとした。

◆ H15.10.16大阪簡裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(少コ)第261号敷金返還請求事件
兵庫県弁護士会HP,消費者法ニュース60号213頁
裁判官 原司

【事案の概要】
6ヶ月間入居した物件を解約したところ,本件賃貸借契約の特約に基づき,敷金40万円のうち30万円を差し引かれた賃借人が,敷金の返還を求めた。

【判断の内容】
入居の長短にかかわらず一律に保証金を差し引くこととなる敷引特約は,民法等他の関連法規の適用による場合に比し,消費者の利益を一方的に害する条項であるといえ,10条により無効であるとし,敷金の返還を命じた。

◆ H15.10.23大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第9600号学納金返還請求事件
判例タイムズ1148号214頁
裁判官 塚本伊平,金子隆雄,小山恵一郎

【事案の概要】
専門学校合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び制服代金等の返還を求めた。

【判断の内容】
① 在学契約について,学生が被告に対して,教育の提供等という事務を委任することを本質的要素とする有償双務契約であり無名契約であるとした。
② 入学金について,その入学手続を完了した時点において,被告学校に入学できることとなった資格ないし地位の対価として支払われるもので,いわば権利金的性質を有するものとして,返還義務を否定した。
③ 制服代金について,在学契約と制服の売買契約とは別個独立の契約であり,独立の解除事由が主張されていないとして,返還を認めなかった。

◆ H15.10.23東京地裁判決(1)

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第20642号,23679号,24245号,平成15年(ワ)第1738号各不当利得返還請求事件
最高裁HP,判例時報1846号29頁
裁判官 齋藤隆,小川直人,鈴木敦士
控訴審 H17.02.24東京高裁判決(2)
上告審 H18.11.27最高裁判決(2)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
① 在学契約について,準委任契約又は同契約に類似した無名契約ではなく,教育法の原理及び理念により規律されることが予定された継続的な有償双務契約としての性質を有する私法上の無名契約であるとした。
② 入学辞退について,民法651条1項の適用ないし類推適用を否定しつつ,受験生側からの自由な解除を認めた。
③ 入学金について,入学手続上の諸費用に充てられるほか,在学契約上の地位の取得についての対価として,返還義務を否定した。
④ 大学が2条2項の「法人」にあたるかについて,情報の質及び量並びに交渉力に格差のある大量的契約の当事者については公益性を問うことなく規制の対象とするのが同法の趣旨であると指摘し,法人に含まれるとした。
⑤ 「平均的な損害の額」(9条1号)の立証責任は事業者側にあるとした。
⑥ 授業料を返還しないとの特約について,4月1日より前に入学を辞退した者について,9条1号により無効であるとして返還を命じた。4月1日以降の入学辞退者については,授業料の返還を否定した。

◆ H15.10.23東京地裁判決(2)

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第22807号不当利得返還請求事件
最高裁HP
裁判官 齋藤隆,小川直人,鈴木敦士

【事案の概要】
私立中学入学手続後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。消費者契約法施行前の事例。学納金不返還条項が公序良俗違反か否かが争われた。

【判断の内容】
① 在学契約について,準委任契約又は同契約に類似した無名契約ではなく,教育法の原理及び理念により規律されることが予定された継続的な有償双務契約としての性質を有する私法上の無名契約であるとした。
② 入学金について,入学手続上の諸費用に充てられるほか,在学契約上の地位の取得についての対価として,返還義務を否定した。
③ 入学辞退について,民法651条1項の適用ないし類推適用を否定しつつ,受験生側からの自由な解除を認めた。
④ 授業料の不返還合意は,在学契約を締結した受験生の窮迫・軽率・無経験などに乗じて,はなはだしく不相当な財産的給付を約束させる行為に該当すると認 められる場合に限り公序良俗に反するものとして無効になると解すべきであるとし,本件不返還合意については公序良俗に反しないとして返還義務を否定した。

◆ H15.10.24神戸地裁尼崎支部判決

2010年5月16日 公開

平成13年(ワ)第874号不当利得返還等本訴請求事件,平成14年(ワ)第470号受講料等反訴請求事件
兵庫県弁護士会HP,消費者法ニュース60号58頁,214頁
裁判官 安達嗣雄
控訴審 H16.07.30大阪高裁判決

【事案の概要】
易学受講契約及びこれに付随する契約(改名・ペンネーム作成,印鑑購入)について,勧誘方法が違法・不当であることを理由として契約の取消しを主張し,既払金の返還を求めた。

【判断の内容】
易学受講契約について,4条3項2号により,付随契約について4条1項2号によりそれぞれ取消しを認めた。
①法4条3項2号の「当該消費者を退去させないこと」とは,物理的であると心理的であるとを問わず,当該消費者の退去を困難にさせた場合をいう。
②消費者の運勢や将来の生活状態は,法4条1項2号にいう「将来の変動が不確実な事項」にあたる。

◆ H15.10.28大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第9603号学納金返還請求事件
判例タイムズ1147号213頁
裁判官 森宏司,横山巌,三輪睦
控訴審 H16.05.20大阪高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料の返還を求めた。消費者契約法施行前の事例。

【判断の内容】
①在学契約は準委任ないし類似の無名契約であるとした上で,②入学金について「入学資格を得た対価」として,③授業料については,不返還特約は公序良俗に 反しないとし,④後援会等については,学校以外の団体に帰属し,学校に対する返還請求はできないとして,各返還義務を否定した。

◆ H15.10.29千葉地裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(レ)第38号貸金請求控訴事件
兵庫県弁護士会HP,消費者法ニュース65号32,159頁
裁判官 小林正,佐久間政和,鎌形史子
第1審 H15.05.13千葉簡裁判決
上告審 H16.02.26東京高裁判決

【事案の概要】
貸金業者の保証人に対する保証債務履行請求。実質的借主が誰であるか,主債務者の支払能力,融資金の使用目的及び弁済金の支払い方法について,虚偽の事実 を主債務者から告げられ,保証人が誤信している状態にあることを知りながら,あえてこれを告げずに保証契約を締結させた貸金業者の行為が不実告知にあたる として,保証契約について4条1項1号による取消しを主張した。

【判断の内容】
① 本件連帯保証契約における主債務者及びその支払能力,融資金の使用目的及び弁済金の支払方法は4条1項1号の重要事項にあたる。
② これらについて主債務者から虚偽の説明を受け保証人が誤信していることを知りながら,あえて沈黙して保証契約を締結させた貸金業者の行為は不実告知に当たる。
として,不作為による不実告知を認めて4条1項1号による取消しを認め,貸金業者の請求を棄却した。

◆ H15.10.30東京簡裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
納入した留学斡旋費用の不返還特約の無効を主張し,納入した50万円の返還を求めた。

【判断の内容】
本件特約は,9条1号により「平均的な損害の額」を超える部分は無効となると判示した。その上で損害額を民事訴訟法248条に基づき10万円とした。

◆ H15.11.07大阪地裁判決(1)

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第9633号学納金返還請求事件
最高裁HP
裁判官 中村隆次,宮武康,籔崇司

【事案の概要】
公募推薦入試方式及び外国人留学生編入学・転入学試験利用方式による大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
①本件在学契約は消費者契約である。②入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。③法9条1号の平均的な損害に関する立証責任に ついて,消費者が負担するとした上で,本件では平均的損害は0であるとして,授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効として返還を命じた

◆ H15.11.07大阪地裁判決(2)

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第6370号学納金返還請求事件
最高裁HP
裁判官 中村隆次,宮武康,籔崇司

【事案の概要】
一般入学試験による大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
①本件在学契約は消費者契約である。②入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。③法9条1号の平均的な損害に関する立証責任について,消費者が負担するとした上で,本件では平均的損害は0であるとして,授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効として返還を命じた。

◆ H15.11.07大阪地裁判決(3)

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第9608号学納金返還請求事件
最高裁HP
裁判官 中村隆次,宮武康,籔崇司

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金の返還を求めた。消費者契約法施行前の事案。

【判断の内容】
①入学金は「入学資格を得た対価」であり,反対給付は既に付与されており,②授業料等については,不返還特約は公序良俗に違反しないとして,各返還義務を否定した。

◆ H15.11.10東京地裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(ワ)第10908号授業料返還等請求事件
判例時報1845号78頁,判例評論547号14頁,判例タイムズ1164号153頁,消費者法ニュース61号161頁,NBL785号72頁
裁判官 齋木教朗

【事案の概要】
大学医学部専門の学習塾において講習を受けていた受講生が,申し込んでいた同塾の①冬期講習を冬期講習開始前に,②年間模擬試験を中途で,それぞれ解約して,冬期講習受講料全額と模擬試験の未実施分受講料の返還を求めた。塾側は,受講契約を解除できないとの合意が成立しており解除は認められないなどと主張した。

【判断の内容】
契約の一部について,契約解除を制限する特約の成立を否定した上で,特約の成立部分について,実質的に受講料の全額を違約金として没収するに等しく,信義則に反する等として,法10条により無効であるとして,受講料の返還請求を認めた。

◆ H15.11.27京都地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第1815号,第2661号,平成15年(ワ)第990号学納金返還請求事件
最高裁HP

裁判官 八木良一,飯野里朗,財賀理行
控訴審 H16.10.01大阪高裁判決(1)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。一部当事者につき消費者契約法施行前の事案。

【判断の内容】
①在学契約は施設利用等を要素とする有償双務契約であり,かつ消費者契約である。②入学金は「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。③授業料を 返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じる一方,公序良俗には違反しないとして,消費者契約法施行前の当事者については返還義務を 否定した。

◆ H15.11.27神戸地裁尼崎支部判決(1)

2010年5月16日 公開

未登載
控訴審 H16.07.13大阪高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H15.11.27神戸地裁尼崎支部判決(2)

2010年5月16日 公開

未登載
控訴審 H16.07.22大阪高裁判決(2)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H15.12.01大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。但し,原告のうち4月1日以降の入学辞退者については,授業料の返還を否定した。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H15.12.11大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H15.12.22大阪地裁判決(1)

2010年5月16日 公開

未登載
控訴審 H16.10.01大阪高裁判決(2)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
4月1日に入学を辞退しており,前納金の返還義務を否定した。

◆ H15.12.22大阪地裁判決(2)

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第6376号,9605号,9628号学納金返還請求事件
未登載
裁判官 岡原剛,遠藤東路,相澤聡
控訴審 H16.10.22大阪高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
下記の理由から,消費者契約法施行後に在学契約を締結した原告のうち,3月31日までに入学を辞退した者について,入学金以外の学納金の返還を認めた。
① 入学金の法的性格は「大学に入学し得る資格ないし地位を得ることの対価」等であり,返還を求めることはできない。
② 授業料等の入学金以外の学納金は教育役務の対価である。
③ 「平均的な損害の額」(9条1号)の立証責任は消費者側にある。
④ 4月1日が到来するまでになされた入学辞退について大学に平均的損害はなく,授業料不返還特約は9条1号に反して無効である。しかし,4月1日以降の入学辞退については特約に係る学納金の額が平均的損害を超えるものは認められないから同条には反しない。
⑤ 授業料不返還特約は信義則違反とまで言えず10条無効にならない。また公序良俗にも反しない。

◆ H15.12.24京都地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第1814号学納金返還請求事件
最高裁HP
裁判官 山下寛,鈴木謙也,梶浦義嗣

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H15.12.24神戸地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第1409号,1717号,2168号各学納金返還請求事件
最高裁HP
裁判官 田中澄夫,大藪和男,三宅知三郎

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
4月1日までに退学願いの提出又はこれに代替しうる客観的に明確な方法で通知したことの主張立証がなく,4月1日の到来によって授業料等の返還を求めうる地位を失ったとして,返還義務を否定した。
また,入学金については「入学し得る地位を得たことの対価」として返還義務を否定した。

◆ H15.12.26大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第6375号等学納金返還請求事件
最高裁HP
裁判官 角隆博,井上直哉,長田雅之

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
4月1日以前に入学を辞退した者に対して授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.01.08大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。但し,原告のうち4月1日以降の入学辞退者については,授業料の返還を否定した。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.01.09大阪簡裁判決

2010年5月16日 公開

国民生活2007年1月号64頁,国セン暮らしの判例集2007年1月

【事案の概要】
パソコン内職をすれば月々5万円以上の収入になるといわれて教材をクレジットで購入したが,その収入が稼げなかったため4条1項1号等により立替払契約の取り消し,クレジット会社に既払い金の返還を求めた。

【判断の内容】
4条2項により立替払契約の取消しを認め,クレジット会社に対し代金の返還を命じた。

◆ H16.01.14神戸地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.01.20大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載
控訴審 H16.09.03大阪高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.01.21大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

判例MASTERⅡ
控訴審 H16.07.22大阪高裁判決(1)

【事案の概要】
入学手続後,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。
4月以降訴状によって解除と認定された。

【判断の内容】
在学契約は準委任類似の無名契約とし,入学金は授業料の前払的性格を有するものではなく,入学済みとして返還を否定。授業料等の不返還特約は9条1号により無効であるとし,訴状送達により解除した時点までの日割り計算をし,残りの期間分について返還を命じた。

◆ H16.01.28大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
入学金の返還については否定。授業料等についても,学校年度の開始(4月1日)後に契約を解除した場合には,不返還特約は9条1号及び10条によっても無効ではないとし,返還を否定した。

◆ H16.02.05大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金の返還を求めた。

【判断の内容】
入学金は「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.02.05東京地裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(ワ)第28402号求償金請求事件
判例タイムズ1153号277頁,金融法務事情1717号76頁
控訴審 H16.05.26東京高裁判決

【事案の概要】
信用保証委託契約に基づき,求償元金及び約定遅延損害金(年利18.25%)の支払を求めた。

【判断の内容】
遅延損害金につき,被告の主張を待たずに9条2号により年利14.6%を超える部分の約定は無効とした。

◆ H16.02.06大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金の返還を求めた。

【判断の内容】
入学金は「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.02.13大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
入学金及び授業料とも在学契約に伴う大学の種々の義務に対する対価として同じ性質であることを前提に,授業料を返還しないことは9条1号にいう平均的な損 害の額を超える部分に該当するとして返還を命じたが,入学金は平均的な損害の額を超える部分には該当しないとして返還義務を否定した。

◆ H16.02.18岡山地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第1058号学納金返還請求事件
最高裁HP
裁判官 小野木等,政岡克俊,永野公規

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
得べかりし利益は,9条1号の平均的損害には含まれない。本件特約のうち,授業料を返還しない部分は9条1号により無効であるとして返還を命じ,入学金に ついては「入学資格を得た対価」として返還義務を否定し,入学金の返還を認めない部分は,10条にも民法90条にも該当しないとした。

◆ H16.02.19大分簡裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(ハ)第267号原状回復等請求事件
消費者法ニュース60号59頁
裁判官 角南昌伸

【事案の概要】
自宅の床下に拡散送風機等を設置する請負契約の締結前,業者の従業員に対し,退去すべき旨の意思を表示したにもかかわらず退去しないことにより困惑し,そ れによって契約を締結したとして,契約を取り消すとともに,業者に対して既払い金の返還を,信販会社に対しては抗弁対抗により,債務不存在の確認を求め た。

【判断の内容】
「そのようなものは入れんでいい,必要ない。」「帰ってくれ。」「換気扇は必要ない,私らを騙しているんじゃないんか。」などと言っているにもかかわら ず,午前11時ころから午後6時30分ころまで勧誘して契約を締結したことにつき,不退去により困惑して契約を締結したものとして,請負契約の取消しを認 め,業者に対して既払い金の返還請求を,信販会社に対しては抗弁対抗を認め債務不存在を確認した。

◆ H16.02.23大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第9604号,10840号学納金返還請求事件
未登載
裁判官 横山光雄

【事案の概要】
専門学校合格後,入学を辞退した受験生が,入学金のみを支払った者は入学金を,入学金及び初年度授業料等を支払った者はこれら双方の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料等を納めた者の退学は入学式(4月5日)及び学科ガイダンス(4月8日)を受けた後の4月8日であったが,授業料等を返還しないとの特約は9条1号 に該当する条項であり,被告には平均的損害は認められず9条1号により無効であるとして全額の返還を認め,入学金については「入学しうる地位の対価」とし て返還義務を否定した。

◆ H16.02.26東京高裁判決

2010年5月16日 公開

平成16年(ツ)第9号貸金請求上告事件
消費者法ニュース65号35頁
裁判官 鬼頭季郎,小池信行,任介辰哉
第1審 H15.05.13千葉簡裁判決
控訴審 H15.10.29千葉地裁判決

【事案の概要】
貸金業者の保証人に対する保証債務履行請求。実質的借主が誰であるか,主債務者の支払能力,融資金の使用目的及び弁済金の支払い方法について,虚偽の事実 を主債務者から告げられ,保証人が誤信している状態にあることを知りながら,あえてこれを告げずに保証契約を締結させた貸金業者の行為が不実告知にあたる として,保証契約について4条1項1号による取消しを主張した。

【判断の内容】
① 本件連帯保証契約における主債務者及びその支払能力,融資金の使用目的及び弁済金の支払方法は4条1項1号の重要事項にあたる。
② これらについて主債務者から虚偽の説明を受け保証人が誤信していることを知りながら,あえて沈黙して保証契約を締結させた貸金業者の行為は不実告知に当たる。
として,不作為による不実告知を認めて4条1項1号による取消しを認め,貸金業者の請求を棄却した。

◆ H16.03.05大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第6380号,9634号学納金返還請求事件,平成15年(ワ)第434号学納金返還請求事件
消費者法ニュース60号207頁,国セン報道発表資料HP2006年10月6日
裁判官 村岡寛,小堀悟,小川暁

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
入学金は在学契約申込み資格を保持し得る権利取得の対価及び入学手続事務に関する諸費用に充当されるもの。所定の書類を入学式以前の期日までに提出していなかったり,入学式欠席で何の連絡もしていない者はこれらによって在学契約を黙示的に解除したものである。
退学については保証人との連署で退学届を提出する旨の学則があっても民法の準委任規定の趣旨等に照らして契約関係からの離脱の自由を制約することはできないから,この学則は障害となるものではなく解除は有効。
学友会費等は代理徴収だから,返還請求は学友会等にすべきである。公募推薦入学試験についても入学辞退による不当利得返還請求権をあらかじめ,放棄するま での意思を認めることはできない。平均的損害の立証責任は消費者にある。この損害は民法651条2項に基づく損害賠償であるから解除が不利益な時期になさ れた結果の損害を指す。
3月31日までに解除した場合,被告には損害はなく,4月1日以降の解除は春学期の授業料等相当額の限りで保護すべき利益がある。
なお,平均的損害については他の同種大学における前期(春学期)授業料の平均値について原告が立証していないから,被告大学等の初年度春学期の授業料等の 額をもって平均的損害と解するほかない。以上のことより,授業料等の返還については,3月31日までに解除した者については,返還しない旨の特約は9条1 号により無効であるとして返還を命じ,4月1日以降の入学辞退者については,春学期授業料等の返還を否定し,入学金については返還義務を否定。

◆ H16.03.16京都地裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(ワ)第162号敷金返還請求事件,第1214号損害賠償請求事件,第2075号損害賠償請求反訴事件
最高裁HP兵庫県弁護士会HP国セン暮らしの判例集HP2004年6月
裁判官 田中義則
控訴審 H16.12.17大阪高裁判決

【事案の概要】
賃貸マンションの解約時にクロスの汚れなどの自然損耗分の原状回復費用を借主に負担させる特約を理由に,敷金を返還しないのは違法として,家主に敷金20万円の返還を求めた。なお,賃料には原状回復費用は含まないと定められている。

【判断の内容】
通常の使用による損耗(自然損耗)の原状回復費用を借主の負担と定めた入居時の特約について,「自然損耗等による原状回復費用を賃借人に負担させること は,賃借人の目的物返還を加重するもの」であり,「契約締結にあたっての情報力及び交渉力に劣る賃借人の利益を一方的に害する」と判断し,10条に照らし て無効とし,全額返還するよう命じた(10条と民法90条との関係は特別法と一般法との関係にあたり10条により無効とされれば,民法90条により無効か 否かを判断する必要はないとした。)。なお,本件賃貸借契約は平成13年4月の消費者契約法施行前だったが,施行後に合意更新されていることから,消費者 契約法は適用できるとの判断も示した。消費者契約法に基づき自然損耗分を借主負担と定めた特約自体を無効とした全国で初めての判決である。

◆ H16.03.22大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第9601号学納金返還請求事件
未登載
裁判官 西川知一郎,木太伸広,山本陽一

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した合格者が,前納した入学金の返還を求めた。

【判断の内容】
入学金を払った時点で双方の間に在学契約関係を成立させることを内容とする法律関係が成立しており,所定の期限までにその他の学納金を納入するなど所定の 手続を完了することにより,在学関係を成立させることができる地位を合格者は得ていたとし,入学金は入学に向けての人的,物的設備の整備や事務手続き等の 経費を賄うものとしての性格に加えて,入学しうる地位の対価であるとして返還義務を否定した。

◆ H16.03.22東京地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載
控訴審 H17.02.24東京高裁判決(1)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【内容の判断】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。4月1日以後間もない入学辞退者についても,在学契約の解除によって大学に発 生する具体的な損害はないことについて4月1日より前の入学辞退者と異なることはないとした。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否 定した。

◆ H16.03.25大阪地裁判決(1)

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第6381号学納金返還請求事件
未登載
裁判官 川神裕,山田明,川朋子

【事案の概要】
大学合格後,3月10日ごろ学納金返還システムの問い合わせをし,4月1日入学式を欠席した合格者が3月10日または遅くとも4月1日に入学を辞退したことにより,前納した入学金及び春期授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
4月1日の入学式欠席について大学からその理由の確認があり,この時に入学辞退の意思表明が認められるが,入学辞退が4月1日になされていることによって 大学には少なくとも平均的損害として,半年分の授業料及び施設費等の損害が生じているとして,春期授業料等の返還を否定した。入学金については「学生とし ての地位の取得の対価」であるとともに「入学の手続等の手数料又は費用である」として返還義務を否定した。

◆ H16.03.25大阪地裁判決(2)

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第9620号学納金返還請求事件
未登載
裁判官 川神裕,山田明,川朋子

【事案の概要】
4月1日より前に入学を辞退した合格者が,前納した入学金及び春期授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
平均的損害について立証責任は消費者にあるとし,被告が平均的な損害額を4年分の授業料相当額としたのに対しては,在学契約は準委任又はこれに準ずる性質 を有する無名契約であり,ここにいう損害とは,契約が存続・継続することを想定していたため,他の収入を得る機会を失ったことなど,解除が不利な時期にさ れたことから生ずる損害に限定すべきであり,受け取るはずであった授業料の逸失をもって平均的損害ということはできないとし,また,被告が非財産的損害が 生じたとしたのに対しては,9条1項にいう「平均的損害」には非財産的損害が含まれるとは解することができないとした。そして,入学辞退が4月1日より前 であったことから,4月1日までの入学辞退による平均的な損害の発生はないから,入学金を除く春期授業料等については返還すべきであり,春期授業料等を返 還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「学生としての地位の取得の対価」であり,「入学手続及び受入準備に要 する手数料又は費用」「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.03.30仙台地裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(ワ)第343号不当利得返還請求事件
未登載
裁判官 髙木勝己

【事案の概要】
合格者が3月22日入学を辞退し,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学手続上の諸費用」であるとともに「入学できる地位を取得することへの対価」であるとして返還義務を否定した。
なお,平均的損害については,事業者たる被告がその情報,証拠を保有しているのであるから被告が主張,立証責任を負うとした。また,被告が4年間の学納金 全額が平均的損害になるとしたのに対し,入学辞退者が相当数あることを予測しており,定員を大きく上回る数の学生が入学している事実が認められ,事前に予 測できた範囲内の辞退者から4年間の学納金が得られなかったとしても,それは平均的損害とはいえず,原告の入学辞退が被告の予測の範囲を超えていると認め られず,むしろ定員を大きく上回る入学者がおり,平均的損害は発生しているとは認められないとした。
なお,代理徴収している後援会費等については預り金的性格であり,教育役務等の提供に密接に関連するものであるから,授業料と一体として検討されるべきものとしている。

◆ H16.03.30東京地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第20640号不当利得返還請求事件
未登載
控訴審 H17.03.10東京高裁判決
上告審 H18.11.27最高裁判決(1)
差戻審 H19.05.23東京高裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。但し,原告のうち授業が開始される前に在学契約を解除していない者については,授業料の返還を否定した。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.04.20名古屋地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
除籍の日の翌日から当該会計年度の末日までの期間に対応する授業料等の額をもって9条1号にいう「平均的な損害の額」と解するのが相当とし,授業料を返還 しないとの特約は同号によっても無効とならないとした。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.04.22大阪高裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(ネ)第2237号立替金請求控訴事件
消費者法ニュース60号156頁
裁判官 井上正明,中村哲,久保田浩史

【事案の概要】
一般市場価格として41万4000円と表示された値札を付けて陳列されていたファッションリングを29万円で購入した購入者に対し,信販会社が立替金の支払いを求めた。

【判断の内容】
一般的な小売価格は4条4項1号に掲げる重要事項に該当し,これに不実告知があったとして,購入者による売買契約の取消しを認めた。

◆ H16.04.30東京地裁判決

2010年5月16日 公開

平成14年(ワ)第20659号,第26683号,平成15年(ワ)第4440号不当利得返還請求事件
未登載
裁判官 宇田川基,室橋秀紀,岡部純子
控訴審 H17.03.30東京高裁判決
上告審 H18.11.27最高裁判決(6)

【事案の概要】
大学の入学試験に合格し,学納金を納付した後に入学を辞退し,民法又は9条1号,10条により学納金の返還を求めた。

【判断の内容】
①入学金は,在学契約により取得する地位及び利益に対する対価であり,返還を求めることはできないとした。
②平均的損害の立証責任は事業者側にあるとした。
③消費者契約法施行前の契約については返還を認めなかった。
④消費者契約法施行後の在学契約につき,3月31日までの入学辞退者については授業料の返還を認めた。
⑤不返還合意は消費者契約法10条に該当しないとした。

◆ H16.05.19大阪高裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(ネ)第3268号学納金返還請求控訴事件
国セン報道発表資料HP2006年10月6日
裁判官 小田耕治,山下満,下野恭裕
第1審 H15.10.06大阪地裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
原審と同じ
① 在学契約について,主として準委任契約,付随的に施設利用契約等の性質を併せ持つ有償双務の無名契約であるとした。
② 入学金について,当該大学に入学し得る地位を取得することへの対価であり,一部は,全体としての教育役務等の提供のうち,入学段階における人的物的設 備の準備,事務手続費用等,大学が学生を受け入れるために必要な準備行為の対価としての性質をも併せ有しているとして,返還義務を否定した。
③ 授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして,授業料の返還を命じた。
④ 「平均的な損害の額」(9条1号)の立証責任は消費者側にあるとした。

◆ H16.05.20大阪高裁判決

2010年5月16日 公開

未登載
原審 H15.10.28大阪地裁判決

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料の返還を求めた。消費者契約法施行前の事例。

【判断の内容】
原審と同じ
①在学契約は準委任ないし類似の無名契約であるとした上で,②入学金について「入学資格を得た対価」として,③授業料については,不返還特約は公序良俗に 反しないとし,④後援会等については,学校以外の団体に帰属し,学校に対する返還請求はできないとして,各返還義務を否定した。

◆ H16.05.26東京高裁判決

2010年5月16日 公開

平成16年(ネ)第1432号求償金請求控訴事件
判例タイムズ1153号275頁,金融法務事情1717号74頁
第1審 H16.02.05東京地裁判決
裁判官 雛形要松,山崎勉,浜秀樹

【事案の概要】
信用保証委託契約に基づき,求償元金及び約定遅延損害金(年利18.25%)の支払を求めた。

【判断の内容】
遅延損害金につき,被告の主張を待たずに9条2号により年利14.6%を超える部分の約定は無効とした。
事業者と「個人」との間で契約を締結したことについては消費者契約法の適用があると主張する側に主張立証責任があるが,「事業として又は事業のために契約の当事者となったこと」については,その不適用を主張する側に主張立証責任があることを前提として判断した。

◆ H16.06.04大阪地裁判決

2010年5月16日 公開

未登載

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。

【判断の内容】
授業料を返還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。

◆ H16.06.11京都地裁判決

2010年5月16日 公開

平成15年(ワ)第2138号敷金返還請求事件
兵庫県弁護士会HP,消費者法ニュース61号157頁
裁判官 福井美枝
控訴審 H17.01.28大阪高裁判決
上告審 H17.06.14最高裁第三小法廷上告申立不受理

【事案の概要】
通常の使用に伴う自然損耗分も含めて賃借人の負担で契約開始当時の原状に回復する旨の特約のある建物賃貸借契約の解約に際し,当該特約が無効であるとして敷金の返還を求めた。

【判断の内容】
原状回復の要否の判断が専ら賃貸人に委ねられていることや,賃貸人が賃借人に代わって原状回復を実施した場合に賃借人が負担すべき費用を算出する基礎とな る単価について上限の定めがないことに加え,集合住宅の賃貸借において,入居申込者は賃貸人側の作成した定型的な賃貸借契約書の契約条項の変更を求めるよ うな交渉力を有していない一方,賃貸人は将来の自然損耗による原状回復費用を予測して賃料額を決定するなどの方法を採用することが可能であることなどか ら,当該特約はその具体的内容について客観性,公平性及び明確性を欠く点において信義則に反する程度に消費者の利益を一方的に害するものとして10条によ り無効とされた。

◆ H16.06.25神戸簡裁判決

2010年5月16日 公開

平成16年(ハ)第335号リース料請求事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 岩谷憲一

【事案の概要】
通信機器のリース契約に基づきリース会社がリース料の支払いを求めたのに対し,当該リース契約の締結に際し,リース契約の当事者ではない取扱店の従業員による勧誘が不実告知にあたるとして,リース契約の取消しを主張した。

【判断の内容】
取扱店とリース会社との密接な関係を前提に,当該従業員による勧誘が「NTTの回線がアナログからデジタルに変わります。今までの電話が使えなくなりま す。この機械を取り付けるとこれまでの電話を使うことができ,しかも電話代が安くなります。」と虚偽であったことに関し,4条1項1号によるリース契約の 取消しを認めた。



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