平成14年(ワ)第9620号学納金返還請求事件
未登載
裁判官 川神裕,山田明,川朋子
【事案の概要】
4月1日より前に入学を辞退した合格者が,前納した入学金及び春期授業料等の返還を求めた。
【判断の内容】
平均的損害について立証責任は消費者にあるとし,被告が平均的な損害額を4年分の授業料相当額としたのに対しては,在学契約は準委任又はこれに準ずる性質 を有する無名契約であり,ここにいう損害とは,契約が存続・継続することを想定していたため,他の収入を得る機会を失ったことなど,解除が不利な時期にさ れたことから生ずる損害に限定すべきであり,受け取るはずであった授業料の逸失をもって平均的損害ということはできないとし,また,被告が非財産的損害が 生じたとしたのに対しては,9条1項にいう「平均的損害」には非財産的損害が含まれるとは解することができないとした。そして,入学辞退が4月1日より前 であったことから,4月1日までの入学辞退による平均的な損害の発生はないから,入学金を除く春期授業料等については返還すべきであり,春期授業料等を返 還しないとの特約は9条1号により無効であるとして返還を命じた。入学金については「学生としての地位の取得の対価」であり,「入学手続及び受入準備に要 する手数料又は費用」「入学資格を得た対価」として返還義務を否定した。