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「2010年7月」アーカイブ|消費者契約法判例集

◆ H21.01.21神戸地裁判決

2010年7月31日 公開

平成20年(レ)第98号敷金返還請求控訴事件
未登載
裁判官 下野恭裕,齋藤大,桂川瞳
原審 神戸簡裁平成19年(ハ)第11981号

【事案の概要】
敷金返還請求。原審は敷引条項が10条違反であるとして返還請求を認めたが,控訴された。

【判断の内容】
原判決を取り消し,敷引条項が10条違反でなく有効とした。
① 民法は賃料以外の金銭負担を予定していないが,これと異なる合意を当事者間ですることが全て不当とまではいえない。
② 関西においては敷引の慣行が相当定着している。
③ 敷引特約があれば長く刈り続ければ賃借人にも一定のメリットがある。
④ 退去時の修繕費を巡る無用な争いを避けることができるなど一定の利点もある。
⑤ 後段要件については,賃借人が敷引特約の内容について認識していたかどうか,敷引特約があることによって,敷引額に相応して賃料が低額になっていたか どうか,敷引特約が存在しない賃貸物件を選択する可能性がどの程度あったか,原状回復費用の負担はどうなっていたのか等の諸般の事情を総合考慮して判断す べき。
⑥ 本件では,敷引条項は一義的に明確であり,賃借人は明確に認識していた。他のマンションを賃借する可能性もあった。敷引額も不当に高額とは言えない。 賃借期間が4年3ヶ月にわたった。修繕費が66万円かかっており,賃借人が負担を免れていること等から,後段要件は満たさない。

◆ H21.07.10横浜地裁判決

2010年7月9日 公開

平成19年(ワ)第2840号報酬契約金請求事件
判例時報2074号97頁、2111号154頁
裁判官 宮坂昌利

【事案の概要】
弁護士である原告が,依頼者である被告から委任の途中で解任されたことに関し,未払いの着手金残額及びみなし報酬特約または民法130条の規定によるみなし条件成就を主張して報酬の支払いを求めた事案。

【判断の内容】
みなし報酬特約は9条1号に反し無効であるとして請求を棄却した。
① 弁護士との委任契約は消費者契約にあたる。
② 委任者が受任者をその責めによらない事由によって解任したときは,委任の目的を達したものとみなし,報酬の全額を請求できるとするみなし報酬特約は,民法648条3項の特則にあたり,損害賠償額の予定または違約金の定めにあたる。
③ 平均的損害について,当該事件処理のために特別に出捐した代替利用の困難な設備,人員整備の負担,当該事件処理のために多の依頼案件を断らざるを得な かったことによる逸失利益については,通常の弁護士業務体制を想定した場合,本件遺産分割調停事件の受任のためにこのような損害が通常発生するとは言い難 い。
 当該事件にかかる委任事務処理費用の支出,当該事件処理のために費やした時間及び労力については,通常,着手金によってまかなうことが予定されている。
 本件委任契約の定める報酬を得ることができなかった逸失利益については,中途解約にかかる損害賠償額の予定を適正な限度に制限する9条1号の趣旨からは,民法130条の適用があり得ることは格別,平均的損害には含められない。

◆ H17.10.26東京地裁判決

2010年7月8日 公開

平成17年(レ)第149号更新料請求控訴事件
LLI
裁判官 井上哲男,桑原直子,西尾洋介

【事案の概要】
居室賃貸借契約の更新料請求。更新料特約が10条に違反するか否かが争われた。更新料は賃料1ヶ月分,期間2年。

【判断の内容】
更新料請求を認めた。
本件更新特約は,更新料という負担はあるが,期間満了後の使用継続状況をもって,期間の定めのあった建物賃貸借契約が期間の定めのない賃貸借契約になるこ とを防ぎ,2年間という契約期間は本件居室についての賃借権を確保するものであり,むしろ,本件更新特約は賃借人としての権利を実質的に強化するものとし た。

◆ H21.06.19大阪高裁判決

2010年7月8日 公開

平成20年(ネ)第3256号敷金返還等請求控訴事件
未登載

【事案の概要】
敷引特約を有効とした。
判例時報2066号84頁(H21.09.25京都地裁判決(1)の解説)に記載あり。

◆ H21.03.27大津地裁判決

2010年7月8日 公開

平成20年(ワ)第525号
判例時報2064号70頁
裁判官 阿多麻子
控訴審 H21.10.29大阪高裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,更新料支払条項が10条違反であるとして,更新料の返還を求めた事例

【判断の内容】
次の理由から,10条違反とはいえないとして請求を棄却した。
① 更新料は,京滋地域では慣行となっており,借りようとする者も一般的に認識しており,また,賃貸人賃借人とも,物件の使用収益の対価としてかかる一時金が設けられているという限度で認識は一致しており,賃料の補充の性質を有する。
② 更新拒絶権放棄の対価の性質,賃借権強化の機能は認められるが,本件では希薄。
③ 約款を用いた取引であっても,核心的合意部分については交渉過程及び契約内容に顧客の意向が反映されるのであるから,企業者が定型的処理のため一方的に定めた技術的事項や付随的条件とは異なり,解釈にあたって,約款の特殊性に応じた厳密な内容規制を及ぼす必要はない。
④ 10条前段要件は満たす。
⑤ 10条後段要件について,「消費者の利益を一方的に害する」とは,事業者と消費者との間の情報力・交渉力の格差によって消費者に判断の前提となるべき情報が提供されず条項の了知が期待できないこと,あるいは,市場における競争原理が有効に機能していないことから,私的自治の原則や契約自由の原則に修正を加えなければならないほどに,消費者の利益が不当に侵害されていることと解するのが相当。
⑥ 本件では,原告は更新料の内容を認識しており,自由な選択で契約したもの。格差につけ込んで押しつけたものとはいえない。中途解約の場合も返還されないことを認識した上で放棄したもの。

◆ H18.11.09東京地裁判決

2010年7月7日 公開

平成18年(ワ)第3471号不当利得返還請求事件
LLI
裁判官 村田渉

【事案の概要】
有料老人ホームの入居申込金等の返還請求。東京都の指針に反していることを告げないことが不利益事実の不告知となるか,入居申込金の追加支払条項,不返還条項が10条違反となるかが争われた。

【判断の内容】
次の理由から請求を棄却した。
① 東京都の指針は重要事項には当たらない。
② 本件追加支払条項は10条違反ではない。
③ 本件不返還条項は,保証金の入居月数に応じた返還金の算定方式が明確にされており,かつ一時金のうち返還対象とならない部分の割合が不適切であると認めるに足りる証拠もない。
④ 本件入居申込金,施設協力費及び保証金がいずれも実質的に居住サービスの対価であると断定することはできず,また保証金の償却が解約による平均的損害額を超えるものであると認めるに足りる証拠もない。

◆ H21.05.19東京地裁判決

2010年7月7日 公開

平成20年(ワ)第7387号入居金返還請求事件
判例時報2048号56頁,現代消費者法7号92頁

【事案の概要】
介護付有料老人ホームの終身利用権金,入居一時金の返還請求。終身利用権金についての不返還合意,入居一時金の償却合意が9条1号,10条違反となるかが争われた。

【判断の内容】
次の理由から請求棄却した。
① 本件終身利用権金は,入居予定者が原則として終身にわたって利用し各種サービスを受けうる地位を取得するための対価。違約金の定めではなく,10条違反でもない。
② 本件入居一時金は,老人ホームを維持運営するための重要な財源。償却合意は,入居者の入居のための人的物的設備の維持等にかかる諸費用の一部を補う目的,意義を有する。
③ 償却期間は設置者が経営に関する諸事情を踏まえて決定しうる。簡易生命表に照らして,2年6月,3年の期間で償却することも不当ではない。

◆ H22.02.25東京地裁判決

2010年7月7日 公開

平成20年(ワ)第9322号,平成21年(ワ)第5693号各工事代金等請求事件
金融商事判例1338号21頁
裁判官 武笠圭志

【事案の概要】
LPガス供給設備の設置契約に,契約終了時のバルク設備の買取義務が規定されていた事案で,設置業者が買取代金を請求した事案。設置業者が,勧誘に際し顧客に買取義務を告知しなかったことが不利益事実の不告知にあたるかが争われた。

【判断の内容】
次の理由から,不利益事実の不告知による取消を認め請求を棄却した。
① 契約終了時にバルク設備の買取義務が発生すること及びその金額は当該契約の重要事項にあたる。
②設置に関して工事費その他の費用がかからないことを告げられたことにより,契約上買取義務が明記されているという事実が存在しないと通常考えると解するのが相当。

◆ H17.09.29東京地裁判決

2010年7月7日 公開

平成15年(ワ)第13323号土地建物根抵当権設定登記抹消登記等請求事件
判例タイムズ1203号173頁,LLI
裁判官 金子順一,白川純子,豊田哲也

【事案の概要】
建物建築資金の金銭消費貸借契約,根抵当権設定契約について,建築業者による不実告知,不利益事実の不告知を理由に取消を求めた事案

【判断の内容】
消費者契約法による取消は認めなかった(連帯保証人について意思無能力による無効を認めている)。
① 建築業者による建築請負契約勧誘について不実告知があったとしても,それが貸金業者による金銭消費貸借契約に関する不実告知とはならない。
② 不利益事実の不告知については,そもそも利益となる旨を告げていないのであり,不利益となる事実を告げていないか否かを検討するまでもなく4条2項による取消を認めることはできない。



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