平成16年(レ)第109号保証金返還請求控訴事件
兵庫県弁護士会HP,判例時報1901号87頁,消費者法ニュース65号161頁,国セン報道発表資料HP2006年10月6日
裁判官 村岡泰行,三井教匡,山下隼人
第1審 H16.11.30神戸簡裁判決
【事案の概要】
敷金30万円のうち25万円(83.3%)を差し引く敷引特約は10条により無効であるとして返還を求めた。
【判断の内容】
本件敷引特約は,民法にない義務を負担させるものであって,民法の適用による場合に比して消費者の義務を加重する条項であるとし,また,信義則に反し消費 者の利益を一方的に害するかどうかについては,敷引特約はさまざまな要素を有するものが渾然一体となったものとの立場(いわゆる渾然一体説)に立ちつつ, 賃貸借契約成立の謝礼(礼金),自然損耗の修繕費用,更新料免除の対価,空室損料,賃料を低額にすることの代償,といった要素について分析をし,いずれも その合理性を否定し,敷引特約は「賃貸事業者が消費者である賃借人に敷引特約を一方的に押しつけている状況にある」として,信義則に反し消費者の利益を一 方的に害するものであると判断し,10条に違反し無効であるとし,25万円の返還請求を認めた。