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「2010年6月」アーカイブ|消費者契約法判例集

◆ H21.12.15大阪高裁判決

2010年6月27日 公開

平成21年(ネ)第2154号保証金返還請求控訴事件,同第2551号同附帯控訴事件
未登載
裁判官 一宮和夫,富川照雄,山下寛
原審 H21.07.30京都地裁判決
上告審 H23.07.12最高裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,敷引条項が無効であるとして返還を求めた事例

【判断の内容】
敷引条項が無効であるとして返還請求を認めた。

◆ H21.12.22名古屋地裁判決

2010年6月27日 公開

平成20年(ワ)第6505号不当利得返還等請求事件
消費者法ニュース83号223頁,国セン報道発表資料(2011年11月11日公表)
裁判官 宮永忠明

【事案の概要】
原野商法被害者が,販売業者に対して支払った測量代,広告費用の返還を求めた事例。広告契約についての不実告知による取消が問題となった。

【判断の内容】
以下の理由から,広告契約について不実告知による取消を認め,広告費用の返還請求を認めた。
① 広告契約の締結について,本件土地の売却可能性は,4条1項1号,4条4項1号の「用途その他の内容」についての重要事項にあたる。
② 売却可能性が少なく広告掲載による原告の利得はない。

◆ H22.02.19京都簡裁判決

2010年6月27日 公開

平成21年(少コ)第194号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 谷澤和明

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,敷引条項が無効であるとして返還を求めた事例

【判断の内容】
敷引条項が無効であるとして返還請求を認めた。
消費者が契約内容を理解するよう努めるとの3条は努力義務であり,仮に違反があっても消費者契約法が適用されないことにはならない。

◆ H22.02.24大阪高裁判決

2010年6月27日 公開

平成21年(ネ)第2690号更新料返還等,更新料反訴,保証債務履行請求控訴事件
金融商事判例1338号21頁,消費者法ニュース84号233頁
裁判官 安原清藏,坂倉充信,和田健
第1審 H21.09.25京都地裁判決(1)
上告審 H23.07.15最高裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,更新料条項及び定額補修分担金条項はいずれも10条に反し無効であるとして,賃貸借契約中に3回にわたり支払った更新料合計22万8000円及び契約締結時に支払った定額補修分担金12万円の返還を求めた事案

【判断の内容】
更新料条項,定額補修分担金条項がいずれも10条違反で無効として返還請求を認めた。
更新料の収入を確保しようとするのであれば,端的に更新料相当分を賃料に上乗せした賃料の設定をして賃借人となろうとする者に提示し,賃借するか否かを選択させることが要請される。

◆ H22.03.11大阪高裁判決

2010年6月27日 公開

平成21年(ネ)第2691号定額補修分担金返還請求控訴事件
未登載
裁判官 紙浦健二,川谷道郎,神山隆一
原審 京都地裁判決平成20年(ワ)第3152号

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,定額補修分担金条項は10条に反し無効であるとして,契約締結時に支払った定額補修分担金25万円の返還を求めた事案

【判断の内容】
定額補修分担金条項が10条違反で無効として返還請求を認めた。
① 「民法,商法その他の法律の公の秩序に関しない規定」には,民法等の解釈に関する最高裁判所の判例も含まれる。
② 定額補修分担金条項が「射幸契約」であり10条後段要件に該当しないとの点は,情報格差のない対等な立場にある当事者が互いに駆け引きをしながら具体的な分担金額を決定するのであればよいが,本件ではそうではない。

◆ H22.03.26大阪高裁判決

2010年6月27日 公開

平成21年(ネ)第2692号定額補修分担金条項使用差止請求控訴事件
消費者庁HP(PDF)判決写し(PDF、京都消費者契約ネットワークHP)
裁判官 三浦潤,中村昭子,森宏司
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 株式会社長栄
第1審 H21.09.30京都地裁判決
強制執行 H23.11.24京都地裁決定

【事案の概要】
適格消費者団体が,不動産賃貸業及び不動産管理業を目的とする事業者である被告に対し,定額補修分担金条項が10条に反して無効であるとして,定額補修分担金条項を含む意思表示をすることの差止め及び同条項を含む契約書用紙の破棄等を求めた事案

【判断の内容】
① 41条1項の事前の書面による請求は,事業者等に対し早期に取引の実情を把握して自ら是正する機会を与えるとともに,これにより紛争の早期解決と取引の適正化を図る観点から,訴訟に先立ち請求することを義務づけたものであり,同項及び同法施行規則32条1項に定められた事項以外の事項が記載されていたからといって事前の書面による請求にあたらないとはいえない。
② 定額補修分担金条項は10条に反して無効。
③ マスコミを通じて使用しないことを表明していても,経営判断が状況に応じて変転する可能性も高く,また,10条違反性を強く争っている以上,使用する恐れがあるといえる。
④ 合意更新の際には,定額補修分担金条項を含んだ契約の申し込みまたは承諾の意思表示があるものとは認められない。
⑤ 従業員への指示を求める請求は,特定として欠けるところはない。
⑥ 2年近く使用していないこと等から,従業員らへの指示の必要性はない。

◆ H22.03.30最高裁判決(1)

2010年6月27日 公開

平成21年(受)第1232号学納金返還請求事件
最高裁HP,裁判所時報1505号148頁,判例タイムズ1323号102頁,判例時報2077号44頁、国センHP(消費者問題の判例集)
裁判官 田原睦夫,藤田宙靖,堀籠幸男,那須弘平,近藤崇晴
第一審 大阪地裁平成19年(ワ)第4451号
控訴審 H21.04.09大阪高裁判決

【事案の概要】【判断の内容】
専願等を資格要件としない大学の推薦入試の合格者が入学年度開始後に在学契約を解除した場合において,学生募集要項に,一般入試の補欠者とされた者につき 4月7日までに補欠合格の通知がない場合は不合格となる旨の記載があるなどの事情があっても,授業料等不返還特約は有効であるとされた事案

◆ H21.04.09大阪高裁判決

2010年6月27日 公開

平成20年(ネ)2706号学納金返還請求控訴事件
法ニュース速報1043
裁判官 一宮和夫,富川照雄,山下寛
第1審 大阪地裁平成19年(ワ)第4451号
上告審 H22.03.30最高裁判決(1)

【事案の概要】
医大における推薦入学合格者の前期授業料の返還請求

【判断の内容】
4月1日以降(4月5日)に入学辞退した場合についても,4月7日まで補欠合格をする取り扱いがされているとの特段の事由があり,平均的損害を生じていないとして,返還請求を認めた。

◆ H22.03.30最高裁判決(2)

2010年6月27日 公開

平成20年(受)第909号損害賠償,立替金請求事件
最高裁HP,裁判所時報1505号145頁,判例タイムズ1321号88頁,金融商事判例1341号14頁,1344号14頁,判例時報2075号32頁,国セン報道発表資料(2011年11月11日公表)
裁判官 藤田宙靖,堀籠幸男,那須弘平,田原睦夫,近藤崇晴
第一審 H19.05.22札幌地裁判決平成18年(ワ)第1096号、同第1396号
控訴審 H20.01.25札幌高裁判決

【事案の概要】
金の先物取引の勧誘を受けて契約し損害を被った者からの委託証拠金の返還請求と,業者からの差損金請求の反訴。断定的判断の提供,不利益事実の不告知による取消が争われた。

【判断の内容】
① 断定的判断の提供は認められない。
② (不利益事実の不告知について)
 4条2項本文にいう「重要事項」とは,4条4項において,当該消費者契約の目的となるものの「質,用途その他の内容」又は「対価その他の取引条件」をい うものと定義されているのであって,4条1項2号では断定的判断の提供の対象となる事項につき「将来におけるその価額,将来において当該消費者が受け取る べき金額その他の将来における変動が不確実な事項」と明示されているのとは異なり,4条2項,4項では商品先物取引の委託契約に係る将来における当該商品 の価格など将来における変動が不確実な事項を含意するような文言は用いられていない。そうすると,本件契約において,将来における金の価格は「重要事項」 に当たらないと解するのが相当。

◆ H22.05.27大阪高裁判決

2010年6月27日 公開

平成21年(ネ)第2548号更新料支払請求控訴事件
未登載
裁判官 紙浦健二,川谷道郎,宮武康
第1審 H21.09.25京都地裁判決(3)

【事案の概要】
居室賃貸借契約における更新料請求。更新料条項が10条違反かが争われた。

【判断の内容】
以下のように判断し,更新料請求を棄却した原判決を維持した。非常に詳細に検討がなされている。
① 更新料がいかなる性質のものであるかは,当該賃貸借契約成立後の当事者双方の事情,当該更新料の支払の合意が成立するに至った経緯その他諸般の事情を総合考慮したうえ,具体的事実関係に即して判断されるべきもの。
② (更新料発生経緯からの検討)昭和30年代末ころ以降地価の高騰が激しかった当時においては,長期間の賃貸借契約の場合に賃料に反映させることができ ず更新料として回収がはかられ,高騰が続いていた当時においては合理性がないとまでは言えないが,地価の高騰がおさまりむしろ賃料の横ばい,下落が認めら れるようになった平成18年時点においては合理性はなく,賃貸人の利益確保を狙った不合理な制度である。
③ (更新料の性質からの検討)賃料の補充,更新拒絶権の放棄の対価,賃借権強化の対価の性質も認められない。
④ 更新料が社会的承認を得ているとは言えない。生活保護において更新料が扶助されているとしても,それは更新料を合理的な制度と認めているものではない。
⑤ 本件更新料条項は,10条前段,後段を満たす。更新料条項はいわゆる中心条項ではない。

◆ H21.10.29大阪高裁判決

2010年6月25日 公開

平成21年(ネ)第1211号更新料返還等請求控訴事件
判例時報2064号65頁
裁判官 三浦潤,大西忠重,井上博喜
原審 H21.03.27大津地裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,更新料支払条項が10条違反であるとして,更新料の返還を求めた事例

【判断の内容】
以下の理由により,更新料の返還請求を棄却した。
① 本件更新料支払条項は10条前段を満たす。
② 礼金の趣旨は,賃貸借期間を2年とする賃借権の設定を受けた賃借人としての地位を取得する対価。
③ 更新料の支払により,期間の定めのある賃貸借契約として更新されることや,更新料を含めた負担額を事前に計算することが特段困難とはいえないこと,更新料が比較的低額であることなどから,10条後段を満たさない。

◆ H21.12.03大阪高裁判決

2010年6月25日 公開

平成21年(ネ)第2005号敷金返還請求控訴事件
未登載
裁判官 三浦潤,大西忠重,井上博喜
原審 H21.07.02京都地裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,保証金から一定の金額を解約引金として控除して返還するとの特約が10条違反であるとして返還を求めた事例

【判断の内容】
解約引条項が無効であるとして返還請求を認めた。

◆ H21.05.21京都地裁判決

2010年6月16日 公開

平成21年(レ)第14号保証債務履行請求控訴事件
未登載
裁判官 辻本利雄,和久田斉,戸取謙治
原審 H21.01.13右京簡裁判決

【事案の概要】
連帯保証人に対する貸金業者からの保証債務履行請求。

【判断の内容】
次の理由から,消費者契約法による取り消しを否定して原審判決を取り消し,錯誤無効の主張も排斥して請求を認容した。
① 「消費者」(2条1項)とは,消費者契約法が制定された趣旨からすると,自らの事業としてでなく,自らの事業のためにでもなく契約の当事者となる主体をいう。
② 「媒介の委託を受けた第三者」(5条)とは,事業者が第三者に媒介を委託して事業活動を拡大し,利益を得ている以上,その第三者の行為による責任を事業者も負担すべきであるという趣旨にかんがみ,その第三者が媒介の委託を受けた事業者との共通の利益のために契約が締結されるよう尽力し,その契約締結について勧誘をするに際しての第三者の行為が事業者の行為と同視できるような両者の関係が必要となる。
 本件借主は,事業者である貸金業者の事業活動拡大等のためではなく,あくまで自らが資金を獲得するという利益のために保証人となるように依頼したのであり,貸金業者と共通の利益を有しているということはできず,第三者にあたらない。

◆ H21.06.04名古屋簡裁判決

2010年6月16日 公開

平成20年(少コ)第438号敷金等返還請求事件(通常訴訟手続に移行)
最高裁HP
裁判官 佐藤有司

【事案の概要】
建物賃貸借契約において,敷引条項を無効として返還請求を認めた事例。

【判断の内容】
以下の理由から,本件敷引条項は10条違反で無効として返還請求を認めた。
① 敷金は一般に賃貸借契約から生ずる賃借人の債務を担保するために賃借人から賃貸人に差し入れられたものであるから,賃借人に未払家賃,修繕費等の債務 がない場合には,他に合理的な理由がない限り,賃貸人は賃借人に返還する義務を負い,これと異なる定めは10条により無効になる。
② 本件で合理的理由はない。

◆ H21.06.16大阪高裁判決

2010年6月16日 公開

平成21年(ネ)第527号敷引条項使用差止請求控訴事件
消費者庁HP判決写し(PDF、京都消費者契約ネットワークHP)
裁判官 渡邉安一、安達嗣雄、明石万起子
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 大和観光開発株式会社
第1審 H21.01.28京都地裁判決

【事案の概要】
適格消費者団体が不動産賃貸業者に対し,10条違反である敷引条項の使用差止,及び差止に必要な措置を求めたところ,使用差止については業者が請求を認諾したため,差止に必要な措置の命令の可否が争われた事案

【判断の内容】
控訴棄却。
①従業員らに対して当該条項を含む意思表示を行うための事務を行わないよう指示することという主位的請求については,事業者に特定の作為を求める給付の訴えであり、債務名義として執行によって実現される事業者の義務を控訴人は明らかにする必要があるが、控訴人の請求は、当該条項を使用した意思表示を行うための事務を行わないよう指示を求めるだけであり、書面によることの要否等、その方法、程度、内容が一義的には明らかでなく、どのような措置をとれば法的義務を履行したことになるのか明らかでないことから、請求の特定を欠き不適法。
②予備的請求として、従業員らに対して、当該条項を含む意思表示を行うための事務を行わないよう周知徹底させる内容を記載した書面の配布を行うよう求めたことについて,被控訴人がその従業員等に対して、当該条項を含む意思表示を行うための事務を行わないよう周知徹底していること等を主張しているのに対し、控訴人は、被控訴人が当該条項を含んだ意思表示を行うおそれがあることを基礎付ける事実を何ら主張せず、被控訴人が当該条項を含んだ意思表示を行う蓋然性が客観的に存在していると認めることはできない。

◆ H21.06.19東京地裁判決

2010年6月16日 公開

平成20年(ワ)1275号立替金請求事件
判例時報2058号69頁,消費者法ニュース83号220頁,国セン報道発表資料(2011年11月11日公表)
裁判官 外山勝浩

【事案の概要】
医療機関との間で包茎手術とこれに付随するコラーゲン注入術の診療契約を締結した際,クレジット会社との間で治療費の立替払い契約を締結した事案。

【判断の内容】
当該手術が医学的に一般に承認された方法で行われると考えるのが通常であること,本件亀頭コラーゲン注入術が医学的に一定の効果を有するものであったとしても,当該術式が医学的に一般に承認されたものとはいえない場合には,その事実は4条2項の「当該消費者の不利益となる事実」に該当すること,本件亀頭コラーゲン注入術が医学的に一般に承認された術式と認めることが困難であり,逆に有用性については疑問が示され消費者被害救済の対象とされているものと認め られるとして,立替払い契約全部の取り消しを認めた。

◆ H21.07.02京都地裁判決

2010年6月16日 公開

平成20年(ワ)第2307号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 辻本利雄,和久田斉,戸取謙治
控訴審 H21.12.03大阪高裁判決

【事案の概要】
マンション居室の敷金返還請求。敷引条項の有効性が争われた。借主が司法修習生であり法律的知識があるとして,10条違反にはならないと貸し主から主張された。

【判断の内容】
以下の理由から,本件敷引条項は10条違反であるとした。
① 本件敷引条項は,10条前段に該当する。
② 10条後段該当性については,法1条にかんがみ,当事者の属性,契約条項の内容,契約条項が具体的かつ明確に説明され消費者がその条項を理解できるものであったか等守株の事情を総合考慮して判断すべきである。
③ 借り主は法律知識を有していたことは認められるが,建物賃貸借上の諸条件に関する情報について一般の消費者以上の情報を有していたとは認められない。また,借り主は当該条項について交渉の余地がほとんどない。

◆ H21.07.23京都地裁判決

2010年6月16日 公開

平成20年(ワ)第3224号敷金返還請求事件
最高裁HP,判例時報2051号119頁
裁判官 辻本利雄,和久田斉,戸取謙治

【事案の概要】
マンション居室の敷金返還請求。敷引条項,更新料条項の有効性が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,本件敷引条項,更新料条項は10条違反であるとした。
① 本件敷引条項は,10条前段に該当する。
② 10条後段該当性については,法1条にかんがみ,当事者の属性,契約条項の内容,契約条項が具体的かつ明確に説明され消費者がその条項を理解できるものであったか等種々の事情を総合考慮して判断すべきである。
③ 貸主の主張する敷引,更新料の性質はいずれも合理性がない。

◆ H21.07.30京都地裁判決

2010年6月16日 公開

平成20年(ワ)第3216号保証金返還請求事件
未登載
裁判官 辻本利雄,和久田斉,戸取謙治
控訴審 H21.12.15大阪高裁判決
上告審 H23.07.12最高裁判決

【事案の概要】
マンション居室の敷金返還請求。敷引条項の有効性が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,本件敷引条項は10条違反であるとした。
① 本件敷引条項は,10条前段に該当する。
② 10条後段該当性については,法1条にかんがみ,当事者の属性,契約条項の内容,契約条項が具体的かつ明確に説明され消費者がその条項を理解できるものであったか等種々の事情を総合考慮して判断すべきである。
③ 貸主の主張する敷引の性質はいずれも合理性がない。

◆ H21.08.07東京簡裁判決

2010年6月16日 公開

平成21年(少コ)第998号敷金返還請求本訴事件(通常手続移行),平成21年(ハ)第23060号解約違約金等請求反訴事件
最高裁HP
裁判官 藤岡謙三

【事案の概要】
建物賃貸借契約で,敷金返還請求に対し,貸主が修理代,及び,1年未満での解約を理由として2ヶ月分の違約金を請求した事案。2ヶ月分の違約金の定めが9条違反となるかが争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,2ヶ月分の違約金の定めが9条1項違反として,1ヶ月分を超える部分の請求を棄却した。
① 中途解約の場合の違約金の定め自体は,直ちに10条違反となるとはいえない。
② 違約金については,一般の居住用建物の賃貸借契約において途中解約の場合に支払うべき違約金額は賃料の1ヶ月分とする例が多数であり,相当。これを超える部分は9条1号により無効。

◆ H21.08.27大阪高裁判決

2010年6月16日 公開

平成20年(ネ)第474号更新料返還等請求控訴事件,平成20年(ネ)第1023号賃料請求反訴事件
判例時報2062号40頁
裁判官 成田喜達,亀田廣美,高瀬順久

【事案の概要】
居室の更新料返還請求。更新料条項の有効性が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,本件更新料条項は10条違反であるとして,更新料の返還請求を認めた。
① 更新拒絶権放棄の対価,賃借権強化の対価,賃料の補充という賃借人側の主張を詳細に検討していずれも否定し,特に性質も対価となるべきものも定められ ないままであって,法律的には容易に説明することが困難で,対価性の乏しい給付というほかないとし,10条前段に該当するとした。
② 10条後段該当性については,法1条にかんがみ,契約当事者の情報収集力等の格差の状況及び程度,消費者が趣旨を含めて契約条項を理解できるもので あったかどうか等の契約に至る経緯のほか,消費者が契約条件を検討する上で事業者と実質的に対等な機会を付与され自由にこれを検討していたかどうかなど諸 般の事情を総合的に検討し,あくまでも消費者契約法の見地から,信義則に反して消費者の利益が一方的に害されているかどうかを判断すべきである。
③ 本件更新料条項の10条後段該当性についても詳細に検討し,不合理性,不当な顧客誘因性,強行放棄の存在から目をそらせる役割を果たしているとして,該当するとした。
④ 主たる給付の対価に関する条項は,取引の本体部分となり,それは基本的に市場の取引により決定されるべきであるから10条の適用対象とならないのが原 則であるが,対価を理解すべき情報に不当な格差があり,又は理解に誤認がある場合には上記原則のように言うことができないことは自明であり,上記原則が適 用されるためには,その前提として,契約当事者双方が対価について実質的に対等にまた自由に理解しうる状況が保障されていることが要請されるとして,本件 ではこれを満たしていないとした。

◆ H21.09.25京都地裁判決(1)

2010年6月16日 公開

平成20年(ワ)第947号更新料返還等請求事件,同第1287号更新料反訴請求事件,同第1285号保証債務履行請求事件
最高裁HP,判例時報2066号95頁
裁判官 瀧華聡之,佐野義孝,梶山太郎
控訴審 H22.02.24大阪高裁判決
上告審 H23.07.15最高裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,更新料条項及び定額補修分担金条項はいずれも10条に反し無効であるとして,賃貸借契約中に3回にわたり支払った更新料合計22万8000円及び契約締結時に支払った定額補修分担金12万円の返還を求めた事案

【判断の内容】
以下の理由により,更新料,定額補修分担金の返還請求を認めた。
① 更新料について,賃料の補充とみることや,賃借権強化の対価の性質を有するとみることは困難であるし,更新拒絶権放棄の対価という性質も希薄であって,更新料は,更新の際,賃借人が賃貸人に支払う金銭という一種の贈与的な性格を有するもの。
② 更新料条項について,賃貸借契約締結の際の考慮要素になっており中心条項であり10条前段違反にならないという考えは,寄るべき法的基準がなく私的自 治にゆだねられている場合であって,更新料条項については民法601条の規定が存在し,全く私的自治にゆだねられているわけではない。
② 原告と被告との間の情報量の格差等の事情から,10条に反して無効。
③ 定額補修分担金についても,10条に反して無効。

◆ H21.09.25京都地裁判決(2)

2010年6月16日 公開

平成20年(ワ)第558号保証金・更新料返還等請求事件
最高裁HP
裁判官 瀧華聡之,谷口園恵,碩水音

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,更新料条項は10条に反し無効であるとして,賃貸借契約期間中に支払った更新料11万4000円の返還及び被告が原告のプライバシーを侵害したとして,不法行為に基づき10万円の損害賠償を求めた事例

【判断の内容】
以下の理由により,更新料の返還請求を認めた。
① 更新料を賃料の補充とみることや,賃借権強化の対価を有するとみることは困難であるし,更新拒絶権放棄の対価という性質も希薄であって,更新料は,更新の際,賃借人が賃貸人に支払う金銭という一種の贈与的な性格を有するもの。
② 原告と被告との間の情報量の格差等の事情も考慮して,10条に反して無効。

◆ H21.09.25京都地裁判決(3)

2010年6月16日 公開

平成20年(ワ)第1286号更新料支払請求事件
最高裁HP
裁判官 佐野義孝
控訴審 H22.05.27大阪高裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約について,賃貸借契約の更新に際して更新料10万6000円の支払を求めたところ,更新料条項は10条に反して無効であると主張した事例

【判断の内容】
以下の理由により,更新料の請求を棄却した。
① 更新料を賃料の補充とみることは困難であって,更新拒絶権放棄の対価や賃借権強化の対価ということもできない。
② 更新料の額や原告と被告との間の情報量の格差等の事情を考慮して,更新料条項が10条に反して無効。

◆ H21.09.30東京高裁判決

2010年6月16日 公開

平成21年(ネ)第207号生命保険契約存在確認請求控訴事件
消費者法ニュース82号214頁
裁判官 大坪丘,宇田川基,尾島明
第1審 H20.12.04横浜地裁判決
上告審 H24.03.16最高裁判決
差戻審 H24.10.25東京高裁判決

【事案の概要】
医療保険契約の保険料滞納による無催告失効条項による失効が,当該条項が10条違反であり失効していないことの確認を求めた事例

【判断の内容】
以下の理由により,無催告失効条項が10条違反であるとして,契約の存在を確認した。
① 本件無催告失効条項は,民法540条1項及び541条の場合に比べて消費者である保険契約者の権利を制限しており,10条前段を満たす。
② 保険料の自動引き落とし特約があるが,ささいな不注意による振替不能の危険があり,これによって直ちに失効するとすることは契約者にとって酷。
③ 振替不能,再請求の通知を出していることは,本件保険約款自体の有効性を判断する際に考慮すべき事項ではない。

◆ H21.09.30京都地裁判決

2010年6月16日 公開

平成20年(ワ)第871号定額補修分担金条項使用差止請求事件
最高裁HP消費者庁HP(PDF)京都消費者契約ネットワークHP(PDF)判決写し(京都消費者契約ネットワークHP)、判例時報2068号134頁、判例タイムズ1319号262頁,消費者法ニュース84号237頁
裁判官 瀧華聡之,谷口園恵,碩水音
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 株式会社長栄
控訴審 H22.3.26大阪高裁判決
強制執行 H23.11.24京都地裁決定

【事案の概要】
適格消費者団体が,不動産賃貸業及び不動産管理業を目的とする事業者である被告に対し,定額補修分担金条項が10条に反して無効であるとして,定額補修分担金条項を含む意思表示をすることの差止め及び同条項を含む契約書用紙の破棄等を求めた事案。

【判断の内容】
① 定額補修分担金条項は10条に反して無効であるとした上で,同条項を含む意思表示をすることの差止めを認めた。
② 被告が,その従業員らに対し,被告が消費者との間で建物賃貸借契約を締結し,又は合意更新するに際し、定額補修分担金条項を含む契約の申込み又はその承諾の意思表示を行うための事務を行わないことを指示することを求める部分は、作為を求める給付の訴えであり、一義的に明らかでなく執行にも問題を生ずるとして、却下した。
③ 契約書雛形の廃棄、従業員への周知については、すでに廃棄済みで、周知がなされているとして、請求を棄却した。

◆ H21.10.02大津地裁長浜支部判決

2010年6月16日 公開

平成19年(ワ)第127号,同20年(ワ)第16号既払金返還等請求事件
消費者法ニュース82号206頁
裁判官 別所卓郎

【事案の概要】
デート商法でコート等をクレジットにより購入させられたことについて,加盟店管理責任に基づく不法行為,不実告知による立替払契約の取消を理由に,信販会社に対し既払い金の返還を求めた事案

【判断の内容】
以下の理由により,立替払契約の不実告知による取消を認め既払い金の返還請求を認めた。
① 本件加盟店契約によれば,信販会社は加盟店に対し立替払契約締結について媒介をすることを委託しているというべきであり5条の適用がある。
② 加盟店が信販会社の承諾なく第三者に媒介業務を再委託している場合も,1条の趣旨からは5条の適用がある。
③ 「本件クレジット契約を締結すれば従前のクレジット契約を解約できる」という事項は「重要事項」(4条)にあたる。

◆ H21.10.23大阪高裁判決

2010年6月16日 公開

平成21年(ネ)第1437号契約条項使用差止等請求控訴事件
消費者庁HP(pdf)消費者支援機構関西HP
裁判官 永井ユタカ,上田日出子,谷口安史
適格消費者団体 消費者支援機構関西
事業者 ニューファイナンス株式会社
第1審 H21.04.23京都地裁判決

【事案の概要】
適格消費者団体が貸金業者に対し,10条違反である早期完済違約金条項(債務者自ら繰り上げ償還する場合をA,期限の利益喪失による繰り上げ償還の場合をB)の使用差止,及び差止に必要な措置を求めた事案。事前請求の有効性についても争われた。

【判断の内容】
以下のように判断し,条項Aについては差止,契約書の破棄を命じ,Bについては棄却した。
① 41条1項の「請求の要旨」とは,差止請求の相手方である事業者等に対し,訴えによって差止の対象となる行為がどのような行為かを示す程度の事項をいうところ,本件ではその記載がある。
② 事前請求書を受領拒否していたとしても,41条2項により到達したものとみなされる。
③ 被告が条項Bについて無効であることを認めていないとしても,被告が契約書式を改訂し,Bを現在使用していないこと,本件訴訟において今後使用の予定はないと述べていることからは,条項Bについて将来の使用の恐れがあるとは認められない。
④ 条項Aについては,貸付利率いかんによっては10条違反となる場合がある。 
⑤ 条項Aについて,他の条項によって当該契約条項が10条に該当し無効・有効の判断が分かれる場合であって,当該契約条項を使用した契約締結を差し止め るべき必要性が高い場合には,当該契約条項を使用した契約締結を差止の対象とすることも許容するのが12条の趣旨であるとして,差止を認めた。
⑥ 条項Aを含む借用証書の廃棄は契約の停止もしくは予防に必要な措置である。

◆ H21.03.10大阪高裁判決

2010年6月14日 公開

平成20年(ネ)第2700号敷金返還等請求控訴事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 安原清蔵,樋口英明,本多久美子

【事案の概要】
建物賃貸借契約に付随した定額補修分担金特約の有効性が争われた。

【判断の内容】
定額補修分担金条項が10条違反であるとして,返還請求を認めた。

◆ H21.03.31大阪地裁判決

2010年6月14日 公開

平成20年(ワ)第10436号建物明渡請求事件
消費者法ニュース85号173頁
裁判官 藤倉徹也

【事案の概要】
 建物賃貸借契約で,家賃等を3ヶ月以上滞納したときは、貸主は催告によらないで契約を解除することができ、契約解除後も本件建物を明け渡さないときは、契約解除の翌日から本件建物明渡しの日まで家賃相当額の1.5倍の損害賠償金を貸主に支払うという条項の効力が争われた。

【判断の内容】
① 賃貸借契約の終了に基づく目的物返還義務の履行遅滞を原因とする損害賠償における損害は、当該不動産の有する使用価値それ自体が侵害されたことによる積極的損害であると解されるところ、賃貸借契約においては当該不動産の使用価値をもって賃料とするのが通常であるから、賃料相当損害金の算定については、特段の事情がない限り、従前の賃料を基準として算定するのが相当と解される。
 そうすると、不動産賃貸借契約において、賃貸借契約の終了に基づく目的物返還義務の履行遅滞が生じた場合における「平均的損害」は、原則として、従前の賃料を基準として算定される賃料相当損害金を指すものと解するのが相当。
② 家賃等相当額の1.5倍の賠償金の支払いに関する規定は、家賃等損害金相当額の支払いを求める部分をこえる部分について、9条1号に反し、無効。

◆ H21.04.23京都地裁判決

2010年6月14日 公開

平成20年(ワ)第1079号契約条項使用差止等請求事件
最高裁HP消費者庁HP(PDF)消費者支援機構関西HP,判例時報2055号123頁
裁判官 辻本利雄,和久田斉,波多野紀夫
適格消費者団体 消費者支援機構関西
事業者 ニューファイナンス株式会社
控訴審 H21.10.23大阪高裁判決

【事案の概要】
適格消費者団体が貸金業者に対し,10条違反である早期完済違約金条項(債務者自ら繰り上げ償還する場合をA,期限の利益喪失による繰り上げ償還の場合をB)の使用差止,及び差止に必要な措置を求めた事案。事前請求の有効性についても争われた。

【判断の内容】
以下のように判断し,条項Aについては差止,契約書の破棄を命じ,Bについては棄却した。
① 41条1項の「請求の要旨」とは,差止請求の相手方である事業者等に対し,訴えによって差止の対象となる行為がどのような行為かを示す程度の事項をいうところ,本件ではその記載がある。
② 事前請求書を受領拒否していたとしても,41条2項により到達したものとみなされる。
③ 被告が条項Bについて無効であることを認めていないとしても,被告が契約書式を改訂し,Bを現在使用していないこと,本件訴訟において今後使用の予定はないと述べていることからは,条項Bについて将来の使用の恐れがあるとは認められない。
④ 条項Aについては,貸付利率いかんによっては10条違反となる場合がある。 
⑤ 条項Aについて,他の条項によって当該契約条項が10条に該当し無効・有効の判断が分かれる場合であって,当該契約条項を使用した契約締結を差し止め るべき必要性が高い場合には,当該契約条項を使用した契約締結を差止の対象とすることも許容するのが12条の趣旨であるとして,差止を認めた。
⑥ 条項Aを含む借用証書の廃棄は契約の停止もしくは予防に必要な措置である。

◆ H21.06.04最高裁判決

2010年6月14日 公開

平成19年(受)第1987号保険金請求事件
最高裁HP,判例タイムズ1306号229頁,金融商事判例1334号9頁,判例時報2054号144頁,金融法務事情1884号48頁
裁判官 涌井紀夫,甲斐中辰夫,宮川光治,櫻井龍子,金築誠志

【事案の概要】
店舗総合保険契約に適用される普通保険約款中に,保険の目的が受けた損害に対して支払われる水害保険金の支払額につき上記損害に対して保険金を支払うべき 他の保険契約があるときには同保険契約に基づく保険給付と調整する旨の条項がある場合における,同条項にいう「他の保険契約」の意義

【判断の内容】
店舗総合保険契約に適用される普通保険約款の解釈について,一定の限定をした判決である。
宮川光治裁判官は補足意見で,保険約款が複雑で容易に理解し難いこと,損害保険料率算出機構作成の標準保険約款が保険実務に浸透していないこと,契約者で ある市民の合理的意思と乖離しない,分かりやすい約款の作成と保険実務における消費者保護の精神に沿った約款の解釈・運用が望まれると指摘した。

◆ H20.09.30京都地裁判決

2010年6月12日 公開

平成20年(レ)第4号礼金返還請求控訴事件
最高裁HP
吉川愼一,上田卓哉,森里紀之

【事案の概要】
控訴人は,被控訴人との間で締結した賃貸借契約に基づいて,被控訴人に礼金18万円を交付したが,同賃貸借契約には,賃貸借契約終了時に礼金を返還しない 旨の約定が付されており,被控訴人から礼金18万円が返還されなかったことから,この礼金を返還しない旨の約定が10条により全部無効であるとして,被控 訴人に対し,不当利得に基づき,礼金18万円及びこれに対する遅延損害金の支払いを求めた(1審では請求棄却)。これに対し,礼金約定が信義則に反して消 費者の利益を一方的に害するものであるような事情は認められないから,礼金約定が10条に反し無効であるということはできないとした事例

【判断の内容】
以下の理由から,10条後段の要件を欠くとして返還請求を認めなかった。
① 礼金は,賃貸人にとっては賃貸物件を使用収益させることによる対価として,賃借人にとっては賃貸物件を使用収益するに当たり必要となる経済的負担とし て,それぞれ把握されている金員であり,かかる当事者の意思を合理的に解釈すると,賃料の一部前払としての性質を有するというべきである。また,礼金が返 還されないことについては説明があったもので,何らの根拠もなく,何らの対価でもなく,賃借人が一方的に支払を強要されているとはいえない。
② 礼金は賃料の前払としての性質を有しており,これを契約時に徴求したとしても被控訴人が不当な利益を得ることにはならない。また,控訴人は自由な意思に基 づき礼金約定が付された賃貸物件を選択したというべきであり,控訴人に交渉の余地がなかったことは特段問題とするに足りない。
③ 「賃貸借住宅標準契約書」の体裁や政府委員の答弁,公営住宅法や旧国庫法などが礼金を禁止していること,本件礼金の額などから,礼金約定が非難に値するということはできない。

◆ H20.10.17東京地裁判決

2010年6月12日 公開

平成18年(ワ)第3751号卒業認定等請求事件
判例時報2028号50頁
裁判官 佐久間邦夫,石原直弥,中依子

【事案の概要】
私立高校の生徒が,退学処分の効力を争うとともに,予備的に納付済みの授業料等は理由のいかんを問わず返還しない旨の学則(学費不返還特約)の効力は9条1号等に反して無効であるとして,退学処分日以降の学費の返還を求めた。

【判断の内容】
年度途中の退学処分は高校にとって予測困難であったところ,一般に在学契約に基づく生徒に対する給付は4月1日から翌年3月31日までの1年を単位として 準備されており,新年度開始日(4月1日)には当年度における教育役務等の給付の準備がされていたことに鑑みれば,在籍予定期間の授業料等に相当する金員 は,平均的な損害額に該当するものというべきであり,不返還特約は平均的な損害額を超えるものではない,学費の返還請求を認めなかった。

◆ H20.11.27東京簡裁判決

2010年6月12日 公開

平成20年(少エ)第25号敷金返還請求事件
最高裁HP
裁判官 中島寛

【事案の概要】
マンション居室賃貸借契約終了による敷金返還請求。未払賃料の遅延損害金が日歩70銭(年利73%)とされていたのが10条違反か否かが争われた。

【判断の内容】
未払賃料についての遅延損害金の約定は損害賠償額の予定または違約金の定めであり,利率の上限は14.6%に制限されるとして,これを超える部分は無効としてその範囲内で相殺を認めた。

◆ H20.11.28大阪高裁判決

2010年6月12日 公開

平成20年(ネ)第1597号定額補修分担金・更新料返還請求控訴事件
兵庫県弁護士会HP,判例時報2052号93頁
裁判官 安原清蔵,八木良一,本多久美子
原審 H20.04.30京都地裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約の定額補修分担金条項について10条で無効とした事例

【判断の内容】
控訴人(賃貸人)からの,契約締結時において原状回復額を定額で確定させて,賃貸人と賃借人の双方がリスクと利益を分け合う交換条件的内容を定めたもので あり10条にはあたらないとの追加主張に対し,多くの賃貸借契約を締結している賃貸人側がリスクの分散を図るに過ぎず賃借人にはメリットがあるかどうかは 疑問として,控訴を棄却した。

◆ H20.12.02大阪地裁判決

2010年6月12日 公開

平成19年(ワ)第8639号賃料等請求事件,平成19年(ワ)第8639号保証金返還反訴請求事件
未登載
裁判官 深見敏正

【事案の概要】
敷引特約につき,その一部を無効とする判決

【判断の内容】
本件敷引特約全体が信義則に反していると判断するには困難な面があるとしつつ,建物の使用期間に関わらず保証金の71.4%を控除するのが過酷だとして,30%を超える部分を10条違反とした。

◆ H20.12.04横浜地裁判決

2010年6月12日 公開

平成20年(ワ)第721号生命保険契約存在確認請求事件
未登載
裁判官 小林正,志田原信三,安部利幸
控訴審 H21.09.30東京高裁判決
上告審 H24.03.16最高裁判決
差戻審 H24.10.25東京高裁判決

【事案の概要】
医療保険契約の保険料滞納による無催告失効条項による失効が,当該条項が10条違反であり失効していないことの確認を求めた事例

【判断の内容】
以下の理由から,無催告失効条項は10条違反ではないとして契約の失効を認めた。
① 本件無催告失効条項は10条前段を満たす。
② 他の条項により契約を簡単には失効させず存続させるように一定の配慮がされていることから,10条後段は満たさない。

◆ H20.12.17東京高裁判決

2010年6月12日 公開

平成18年(ネ)第141号設備費用請求控訴事件
金融商事判例1313号42頁
裁判官 藤村啓,佐藤陽一,岸日出夫

【事案の概要】
顧客らがそれぞれ取得した各建物に業者があらかじめ設置しておいたLPガス消費設備及び給湯器に関して顧客らとの間で締結した各貸与契約に定められた中途 解約の場合の補償費支払に関する合意に基づき,顧客らに対し,各補償費の支払を求めた事案。同条項が9条1号にあたるか否かが争われた。

【判断の内容】
① 建物に設置された機器類が附合あるいは即時取得により建物所有者である顧客らの所有に属することとなるとした上で,補償費の支払いが機器類の売買代金の支払い又は利益調整であるとの業者の主張を排斥し,結局違約金条項と解するほかないと判断した。
② 平均的損害を超える額についても認められないとして,結局9条1号により同条項は無効であるとして,業者の請求を棄却した。

◆ H21.01.13右京簡裁判決

2010年6月12日 公開

平成19年(ハ)第542号保証債務履行請求事件
未登載
裁判官 中嶋嘉昭
控訴審 H21.05.21京都地裁判決

【事案の概要】
連帯保証人に対する貸金業者からの保証債務履行請求。

【判断の内容】
以下の理由から,連帯保証契約の取消を認めた。
① 主債務が事業のために借入をしたものであっても,連帯保証人が連帯保証することは「事業のために」する行為ではなく,消費者契約法が適用される。
② 貸金業者が,借り主に対して連帯保証人を探してくるようにと依頼することは連帯保証契約締結の媒介を依頼したものというべきである。
③ 借り主が「絶対に迷惑をかけない」と告げたことは断定的判断の提供に当たる。
④ 実際は借り換えなのに借り主が更新と告げたことは不実告知にあたる。
⑤ 取消権の消滅時効の起算点について,貸金業者が全取引を利息制限法により計算し直し請求の減縮及び請求原因の訂正を陳述した第2回口頭弁論期日が起算点となるとして,消滅時効にかかっていないとした。

◆ H21.01.28京都地裁判決

2010年6月12日 公開

平成20年(ワ)第2498号敷引条項使用差止請求事件
消費者庁HP(PDF)判決写し(PDF、京都消費者ネットワークHP)
裁判官 瀧華聡之,谷口園恵,向健志
適格消費者団体 京都消費者契約ネットワーク
事業者 大和観光開発株式会社
控訴審 H21.06.16大阪高裁判決

【事案の概要】
適格消費者団体が不動産賃貸業者に対し,10条違反である敷引条項の使用差止,及び差止に必要な措置を求めたところ,使用差止については業者が請求を認諾したため,差止に必要な措置の命令の可否が争われた事案

【判断の内容】
請求の趣旨は,「被告は,その従業員らに対し,被告が消費者との間で建物賃貸借契約を締結又は合意更新をするに際し,当該消費者から受領する敷金又は保証金に関して,当該消費者との建物賃貸借契約終了時において,その名目の如何にかかわらず,当該消費者に返還すべき敷金又は保証金より無条件に一定額を控除する旨の条項を含む意思表示を行うための事務を行わないよう指示せよ。」というものであるところ,差止命令とは別に,その命令の実現過程に介入して,事業者に対して,別途義務を課すことができる行為は,不当行為の停止又は予防の実効性を確保するために必要な具体的に特定された措置に限られるというべきであり,このように解しなければ,事業者としてはどのような措置をとれば義務を履行したことになるのか明らかでなく困難を強いられるし,強制執行にも困難が生じるとし,本件では請求の特定ができていないとして,訴えを却下した。

◆ H21.02.20東京簡裁判決

2010年6月12日 公開

平成20年(少コ)第3509号解約予告不足金請求事件
最高裁HP
裁判官 藤岡謙三

【事案の概要】
建物賃貸人が,中途解約をした賃借人に対し,解約予告不足金を請求した事案。解約予告不足金条項が10条,9条違反,民法90条違反となるとして争われた。

【判断の内容】
下記のように判断し,1ヶ月分の賃料・共益費相当額及び年14.6%の遅延損害金のみ認め,その余を棄却した。
① 解約予告不足金を定めること自体は,民法上でも期間の定めのある場合でも解約権の留保が認められていることから,一律に無効としなければならないものではない。
② 一般に,解約予告期間及び予告に代えて支払うべき違約金額の設定は1ヶ月分とする例が多数であり,解約後次の入居者を獲得するまでの一般的な所要期間 として相当と認められるので,解約により原告が受けることがある平均的な損害は賃料・共益費の1ヶ月分相当額であると認めるのが相当(民事訴訟法248 条)。
③ 遅延損害金は,9条2号により年14.6%を超える部分は無効。

◆ H21.02.27神戸地裁尼崎支部判決

2010年6月12日 公開

平成20年(ワ)第1218号損害賠償請求事件
未登載
裁判官 竹中邦夫

【事案の概要】
パチンコ攻略法の情報提供代金として約700万円を支払わされた者が業者に対し損害賠償請求をした事案

【判断の内容】
下記のように判断し,断定的判断の提供に当たるとして契約の取消を認め全額の返還請求を認めた。
① パチンコは,個別のパチンコ台の釘の配置やその角度,遊技者の技量や遊技時間,パチンコ店の営業姿勢,パチンコ台に組み込まれた電磁的に管理された絵 柄の組み合わせ等の複合的な要因により,出玉数が様々に変動するものであり,遊技者がどれくらいの出玉を獲得できるかは上記のような複合的な要因による偶 然性の高いものであり,本件情報は,将来における変動が不確実な事項に関するものに当たる。
② 被告が特別なパチンコ攻略情報を有しておりこれを購入してこれに従えば確実に利益を生み出せると誤信させるような方法で宣伝及び説明をして勧誘したものであり,これによって原告が700万円もの高額の代金を支払ったものである。

◆ H20.07.24京都地裁判決

2010年6月11日 公開

平成19年(ワ)第3565号定額補修分担金返還請求事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 田中義則

【事案の概要】
建物賃貸借契約の定額補修分担金条項(月額賃料の3.25倍)について,10条で無効とし,返還請求を認めた事例

【判断の内容】
下記の理由から,定額補修分担金条項につき,10条により無効とした。
① 賃貸人は,損害賠償請求権の事前放棄ではあるが,全体としては定額補修分担金の額を採算が取れるように設定していると考えられる。
② 賃借人は定額補修分担金の額について賃貸人の定める額に従うほかなく,交渉による変更の余地が考えられない。また,賃借人にとって退去は1回限りのこ とであり,賃借人にとって利益となるか否かは退去時にならないとわからないことであるから,あらかじめ不利益の生じるリスクを他に転嫁したり分散すること はできない。
③ 分担金の額は,被告の賃貸業の経営上の観点から被告があらかじめ決定した者であるが,その具体的根拠は明らかでなく,賃借人にはこの金額の適否を判断することは不可能である上,交渉により金額の変更を求めることができたとも考えられない。

◆ H20.08.27京都簡裁判決

2010年6月11日 公開

平成19年(ハ)第10984号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 谷澤和明

【事案の概要】
分譲貸の建物賃貸借契約につき,敷引特約(50万円のうち40万円を敷引)は10条により無効であるなどとして敷金の返還を求めたのに対し,分譲貸の事業者(2条2項)該当性等が争点となった。

【判断の内容】
① 2条2項にいう「事業」とは「一定の目的をもってなされる同種の行為の反復継続的遂行」であり,個人がその所有不動産を継続して賃貸することは,不動産業者ではなく一つの部屋を貸す場合であっても「事業」にあたる。
② 敷引特約につき,信義則に反し消費者の権利を制限するものであり,解約引率8割が慣習であると認めるに足りる証拠もないから,10条により無効である。
③ 契約締結から5年後に敷引特約の無効を主張したとしても,信義則に違反するものではない。

◆ H20.09.26京都地裁判決

2010年6月11日 公開

平成20年(ワ)第1469号敷金返還等請求事件
未登載
裁判官 吉川愼一

【事案の概要】
定額補修分担金特約,日割計算に関する特約,早期退去特約が10条に違反しないとされた事例

【判断の内容】
①  定額補修分担金特約は,賃借人(消費者)にとってもメリットのある特約であって,「消費者の利益を一方的に害するもの」ではない。
② 賃料の計算方法,支払方法については,「民法,商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合」を明らかにする任意規定が存在せず,退去月において賃料の日割計算をしない特約も有効である。
③ 早期退去特約は「消費者の利益を一方的に害するもの」ではない。

◆ H20.09.26高松地裁判決

2010年6月11日 公開

平成19年(ワ)155号不当利得等返還請求事件
国セン報道発表資料(2011年11月11日公表)
裁判官 真鍋麻子

【事案の概要】
広告記載のような医学部合格実績がないのに,その旨記載した広告が交付され,その旨を誤信して医学部系進学塾の受講契約を締結した者からの,不実告知を理由とする取消が認められた事例

【判断の内容】
① 医学部合格実績は,医学部受験のための学習塾を標榜する被告の講義内容に関わるものであり,重要事項に関する内容である。
② ①に関する原告の誤認は,本件契約締結を決定づけた要因ではないものの,原告が本件契約締結交渉を始め,本件契約締結の際に考慮した要素の1つであるとして,4条1項1号による取消を認めた。

◆ H18.12.15大阪地裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(レ)第137号保証金返還請求控訴事件
未登載
裁判官 山下郁夫,横路朋生,矢野紀夫

【事案の概要】
敷金返還請求。敷引特約(45万円から30万円を差し引く)の効力が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,敷引特約が10条違反により無効であるとして返還請求を認めた。
① 敷引特約は,敷引をする趣旨が合理的なものと認められ,かつ,敷金契約締結の際に敷引の趣旨が賃借人に説明されて賃借人もこれを了解しているなど特段の事情のない限り,信義則に反して賃借人の利益を一方的に害すると解すべき。
② 本件では,説明がなされこれを賃借人が認識したことを認めるに足りる証拠はないから,合理性の有無を検討するまでもなく,10条違反となる。

◆ H18.12.22最高裁判決

2010年6月8日 公開

平成17年(受)第1762号学納金返還請求事件
最高裁HP,判例時報1958号69頁,判例タイムズ1232号84頁
裁判官 古田佑紀,滝井繁男,津野修,今井功,中川了滋

【事案の概要】
いわゆる鍼灸学校の入学試験に合格し,同学校との間で納付済みの授業料等を返還しない旨の特約の付された在学契約を締結した者が,入学年度の始まる数日前に同契約を解除した場合において,同特約が9条1号により無効とされた事例

【判断の内容】
"鍼灸学校であっても,在学契約の性質,学納金の性質,不返還特約の性質及び効力については,大学に関する平成18年11月27日の判例の説示が基本的に妥当する。
3月31日より前に辞退しているのであれば平均的損害は損しないのであり,不返還特約は無効である。

◆ H18.12.28神戸地裁姫路支部判決

2010年6月8日 公開

平成17年(ワ)第633号売買代金等請求本訴事件,同第899号原状回復請求反訴事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 黒田豊

【事案の概要】
太陽光発電システムの勧誘につき不実告知及び不利益事実の不告知を認めた事例

【判断の内容】
当該商品を購入することによって将来生ずる経済的メリットに関する事実は,本件契約では重要事項にあたる。この点について,不実を告知し不利益事実を告知しなかったものであり,4条1項,2項,特商法9条の2により取り消すことができる。

◆ H19.01.11大阪地裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(レ)第176号敷金返還請求控訴事件,同第251号同附帯控訴事件
未登載
裁判官 塚本伊平,府内覚,烏田真人

【事案の概要】
分譲貸の建物賃貸借契約につき,敷引特約(全額敷引の合意)は10条,民法90条により無効であるなどとして敷金の返還を求めたのに対し,分譲貸の事業者(2条2項)該当性等が争点となった。

【判断の内容】
① 転勤により空室になるため賃貸したものであること,当該建物以外の物件につき賃貸しているという事実も認められないことなどから,賃貸を反復継続的に行っていたということはできず,「事業者」(2条2項)には該当しない。
② 敷引特約は契約書,重要事項説明書に明記されており,賃借人が敷引特約を押しつけられたといった事情もうかがえないことから,敷金全額(90万円。なお,賃料月額14万円,管理費月額2万3940円。)であっても直ちに公序良俗に反するとはいえない。

◆ H19.01.29名古屋地裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(ワ)第4452号損害賠償請求事件
兵庫県弁護士会HP
裁判官 安田大二郎

【事案の概要】
パチスロ攻略法が断定的判断の提供に当たるとして4条1項2号による取消,不法行為による損害賠償請求が認められた事案。パチスロ攻略法の売買は消費者契約法による保護を受ける契約か否か,消費者の努力義務違反があるか否かも争われた。

【判断の内容】
① パチスロ攻略法は断定的判断の提供に当たる。
② 事業者と消費者の格差の観点からは,本件売買について取消を認めても消費者契約法の趣旨を逸脱するものではない。
③ 消費者の努力義務(3条2項)は,事業者から提供された情報を活用するように要請するに過ぎず,消費者自ら情報を収集する努力まで課すものではない。

◆ H19.02.06西宮簡裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(ハ)第108号敷金返還請求事件
消費者法ニュース72号211頁
裁判官 西田文則

【事案の概要】
建物賃貸借契約の敷引特約が10条違反かどうかが争われた。

【判断の内容】
① 法人は「事業者」(2条2項)にあたる。
② 原告が学者であっても,事業としてまたは事業のために契約したものでないことは明らかであり「消費者」(2条1項)にあたる。
③ 本件敷引特約は10条違反である。

◆ H19.02.20福岡地裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(ワ)第2326号損害賠償請求事件
国セン報道発表資料(2008年10月16日公表)
裁判官 細谷泰暢

【事案の概要】
パチンコ必勝法詐欺が,断定的判断の提供に当たるとして4条1項2号により取消を認め,代金の返還請求を認めた事例

【判断の内容】
① 一般的に,パチンコにおいて遊技者がどのくらいの出玉を獲得するかは,複合的な要因による偶然性の高いものであって,将来における変動が不確実な事項である。
② 被告が「絶対稼げる」「誰でもできる」などといった勧誘文句及び同趣旨の広告を用いて原告を勧誘した行為は「断定的判断の提供」にあたる。
③ 原告は,②の断定的判断の内容が確実であると誤信したものである。

◆ H19.03.30長崎地裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(ワ)第453号生命保険金請求事件
消費者法ニュース72号207頁
裁判官 上拂大作

【事案の概要】
生命保険契約の保険金請求に対し,保険料の支払いが猶予期間を2日過ぎてなされたとして,失効約款の適用により失効しているとして争われ,生命保険契約の 失効約款の適用に関し,未払保険料の支払が猶予期間を2日も経過しないうちに行われている場合は,消費者契約法・消費者基本法等の消費者保護の理念に基づ き,保険契約の失効を主張することは信義則上相当ではないとされた事例

【判断の内容】
次の理由から,原告の請求を認めた。
① 本件保険約款は,一応,有効。
② しかし,信義則や当事者間の衡平の見地,消費者契約法等,消費者と事業者との格差に鑑み,約款の規制を検討する必要がある。
③ 本件失効約款は,民法の原則よりも消費者に不利益になっている。
④ 保険ではわずか2日の遅れで,それまでは継続して払われていたし,自動振替制度で引き落としがなされない場合には取立債務に準じた債務の履行ということになり,実際に預金があった場合には不履行を認めることができず,原告に帰責性がない。軽微。
⑤ よって,本件失効約款を適用することは信義則上相当ではなく,失効を主張することはできない。

◆ H19.03.30大阪地裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(レ)第196号損害賠償請求控訴事件,平成18年(レ)第239号損害賠償請求附帯控訴事件
判例タイムズ1273号221頁
裁判官 横山光雄,高木勝己,小川清明

【事案の概要】
建物賃貸借契約の敷引特約が10条により一部無効であるとして,賃借人の賃貸業者に対する敷金返還請求が一部認容された事例

【判断の内容】
次の理由から,25万円について請求を認めた。
① 敷引金の性質は,契約成立の謝礼,自然損耗の修繕費用,更新料免除の対価,終了後の空室賃料,賃料を低額にすることの代償などの様々な要素を有するものが渾然一体となったものである。
② 本件敷引金のうち,契約更新の際賃料を下げる代わりに敷引金を5万円上げたことが明らかであり,この部分は賃料減額の代償である。残りの25万円については元々予定されていた敷引金であり,①の性質を有する。
③ 5万円の部分は賃料低額の代償として賃借人に一方的に不利益ということはできず有効であるが,25万円の部分は一方的に不利益である。
④ 敷引特約は,賃借人の交渉努力によって特約自体を排除することは困難であり,事業者が一方的に押しつけている状況にあるといっても過言ではない。本件敷引特約についても,25万円については交渉の余地がなかったと認められる。

◆ H19.04.03最高裁判決

2010年6月8日 公開

平成17年(受)第1930号解約精算金請求事件
最高裁HP,最高裁判所民事判例集61巻3号967頁,判例時報1976号40頁,判例タイムズ1246号95頁,金融商事判例1275号17頁,1277号8頁
裁判官 那須弘平,上田豊三,藤田宙靖,堀籠幸男,田原睦夫

【事案の概要】
外国語会話教室の受講契約の解除に伴う受講料の精算について定める約定が,特商法49条2項1号に定める額を超える額の金銭の支払を求めるものとして無効であるとされた事例

【判断の内容】
① 本件使用済ポイントの対価額も,契約時単価によって算定されると解するのが自然。
② 契約時よりも常に高額となる精算規定は,実質的には,損害賠償額の予定又は違約金の定めとして機能するもので,受講者による自由な解除権の行使を制約するものといわざるを得ない。

◆ H19.04.20京都地裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(レ)第79号敷金返還請求控訴事件
最高裁HP,消費者法ニュース73号214頁
裁判官 山下寛,森里紀之,衣斐瑞穂

【事案の概要】
控訴人が,被控訴人との間で締結した賃貸借契約には,賃貸借契約終了時に敷金の一部を返還しない旨のいわゆる敷引特約が付されており,被控訴人から敷金 35万円のうち5万円しか返還されなかったことから,上記敷引特約が10条により全部無効であるとして,被控訴人に対し,敷金残金30万円などの返還を求 めたところ,上記敷引特約は10条により無効であると判断された事例

【判断の内容】
以下の理由から,敷引特約が10条違反により無効であるとして返還請求を認めた。
① 賃貸借においては賃借人に債務不履行があるような場合を除き,賃借人が賃料以外の金銭の支払を負担することは法律上予定されておらず,また,関西地方 において敷引特約が事実たる慣習として成立していることを認めるに足りる証拠はないから,本件敷引特約は,民法の公の秩序に関しない規定の適用による場合 に比し,消費者の権利を制限するものである。
③ 自然損耗についての必要費は賃料により回収され,更に敷引特約によりこれを回収することは,契約時に敷引特約の存在と敷引金額が明示されていたとして も,賃借人に二重の負担を課すことになる。また,敷引特約は関西地区における不動産賃貸借において付加されることが相当数あり,賃借人が交渉でこれを排除 することは困難であって,消費者が敷引特約のなされない物件を選択すればよいとは当然にはいえない状況にあることなどを総合すると,本件敷引特約は,信義 則に反して消費者の利益を一方的に害するものである。

◆ H19.04.20大阪地裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(レ)第274号保証金返還請求控訴事件
未登載
裁判官 角隆博,伊藤佑子,伊藤正晴
第1審 大阪簡裁平成18年(ハ)第70359号
上告審 H19.09.13大阪高裁判決

【事案の概要】
敷金90万円のうち45万円を差し引くという平成9年締結の敷引特約付賃貸借契約が,自動更新条項により1年ごとに8回自動更新された後に賃貸借契約が終了し,敷引された45万円を請求し,原審は10条違反として請求を認めたが,控訴審でこれを否定した事例

【判断の内容】
① 本件自動更新条項による更新の際には賃貸借の条件について協議がなされて合意が成立する事情はない。
② 消費者契約法施行後に賃貸借契約を締結する場合には賃貸人は同法の適用があることを前提として契約条件を定めることができるが,本件に同法を適用すると,更新拒絶に正当事由が要求されている関係から,賃貸人に不測の損害を与えかねない。
③ 本件敷引特約は,民法90条違反とは認められない。

◆ H19.04.27大阪高裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(ネ)第2971号預託金返還等請求控訴事件
判例時報1987号18頁,国セン報道発表資料(2008年10月16日公表)
裁判官 中路義彦,礒尾正,久末裕子

【事案の概要】
外国為替証拠金取引にかかる業者に対する預託金返還請求権の約7割を放棄する旨の和解契約につき,10条による無効又は不実告知(4条1項1号),断定的判断の提供(同2号)等を理由とする取消を主張して預託金残額の返還を求めるなどした。

【判断の内容】
今,預託金の一部を返還を受けることによって残金を放棄する旨の和解契約を締結しなければ,業者が外国為替証拠金取引の営業停止処分を受け,その結果倒産 し,預託金はほとんど戻ってこない旨の説明は,将来における変動が不確実な事項についての断定的判断の提供に該当するとして,4条1項2号による和解契約 の取消を認めた。

◆ H19.05.23東京高裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(ネ)第5683号不当利得返還請求控訴事件
未登載
裁判官 石川善則,倉吉敬,徳増誠一
第1審 H16.03.30 東京地裁判決
控訴審 H17.03.10 東京高裁判決
上告審 H18.11.27最高裁判決(1)

【事案の概要】
推薦入学の解除の場合,特段の事情がない限り,初年度授業料等に相当する平均的な損害が生ずるとした上告審(H18.11.27最高裁判決)を受けて,特段の事情の有無を審理した学納金事件差戻審判決

【判断の内容】
学生が在学契約を解除した時期を平成14年3月13日と認定した上で,当該解除の時点においては,推薦入試はもとより一般入試に至るすべての入学試験およ び合格発表も完了していたことから,大学が代わりの入学者を通常容易に確保することができる時期を経過していないなどの特段の事情が存在すると認めること はできず,学納金不返還特約のうち授業料等相当額部分についても大学に生ずべき平均的損害を超えるものとは認められず有効とした。

◆ H19.06.01京都地裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(レ)第94号保証金返還請求控訴事件
未登載
裁判官 田中義則,阪口彰洋,溝口優

【事案の概要】
賃借人(被控訴人)が清掃代,原状回復費用,解約手数料(解約した場合家賃2ヶ月分の解約手数料を支払う約定がある)の控除により返還されなかった保証金20万円を請求し,賃貸人(控訴人)は過去の更新料を反訴請求した訴訟の控訴審判決。

【判断の内容】
控訴棄却。
① 原状回復特約のうち通常損耗分を賃借人に負担させる部分は10条で無効である。本件では通常損耗を超える汚損を生じさせたと認めるに足りる証拠はない。
② 解約手数料の定めは9条1号により無効。
③ 平成14年6月1日更新の際の更新料の請求については,更新料特約の締結が消費者契約法施行前であり,消費者契約法の適用がない。本件更新料の特約は 公序良俗には反しないが,すでに契約終了時にも請求していなかったこと等からは,現段階で請求するのは信義則に反し許されない。

◆ H19.06.15大阪簡裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ハ)第70073号賃貸借契約更新料請求事件
未登載
裁判官 山本晃與

【事案の概要】
賃貸人が,賃借人に対して過去の4回分の更新料を請求した事案

【判断の内容】
建物賃貸借契約が法定更新された場合に,更新料を定める約定は法定更新には適用されないとして,過去4年分の更新料の請求を棄却した。

◆ H19.06.19大阪高裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ツ)第20号敷金返還請求上告,同附帯上告事件
未登載
裁判官 井垣敏生,森宏司,山本善彦
控訴審 大阪地裁平成18年(レ)第176号,251号

【事案の概要】
転勤に伴って自宅を貸した賃貸人に対し賃借人が敷金返還請求をした事例。敷金90万円を預託する際の合意内容が敷引特約か否かが争われた。

【判断の内容】
本件敷金合意の内容は全額敷引を内容とするものとしたうえで,貸主は自宅を転勤にともなって賃貸したもので消費者契約法にいう「事業者」にはあたらないとして,消費者同士の契約であり,消費者契約法の適用はないとして,請求を棄却した原審判断を是認した。

◆ H19.07.13日向町簡裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ハ)第65号保証金返還請求事件
未登載
裁判官 喜久本朝正

【事案の概要】
建物賃貸借の保証金に関して,解約時に全額を控除して返還しないとする解約引き条項の効力が争われた事例

【判断の内容】
保証金は,本来全額を賃借人に返還すべきものであり,賃貸借契約から生じた賃借人の債務の不履行がある場合にその額を差し引くことができるに過ぎないもの であるところ,本件解約引き条項は,退去時に全額を返還しないとするものであるから,これが10条により無効であることは明らかとした。

◆ H19.07.26東京簡裁判決

2010年6月8日 公開

平成17年(ハ)第21542号債務不存在確認等請求事件
最高裁HP国セン報道発表資料(2008年10月16日公表)
裁判官 持地明

【事案の概要】
訪問販売で,長時間家に居座り調湿剤マットを立替払契約を利用して売却した事案で,不退去を理由に立替払契約の取消が争われた。

【判断の内容】
以下の理由により,不退去を理由として立替払契約の取消を認めた。
①長時間にわたり購入を断り続けたことについて,退去の意思を黙示的に求めたと評価できるとして,不退去にあたる。
②5条1項にいう「媒介」とは,ある人と他の人との間に法律関係が成立するように,第三者が両者の間に立って尽力することと解
されるところ,本件立替払契約について,本件販売店は媒介をしたといえる。

◆ H19.09.13大阪高裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ツ)第42号保証金返還請求上告事件
未登載
裁判官 井垣敏生,森宏司,山本善彦
第1審 大阪簡裁平成18年(ハ)第70359号
控訴審 H19.04.20大阪地裁判決

【事案の概要】
敷金90万円のうち45万円を差し引くという平成9年締結の敷引特約付賃貸借契約が,自動更新条項により1年ごとに8回自動更新された後に賃貸借契約が終了し,敷引された45万円を10条により請求したが否定した事例

【判断の内容】
本件賃貸借契約は,双方異議がなければ自動的に更新されるという内容であり,更新に際しても賃貸借条件について協議がなされて合意が成立したり,新たに書 面が作成されたといった事情はないまま自動的に更新されてきたというのであるから,更新後の賃貸借契約は消費者契約法施行後に締結された契約と認めること はできない。

◆ H19.11.09奈良地裁判決

2010年6月8日 公開

平成18年(ワ)第824号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 坂倉充信

【事案の概要】
敷金40万円から控除された,敷引部分20万円と原状回復費用のうち19万8425円の返還を求めた(賃貸人からの反訴あり)。

【判断の内容】
一部認容。
① 賃借人は原則として故意・過失による建物の毀損や通常でない使用方法による劣化などについてのみ原状回復義務を負う。
② 敷引特約は,10条により無効として賃借人に責任ある修繕費用(13万7271円)のみ敷金からの控除を認めた。

◆ H20.01.17東京簡裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ハ)第5644号損害賠償請求事件
兵庫県弁護士会HP国セン報道発表資料(2008年10月16日公表)国セン暮らしの判例集HP2010年7月,ウエストロー・ジャパン
裁判官 長澤正人

【事案の概要】
自動車販売業者から中古車を110万円で購入した際,本件車両の走行距離計が改ざんないし交換されていたのに,故意に改ざんないし交換の事実を告げず走行 距離及び走行距離計につき説明を行わなかったとして4条1項1号(不実告知)に基づく取消,代金の返還請求が認められた事例

【判断の内容】
被告会社は,本件車両の実際の走行距離が約12万キロメートルであったにもかかわらず,HP上でも店舗内でも走行距離を8万キロメートルないし8万 1500キロメートルと表示し,本件売買契約の締結に際してもこれを明確に訂正したとは認められないから,本件売買契約の締結にあたり不実の告知があった というべきであり,4条1項1号による取消が可能であるとして,110万円の返還を認めた。

◆ H20.01.25札幌高裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ネ)第192号損害賠償・立替金請求控訴事件
判例時報2017号85頁,金融商事判例1285号44頁,兵庫県弁護士会HP国セン報道発表資料(2008年10月16日公表)
裁判官 末永進,千葉和則,住友隆行
第一審 H19.05.22札幌地裁判決平成18年(ワ)第1096号、同第1396号
上告審 H22.03.30最高裁判決(2)

【事案の概要】
金の先物取引の勧誘を受けて契約し損害を被った者からの委託証拠金の返還請求と,業者からの差損金請求の反訴。断定的判断の提供,不利益事実の不告知による取消が争われた。

【判断の内容】
次の理由から,委託証拠金の返還請求を認め,業者からの差損金請求を棄却した。
① 外務員らは、金相場の値動きからみて今後さらに金の値が上がると予想される旨の自己の相場観を述べて取引を勧誘したことが認められるが、将来の変動が 不確実な事項である金の相場について、顧客が金の相場に関する判断をする上での情報提供の限度を超えて、相場が上昇することが確実であると決めつけるような断定的な表現を使って顧客に取引を勧誘したことを認めるに足りる証拠はないとして,断定的判断の提供は否定。
② 本件取引において,将来における金の価格の上下は取引の「目的となるものの質」(4条4項1号)であり,かつ顧客が契約を「締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの」(同項柱書)であるから,4条2項の重要事項というべきであり,外務員が顧客に対し金相場に関する自己判断を告げて買注文を勧めることは「重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨告げ」ることに該当する。その場合,将来の金相場の暴落の可能性を示す事実は,「当該消費者の不利益となる事実」に該当し,これに言及せず上記告知を行うことは,「当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきもの」に該当するとして,4条2項による取消を認めた。

◆ H20.01.30京都地裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ワ)第1793号更新料返還等請求事件
最高裁HP,判例時報2015号94頁,判例タイムズ1279号66頁,金融商事判例1327号45頁,消費者法ニュース76号268頁
裁判官 池田光宏,井田宏,中嶋謙英

【事案の概要】
賃貸借契約における更新料を支払う旨の約定が,民法90 条及び消費者契約法10条により無効であるとはいえないと判断された事例

【判断の内容】
① 本件更新料は,主として賃料の補充(賃料の前払い)としての性質を有しており,併せて,その程度は希薄ではあるものの,更新拒絶権放棄の対価及び賃借権強化の対価としての性質を有している。
② (民法90条について)本件更新料が主として賃料の補充(賃料の前払い)としての性質を有しているところ,その金額は10万円であり,契約期間(1年間)や月払いの賃料の金額(4万5000円)に照らし,直ちに相当性を欠くとまでいうことはできない。
③ (10条について)任意規定による場合に比し消費者の義務を加重する条項にはあたるが,金額,期間に照らして過大ではなく,更新料約定の内容は明確で 説明を受けていることから不測の損害を与えるものでもなく,また,更新拒絶権放棄の対価及び賃借権強化の対価としての性質をも有していることからは,消費 者の利益を一方的に害するとはいえない。

◆ H20.02.19福岡地裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ワ)第3937号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 伊藤聡

【事案の概要】
建物賃貸借契約で,敷金家賃3ヶ月分,敷引家賃3ヶ月分とした敷引特約を無効とし,敷金の返還請求を認めた事例

【判断の内容】
① 本件敷引特約は,任意規定に比して消費者の権利を制限しまたは消費者の義務を加重するものである。
② 本件敷引特約には,合理性が認められず,信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものである。

◆ H20.03.28福岡高裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ネ)第202号手付金返還,損害賠償請求控訴事件
判例時報2024号32頁
裁判官 丸山昌一,川野雅樹,金光健二

【事案の概要】
マンション売買契約締結後,買主が代金を支払わないために契約解除となったことから,宅建業者である売主が売買代金の2割とする違約金条項に基づき違約金を請求した事案。違約金条項が9条1号,10条に違反するか否かが問題となった。

【判断の内容】
次のように判断し,消費者契約法の適用がないとしつつ,信義則により違約金の額を制限した。
① 宅建業法38条により,違約金の額は代金の10分の2を超えてはならず,これに反する特約は無効としているから,本件違約金特約は宅建業法38条には違反しない。
② 宅建業法38条があるので,消費者契約法11条2項により,9条1号,10条は適用されない。

◆ H20.04.25東京地裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ワ)第23907号不当利得返還等請求事件
未登載
裁判官 綿引穣

【事案の概要】
セクハラ発言を受け,プロダクションとの所属タレント契約を解除したタレントが,契約金(25万円)の返還を求めるなどしたのに対し,契約金は受領後如何なる場合であっても一切返還しない旨の条項の効力が争われた。

【判断の内容】
契約金は受領後如何なる場合であっても一切返還しない旨の条項につき,解除に伴い当該事業者に発生する平均的損害を超える部分は9条1号により無効と解す べきところ,事実関係に照らし,プロモートのために撮った写真代(1万2600円)のほかに合理的な出費の存在を認めることはできないとし,これを差し引 いた残金につき返還請求を認めた。

◆ H20.04.25倉敷簡裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ハ)第828号既払金返還請求事件,平成20年(ハ)第226号立替金反訴請求事件 
兵庫県弁護士会HP国セン報道発表資料(2008年10月16日公表),消費者法ニュース76号213頁
裁判官 堀田隆

【事案の概要】
健康食品販売業者が,高齢で身体に障害のある者宅を訪問し勧誘する際に,健康上の悩みにつけこんで,「これを飲めば,病気も治って健康になれますよ」などと説明をし,また,支払が困難であるとして自宅からの退去を要求する態度を示したにもかかわらず,契約を締結させ,信販会社との間で割賦購入あっせん契約を締結したとして,クーリングオフ,4条1項1号(不実告知),同条3項1号(不退去)に基づき取消を主張し,支払金額の返還等を求めた事例

【判断の内容】
不実告知や不退去による困惑に基づく取消の主張については,具体的な証拠に基づく証明が不十分として否定された。
その一方で,公序良俗違反の契約であることを認定し既払金の返還を認めた。

◆ H20.04.30京都地裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ワ)第2242号定額補償分担金・更新料返還請求事件
判例時報2052号86頁,判例タイムズ1281号316頁,金融商事判例1299号56頁,最高裁HP国セン報道発表資料(2008年10月16日公表)
裁判官 中村哲,和久田斉,波多野紀夫
控訴審 H20.11.28大阪高裁判決

【事案の概要】
建物賃貸借契約の定額補修分担金条項について10条で無効とした事例

【判断の内容】
16万円の定額補修分担金条項につき,下記のとおり判示した。
建物賃貸借の場合はその使用に伴う物件の損耗は賃貸借契約の中で当然に予定されているから物件の通常損耗の回収は通常賃料の支払を受けることで行われる。 そうすると,原則として,賃借人に通常損耗についての回復義務を負わせることはできない。賃貸人は通常修繕費用にどの程度要するかの情報をもっているが賃 借人はこれらの情報をもっていないので,賃借人がこれらの点について賃貸人と交渉することは難しく定額補修分担金額は賃貸人が一方的に決定している。軽過 失損耗の回復費用が設定額より多額であったという特段の事情がない限り賃借人に有利とはいえない。分担金額は月額賃料の2.5倍程度で一般的な回復費用に 比べて高額である。これらの事情からは消費者の不利益を負わせるもので,10条により無効である。

◆ H20.06.10大阪地裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ワ)第5823号損害賠償請求事件
判例タイムズ1290号176頁
裁判官 西岡繁靖

【事案の概要】
自動車販売会社からインターネットオークションで中古車を購入した者が,メーターの巻き戻しによって実際の走行距離が表示の8倍以上であったとして瑕疵担保責任,不法行為責任を追及した事例。現状のまま引き渡し,保証なしとの約定の有効性が争われた。

【判断の内容】
販売業者が,本件契約が業者向け販売であるから,消費者契約でないと主張したのに対し,情報・交渉力の格差が事業に由来することから,消費者と事業者の概 念を区別して消費者契約の定義で用いているのであるから,本件契約が業者向けの価格,内容で締結されたことをもって,消費者契約であることを否定すること はできないとして,消費者契約法の適用を認め,8条1項5号により免責条項を無効として,瑕疵担保責任を認めた。

◆ H20.07.16東京地裁判決

2010年6月8日 公開

平成19年(ワ)第22625号損害賠償請求事件
金融法務事情1871号51頁,消費者法ニュース78号203頁,国民生活センター消費者問題の判例集
裁判官 澤野芳夫,荻原弘子,長井清明

【事案の概要】
FX業者側のシステムの不具合により直ちに決済できなかったとしても一切賠償責任を負わないとの約款について,8条の趣旨からは,限定的に解釈すべきとした事例

【判断の内容】
① 原告のロスカット・ルールへの期待は合理的で法的保護に値し,被告は有効証拠金額が維持証拠金額を割り込んだ時にロスカット手続に着手する義務を負っていた。
② 被告は不十分なコンピューターシステムしか用意しておらず,そのシステムの不具合により,本件ロスカット時においてカバー取引の注文を出せなかったのであって(①の義務違反),これにより原告が受けた損害につき不法行為又は債務不履行の責任を負う。
③ コンピューターシステムの不具合によるカバー取引の遅延に関する被告の免責約款は,8条1項1号,同条項3号の趣旨に照らし,真に予測不可能な障害や 被告の影響力の及ぶ範囲の外で発生した損害といった被告に帰責性の認められない事態によって顧客に生じた損害について,被告が損害賠償の責任を負わない旨 を規定したものと解するほかなく,本件はこれに該当しない(被告は免責されない)。

◆ H20.07.17亀岡簡裁判決

2010年6月8日 公開

平成20年(少コ)第3号保証金返還請求事件
未登載
裁判官 藤野美子

【事案の概要】
保証金35万円から30万円を差し引いて返還する旨の解約引特約が10条により無効とされた事例

【判断の内容】
契約成立の謝礼や新規賃借員募集の費用,空き室損料等は,賃借人が当然に支払わなければならない性質の金員ではないにもかかわらず,その趣旨を明示せずに 解約引という形で支払強要するのは不当であり,また,賃料先払であるとしても,解約引特約により賃料が低額に抑えられたと認めるに足りる証拠はなく,賃貸 借期間が判然としない契約時に固定金額を賃料先払として受領する合理性もなく,本件解約引特約は合理的な趣旨・目的に基づくものとは認められない。解約引 率も約85.7%と高く,本件解約引特約は10条により無効というべきである。

◆ H18.11.27最高裁判決(4)

2010年6月6日 公開

平成16年(受)2117号学納金返還請求事件
最高裁HP,最高裁判所民事判例集60巻9号3732頁,判例時報1958号12頁,判例タイムズ1232号97頁
裁判官 古田佑紀,滝井繁男,津野修,今井功,中川了滋
控訴審 H16.09.10大阪高裁判決(1)

【事案の概要】
大学合格後,入学を辞退した受験生が,前納した入学金及び授業料等の返還を求めた。消費者契約法施行前の事例。

【判断の内容】
① 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約の公序良俗違反該当性。
② 私立医科大学の平成13年度の入学試験に合格し,同大学との間で納付済みの授業料等を返還しない旨の特約の付された在学契約を締結した者が,同契約を解除した場合において,同特約は公序良俗に反しないなどとして,授業料等の返還請求が棄却された。
③ 【滝井反対意見】不返還条項は公序良俗には反しないが,追加合格により現に定員割れを起こしていない場合には,信義則上返還を拒むことは許されない。

◆ H18.11.27最高裁判決(5)

2010年6月6日 公開

平成17年(受)第1437号学納金返還請求事件
最高裁HP,最高裁判所民事判例集60巻9号3597頁,判例時報1958号12頁,判例タイムズ1232号97頁
裁判官 中川了滋,滝井繁男,津野修,今井功
控訴審 H17.04.22大阪高裁判決

【事案の概要】
学納金返還請求。入学手続要項等に「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものとみなす」等の記載があった場合で,入学式の無断欠席した場合,在学契約の解除の意思表示をしたことになるか,なるとしても,その場合の平均的損害が問題となった。

【判断の内容】
1 入学手続要項等に「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものとみなす」,「入学式を無断欠席した場合には入学を取り消す」等の記載がある大学 の入学試験の合格者が当該大学との間で在学契約を締結した場合において,当該合格者が入学式を無断で欠席することは,特段の事情のない限り,黙示の在学契 約の解除の意思表示に当たる。
2 入学手続要項等に「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものとみなす」,「入学式を無断欠席した場合には入学を取り消す」等の記載がある大学 の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約は,入学式の日までに明示又は黙示に同契約が解除された場 合には,原則として,当該大学に生ずべき消費者契約法9条1号所定の平均的な損害は存しないものとして,同号によりすべて無効となる。

◆ H18.11.27最高裁判決(6)

2010年6月6日 公開

平成17年(受)第1283号学納金返還請求事件
未登載
裁判官 古田佑紀,滝井繁男,津野修,今井功,中川了滋
第1審 H16.04.30東京地裁判決
控訴審 H17.03.30東京高裁判決

【事案の概要】
大学の入学試験に合格し,学納金を納付した後に入学を辞退し,民法又は9条1号,10条により学納金の返還を求めた。

【判断の内容】
① 学生はいつでも任意に在学契約等を将来に向かって解除することができ,口頭による意思表示も可能。
② 入学手続要項等に4月2日の就学手続日に就学手続を行わなければ入学許可が取り消される旨記載がある大学について,手続を行わなかった者について,4月2日の解除を認め,大学に平均的損害は存しないとして,授業料の返還請求を認めた。

◆ H18.11.27最高裁判決(3)

2010年6月4日 公開

平成18年(受)第1130号不当利得返還請求事件
最高裁HP,判例時報1958号62頁,判例タイムズ1232号89頁
裁判官 古田佑紀,滝井繁男,津野修,今井功,中川了滋
控訴審 H18.03.23東京高裁判決平成17(ネ)第5282号

【事案の概要】
学納金の返還請求。大学の職員から入学式に出席しなければ入学辞退として取り扱う旨告げられたため3月31日までに在学契約を解除することなく入学式に欠席することにより同契約を解除した場合であった。

【判断の内容】
大学の入学試験に合格し,納付済みの授業料等の返還を制限する旨の特約のある在学契約を締結した者が,同大学の職員から入学式に出席しなければ入学辞退として取り扱う旨告げられ,入学式に欠席した場合において,同大学が同特約が有効である旨主張することは許されない。



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