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「2010年5月」アーカイブ|消費者契約法判例集

◆ H18.06.12東京地裁判決

判決年月日: 2006年6月12日

平成17年(ワ)第22799号契約金返還請求事件
未登載
裁判官 田中俊行

【事案の概要】
建物建築請負契約を建築開始前に解約し,支払済みの契約金300万円から10万円を差し引いた金額の返還請求をした。「請負代金総額の3分の1または請負人に生じた損害額のどちらか高い方を賠償する」との条項の効力が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,当該条項について9条1項に違反し,10万円を超える限度で無効とし,返還請求を認めた。
① 9条1号の「平均的な損害」とは,当該損害賠償額の予定条項において設定された解除の事由,時期等により同一の区分に分類される多数の同種契約事案の解除に伴い,当該事業者に生じる損害の額の平均値を意味する。
② 「平均的な損害」の立証責任は事業者側にある。
③ 本件条項は,解除の事由,時期を問わず一律に契約金の3分の1以上が平均的損害となるというものであるが,その合理性について立証はなく,本件解除の時期ではむしろ10万円を超えないことが明らか。
④ 民訴法248条による損害額の認定は,損害が生じたことが立証されたがその額を立証するのが困難な場合の規定であり,本件では損害の立証がそもそも10万円を超えない範囲でしかされていないので,適用の前提を欠く。

◆ H18.06.06大阪地裁判決

判決年月日: 2006年6月 6日

平成18年(レ)第5号敷金返還請求控訴事件
未登載
裁判官 堀正博,武部知子,湯浅徳恵
原審 大阪簡裁平成17年(ハ)第70334号

【事案の概要】
建物賃貸借契約における保証金返還請求。保証金35万円の内25万円を控除するとの条項の効力が争われた。

【判断の内容】
敷引特約は特段の合理性,必要性がない限り10条違反により無効であり,本件でも合理性を認められないとした。
 なお,原審では保証金の3割相当額の敷引を有効としていたものを全部無効としたが,借主側の控訴・附帯控訴がなかったため,控訴棄却となっている。

◆ H18.05.24大阪高裁判決

判決年月日: 2006年5月24日

平成18年(ツ)第13号敷金返還請求上告事件
http://www.geocities.jp/blackwhitelaw/
第1審 H17.07.12京都簡裁判決
控訴審 H17.12.22京都地裁判決

【事案の概要】
敷金返還請求。敷引特約の有効性が争われた。

【判断の内容】
通常損耗部分の原状回復費用を借主が負担することの合意は成立していないとの原審判断を維持した。
また,仮に合意が成立していたとしても,このような合意は許されないとも付言している。

◆ H18.05.19枚方簡裁判決

判決年月日: 2006年5月19日

平成17年(少コ)第89号保証金返還請求事件
未登載
裁判官 矢野隆

【事案の概要】
建物賃貸借における,保証金の返還請求。保証金45万円の内30万円を控除するとの条項の効力が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,当該条項について,賃貸物件の価値を高めるものではなく,また,賃貸期間の長短に関係なく賃借人が交替する毎に生ずる費用(例えば不動産 業者の仲介手数料)については有効であるが,それ以外については10条違反により無効であるとしてその部分について返還請求を認めた。
① 民法に,賃借人に賃料以外の金銭的負担を負わせる旨の明文がないから,賃借人の義務を加重する条項である。
② 賃貸人側,賃借人側の事情を検討すると,賃貸期間の長短に関係なく賃借人が交替する毎に生ずる費用については,賃借人に負担させることも合理性があり,消費者の利益を一方的に害するとはいえない。

◆ H18.04.28木津簡裁判決

判決年月日: 2006年4月28日

平成17年(ハ)第170号敷金返還請求事件
未登載
裁判官 根本正彦
控訴審 H18.11.08京都地裁判決

【事案の概要】
敷金返還請求。敷引特約(35万円から30万円を差し引く)の効力が争われた。

【判断の内容】
以下の理由から,敷引特約が10条違反により無効であるとして返還請求を認めた。
① 敷引特約は,その合意内容が当事者間において明確で,合理性があり,賃借人に一方的に不利益なものでなければ,直ちに無効とはいえない。阪神地区においては慣行として存在するのも事実。
② しかし,まだまだ賃貸人,賃借人間においては対等の立場で契約することは困難である。
③ 敷引には合理性がない。

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